映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は、大人気SFアクション映画「スターウォーズ」シリーズのスピンオフ作品として制作された映画の一つです。近年はしばしば同シリーズのスピンオフが制作されており、2018年に公開された『ハン・ソロ』も同じ流れの作品になります。
銀河帝国軍が宇宙を掌握する直前までを描き出した過去編にあたる作品ながら、極めて質の高い作品に仕上がっています。特にラスト10分の展開は圧巻というほかなく、近年公開されたスターウォーズ関連の作品では間違いなく一番の傑作と断言できます。
今回はそんな『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の個人的な感想や解説、考察を書いていきます!なお、ネタバレには注意してください。
目次
映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』を観て学んだこと・感じたこと
・ダースベイダーの「悪のカリスマ」としての魅力を再確認
・エピソード4につながる空白の期間が最高の形で補完された
・「滅びの美学」を痛感させられた
映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の基本情報
公開日 | 2016年12月16日 |
監督 | ギャレス・エドワーズ |
脚本 | クリス・ワイツ トニー・ギルロイ |
出演者 | ジン・アーソ(フェリシティ・ジョーンズ) ゲイレン・アーソ(マッツ・ミケルセン) キャシアン・アンドー(ディエゴ・ルナ) K-2SO(アラン・テュディック) ターキン提督(ガイ・ヘンリー) |
映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のあらすじ・内容
ダースベイダーを首領とする銀河帝国軍は着々と宇宙を支配していきました。そして、彼らは惑星型の究極兵器「デス・スター」を完成させたことにより、その支配を確実なものにします。
この「デス・スター」開発に関わったゲイレン・アーゾは、帝国軍によって家族を殺害された復讐として兵器に関する機密情報を流出させます。しかし、かつて帝国軍に属していたゲイレンの情報はなかなか信用されず、帝国軍と敵対しているはずの反帝国派に拘束されてしまいました。
一方、同じく反帝国を志向する反帝国同盟のメンバーたちもこの件を聞きつけ、ゲイレンとの接触を図ります。
そこで接触の糸口として見つけ出されたのが、彼の娘ジーン・アーゾでした。彼女は強制収容所に捕らえられていましたが、反乱同盟軍の手助けもあり脱出に成功します。
父からの情報をもとに、同盟チーム「ローグ・ワン」の一員となったジーン。彼らの行動に、銀河の命運は大きく左右されていくことになります。
映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のネタバレ感想
【解説】時系列は「エピソード4」の直前にあたる
今作はスピンオフながらシリーズ本編とかなり密接な関係があるというのが特徴です。そのため、単体でも楽しめますがシリーズは一度通しで見ておいたほうがよいでしょう。登場人物や世界観は基本的に同一のため、作品に馴染みやすいというメリットもあります。
また、本編との関連性で言えば今作は「エピソード3」でアナキンがダースベイダーとして生まれ変わりジェダイが滅びた時期から、「エピソード4」でルークが立ち上がりデス・スターを破壊する時期までの「空白の19年間」と呼ばれた時期を描いている作品です。
スターウォーズは1〜6までが親子二代の比較的短い期間を描いた作品であるため、シリーズの中ではかなり大きなこの空白期間については、ファンの間でもいろいろな展開予想がなされていました。そのため、今作はそうしたファンの疑問に答える形で制作されたといえるでしょう。
また、惑星型兵器デス・スターに関する詳細が語られたのも今作の特徴です。これまでは映画内における同兵器が脅威であるというのは十二分に伝わってくる一方、開発や兵器の弱点に関する点はあまり語られてきませんでした。しかし、今作では設定上でのみ明かされていたデス・スターの詳細がスクリーン上でも語られています。スターウォーズに登場する中でも非常に人気の高い兵器であるため、ファンの立場とすればこのあたりの話は嬉しいものです。
さらに、「エピソード4」は高い評価を得ていましたが、映画に付きまとう少し気になる難点をも今作は解消してくれました。それは、「エピソード4」におけるデス・スターの壊され方です。同作においては、飛行機による爆弾の投下で非常にあっけなくデス・スターが破壊されてしまったため、視聴者からすれば「どうして究極の存在として誕生した兵器がこれほどあっけなく破壊されてしまうのか」という感想を抱きたくなります。
