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映画『ドラえもん のび太の宝島』ネタバレ感想・解説・考察!これぞ映画ドラえもん!と言いたくなるSF冒険活劇

映画『ドラえもん のび太の宝島』は、宝島を目指して冒険の旅に出発したのび太とドラえもんたちが海賊との衝突を経て、いつしか地球を賭けた壮大な戦いに臨むというSF冒険活劇です。

海洋冒険物語がだんだん想像もつかない内容へ展開していく流れは、ひみつ道具や魅力的なキャラクターを伴って、第一級のエンターテイメント作品へと昇華していきます。見終えたあとは、これこそドラえもんの映画だ!と膝を叩きたくなることでしょう。

今回はそんな映画『ドラえもん のび太の宝島』についての詳細な感想や解説、そして一部考察を紹介します。ネタバレを多く含んでいるのでご注意ください。

目次

映画『ドラえもん のび太の宝島』を観て学んだこと・感じたこと

・『宝島』をモチーフにしたSF冒険活劇
・大泉洋の演技、星野源の主題歌は必聴
・リメイクではない完全新作として間違いなく楽しめるドラえもん作品

映画『ドラえもん のび太の宝島』の作品情報

公開日2018年3月3日
監督今井一暁
脚本川村元気
出演者ドラえもん(水田わさび)
のび太(大原めぐみ)
しずか(かかずゆみ)
ジャイアン(木村昴)
スネ夫(関智一)
フロック(山下大輝)

映画『ドラえもん のび太の宝島』のあらすじ・内容

映画『ドラえもん のび太の宝島』のあらすじ・内容

宝島を目指して冒険がしたい。のび太の夢はジャイアンやスネ夫に笑われるだけではなく、しずかにもあきれられる始末でした。

のび太はドラえもんからひみつ道具「宝探し地図」を使って本当に宝島が存在することを示すと、「組み立て帆船」を使って大海原への航海に出発します。しずか、ジャイアン、スネ夫も仲間に加わって、宝島を目指すドラえもんたち。宝島を目前にして、彼らは見たこともない小型艇を乗りまわす集団と遭遇するのでした。

自分たちとは異なる技術が用いられている船に乗った彼らは海賊なのでしょうか、それとも――。

のび太たちが目指していた宝島の正体を知ったとき、物語は別の顔をみせるのでした。

映画『ドラえもん のび太の宝島』のネタバレ感想

【解説】『宝島』がベースの海洋冒険かと思いきや、ラピュタを想起させるSF展開

【解説】『宝島』がベースの海洋冒険かと思いきや、ラピュタを想起させるSF展開(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2018

『宝島』とは、作家ロバート・ルイス・スティーヴンソンによって書かれた海洋冒険小説のこと。映画『ドラえもん のび太の宝島』でも、この『宝島』が一応のモチーフとなっています。しかし、どちらかといえば本作は海洋冒険というよりも、SF的な要素がふんだんに盛り込まれた作品だといえるでしょう。

物語は、ひみつ道具「宝探し地図」を使って宝島の存在を知ったのび太とドラえもんが、「組み立て帆船」を使って航海に出発するところから始まります。大海原を駆けて宝探しの物語が繰り広げられると思いきや、宝島は意外にも早くに発見され、そこから物語は少しずつ別の顔を見せはじめることに。島のほうからやってくる海賊らしき集団が乗っている小型艇は未来の技術で作られており、見る人にさっそく違和感を与えることでしょう。

しかも、島だと思っていたものは、実は街を内包した巨大な海賊船だったのです。このようなSF的な展開は映画ドラえもんの魅力のひとつ。大航海時代のようなロマンあふれる海洋冒険のシーンから違和感なく別の時代のものを見せていく流れは、流石のひとことです。

 

宝島というタイトルや、「宝探し地図」を使ったプロローグの流れから、本作は1998年に公開された『ドラえもん のび太の南海大冒険』をどことなく想起させます。しかし、本作はリメイクではなく、内容のまったく異なる完全新作です。むしろ、本作のいくつかのシーンからは、ジブリ映画の『天空の城ラピュタ』を思い浮かべることのほうが多いかもしれません。

たとえば、小型艇で海賊がしずかを連れ去っていくシーンや、空飛ぶ小型艇を利用してドラえもんたちが海賊船へ乗り込んでいくシーンは、空中海賊のドーラ一家による襲撃を思い出させます。また、巨大な街を抱えた海賊船がやがて宇宙船として空へ飛び立とうとする様子や、街を小さな海賊ロボットが駆け回る場面から、あのラピュタの島を想像するのは容易でしょう。

