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映画『ナイスガイズ!』ネタバレ感想・解説・考察!ゴズリングのコミカルさが良いネオ・ノワール作品

映画「ナイスガイズ!」のあらすじ・内容

『ナイスガイズ!』はシェーン・ブラック監督による映画です。ブラックは『リーサル・ウェポン』『アイアンマン3』に大きく関わった人気の脚本家ですね。

詳しくは後述しますが、非常に多くのジャンルを取り入れながらもしっかりと面白さが整っているさまが、まるでパフェのような作品でした。

今回はそんな『ナイスガイズ!』の個人的な感想や解説、考察を書いていきます。途中までネタバレを控えてありますので、鑑賞前にもどうぞ。

映画「ナイスガイズ!」を観て学んだ事・感じた事

・何度も転換する脚本が見事!こんなアクション映画が観たかった!
・『逆転裁判』と『銀魂』を足したようなテイストがとてもよい
・ストーリーは満点だけど、舞台や世に出たタイミングが……

映画「ナイスガイズ!」の作品情報

公開日2017年2月18日(日本)
2016年5月20日(米国)
監督シェーン・ブラック
脚本シェーン・ブラック
出演者ジャクソン・ヒーリー(ラッセル・クロウ)
ホランド・マーチ(ライアン・ゴズリング)
ホリー・マーチ(アンガーリー・ライス)
アメリア・カットナー(マーガレット・クアリー)

映画「ナイスガイズ!」のあらすじ・内容

映画「ナイスガイズ!」のあらすじ・内容© 2014 Warner Bros. Entertainment Inc

1977年のロサンゼルスにて、有名ポルノ女優のミスティMが死亡します。当初は事故死と断定されたものの、他殺の疑いも出ていました。

落ちぶれた探偵のホランドは、「死亡のニュースの二日後にミスティを見た」と主張する叔母から依頼を受け、アメリアという女性にたどり着きます。

ホランドがアメリアの足取りを探っていると、彼女から雇われた用心棒・ヒーリーが彼を恐喝し調査を中止させます。

その日の夜、ヒーリーは別の男から尋問を受けたため、今度はヒーリーがホランドを雇い、アメリアを逆に探し出すことに決めて……。

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映画「ナイスガイズ!」のネタバレ感想

めまぐるしい展開が面白い一本

めまぐるしい展開が面白い一本© 2014 Warner Bros. Entertainment Inc

本作はミステリーでもありアクションでもありブラックコメディでもあり、ネオ・ノワールでもあるという非常に彩り豊かな映画です。ネオ・ノワールとは、40-50年代に米国で製作された閉塞感の強い犯罪映画「フィルム・ノワール」を現代的にアレンジして復活させた映画を指す言葉で、『ダークナイト』や『ブレイド三部作』、『シャッターアイランド』『キル・ビル』『ミリオンダラー・ベイビー』などを指します。

それでいてコメディ色も強く、下ネタやらベタなネタやらで頻繁に笑いを取ってきます。たとえば作中の重要なキーワードに ” How Do You Like My Car, Big Boy?” (字幕は『私に乗りたい?』)というものがあるのですが、 “Drive my car” は古いブルースにおけるセックスの比喩だったりします。

オートマ車が造られるより前の表現なので今では使われていませんが、1965年のビートルズの曲で利用されているのが最も有名でしょう。語源まで知る必要は特にないのですが、そういった小ネタまで使って下ネタをぶちこんでくる作品ということですね。字幕もそれをうまく表現しようと頑張っています。

そうした様々な要素を、軽快なテンポでぐいぐい進めていく話運びで力強く盛り付けています。そのあまりのどんでん返しが多さゆえに、鑑賞中はてんどんまんのような気分になるでしょう。でんでんどんどんでんどんどん返しです。

