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『新婚旅行ハリケーン!失われたひろし』ネタバレ感想・解説・考察!家族全員が楽しめるファミリー向け映画

映画『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン!失われたひろし』のあらすじ・内容

映画『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン!失われたひろし』は、大人気ギャグ漫画『クレヨンしんちゃん』シリーズ27作目のアニメ映画で、同時にシリーズ作品として平成最後を飾る映画でもあります。

本作は、サブタイトルにもあるように「ひろし」を強調している点が公開前から注目されていました。近年ではひろしを主役に据えたグルメ漫画が登場するなど、人気を博しているキャラですが、果たして本作ではどのような役回りを演じたのでしょうか。

今回はそんな『映画クレヨンしんちゃん新婚旅行ハリケーン!失われたひろし』の個人的な感想や解説を書いていきます!なお、ネタバレには注意してください。

映画『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン!失われたひろし』を観て学んだこと・感じたこと

・毎年の映画上映ながら、新しい挑戦と変わらぬ安定感は健在
・ひろしとみさえの物語は新鮮でファン向けか
・シリアスもあるが内容の配分としてはギャグ寄りなので家族連れも安心

映画『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン!失われたひろし』の基本情報

公開日2019年4月19日
監督橋本昌和
脚本うえのきみこ
水野宗徳
出演者野原しんのすけ(小林由美子)
野原みさえ(ならはしみき)
野原ひろし(森川智之)
野原ひまわり(こおろぎさとみ)
シロ/風間トオル(真柴摩利)
桜田ネネ(林玉緒)

映画『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン!失われたひろし』のあらすじ・内容

映画『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン!失われたひろし』のあらすじ・内容

「おしどり」とまではいかないが、時には愚痴を言いあいながらも夫婦としてすっかり馴染んでしまったひろしとみさえ。しかし、思い返せば彼らは新婚旅行に行っていなかったことに気づいてしまうのです。

そこで、せっかくの機会にとオーストラリアへの新婚旅行を企画します。こうして、ひろしとみさえにしんのすけとひまわりも同行する形で、激安ツアーへと旅立っていくのでした。

せっかくの新婚旅行。夫婦水入らずの時間を過ごそうとしますが、些細な行き違いから喧嘩になってしまいます。そうこうしているうちに、突如として何者かに連れ去られてしまうひろし。ひろしと野原家の運命はいかに?

映画『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン!失われたひろし』のネタバレ感想

スタッフは恒例のメンバーが集まる一方で、主要キャストには新たな声優も

スタッフは恒例のメンバーが集まる一方で、主要キャストには新たな声優も(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2019

すでに本シリーズの映画は本作で27作品目になり、「ドラえもん」や「コナン」と並んで毎年公開されることが当たり前となっているシリーズでもあります。そのため、内容についてはある程度「ベタ」になっているところもありますが、その一方で常に安定したクオリティを誇ることも特徴の一つです。

本作は、2013年に公開された『B級グルメサバイバル』以降隔年で監督を務めている橋本昌和の通算4作目であり、本シリーズの映画化を担当した監督の中で歴代最多の担当数に並びました。橋本監督は、2015年に公開された『サボテン大襲撃』でそれまで20年以上にわたって更新されていなかった本シリーズの歴代最多興行収入を記録するなど、名実ともに彼にとっての代表作となっています。

彼以外にも、脚本を務めるうえのきみこも通算4作目の脚本担当であり、これまで同じ製作元であるシンエイ動画で「ドラえもん」のテレビアニメ構成を担当していた水野宗徳も同じく連名で脚本にクレジットされています。このように、本作を支えるスタッフ陣は実力派ぞろいで構成されており、ヒットを宿命づけられた本シリーズらしい面々となっています。

 

また、この傾向は声の出演を務めるキャスト陣にも当てはまります。主要キャストに配置されているのはこれまで本シリーズを支え続けてきた実力派揃いで、映画オリジナルキャラクターでさえ大塚芳忠や銀河万丈、大塚明夫といった超豪華なベテラン勢が配役されています。

しかしながら、本作のキャストにはこれまでの作品と異なる大きな点が一つだけあります。それは、これまでアニメシリーズおよび劇場版26作で「しんのすけ」の声を演じていた矢島晶子が2018年6月29日の放送をもって降板し、後任として小林由美子がクレジットされていることです。降板の理由については、「しんのすけの声を維持することが難しくなったため」と本人から語られており、長年の特殊な発声が喉に大きな負担をかけていたといえるでしょう。

こうした声優の交代というのは、長寿アニメには避けられない事態でもあります。実際、本作においても数年前にひろし役を務めていた藤原啓治が病気のため降板し、後任の森川智之へと交代しています。

 

ただし、気になるのは「声への違和感」でしょう。しんのすけに関してはこれまで実に20年以上の期間で矢島晶子の演技を耳にしていたのであり、やはりファンとして不安感はぬぐえません。そのあたりの情報は事前に耳に入れて映画を視聴したのですが、結論から言えば「全く同一とはいかないが、映画を鑑賞しているうちに違和感を覚えなくなる」と感じました。