もちろん、ラピュタとは異なり『ドラえもん のび太の宝島』はドラえもん作品にしばしば登場する時間跳躍の設定も交えて、最終的にSF調の展開を繰り広げます。ドラえもんにおけるSFが面白いのは、設定がわかりやすいというだけではなく、SF的な風呂敷を広げるまでの展開が面白い部分にあるといえるでしょう。それは本作でも例外ではありません。結果として『宝島』を中心とした物語とはいい難い部分があるものの、多くの人が知っている『宝島』をモチーフとしたことは、固い内容になりがちなSFを面白く見せる効果をもたらしているのです。

【解説】ミニドラも活躍!ひみつ道具の見せ方が面白い

【解説】ミニドラも活躍!ひみつ道具の見せ方が面白い(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2018

ドラえもんといえばひみつ道具といえるくらいに、ひみつ道具の存在はとても重要です。映画『ドラえもん のび太の宝島』でも、実にさまざまなひみつ道具が登場します。物語の中心になるのは「宝探し地図」と「組み立て帆船」、そして「なりきりキャプテンハット」です。

「宝探し地図」は『ドラえもん のび太の南海大冒険』でも使用された道具であり、地図上に指し示した点が寸分の狂いもなく宝の場所を示すと、その存在を明らかにしてくれるものです。本作ではのび太が適当に地図上を指し示したところ、見事に宝のありかを発見することに。もちろん、のび太のいる時代には宝島という時代錯誤なものは存在しないはずなのですが、海底火山の活動によって新しい島が誕生したという設定でもって、うまく説明をつけています。

一方、「組み立て帆船」は自分で組み立てることのできる帆船であり、作成後は「ビッグライト」で大きくすることによって、本当の帆船として使用できます。「どこでもドア」や「タケコプター」で行けばいいというドラえもんの問いに対して、むしろ冒険感がないと嫌だというのび太の気持ちに応える道具です。

また、「なりきりキャプテンハット」は被ると船上にいる人全員に効果をもたらし、周囲を海洋風に見せるという機能を持っています。さらに船上ではハットを被った人の命令には逆らえないという効果も。終盤では思いもよらない使い方で活躍することになります。こうした宝島ならではのひみつ道具が最後まで活用されることによって、SF的な物語のなかに海洋冒険的な要素をギリギリのラインで残すことに成功しています。

 

そして、本作ではあの「ミニドラ」も大活躍します。「ミニドラ」が映画に登場するのは、2000年に公開された映画『ドラえもん のび太の太陽王伝説』以来、なんと18年ぶり。巨大な帆船の船員として多くのミニドラが乗り込み、聞き取り不可能な口調とともにがんばっている様子は、何か応援したくなる気持ちにさせられます。

このほかにもたくさんのひみつ道具が出てきますが、実は本作ではどのような効果があるのかがほとんど説明されません。重力ペンキやひらりマント、時限バカ爆弾に名刀電光丸など、コアなドラえもんのファンならば登場するすべてのひみつ道具を知っていることでしょう。

しかし、それぞれの道具に対する効果はアニメーションでわかりやすく表現されており、説明がなくてもどんな道具なのかがひと目でわかるように工夫されています。映画ドラえもんシリーズは本作で38作目を数え、子どもはもちろんのこと、すべての作品を欠かさず見ている大人もそうそういないでしょう。誰でもひみつ道具の魅力を楽しめるのが、本作の魅力のひとつとなっています。

 

また、万能だと思われていたひみつ道具でも使えない状況がある、という事実が判明するのも本作の面白い点だといえるでしょう。たとえば、22世紀の技術で作られた「通り抜けフープ」が未知の素材を通り抜けることができないという設定は、これまでには見られませんでした。

さらに、高速で移動する海賊船に対して「どこでもドア」が使用できないという設定も、本作で初めて披露されます。こうした新たな設定は、誰もが思いつきそうなひみつ道具に関するネタを封じる効果があり、展開に面白みや説得力を持たせています。

【解説】男気あふれるのはジャイアンだけじゃない!感動シーンのオンパレード

【解説】男気あふれるのはジャイアンだけじゃない!感動シーンのオンパレード(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2018