しかし、今作では開発者のゲイレンがあえて弱点を残して設計し、その弱点を記した設計図が反乱軍の手に渡っていたことが明かされます。これにより、「エピソード4」の疑問点を首尾よく補足することができました。ファン目線でもこの補足は作品の質を向上させる要素になっており、シリーズのスピンオフ作品としてこれ以上ない仕上がりといえるでしょう。
ローグワンメンバーと帝国軍のキャラ立ちが素晴らしい
今作のように過去編を描くスピンオフ作品にオリジナルキャラクターを起用した場合、懸念される事項が「キャラクターの弱さ」です。過去編である以上登場する新キャラクターは何かしらの理由で後の作品に登場しないよう工夫しなければならないという制約もあり、印象的なキャラクターを生み出すのは難しいと言われています。
加えて、スターウォーズシリーズのキャラクターはみな強烈な個性をもっています。ベイダーやヨーダ、ルークなどの人気キャラクターは単体でも高い人気を獲得しており、それに比肩するようなキャラクターを生み出すのは至難の業です。
しかし、今作は反乱同盟軍の「ローグ・ワン」メンバーも敵対する帝国軍のメンバーも、非常に「良いキャラをしている」と感じました。もちろん今作のみという非常に限られた尺の中で発揮できる個性や内面描写には限界がありましたが、新キャラと旧キャラが並んでもそれほど違和感なく鑑賞することができました。
特にこれまでは正義の味方として描かれていた反乱同盟軍の「負」の側面と、これまでも悪役として描かれていた帝国軍がさらに極悪になっている点は、鑑賞していて面白いと感じます。
反乱軍が正義を掲げつつもクーデター集団であることは事実であり、目的のために倫理に反する行為を行っていました。これまでは反乱軍のそうした側面は描かれてこなかったので、「正義」と「悪」の二元論だけでは解決できないジレンマを現代流に描き出していたと考えられます。実際、現代において「絶対の正義」というものが成立しないことは自明のものとなっており、映画界にも単純な二元論に留まらない作品が数多く生み出されています。今作の方向性から、スターウォーズも上手に現代化しているということが理解できます。
また、反対に帝国軍がこれでもかというほど極悪非道な存在として描かれているのも印象的でした。確かにこれまでも悪役には違いなかったのですが、どこか憎めない側面もあったように思えます。しかし、今作では見ている我々が本気で憎しみを感じるほどの巨悪としてスクリーンに君臨しているように感じました。
これはローグワンという主役級の面々の欠点を多少描いたために、脚本の都合上帝国軍はそれを上回る悪である必要があったためでしょう。実際、こうでもしなければ帝国軍に同情する視聴者もいたかもしれませんが、帝国軍が徹底的にヒールとして立ち回ることで主人公らの活躍が鮮明になりましたし、それがラストの強烈な絶望感に繋がることになるのです。
ラスト10分の展開とダースベイダーの存在感はまさしく圧倒的!
今作は作品を通じて安定したクオリティを発揮していました。反乱同盟軍が設計図を求めて銀河を駆け回り、それを阻止すべく暗躍する帝国軍。この要素だけでも、並みの映画よりは優れています。
しかし、そうした要素は今作最大の見せ場を前にすると、あくまで前座に過ぎなかったことに気づかされます。視聴済みの方は誰もが衝撃を受けたことと思いますが、今作は映画のラスト10分があまりにも素晴らしいのです。
ラスト10分を前に、これまで苦戦しながらも活躍を続けていたローグワンは希望のつまった機密設計図を入手します。自分たちの任務を果たし終え、惑星スカリフで失った仲間たちを想うジーンとキャシアン。しかし、その感動もつかの間にスカリフにデス・スターの砲撃が降り注ぎ、ローグ・ワンのメンバーは全滅してしまうのです。
とはいえ設計図を確保できた反乱同盟軍は、目的を果たし惑星からの離脱を試みます。そこに現れたのが、後のシリーズでも大活躍するシリーズを象徴するキャラクター「ダースベイダー」でした。ベイダーは後のシリーズでは銀河のトップという一面が強く、強大な力を有していることは分かるものの、直接的な戦闘というのはほとんどありません。
今作では反乱同盟軍の船内でその強大な力をいかんなく発揮し、まさしく鬼のように無双していました。これは我々ファンが待ち望んでいたダースベイダーの姿であり、スターウォーズファンならばこのシーンで興奮しない方は存在しないのではないでしょうか。ただ、無双したものの船員を根絶やしにすることはできず、提督によって持ち出された設計図がベイダーの運命を大きく狂わせることになります。
確かにベイダーは最強クラスの能力を有していましたが、同時に彼の歯車がここから狂っていたことも理解できます。そして大量に虐殺された船員たちの恨みを晴らすかのようにルークが活躍していくことを考えると、後のシリーズがまた違ったものに見えてきます。
【解説】本作を見てからもう一度エピソード4を見るべき
