映画『名探偵コナン ゼロの執行人』は週刊少年サンデーで連載中の人気漫画を原作としたアニメーション映画です。
コナンの映画は毎年GWの時期に合わせて公開される子供に人気の映画ですが、今作は大人の女性から絶大な支持を得て社会現象を巻き起こしました。
今回は映画『名探偵コナン ゼロの執行人』の個人的な感想や、ネタバレ解説を書いていきます!
目次
映画「名探偵コナン ゼロの執行人」を観て学んだ事・感じた事
・今までサブキャラとして見ていた安室さんのかっこよさを知れた!
・協力者になりたくなった
・日本に生まれて良かったと思えた!
映画「名探偵コナン ゼロの執行人」の作品情報
公開日 | 2018年 |
監督 | 立川譲 |
脚本 | 櫻井武晴 |
出演者 | 江戸川コナン(高山みなみ) 安室透(古谷徹) 毛利蘭(山崎和佳奈) 毛利小五郎(小山力也) 灰原哀(林原めぐみ) |
映画「名探偵コナン ゼロの執行人」のあらすじ・内容

サミット会場を狙った大規模爆破事件が発生し、その容疑者として毛利小五郎が捕らえられてしまいました。
事件の裏には謎の多い人物・安室透の影が。ある時は喫茶店ポアロで働くウェイター安室透、またある時は黒ずくめの組織のメンバー・バーボン、そしてまたある時は全国の公安警察を操る警視庁の秘密組織・通称「ゼロ」に所属する降谷零。
トリプルフェイスを持つ男・安室とコナンは、小五郎の逮捕を巡って敵対します。
子供向けの作品にも関わらず女性を中心に人気が爆発し、「降谷」の印鑑が売り切れるなど社会現象を巻き起こしました。
興行収入は91.8億円となり、シリーズ最高興収を更新。公安として日本を守る安室の魅力が詰まった映画となっています。
映画「名探偵コナン ゼロの執行人」のネタバレ感想
国を守るために正義を貫く安室がかっこいい!

「名探偵コナン」は、黒ずくめの組織に薬を飲まされ体が小学生になってしまった高校生探偵・工藤新一が主人公の漫画です。
小学生になった時とっさに「江戸川コナン」と名乗り、幼馴染の毛利蘭の家に居候。蘭の父親の小五郎がへっぽこ探偵なので代わりに事件を解決したり、少年探偵団として活躍したりしています。
毎年春休みの時期になると映画を公開している「名探偵コナン」ですが、今作はあまり小学生向けではありませんでした。
と言うのも、今作の主人公はコナンというより普段サブキャラとして登場する安室透。小五郎の探偵事務所の下の階にある喫茶店ポアロでアルバイトをしていて、小五郎に弟子入りしています。
裏では黒ずくめの組織のメンバー・バーボンとして暗躍し、本当の正体は公安警察ゼロ所属の降谷零です。今作ではこの降谷零としての顔を見せてくれるのですが、警察内部の説明などが多いため、子供だと訳が分からなくなってしまうんです。
実際、私が観にいった時、近くに座っていた小学生男子グループは途中で飽きていました。
それでもシリーズ最高興収を更新した理由は「安室透の存在」と女性ファンでした。
安室は小五郎を事件に巻き込んだためコナンから「敵」として認識され、仲間であるはずの部下である風見裕也からも過去の行いから「人殺し」として見られながらも、日本を守るために嫌われ役を買って行動します。そんな彼は過去に警察学校時代の仲間を殺されており、心から安らげる場所がない状態。
国の重要機密を若くして抱え込んでいるため、きっと悩みがあっても誰にも愚痴をこぼせないで、常に孤独なんです。めちゃくちゃかっこよくないですか?
小五郎が警察に連れて行かれてしまい、動揺するコナンに問い詰められた時も、「僕には命を懸けて守らなければならないものがある」と言い放ちます。そんなセリフが出てきてしまう彼は29歳です。
一般的な29歳と言えば、そろそろ結婚していて仕事終わりにはビールを飲み、休日にはどこかへ遊びに行っている。そんな年齢じゃないでしょうか。
しかし、安室透という男は違うんです。自分より年上の部下を多く従え、憎まれ役を買って出て、いくつもの顔を持ち日本を守るために戦っています。
きっと常にプレッシャーに押しつぶされそうになりながらも、「日本を守る」という使命を抱え、必要ならば敵組織にスパイとして潜入。命の危険を顧みずに正義を貫くため戦っています。
しかも、小五郎を事件に巻き込んだのはコナンの力を借りるため。蘭のことになるとコナンはいつも必死ですからね。そこまで先を見越して行動しているなんて、とても頭が良いと思いました。
普段、人に弱さを見せない彼ですが、公衆電話から朝焼けを眺めるシーンがとても人間臭くて良かったです。
そして、「安室さんって彼女いるの?」というコナンの問いに対し、言った言葉が「僕の恋人はこの国さ」。劇場内で声を出してもOKな応援上映では「きゃーーー!!!」という叫び声が響き渡っていました。
このセリフのあまりのかっこよさに、「国になった」という言葉がネット上を飛び交ったほど。そのほとんどが「名探偵コナン」シリーズに詳しくなかったけど、今作で安室のファンになったという人達でした。
私も応援上映、4DXを含め5回ほど観にいきましたが、初回から国になった一人です。
安室透の経済効果がすごい

