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映画『ミュウツーの逆襲 Evolution』ネタバレ感想・考察!かつての世界観が3DCGで蘇る!

映画『ミュウツーの逆襲 Evolution』のあらすじ・内容

映画『ミュウツーの逆襲 Evolution』は、いまや日本はおろか世界中に数多くのファンを抱える作品「ポケットモンスター」シリーズの劇場版にあたる作品です。

ただし、最新の作品ながら新作ではなく、20年以上も昔の映画ながらポケモン映画の中でもトップクラスに人気を誇る名作「ミュウツーの逆襲」を3DCGによってリメイクしたものになります。

この作品は一般に「子供向け」とされるポケモンの作風から見れば異質の存在であり、重厚な大人向けのストーリーが人気に火をつける要因となりました。

筆者も非常に好きな映画ということで公開前から期待していたのですが、今回はそんな『ミュウツーの逆襲 Evolution』の個人的な感想や考察を書いていきます!なお、ネタバレには注意してください。

目次

映画『ミュウツーの逆襲 Evolution』を観て学んだこと・感じたこと

・やはりミュウツーの逆襲は素晴らしい映画だと再確認
・3DCGも違和感なくまとめられていた
・蘇ったことに意義はあると思うが、「Evolution」かというと…

映画『ミュウツーの逆襲 Evolution』の基本情報

公開日2019年7月12日
監督湯山邦彦
榊原幹典
脚本首藤剛志
出演者サトシ(松本梨香)
ピカチュウ(大江育江)
ムサシ(林原めぐみ)
コジロウ(三木眞一郎)
ミュウツー(市村正親)
ミュウ(山寺宏一)

映画『ミュウツーの逆襲 Evolution』のあらすじ・内容

映画『ミュウツーの逆襲 Evolution』のあらすじ・内容(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku
(C)Pokemon (C)2019 ピカチュウプロジェクト

「清らかな心と、会いたいと強く願う気持ち」を合わせ持つ人間の前にのみ姿を現すとされた伝説のポケモン「ミュウ」。世界中のポケモン研究者がその正体を追い求めて競争を続けましたが、ある研究者がついにミュウの化石を発見することに成功します。

その化石をもとに、禁断の手法によってミュウのクローンポケモンが誕生しました。

ポケモンは「ミュウツー」と名付けられ、最強のポケモンを生み出すことに執着した研究者の手によって次々と実験が繰り広げられていきました。

過酷な境遇に置かれたミュウツー。彼は、しだいに自身を虐げる人間たちへの憎しみを募らせていくのでした。

そして、ついにミュウツーの手による「復讐」の火ぶたが切って落とされるのです。

映画『ミュウツーの逆襲 Evolution』のネタバレ感想

良くも悪くも脚本はほとんど旧作と変わりがない

良くも悪くも脚本はほとんど旧作と変わりがない(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku
(C)Pokemon (C)2019 ピカチュウプロジェクト

この作品が公開されるという情報が発表された時、ファンの間には賛否両論が多く存在したことを記憶しています。その際、やはり多く寄せられていた意見として「完成されているこの作品を壊してしまうことに繋がりはしないか」というものが目立っていました。実際、『ミュウツーの逆襲』は一本の映画として完成されており、何かを付け足す余地がないと感じていたのは筆者も同じです。

また、スタッフが発表された際もその顔ぶれから大きな憶測を呼ぶことになりました。オリジナル版と今回の面々を比べてみると、監督や脚本など主要メンバーは全く変わりがありません。これは一見すると最高の配置に見えなくもないですが、よく考えてみるとひどく違和感のあるものに見えてくるでしょう。

その理由は、本作で脚本にクレジットされている首藤剛志氏にあります。彼は70年代の後半から脚本家としてアニメの世界へと飛び込み、オリジナルの『ミュウツーの逆襲』だけでなくさまざまな傑作を世に送り出した人物として知られています。しかし、2000年代に入ると体調を悪化させていき、2010年にくも膜下出血を発症。61歳にて帰らぬ人となりました。

ある程度事情に詳しい方が見れば、本作は「故人が単独で脚本としてクレジットされている」という極めて異例の状態にあるということがわかるのです。ただ、誤解のないように言っておくと故人を脚本にクレジットすること自体はそれほど珍しくありません。特に本作のようなリメイク作品の場合、オリジナルの脚本家に敬意を表して故人であってもクレジットが入れられることに違和感は覚えません。

 

しかし、本作とそれらが決定的に異なるのは「故人が『単独』でクレジットされている」という点に他なりません。上記のようなパターンの場合、表現は悪いかもしれませんが故人はあくまで「名誉」としてクレジットがなされるわけで、実務として脚本を担当した脚本家も連名でクレジットされるものです。

以上のことから、本作の脚本に関しては議論の的になっていました。

・脚本家が不在ということはオリジナルと同一になるのでは
・他の脚本家を出さないということは故人を尊重しているだけなのでは

など議論が盛り上がりましたが、蓋を開けてみると大方の予想通り「脚本面はオリジナルとほぼ完全に同一」ということがわかってきました。今さらこの作品のストーリーを解説するのもどうかとは思うのですが、人間に復讐心を抱くミュウツーと争ってしまうオリジナルのポケモンたち、さらには「諸悪の根源」ともいえる人間たちが織り成すドラマは傑作としての評価を不動のものにしています。