今作がエピソード4の直前にあたる時系列であることには既に触れましたが、それによって必然的にエピソード4との関係性は非常に強く意識されています。実際、提督が船を脱出してレイアに設計図を渡した今作のラストと4の冒頭は時間的に完全につながっています。
そもそも、今作が生まれるキッカケは4の冒頭に流れるお決まりの「A long time ago in a galaxy far ,far away(訳:遠い昔、はるか彼方の銀河系で…)」というテキストに続くオープニングテキストにありました。4のテキストでは「反乱軍のスパイは帝国軍の究極兵器を盗み出すことに成功」という一文があり、監督はここを膨らませて映画を製作しました。
そのため、今作を視聴してから4を見直すと、今までとは全く異なる感想を抱くことになります。まず、冒頭でレイアの乗る船がデストロイヤーから逃げるシーン。この船内で見かける光景は初見だと何事もなく見過ごしてしまいますが、これを守り抜いたローグワンの面々を思い出すと印象がガラッと変わります。また、船内に現れるダースベイダーの存在は初見だと少々唐突に感じなくもないですが、今作を視聴していると設計図を追い求めて船に登場していることが分かります。
さらに、最も印象に残るのはレイアがR2-D2にカードのようなものを渡すシーンでしょう。初見の時は正体やその価値がハッキリとは分かっていませんでしたが、今はそこにデス・スターを打倒するための最重要機密が隠されていることに気づきます。
そして、それはジーンやキャシアンなどローグワンの面々がまさしく命を犠牲にして勝ち得た「希望」であり、何物にも代えがたい価値を持っていることも知っているでしょう。彼らの勇姿と末路を思い出すと、何気ないシーンが一転して感慨深いものへと変化します。
その後、受け継がれた希望は反乱軍に根付き、ローグワンの犠牲によって得られた機密情報はデス・スターを打倒することになります。ここになってようやく彼らの悲願は果たされたといえるでしょう。前述のようにデス・スターの倒されかたを補足し、さらに破壊に至るまでの数多の犠牲とドラマを加えた今作は、4の内容にさらなる深みを与えています。
【考察】「滅びなければならない」という作品上の都合を逆手に生かした
ここまでの内容から、今作が作品単体として素晴らしいだけでなく、既存の作品にも異なる見方を与えるような傑作であることはお分かりいただけたと思います。今作の内容は過去を描くタイプのスピンオフ作品が見習うべき点に満ち溢れていました。
先ほども多少触れましたが、この手のスピンオフで登場した新キャラクターは原則その姿を消さなければなりません。そのため、あまりに強烈なキャラクターを出現させてしまうと、過去であれだけ存在感を放っていたキャラの存在が語られず、不自然さを感じるという結果を生みかねません。
そうなるとスピンオフとしては評価が高くても「蛇足感」が否めなくなってしまいます。もっとも、それを警戒して薄味のキャラクターばかりを出現させるのも対策としては問題ありです。
しかし、今作は「名もなき戦士たちの歴史」という描き方をすることで、脚本の都合と映画の魅力を両面から生かしています。デス・スターの機密情報を取り返し、次代へと希望を託したローグワン。確かに多大な貢献をしたことは事実ですが、一方で存在を語られないことへの整合性もとれています。その理由は単純で、ローグワンのメンバーが一人残らず果ててしまったからです。これでは、彼らの活躍を語り継ぐ人間がいないのも当然でしょう。
そして、決して無能ではない彼らが帝国軍やベイダーの理不尽な力に屈してしまうのも、彼らの滅びを魅力的にしている要因でしょう。我々はしばしば「絶対的な差」を見せつけられると、悔しさよりも感嘆のほうが大きくなってしまいます。作中で活躍した人物たちが絶対的な悪に蹂躙されるというのは、一種こうした感情を刺激するものでしょう。
もちろん、この図式を成立させるためにはローグワンのメンバーを魅力的に、かつ帝国側を絶対的な存在として上手に見せることが必要です。その点をしっかりと描き切ったことで、今作は素晴らしい作品となりました。
さらに、ローグワンの滅びとつないだ希望は、我々に大きなカタルシスをもたらしています。あれほど苦労して設計図を手に入れたローグワンは、強大な力の前に歴史にも残ることなく消え去っていきますが、彼らの残した希望はしっかりと生き続け、デス・スターおよびベイダーの打倒に多大な貢献を果たしました。つまり、彼らは最終的に勝利者となったのです。確かに作中では誰一人としてローグワンの活動を知らなかったかもしれませんが、他でもない我々は彼らの生きざまをしっかりと記憶しているのです。
日本人は古くから半官贔屓を好むと良く指摘されますが、まさしくその通りなのかもしれません。今作は「高潔な滅びを描いた映画」といえます。
(Written by とーじん)
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