確かに一発目に聞いた際には「声が変わっているな」とは思うでしょう。ただ、それが視聴を続けていく中で片時も頭を離れないということや、映画の出来に対する不満につながるということはありませんでした。コアなファンではないので思い入れの強い方の意見までは分かりませんが、少なくともライトなファンであれば特に気にする必要はないでしょう。

シリアス寄りかと思いきや、基本はあくまでギャグ&パロディ

シリアス寄りかと思いきや、基本はあくまでギャグ&パロディ(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2019

本作は、宣伝段階の時点からかなり「シリアス」を匂わせる内容が多かったように記憶しています。キャッチコピーも「野原一家、愛の試練」と銘打たれるなど、ギャグを基調としたシリーズながらシリアス寄りの作品と考える材料はそろっていました。

とはいえ、いざ蓋を開けてみるとやはり基本は本シリーズらしく、ギャグとパロディにあふれた良い意味で「おバカ」な内容でした。オーストラリアの美女に目を奪われるひろしとしんのすけにはじまり、「足が臭い」という理由で秘宝へと繋がるカギに認定されてしまうひろし。中盤以降は後述するようなひろしとみさえの夫婦愛を描いたシーンも増えていくのですが、その中でも常にギャグを惜しまない作りになっています。

 

さらに、基本は子供向け映画ながらも、元ネタを考えるとどう解釈しても子供には伝わらなさそうなパロディネタも数多く採用されています。個人的に一番印象に残ったのは、映画中盤でひろしがダンスバトルに挑戦する際のパロディです。このシーンでは、かつて世界的に大流行したジョン・トラボルタ主演の傑作ダンス映画『サタデー・ナイト・フィーバー』を明らかに意識した雰囲気作りがなされており、この作品が流行した当時を知る子供の両親世代にはたまらない演出だったことでしょう。

上記映画が公開されたのは1977年のことであり、このあたりに関しては子どもだけではなく家族全体に映画を楽しんでもらおうという配慮が感じられます。こうしたバランス感覚に長けた作品であるというのが率直な感想で、ギャグシーンもまた後述するシリアスをより引き立てているようにも感じます。

【解説】ギャグの中にもひろしとみさえの夫婦愛がストレートに描かれ、泣ける作品でもある

【解説】ギャグの中にもひろしとみさえの夫婦愛がストレートに描かれ、泣ける作品でもある(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2019

本シリーズの映画といえば、ギャグの中に隠されたシリアスが非常に高く評価されてきた歴史があります。特に、『オトナ帝国の逆襲』などは従来のシリーズと大きく一線を画す「シリアス」を全面に押し出した作品であり、賛否両論はありながらも多数の支持者を獲得しています。

ここまで書いてきたように、本作はあくまでギャグ中心のため『オトナ帝国』のように開き直ってシリアスが強調されているわけではありません。それでも、従来の作品で評価され続けてきた「締めるところはきちんとシリアスで締める」という形は踏襲されています。

本作における根本的なテーマは「ひろしとみさえの夫婦関係」です。作中ではお互いに夫婦喧嘩を繰り返しつつも、深いところでは家族をとても大切に思っていることがたびたび描かれています。そして、本作ではその夫婦仲を「みさえ」の視点から描き出しているところに特質性があると考えられます。

これまでも、ひろしやしんのすけが家族のために必死になって行動する場面はしばしば描かれてきました。しかし、その一方でみさえについてはやや脇役的な立ち回りを強いられることも少なくありませんでした。そのため、本作のようにみさえが家族の大黒柱として活躍する映画が非常に新鮮に映ったのです。

ただ、本作は公開前からずっと「ひろしの映画である」ということをさかんに強調してきました。その宣伝からいざ映画を見てみると、ひろしは序盤で囚われてしまうため野原家を支える役回りがみさえのもとに回ってくるのです。視聴者はひろしがヒーロー的な活躍を見せるのだろう、と思って映画を見ると意表を突かれる形になります。このあたりは製作陣の宣伝が上手いと言わざるを得ません。

 

そして、みさえが中心となって苦境を乗り越えた末にひろしを取り戻すと、二人はお互いに新婚の気持ちを思い出してお互いの大切さを再確認します。このあたりの展開は言ってしまえば「けっこうベタ」なものなのですが、これまでの作品で夫婦の良いところも悪いところも描かれている分、その姿を思い返すと十分に感動することができます。

本シリーズは下品なシーンも少なくなく、「子供に見せたくない作品」として名前を挙げられることも少なくありません。しかしながら、本作のように子供と大人が一緒になって「家族」の素晴らしさを実感できる作品でもあるので、単身の方よりも家族連れの方がより感動できる内容に仕上がっています。