したがって、脚本面の評価に関しては旧作のそれを参考にすればよいかと思われます。一部キャラの出番がカットされているといった些細な変更点はありますが、本筋に関しては全くと言っていいほど同一の脚本です。

ただし、いくらもともとの脚本が素晴らしく、さらには担当者が鬼籍に入ってしまっているとはいえ、全く脚本が変わっていないという点は当然ながら欠点でもあります。特に、既存のファンからすれば「別に映画を見ないでオリジナルを見ればいい」とも言えてしまうわけで、正直映画館に行って2000円近くのお金を払ってみる価値があるかと言われると微妙なところはあります。

3DCGそのものに関しては違和感なく見ることができる

3DCGそのものに関しては違和感なく見ることができる(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku
(C)Pokemon (C)2019 ピカチュウプロジェクト

前の段で「既存のファンに価値ある映画に仕上がっているかは微妙」と指摘しました。しかし、脚本面はともかくとして大きな変更点がないとは言いません。それは、オリジナル版がお馴染みの2Dアニメで描かれていたのに対し、本作は3Dアニメに描写が変更されているという点です。

同じく今年公開された「名探偵ピカチュウ」でも披露されていた通り、昨今はポケモンも3Dアニメを積極的に取り入れています。確かに、ポケモンのデザインと立体感を表現できる3Dアニメの相性はよさそうにも思え、自然な時代の流れなのではないかと思います。

 

ただ、「名探偵ピカチュウ」においては従来想像されていたようなデフォルメ調の3Dモデルではなく、リアル調の3Dモデルが採用されていたために論争の的にもなったことは記憶に新しいでしょう。私的な意見としても、確かに「毛むくじゃらのピカチュウ」は我々が抱いているイメージと相違があるのは否めないと思います。

上記の探偵ピカチュウについてはSNS上などでも多く反応されたため、「本作の3Dも同じような感じなのでは」とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、結論から言えばそれは誤りで、本作に関しては「我々がイメージしているような」ピカチュウのデザインがなされています。

また、3DCGに関しては余すところなく予算が投下されているといった印象を受け、安物3Dアニメにありがちなチープ感や動作の不自然さは見受けられません。そのため、「既存のファンが本作に満足できるか否か」は、ほぼ3DCGに対する満足感と一致していると断言してしまっても差し支えないように感じます。

【評価】今の子どもたちにもこの作品を知らしめるという意義はあった

【評価】今の子どもたちにもこの作品を知らしめるという意義はあった(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku
(C)Pokemon (C)2019 ピカチュウプロジェクト

本作がオリジナルと何の遜色もないことを指して「果たして本作を2019年に生み出す必要があったのか」という点に言及したレビューをいくつも見かけました。確かに、ファン目線であれば言いたいことはよくわかります。見方によっては「手抜き」以外の何でもないわけですし、新作を楽しみにしていたファンからすれば一言モノ申したくなるのは仕方のないことです。

ただし、個人的な意見を述べるのであれば「この映画には何の価値もない」とは思っていません。その理由として挙げられるのは「現代の子どもたちに『ミュウツーの逆襲』という素晴らしい作品を語り継ぐことができる」ためです。

そもそも、本作を初めてみたファンの方であれば、大部分が秀逸なストーリーに舌を巻くことでしょう。実際、筆者を含めたかつての「一見さん」たちもそう感じていたわけで、それゆえに今でもこの作品は語り継がれているのです。

1998年に公開された映画ということを考えると、我々の視点はともかくとして間違いなく「旧作映画」という分類になるでしょう。すると、年々この作品を楽しむ新規のファンが減っていくことは請け合いで、残念ですがだんだんと忘れ去られていくことは必然と言えるでしょう。

 

そう考えると、公開から20年以上が経過したこのタイミングで「文字通りのリメイク」を世に送り出したことは一定の意義があると考えます。ファンの方には申し訳ないのですが、昨今のアニメと比べるとどうしても「古さ」を感じてしまうのは事実ですし、オリジナル版を自宅で鑑賞するにしても画に対する抵抗を覚える子供がいたとしても不思議はありません。

したがって、20年が経過して世代が一つ変わるこのタイミングで新たに映像面をリメイクした作品が世に送り出されたことには一定の意義があると感じています。確かに我々としては多少の不満を抱きたくなる方針であることは重々理解できますが、作品のファンとしては「今後も語り継がれていくのであれば…」と納得することもできるでしょう。

ただし、次の段で説明する点については明確な不満があるということも付しておかなければなりません。それは、本作の「タイトル」部分に関する明確な不満です。

【評価】「Evolution」という仰々しいタイトルは本当に必要だったか

【評価】「Evolution」という仰々しいタイトルは本当に必要だったか(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku
(C)Pokemon (C)2019 ピカチュウプロジェクト