「安室の女」「国になった」「執行済み」といったワードが生み出された今作ですが、主に女性ファンにより巻き起こされた社会現象がニュースなどにも取り上げられていました。
一番驚いたのが、印鑑。劇中に印鑑の使用シーンがないにも関わらず、「降谷」の印鑑が完売する事態にもなりました。
町の印鑑屋さんが首を傾げた様ですが、もともと「降谷」という名前が少ないためかどこの印鑑屋さんでも品切れ状態になり、映画の影響を受け専用注文フォームを特別に開設したサイトまであったほどです。
この印鑑、購入した人達は自分の仕事が終わったら自分で書類に印鑑を押して、降谷零の協力者になった気分で楽しんでいました。
また、安室透を主人公にしたスピンオフ漫画が完売したり、彼の愛車であるRX-7のトミカが品薄状態になったり。付けているイヤホンに似ていると、bluetoothのイヤホンがバカ売れしたりと、傍から見たらおかしな状況を生み出しました。なかには、彼の好物であるセロリを食べ始めるなんていう人も!
今作の興行収入を100億円にしようと、「安室透を100億の男にする」という会がSNS上で立ち上げられ、何回も劇場に通いつめる人が続出。日本国内では90億を突破していますが、中国での放映を合わせると100億を突破したそう。
映画館の座席が揺れる4DX上映は、安室の助手席に乗っている気分を味わえると話題になりました。
地味キャラ・風見裕也の人気もすごい
コナン好きの小学生からすると、「安室さんに叱られる警察のおじさん」的存在の公安警察官・風見裕也。安室と対して年が違わないのに、コナンにすら「おじさん」呼ばわりされていました。
冒頭で、コナンのスマートフォンにこっそり盗聴アプリをインストール。小五郎を事件の犯人に仕立て上げ安室の部下として活躍するも、物語中盤コナンに盗聴されていることに気づかず、「これでよく公安が務まるな」と安室に叱られていました。
安室による取り調べの後に自殺した羽場二三一が実は生きているとも知らず、上司を「人殺し」呼ばわりし、自身の協力者であり羽場の元恋人であった橘境子弁護士には物語終盤「思い上がるな!」と罵声を浴びせられました。
そんな残念な彼に「裕也がんばれ!」という女性ファンが続出。
これまでは見た目も地味なためか空気のような存在でしたが、今作では準主役ポジションだったためファン数が増加。「年下の上司に叱られる、ちょっと抜けてる警察官」として人気が高まりました。
「相棒」シリーズを手掛けた脚本家によるストーリーも面白い

ここまで安室や風見といった男性キャラの紹介ばかりしてきましたが、ストーリーも映画として面白いものでした。
脚本家が「相棒」シリーズなどを手掛けている櫻井武晴氏。警察内部の事情がとても詳しく書かれている内容でした。
サミット会場が爆破されたのは事件であるのに、“事故”として片付けられそうになったため、誰かを犯人として仕立て上げなければなりませんでした。そこで、実際には事件とは無関係の小五郎が犯人にされてしまったのですが、その時間稼ぎをしている間に真の犯人を見つけようと、安室達は奮闘します。
そんな公安側の事情もつゆ知らず、コナンは目暮警部や高木刑事、妃弁護士らと小五郎の無実を証明しようとするのですが、公安部のほうが力が強いためなかなか太刀打ちできません。
法律や警察内部の上下関係など馴染みのない内容が描かれており、話についていくのに苦労しました。
中でもびっくりしたのが「協力者」という存在。公安警察が捜査を進めるため、「協力者」として一般人を仲間にできるんです。そんなことが出来るのかと驚きました。
風見の協力者として橘境子弁護士が小五郎の元妻である妃弁護士の元に送られたり、検事・日下部と羽場が協力者関係を築いていたり、安室がコナンの協力を得るために小五郎を事件に巻き込んでいたり。
“安室の女”になった女性ファンの多くが、「降谷さんの協力者になりたい」と言っていました。
そして、劇中に出てくる「IoTテロ」も初めて耳にしたワードです。小五郎の無実を晴らすため、真犯人が都内のあらゆる電化製品を無差別に発火・爆破するのです。
警視庁に落ちようとする無人探査機「はくちょう」など、様々な事件が複雑に絡み合い、1回観ただけでは完全には理解できないほど濃い内容で大人向けでした。
橘境子弁護士の悲恋がせつない
風見裕也の協力者であった橘境子弁護士。妃弁護士が小五郎の身内のため裁判に参加すると不利になるということで、代わりに橘弁護士が小五郎の弁護を務めました。
声優が上戸彩というだけあり、かわいい中に芯の強さなども感じられてとても良いキャラクターでした。風見の協力者になったのも、公安のせいで自殺したと思われている元恋人・羽場二三一の復讐のため。
小五郎を弁護している側にも関わらず、小五郎を勝たせたくないような話し方をします。公安の「小五郎を無罪にするように」という指示に対して、反対の行動をとることにより復讐になるのではと考えていたからです。
物語終盤、羽場が実は生きているとわかります。日下部の協力者であった羽場が自殺したと見せかけることにより、日下部との協力関係を断ち切ろうとしたのです。
「協力者を解放する。これが羽場の連絡先だ」という風見の言葉に、「思い上がるな!」とタンカを切ります。公安のせいで自分が傷つけられ、人生を狂わされたと上から目線の態度で憐れまれたくなかったからです。
「協力者になったのも私の判断、裏切ったのも私の判断、彼を愛したのも私の判断。私の人生すべてを、あんた達公安が操っていたなんて思わないで!」というセリフがとても印象に残りました。
結局、風見が渡そうとした羽場の居場所を受け取ることなく橘弁護士はその場を去ったのです。そして、恨まれてもなお彼女を守ろうとする風見達。公安の悲しさとかっこよさが同時に見ることのできるシーンでした。
コナンおなじみのアクションシーンも健在