普段は粗暴でガキ大将的な行動が目立つジャイアン。映画になると彼が突然に男気あふれたヤツになるというのは有名です。こうしたジャイアンの活躍を期待している人に対しても、本作は応えてくれます。のび太を守り、スネ夫とともに暴れ回る彼の姿は必見です。

そして、映画『ドラえもん のび太の宝島』でもっとも見る人を感動させるのが、ドラえもんとのび太の行動だといえるでしょう。物語後半におけるドラえもんたちの目的は、海賊船の船長であるシルバーが地球から吸い取ったエネルギーを海賊船に送り込もうとするのを止めること。ドラえもんたちは航海中に出会った海賊船の乗組員フロックとともに、シルバーが作った海賊船のプログラムを止めようとします。

しかし、プログラムに関するシルバーとフロックの技量には大きな差があり、これを止めることができません。一刻一秒を争う事態に、ドラえもんはなんとスーパー手袋だけを使ってエネルギーを物理的に止めようとするのです。けれども、地球そのものから引き出した強大なエネルギーの前には、流石のスーパー手袋も太刀打ちできません。ドラえもんはそのまま、エネルギーの中で機能を停止してしまいます。

 

一方、本作におけるのび太の行動は、普段ヘタレなキャラクターが活躍すると実にすばらしい展開になるということを、非常にわかりやすく表現しています。ジャイアンと同様、映画になると勇敢な少年として描かれることが多いのび太。しかし、宝島が本当にあると思い込んでバカにされたり、組み立て帆船の作成でミスをしたりするなど、本作ではのび太の気弱でドジな部分がどことなく強調されています。しかも、のび太の唯一の特技といってもいい早撃ちのスキルが、なぜか本作ではほとんど生かされません。宝島で海賊とくれば早撃ちでの活躍があるだろうと思っていた人は、肩すかしをくらうことでしょう。

こうしたヘタレな部分があらかじめ強調されたことによって、その後ののび太の行動には大きなギャップが生まれることになります。なんといっても見逃せないのは、機能停止したドラえもんの救出劇でしょう。ドラえもんが機能停止したことを知ったのび太は、仲間の制止を振り切ってひとりで海賊船深くまで降りていき、なんと素手でエネルギーに触れ、ドラえもんを助けようとするのです。

正直、死んでしまうのではないかというツッコミはさておき、ドラえもんを助け上げ、そのまま海賊船から落下していくシーンには、目頭が熱くなることでしょう。基本的にヘタレな部分があるものの、のび太は誰かのために自ら動ける勇敢な少年であることをあらためて認識させられます。

【解説】フロックにセーラ、魅力的なキャラクターがいっぱい

【解説】フロックにセーラ、魅力的なキャラクターがいっぱい(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2018

昔の映画ドラえもんを見た人のなかには、『ドラえもん のび太の海底鬼岩城』に登場した水中バギーのバギーちゃんや、『ドラえもん のび太の鉄人兵団』に登場したメカトピアのスパイロボット・リルルなどを覚えている人も多いのではないでしょうか。映画ドラえもんの特徴のひとつは、魅力的なオリジナルキャラクターが多く登場することです。本作でも例外ではなく、フロックとセーラ、そしてふたりの父親である海賊船の船長シルバーの存在が印象強く残ります。フロック、セーラ、シルバーの3人の正体は、23世紀からやってきた未来人。ドラえもんは22世紀の猫型ロボットなので、彼らはさらに先の未来からやってきた人間です。

フロックはのび太と同じくらいの年齢である短髪の少年で、しずかが海賊に連れ去られてしまったとの入れ違いに、海賊の一味としてドラえもんたちに救出されます。ジャイアンやスネ夫に対して一歩も引かない負けん気の強さから、当初は海賊的なキャラクターとしての印象を受けることでしょう。

やがて、フロックは海賊ではなく23世紀の人間であり、気の強さは生来のものであることがわかります。しかも、実はバリバリの理系少年であることが判明。航海技術に関する知識はもちろんのこと、物語の中盤で大破した帆船を一晩で修復し、さらには加速機能まで取り付けるというスキルを発揮します。いずれのシーンも、フロックの特技やスキルの高さが伺える場面だといえるでしょう。