『ラ・ラ・ランド』のライアン・ゴズリングが超コミカル

『ラ・ラ・ランド』のライアン・ゴズリングが超コミカル© 2014 Warner Bros. Entertainment Inc

ラッセル・クロウとの主人公コンビを演じているのは、ライアン・ゴズリングです。『マネー・ショート 華麗なる大逆転』もそうですが、『ラ・ラ・ランド』の主演で強い存在感を出していたことが非常に印象深いです。

今回の役どころは、アル中でマヌケで職務精神に乏しくカネに貪欲な私立探偵です。ロクなもんじゃないですね。ゴズリングはそんなだらしない男にも、しっかりなりきっています。

ゆるむところはゆるみ、笑わせるところは笑わせ、キメるところは……ほとんどないのですが、とにかく愉快なヤツになっているところはいいポイントです。けっこう悲惨な目に遭っているのですが、彼のキャラクターによって雰囲気が暗くならないのは、実はすごいと思います。

アース等、70sの音楽が盛り上げる

アース等、70sの音楽が盛り上げる© 2014 Warner Bros. Entertainment Inc

本作の劇伴(音楽)には、70年代のヒット曲が多用されています。Earth, Wind & Fire の「September」や「Boogie Wonderland」、 kissの「Rock and Roll All Nite」などが映画を彩ります。1977年の雰囲気をしっかり出していると言えるでしょう。

これらの曲は「The Nice Guys: Original Motion Picture Soundtrack」にまとまっています。こちらはApple Musicなどでもお聴きいただけます。

 

ただ、70s・80sを知らない側からすると、選曲や使い方は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』や『アトミック・ブロンド』の方が巧みだったなあと思ってしまったことは否定できません。

もし本作が『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』より先に出ていたらどうだったかわかりませんが、公開が二年も後になってしまっている分、新しさも感じませんでした。当時を知っている人にはまた違った見方があるのかもしれませんが……。

以下からネタバレを含みます!

【ネタバレ】アメリアの謎、正体は何者?

【ネタバレ】アメリアの謎、正体は何者?© 2014 Warner Bros. Entertainment Inc

本作の謎の象徴となっているのが、AV『私に乗りたい?』とアメリアです。どんでん返しの多さから、結局どういうことだったのかついていけなくなってしまった方もいるかもしれません。改めて振り替えてみましょう。

アメリアが主催するストライキ(?)団体の一員から、ヒーリーとホランドはアメリアの彼氏・ディーンの家へ行きます。家ごと所持するフィルムとともにディーンは焼け死んでいましたが、近所の少年の話からディーンとミスティMが『私に乗りたい?』というAVを作っていたことを突き止めます。二人は、こっそりついてきたホランドの娘ホリーとともに、このAVのプロデューサー・シドがいるパーティーに潜り込みます。

手分けして会場でシドを探していると、ホランドがシドの死体を見つけてしまいます。そのころホリーは、数日前にヒーリーを尋問した男・ブルーフェイスと接触し、アメリアを特定、さらにブルーフェイスによる殺害を妨害します。逃亡劇の末ブルーフェイスは通りすがりの車に轢かれ重体となり、その隙にアメリアは再び姿を消し、ヒーリーはこっそりブルーフェイスに止めを刺します。

 

それからしばらく二人は司法省の重役でアメリアの母親・ジュディスと面会します。彼女はポルノ規制の仕事に就いており、AV撮影に関与したり家に帰らなかったりするアメリアに手を焼いていました。そして彼女も、ヒーリーとホランドをアメリア捜しのために雇います。

翌日、二人はアメリアがシドの家に残したメモから、あるホテルへ向かいます。そこでは殺し屋が殺戮をしていたため、二人はビビり散らして逃げます。アメリアも殺されただろうと思っていると、偶然にも彼女が逃げてきたところにかち合ったため連れてきます。