【解説】次回作はぶりぶりざえもんが待望の復活か

【解説】次回作はぶりぶりざえもんが待望の復活か(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2019

本シリーズの映画は毎年公開されるものとして定着してきましたが、本作より新たに次年度に公開される予定の内容を作品のラストで示唆するという手法が採用されました。これは「コナン」シリーズにおいては恒例となっている予告のスタイルであり、同シリーズの爆発的なヒットに追従する形で本作においても採用されたと考えるべきでしょう。

その予告においては、しんのすけと共にシリーズ屈指の人気キャラクター「ぶりぶりざえもん」の出演が示唆されました。これはファンにとって賛否両論のある出来事であり、次回作は良くも悪くも注目される作品となりそうです。

そもそも、なぜぶりぶりざえもんの出演がこれだけ注目されるかといえば、作中屈指の人気キャラクターながら、2000年の出演を最後に16年にわたってアニメと劇場版に登場していなかったためです。これはぶりぶりざえもんの声を担当していた声優の塩沢兼人が同年に急逝し、その後任を意図的にキャスティングしなかったためです。後任を選ばなかった理由について、歴代の監督たちは「ぶりぶりざえもんの声は塩沢さん以外に考えられない」と語っており、その言葉通り16年の期間は声なしのわずかな出演以外に台詞付きのシーンは一切描かれてきませんでした。

 

しかしながら、2016年には突如として「ぶりぶりざえもん覚醒」というキャッチコピーが発表され、5月6日の放送分において台詞付きの出演を果たしぶりぶりざえもんは再びアニメの世界に登場します。声は屈指の売れっ子声優である神谷浩史が担当し、インターネット上でも賛否両論が巻き起こりました。

この再登板については、「ぶりぶりざえもんの知名度が年々低下しており、封印にこだわる製作陣の方針へ疑問を持つようになった」と監督を務めたムトウユージが語っています。ただし、彼をメインに据えた劇場版はまだ公開されておらず、来年公開予定の映画はスクリーンにおける新ぶりぶりざえもんのお披露目となりそうです。

個人的には、ぶりぶりざえもんに限らず塩沢の声に比類ない魅力を感じているため、今でも多少の抵抗があることは事実です。ただ、製作陣の葛藤もインタビューなどから想像できますし、声優の交代は致し方なかったと納得はしています。

恐らく筆者と同じように完全には受け入れ切れていないファンも少なくないと思いますので、神谷が演じるぶりぶりざえもんのお披露目となる次回作の出来は、キャラクターの将来をも左右するような気がしています。来年の作品には要注目ですね。

【考察】大人から子供までを楽しませる「クレしん」は令和で飛躍が可能?

【考察】大人から子供までを楽しませる「クレしん」は令和で飛躍が可能?(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2019

本シリーズはすでに国民的アニメとして広く認知され、毎年劇場版が公開される人気作品となっています。しかし、一方で同じような立場にある「ドラえもん」や「コナン」シリーズと比較すると、興行収入という点ではやや水をあけられている印象があります。

実際、昨年度に公開された作品の総興行収入や前年比の推移を比較してみると、その傾向が顕著に表れています。「コナン」の昨年公開作である『ゼロの執行人』は興行収入約91億円を記録しており、2010年代に差し掛かってから常に右肩上がりの推移を示しています。「ドラえもん」の昨年公開作である『のび太の宝島』も興行収入約54億円で、近年は右肩上がりの推移を示しています。

しかし、本シリーズの昨年公開作『カンフーボーイズ』は、興行収入が約18億円にとどまっており、推移としても2015年からは低迷しています。上記の2作品と比較しても90年代においてはリードしていた時期もあり、近年になって大きな差が開いていることは否めません。

 

では、令和最初となる来年度公開作品からも、現在までと同様に低迷を続けてしまうのでしょうか。個人的には、本シリーズ特有の要素を突き詰められれば、令和に入ってふたたび飛躍することも可能であると考えています。

その特有の要素とは、「家族」という部分を強調できる強みです。本作でも見せたように、野原家という一家族を舞台にした作品であるだけに、作中でも作品外でも「家族」という存在に対して積極的に働きかけることができます。特に、近年のトレンドとして「子供向け映画であっても大人を巻き込んで楽しませる」という傾向があるように感じます。この部分に関しては、本シリーズがすでに実現し続けている要素に時代が追い付いてきた、という印象があります。

もちろん、くだらないとは思いつつもついつい笑ってしまうおバカなギャグが最大の見どころであるという歴史は否定できません。しかし、近年のトレンドに対してさらに寄せていくという形で、『オトナ帝国の逆襲』や『夕陽のカスカベボーイズ』などの作品に代表されるように、子どもよりも大人をターゲットにしていく路線こそが重要になってくるように思えます。

少子化が叫ばれる時代だからこそ、子ども向け映画の体裁を取りつつ大人を抱き込んでいく戦略こそが、令和の時代には必要とされるのではないでしょうか。

(Written by とーじん)

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