前の段でも少し触れましたが、本作に対する明確な不満は「タイトル」に関する部分といえるでしょう。ただし、不満といっても「命名のセンスが気に入らない」というようなものではなく、「映画の方向性を誤った形で伝えようとしている」というのがモノ申したいポイントとなります。

個人的に意見を言いたいのは、タイトル後半部の“Evolution”という部分です。この“Evolution”という表現はカタカナで表記されることも多く、日本でもなじみの深い語です。意味を表記しておくと「進化」「発展」「展開」などの日本語が当てられるでしょう。

もちろん、この単語そのものに不満があるわけではありません。多少ありきたりの感は否めないものの、「進化」というのは本作においても重要になってくるトピックの一つであり、作品の内容を表していると言えなくもないです。

 

では、一体どのあたりに問題意識を感じているのか。それは、我々が映画のタイトルに“Evolution”と名付けられている際に感じるであろう印象を悪用しているようにしか思えなかったという点です。

一般に、我々は“Evolution”と名付けられれば「進化」という日本語が連想されるわけで、それが映画のタイトルに付けば当然ながら「進化」を描いた映画だと伝わるでしょう。特に、本作が『ミュウツーの逆襲』をテーマにした新作であることは分かっているわけですから、我々は「ミュウツーの逆襲が進化したような映画」、言い換えれば「ミュウツーの逆襲ver2」のようなものを連想することになります。

しかし、いざ蓋を開けてみれば「映像面だけが書き換えられた『ミュウツーの逆襲』」が本作の実態であり、残念ながら作品の内容がいくらかタイトル負けしている感は否めません。加えて、「進化」をうたったことにより、期待に反した内容に失望した既存のファンも多かった事でしょう。

 

これは私案ですが、本作の内容を踏まえれば「あくまで一リメイクである」ということを分かりやすく提示したタイトルをつけることが求められるのではないかと思います。例えば「remake」や「Re:」などのように、「再現」を印象付けた方が映画の内容に近いタイトルになるように感じます。

もっとも、この意見に対する反論として「『進化』をうたった方がファンへの求心力が上がる」という主張が寄せられることは理解しています。しかし、さらに反論するならば、そもそも映画の内容にふさわしくないタイトルを無理矢理つけてまで本作を世に送り出さなければならないとは感じませんし、そうした小手先の悪知恵で集客を増やそうとしたことは少し残念です。

【考察】この作品の興行収入が、今後の「リメイク映画」の方向性を決めるか

【考察】この作品の興行収入が、今後の「リメイク映画」の方向性を決めるか(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku
(C)Pokemon (C)2019 ピカチュウプロジェクト

さて、ここまで本作に対する様々な評価を述べてきました。もっとも、映画の内容そのものは全く過去のものと変わらないので、その部分に関しては既存の記事を読んでしまえば十分だと感じています。

ただ、本作の評価でやはり注目するべきは「まんまの形でリメイクするという斬新な手法が採用されている」という点でしょう。これは一見すると極めてオーソドックスな形に見えなくもないですが、実は意外と例を挙げるのが難しいリメイク方法なのです。

そもそも、昨今流行中のリメイクブームを見てみても

・オリジナルストーリーでリメイクする
・続編という位置づけでリメイクする
・スタッフを入れ替えてリメイクする

というような製作スタイルが取られるのが通常であり、「完全オリジナルスタッフで映像以外には手を付けない」というのはけっこう珍しい部類に入ります。たいていの場合はシナリオ面に何かしらの手を入れられることが多く、時にはその点をめぐって賛否両論が巻き上がることもあるでしょう。

ただし、「天下のポケモン」がこの製作スタイルを取り入れたということが、リメイク産業の新たな息吹となるかもしれません。仮に本作が興行成績の面で成功を収めれば「過去の名作であればシナリオに手を入れなくても良い結果を出せる」ということが証明されるからです。当然ながらシナリオを練り直すのは簡単ではありませんし、ファンの反応も気にしなくてよくなるので、制作側からすれば「一石二鳥」でもあります。

 

もっとも、この製作スタイルは良いことばかりでもないということを指摘しておかなければなりません。まず、製作陣の集合が実現できるかという点が求められるでしょう。本作は脚本家が故人であっても両監督が存命であったため旧作の路線をそのまま踏襲できましたが、逆に監督の側が故人になってしまうと全体の雰囲気に大きな影響が出るのは間違いありません。さらに、例えばキャストが病気などによって声優業を休業していた場合、古オリジナルのリメイクというのは難しくなるでしょう。

加えて、業界全体のことを考えるならば「シナリオライター」が育たなくなることも懸念されます。脚本家は単純に過去のシナリオを焼き増しすればいいわけですから、能力が発揮される機会を奪われることにもなるでしょう。さらに、時代が経って「当時は許されたが現代は許されない表現」が出てきてしまった場合はどうするのかなど、課題も山積しています。

いずれにせよ、本作が成績的にどのような数値を残るのが注目されますね。

(Written by とーじん)

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