ようやくアメリアと話せると思いきや、アメリアは「ジュディスは自動車産業と結託し、汚職を働いている」「AV『私に乗りたい?』は実は汚職を告発するためのもの」「AVの中身がバレたため、ジュディスが殺し屋を雇ってAVの存在を知った人間を消している」などと意味不明な供述をします。

 

その後司法省から呼び出され、二人はお使いをさせられます。しかしまたも偶然に、お使いにはウラがあることが判明し、急いでホリーとアメリアのいる家に戻ります。同じころ、家に殺し屋のジョン・ボーイが現れ、皆殺しにしようとかかります。遅れて着いた二人がその場を凌いだと思いきや、アメリアが勝手な行動に出たため、ジョンに殺されてしまいます。

皮肉なことに、アメリアの死によって彼女の狂言が真実であることを知らされた二人でしたが、できることはありませんでした。裏を返せば、事実を裏付けられるのはアメリアの証言だけだったからです。汚職を告発するには証拠が必要ですが、そんなものは見当もつきませんでした。結局娘が死んだとはいえ、結局すべてジュディスの思うようにしてやられた……と意気消沈します。

するとそこに再びミスティMの叔母が登場します。彼女の話とシドの家の手がかりから、一同はミスティMの家に『私に乗りたい?』のコピー版があったことを推理します。オリジナルはディーンと共に焼失したものの、コピー版をミスティMが保持しており、ミスティMの死後にアメリアがそれを持ち出していたのです。

さらに前日にアメリアがホテルに行ったのは、コピー版を配給会社の者に手渡すためだと考えれば、辻褄が合いました。そしてそれが、その日開催されるロサンゼルスオートショー(国際自動車展示会)で上映されることも突き止めます。

会場にはやはり、ジュディスの手先が『私に乗りたい?』を奪取すべく忍び込んでいました。部下の妨害を受けつつも、AVは予定通りオートショーの最中に上映されます。ただ殺し屋が銃の乱射を始めたためにショーはパニックになり、ホランドとヒーリーはフィルムの確保ができなくなります。

しかしホリーが隙を見て、フィルムを窓の外へ投げ出します。ヒーリーは殺し屋たちを抑え込み、落下したフィルムはホランドが確保します。

 

後日ホランドらは、AVを証拠に汚職を告発する裁判を起こし、ジュディスは逮捕されます。最後に彼女は、「Read the fxxkin’ newspaper. What’s good for Detroit is good for America(新聞を読みなさい。デトロイトのためはアメリカのためよ)」と言い残すのでした。

描写としてはアメリアは「勝手に逃げて自滅した女」というイメージですが、実際には「あの手この手を使って身内の罪の暴露に奔走した女性」だったということになります。その行動力の高さは、もしかするとホリーとの類似させたのかもしれません。

ただ、ジュディスが娘を無視して悪事を続けたのに対し、ホランドは曲がりなりにも娘と正義のために戦ったところに、大きな対比ができていますね。

【考察】黒幕のジュディスは「完全に黒」だったのか

【考察】黒幕のジュディスは「完全に黒」だったのか© 2014 Warner Bros. Entertainment Inc

物語の悪役はジュディスであり、彼女は間違いなく違法行為を働いていました。米国内の自動車メーカーと結託し、儲けを出させるために排ガス規制をしないよう仕向けていました。企業と官僚が秘密裏に結びつき、法を操作するというのは、民主主義的には悪です。クリーンな政治というものから離れた行為ですからね。

ただそれでも、あらゆる観点から見て完全に悪だったとは言い切れない部分があります。そこが、本作が単なるコメディ・ミステリーに留まらず、ネオ・ノワールでもある由来にもなっています。

 

その象徴は、アメリアやホランドがジュディスをファシスト呼ばわりしていることに表れているでしょう。悪い政治家の代名詞と思われがちな言葉ですが、必ずしもそうではありません。ファシストは全体主義者のことであり、ファシズムは本来、全体が得するような仕組みになっており、ナチスドイツは一時世界を支配しかねないほどのパワーを持っていました。ただ、全体の利益のために少数がないがしろにされることは大きな問題です。