セーラはしずかと瓜二つの容姿である少女。特技は料理であり、特に母親から教わったフレンチトーストを得意としています。その腕前は、海賊船内の治外法権とも呼ばれる食堂のマリア亭で、チーフのマリアとともに厨房を取り仕切るほど。セーラもまたフロックと同様に気の強い部分を持ち合わせつつも、海賊船へ連れてこられたしずかの面倒をみるなど、心優しい部分を持ち合わせています。

 

物語ではフロックとのび太、セーラとしずかの交流がそれぞれ描かれます。気が強く、エンジニアとしても高い能力を持ったフロックは、のび太と正反対のキャラクターのようにみえることでしょう。しかし、フロックの高い能力に対して自分を卑下しながらも、のび太はジャイアンやスネ夫とたびたび衝突するフロックをなだめ、みんなの和を取り持とうと苦心します。

フロックもまた、のび太の優しさに対して素直になることが多く、やがてふたりは強い友情で結ばれていくのです。また、セーラとしずかは容姿や気の強さといった部分がよく似ています。どちらの関係も馬が合うという言葉がしっくりとくるといえるでしょう。それこそ、映画以外で出会っていたらどんな友人関係を築いていたのかと想像せずにはいられません。

そして、父親のシルバーは深い絶望を持ったまま、息子のフロックや娘のセーラと衝突するキャラクターです。彼の目的は、なんと地球を見捨てて海賊船を宇宙に飛ばし、新天地を見つけること。どうしてシルバーがそのような計画を立てることとなったのか、物語はフロックとセーラ、シルバーの関係を中心に進むことになります。こうしたオリジナルキャラクターと、ドラえもんをはじめとするレギュラーメンバーとの掛け合いが、映画ドラえもんのもっとも魅力的なところです。

 

また、一度見ると忘れられない印象を残すサブキャラクターが多いのも本作の特徴です。女海賊であるビビは剣の使い手、その夫であるガガは銃器の扱いに長けており、どちらもひみつ道具を持ってしても倒せない強敵として描かれます。

その一方で、ガガは万年ビビの尻に敷かれており、ビビは気が短いながらもセーラとは仲が良いなど、明るくコミカルな一面も。敵ながらどうにも憎めない部分があります。そして、マリア亭のチーフであるマリアは厨房のすべてを取り仕切る、眼帯が特徴的な大人の女性です。しずかやセーラ、再び海賊船に戻ってきたフロックに協力するなど、数少ない味方の一人として印象に残る活躍を見せてくれます。

【解説】大泉洋と星野源がドラえもんの世界観を飾る

【解説】大泉洋と星野源がドラえもんの世界観を飾る(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2018

シルバーの声優は大泉洋、映画の主題歌は星野源がそれぞれ担当しています。映画『ドラえもん のび太の宝島』が公開された2018年の時点で、もっとも脂の乗った俳優であり、歌手であるといえるでしょう。

俳優やコメディアンとしての活躍が注目される大泉洋ですが、実は声優としてもそれなりの活動歴を有しています。2001年に公開されたジブリ作品『千と千尋の神隠し』をはじめ、2003年にはロードバイクレースをテーマにしたアニメーション映画『茄子アンダルシアの夏』で主人公のぺぺ・ベネンヘリを好演。2018年に公開された3DCGアニメーション映画『グリンチ』でも主人公グリンチの吹き替えを担当しています。どことなくひねくれたキャラクターや、深みのある男性を演じることが多いといえるでしょう。本作でも、いつしか家族を顧みることが無くなってしまったシルバーのキャラクターをうまく表現しています。

 

本作の主題歌タイトルはストレートに『ドラえもん』であり、楽曲には星野源独特のフレーズが満載。けれども、少し聴くとドラえもんの歌になっているのがすぐにわかるはずです。特に、サビ部分は一度聴くと子どもも大人も口ずさんでしまうような歌詞とキャッチーなフレーズに仕上がっています。

映画ドラえもんの主題歌といえば、過去には武田鉄矢や海援隊、福山雅治、BUMP OF CHICKENなど、著名なアーティストが多数参加していました。星野源が選ばれたのも、まさに時代の流れであるといえます。しかし、これまでの主題歌が少年時代のノスタルジックを想起させたり、勇気を与えたりするものである一方で、ここまでストレートにドラえもんの歌であることを感じさせる楽曲は珍しいかもしれません。

【考察】シルバーの行動に関するツッコミとは?