劇場版「名探偵コナン」といえば、超人的なアクションシーン。科学や法律を駆使して論理的に推理をしているのに、アクションシーンになると少年漫画ならではのありえないアクションを披露してくれます。
特に、車と並行してスケボーで駆け抜けるシーンと、「今度は安室さんが僕の協力者になって」と言うコナンが安室の運転するRX-7に乗るシーンは最高でした!
過去作品である「純黒の悪夢」での、安室のライバル赤井秀一とのカーチェイスも最高でしたが、今作は桁違いの人間やめてるレベルでした。車のフロントガラスを素手で割ってしまうなんて、もうゴリラですよね。
安室の乗っている車が吹っ飛んだのに、生きているのもさすがでした。コナンも吹っ飛んでくる車を避けるなんて、さすが普通の小学生ではなかったです。
高速道路を猛スピードで駆け抜け、モノレールの上を走り、最後はビルを突き破って空中に飛び出していましたが、劇場版ならではの迫力あるシーンで「コナン映画はこうでなくっちゃな」と感じた人も多いはず。
車が壁を走ったりコナンが上空で何かを蹴ったりするのは劇場版ではお馴染みのシーンですが、今作では安室の名セリフもあってよりシビれましたね!
ストーリーの複雑さとアクションシーンがちょうど良いバランスで描かれている映画でした。
主題歌「零-ZERO-」が安室という男を表しすぎている

「真実はいつもひとつ でも正義はそう涙の数だけ…」
という歌い出しで始まる福山雅治による主題歌「零-ZERO-」。コナンの定番セリフである「真実はいつもひとつ」と、今作で悪役になってでも正義を貫こうとする安室の姿がうまく表現されている歌詞となっています。
物語ラストで全ての事件を解決したコナンと、最後まで憎まれ役だった安室がそれぞれ反対方向に帰っていくシーンの直後流れるのですが、「かっこいい!」の一言につきます。
この主題歌が流れる少し前、この2人は宇宙から落下してきた「はくちょう」という無人探査機を空中で軌道修正するという超人的な活躍を見せてくれました。向かい側のビルに飛び移る際、安室はコナンを守りながら銃弾で窓ガラスを割るのですが、飛び散った破片で腕に傷を負います。
ここのシーンでわかるのは、安室にとって「恐ろしい男」であり名探偵でもあるコナンですら、安室からしたら「守るべき国民の一人」なんです。どこまでもかっこいい男です。
守られていたコナンはほぼ無傷。地面に安室の血が垂れているのがなんとも痛々しいのですが、血だらけの安室に向けて、「どうして小五郎のおじさんを巻き込んだの」と容赦無く問い詰めます。
傷だらけになって守った相手から非難され、それに対して「彼を事件に巻き込めば、君の本気の力を借りられるだろ」と真摯に答える安室のかっこよさったら……。
たしかに無関係の人間を巻き込んだことはいけませんが、それも国を守るため。安室は正義を貫くために、人として間違ったことをしました。
その部分が「完全なる正しさなどゼロなんだよ」という歌詞に色濃く反映されているのです。「正義のヒーロー」を描いた映画はたくさんありますが、クールでもあり人間臭くもある安室透は興行収入の実績もあり、この先何年かは伝説として映画ファンの間で語り継がれるのではないでしょうか。
エンドロールの後には劇場版「名探偵コナン」定番の後日譚も流れるため、未見の人はぜひ最後まで観てほしいです。