かつての米国自動車産業も、間違いなく世界を支配していました。それは自由経済の結果だった……かもしれませんが、そうではなかったかもしれません。ジュディスのそれと同じように、国と結びつくことで絶大なパワーを持っていた可能性もあり、そこに汚職があったら民主主義的には悪いことですが、自動車産業の隆盛によって米国全体も栄えていたことも確かです。逆に言えば、自動車産業が衰えれば、ともなって米国全体の富が減るというのも、現実にある話です。

 

実際、70年代には日本産の車が大きなシェアを獲得するようになっており、対してデトロイトの自動車産業の勢いは衰えています。それによって損をしたのは、米国民全体だったと言っていいでしょう。今となっては70年代が米国自動車産業の転換期だったということは、『グラン・トリノ』の中で72年製の(デトロイト発)フォード車の描かれ方からしても、異論のない話だと思います。

もちろん、「みんなが貧乏になるから、汚職してもいい」という話ではありません。ただ「デトロイトのためはアメリカのため」は事実でもあります。そこに潜む二面性を、コメディとアクションによるオブラートに包みながら表現しているところが、本作の魅力になっています。

「ナイスガイズ!」の続編はありうる?

「ナイスガイズ!」の続編はありうる?© 2014 Warner Bros. Entertainment Inc

本作は観た人にはかなり好評ですし、続編を待つ声もそれなりにあり、米国の大手レビューサイトRotten Tomatoesでは、好意的な意見が93%を占めているほどです。筆者も続編がもし作られたらぜひ観てみたいと思っています。

さらにブラック監督も、公開直後のタイミングでは「まだまだ先の話だけど、いつか続編に取り掛かりたい」との旨の発言をしてもいました。

ただ実際のところ、実現可能性は低いと思います。なぜなら本作が「劇場公開中に」成功したとは言えないからです。本作の製作費は5000万ドルと発表されていますが、本国での興行収入は3600万ドル、全世界でも6300万ドルに留まっているので、映画館収入などを引くと、赤字だったと言ってまず間違いないでしょう。

実際のところはタイトルごとに事情が違うでしょうが、よく「黒字になるには興行収入が製作費の三倍にならなければいけない」と言われたりしますし、これといって大きな映画賞を獲ったわけでもありませんから、なおさら重大だと思います。

 

結果、2018年8月のインタビュー記事においては、「興行収入が原因で続編の話がピタリと止まった」とのことでした。とはいえ監督の方は続編を諦めてはいないらしく、「二人のムービースターの起用をやめて続編を作れば、きっと金銭的にはトントンになる」といったことを話してもいました。クロウとゴズリングのいない続編が観たいか?と言われると微妙な感じもしますけどね……。

また、2017年9月には、スピンオフとして『ナイスガールズ!』なるTV番組の製作の話が出たとか出ないとか。舞台や雰囲気の同じ作品が観れる可能性はありそうですが、いずれにせよ「クロウとゴズリングのコンビによる」続編はもはや絶望的と思うしかないでしょう。

【評価】やや人を選ぶ、不遇の秀作

【評価】やや人を選ぶ、不遇の秀作© 2014 Warner Bros. Entertainment Inc

『ナイスガイズ!』は、政治的核心や後ろ暗さを、軽妙なテンポとギャグによって口当たりをよくした映画です。その巧みさに気づくにせよ気づかないにせよ楽しめるストーリー上の構造は、秀作と言って間違いないものがあります。

ただ、70年代という舞台設定や、なにかと下品なセリフ・設定、白人ばかりが目立つことや内部に潜むテーマの時事性の低さからか、イマイチ評価に繋がらなかったということも不思議ではありません。

個人的には本当に好きな映画であるだけに、「不遇の秀作」であるとまとめたいところです。

(Written by 石田ライガ)

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