【考察】シルバーの行動に関するツッコミとは?(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2018

映画『ドラえもん のび太の宝島』のラスボスとして立ちはだかるシルバー。フロックやセーラとともに2250年からやってきた未来人であるシルバーは、街を内包した海賊船を使って、地球を捨てて宇宙に飛び出そうとしていました。実はシルバーは、かつてタイムスリップによって2295年の地球にジャンプしており、そこで地球が崩壊している様子を目の当たりにしていたのです。

海賊船はもともと地球のエネルギーを有効活用する未来の船として、シルバーの妻であるフィオナが設計したものでした。もともと病弱であったフィオナは研究に没頭するあまり体を壊してしまい、幼いフロックとセーラを残して早くに亡くなってしまいます。彼女の意思を継いで船の設計を続けるシルバー。しかし、シルバーはタイムスリップによって、地球が滅亡するという事実を知ってしまいます。

地球が滅亡した原因はフィオナが最後まで懸念していた、船と地球のエネルギー吸収に関するバランスであることが作中で示唆されていました。船を海賊船に作り替えてあらゆる時代から賛同者を集ったシルバーは、のび太たちの地球から船のエネルギー源を奪い、ノアの箱舟として地球を飛び出すことを画策したのです。

 

ここで、ひとつの疑問が生じます。船を動かすことによって地球が滅亡するのがわかっているのに、どうしてわざわざ船を動かそうとしたのでしょうか。

そもそもシルバーが船を動かさなければ、2295年の地球は滅亡しないといえます。おそらく、何か動かさなければならない理由があったのでしょう。しかし、作中でその理由が明らかになることはありません。もしくは、既に船を止めても未来を変えることはできないところまで来ていたのでしょうか。あるいは、実は地球が滅亡した原因はほかにあったのか……。

いずれにしても作中における情報は少なく、素直に見ていると未来の地球が滅んだのは船を動かしたせいであるようにしか考えられません。船を動かして滅亡する地球から飛び出そうというシルバーの行動には矛盾があるように感じられます。

【考察】あのタイムパトロールが出てこなかった理由とは?

【考察】あのタイムパトロールが出てこなかった理由とは?(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2018

他方、時間跳躍を行ってのび太たちの地球に影響を与えようとしているシルバーに対して、タイムパトロールがまったく出てこないという点が気になります。タイムパトロールはドラえもんに古くから登場する24世紀の組織であり、時間を跳躍して悪事を働こうとする人間を取り締まるのが目的です。シルバーの行為は過去の地球に大きな影響を及ぼし、場合によってはそれ以降の地球の未来を閉ざすものとして、見過ごせないものといえるでしょう。しかし、本作ではタイムパトロールに関する存在すら示唆されることはありません。

あくまで推測の域を出ないものの、タイムパトロールが出てこない理由はこうも考えられるでしょう。タイムパトロールは24世紀に本拠地を構えているので、シルバーが見た2295年の崩壊した地球の様子とは矛盾します。しかし、現にタイムパトロールは存在しているので、シルバーが見た未来はあらかじめ回避されることが決まっていたと考えられるのではないでしょうか。

崩壊した地球の未来を回避するきっかけとして考えられるのは、作中におけるフロックの成長でしょう。宇宙船に地球のエネルギーを送ろうとするシルバーのプログラムに対して、フロックは技量の違いを痛感します。しかし、ドラえもんを助けようとするのび太の勇気に触発されたフロックは、やがてシルバーの作ったプログラムを制圧し、地球エネルギーを取り戻すことに成功するのです。フロックがここまで成長できたのは、シルバーがフィオナの船を海賊船に作り替えたことに対する反発からでした。つまり、シルバーが過去の地球を犠牲にしようとする計画を立てたからこそ、それに反発するフロックも成長できたといえるのです。

船と地球のエネルギーのバランスについても、シルバーとフロックのふたりなら解決できるのではないでしょうか。作中では、その後の地球の未来が変わったかどうかは明らかにされませんでした。しかし、タイムパトロールが登場してこないところをみると、未来は24世紀も変わらずに続いており、シルバーの起こした行動とその失敗は、実は予定調和として織り込み済みだったのかもしれません。

 

設定上の矛盾や疑問が少し気になるものの、魅力的なキャラクターや数々のひみつ道具によって紡がれる冒険物語と、そのなかで芽生えた少年少女たちの友情は、見る人の胸を熱くさせることでしょう。

シリーズ38作目となる映画『ドラえもん のび太の宝島』、子供も大人も十分に楽しめる内容になっています。

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