映画『機動警察パトレイバー the Movie』は、我々の現実の延長線上にあるロボットアニメの一つといえるでしょう。
産業用ロボット・レイバーが動き回る20世紀の東京。それはロボット技術が劇的に進んだifの世界でありながらも、なぜか見慣れたものして映ります。もしかするとその印象は、ある意味でパトレイバーの世界よりも進歩した21世紀で見ているからこそ、より顕著に感じられるのかもしれません。
今回はそんな映画『機動警察パトレイバー the Movie』の感想や解説、考察について紹介します。ネタバレを一部含んでいるため、視聴前に読まれる場合はご注意ください。
目次
映画『機動警察パトレイバー the Movie』を観て学んだこと・感じたこと
・日常のリアリティを追求したロボットアニメ
・1989年から見た、およそ10年後の未来を予見する作品
・警察ドラマが好きな人にぜひ見てほしい
映画『機動警察パトレイバー the Movie』の作品情報
公開日 | 1989年7月15日 |
監督 | 押井守 |
脚本 | 伊藤和典 |
出演者 | 篠原遊馬(古川登志夫) 泉野明(冨永みーな) 後藤喜一(大林隆介) 南雲しのぶ(榊原良子) |
映画『機動警察パトレイバー the Movie』のあらすじ・内容
東京湾の干拓事業バビロンプロジェクトの要となる、作業用レイバーのプラットフォーム「方舟」から投身自殺した天才プログラマー・帆場瑛一。彼の自殺と時を同じくして、レイバーが突如暴走する事件が発生します。
暴走レイバーの事件が頻発していくなか、特車二課の篠原遊馬は父親の会社である篠原重工が開発した新型OS(通称HOS)が怪しいと睨み、捜査を開始しました。
一方、特車二課の隊長、後藤喜一は遊馬の捜査を誘導しながら、事件の裏に帆場の意図を感じます。事件は帆場が不在のまま、しかし彼の存在を確かに感じさせながら進行していきます。
映画『機動警察パトレイバー the Movie』のネタバレ感想
【解説】『機動警察パトレイバー』とは?
本日7月15日で機動警察パトレイバーthe Movieの公開から30周年を迎えました。
公開30周年を記念して、高田明美先生による、描きおろしイラストを公開!
なおこのイラストは8月7日から大阪で開催される30周年突破記念イベントのメインビジュアルとしても使用されます。#機動警察パトレイバーthe Movie pic.twitter.com/UODzdB7Wfs— 「機動警察パトレイバー」公式(とまこまい港まつり/パト展@大阪ATC8/7~19) (@patlabor0810) July 15, 2019
映画『機動警察パトレイバー the Movie』について説明する前に、そもそもパトレイバーとは何なのかについて少し触れておく必要があるでしょう。
『機動警察パトレイバー』とは、今では当たり前となったメディアミックスの先駆けともいえるシリーズです。OVAや漫画、TVアニメのほか、小説、ゲーム、さらには実写でも作品展開を行っています。紹介する『機動警察パトレイバー the Movie』はそのメディアミックスのうちのひとつ、劇場版オリジナルアニメーション作品です。
メディアによって多少のズレはあるものの、パトレイバーの物語は主に1998年の東京及びその近郊を舞台にしています。当時の東京とほとんど変わらない景色のなかで、作業用の歩行式ロボット技術が急速に発展している世界。確かにフィクションであるにもかかわらず、その世界はリアリティにあふれています。
パトレイバーの世界と現実の世界を大きく隔てるもの、それは「レイバー」です。パトレイバーの世界では、人型ロボットであるレイバーが存在しており、主に土木や建設分野を中心に運用されています。しかし、レイバーの普及とともにこれを利用した犯罪も増加。これに対向するため、警察は特殊車両二課というレイバー犯罪に特化した部隊を創設しました。通称特車二課パトロールレイバー中隊、これがパトレイバーです。
物語では主にこの特車二課に所属する主人公たちが、レイバー犯罪に立ち向かう様子が描かれます。ただ、シリーズ全体を通してみると、レイバー犯罪を主軸としながらも特車二課の日常や登場人物にスポットを当てた話、他機関との交流やSFっぽい話もあるなど、ひとつのテーマに縛られないのが特徴です。
パトレイバーの世界が現実の東京と異なる点は、レイバーの存在だけではありません。地球温暖化による海面上昇から東京を守ることを目的として、東京湾には巨大堤防が建設されています。さらに、1995年には都心部で直下型地震が発生。このがれき撤去を利用し、東京湾内の大部分を干拓して用地をつくり、東京都内の土地不足の解消を狙った国家規模の土木事業「バビロンプロジェクト」が進められています。
こうした事業がレイバーを急速に発展させる要因となる一方、首都圏へのレイバー一極集中がレイバー犯罪の増加理由となっており、リアリティを与えています。特に、本作『機動警察パトレイバー the Movie』ではバビロンプロジェクトが重要な役割を持っています
なお、本作が発表されたのが1989年であるにもかかわらず、OSやコンピューターウイルスに焦点が当てられているのは、特筆すべき点だといえるでしょう。公開から10年後、家庭用パソコンやwindowsに代表されるOSやインターネットが急速に普及したことを考えると、本作における近未来像は概ね正しかったといえます。
【解説】押井守は最後に合流、ゆうきまさみの企画から集まったキャスト
押井守監督の『機動警察パトレイバー the Movie』(1989年)は1998年のDVD化の際に、台詞の再収録と一部の効果音の変更を行って5.1ch化された。
その際、オリジナルで「シュミレーション」となっていた台詞が「シミュレーション」に修正された。
「シュミレーション」と間違う人、結構多いのですよ。 pic.twitter.com/Jj1kTcqJuS
— 中井寛一 (@ichikawakon) June 2, 2019
『機動警察パトレイバー』に、原作は存在しないといわれています。もともとは漫画家のゆうきまさみが企画した内容を、メカニックデザイナーの出渕裕が気に入ったのが始まりでした。
そこに脚本家の伊藤和典やキャラクターデザイナーの高田明美、最後に映画監督の押井守が合流。本作のためのグループ「ヘッドギア」が結成され、さまざまな媒体で作品展開を行うこととなったのです。つまり、パトレイバーはシリーズの総称であり、漫画版、OVA版、劇場版、TVアニメ版などがそれぞれ独立して存在すると考えればわかりやすいでしょう。各メディアの物語は一部矛盾する設定もあるものの、基本的に関連性が深いものです。
ゆうきまさみといえば、ベテランを多く抱える少年サンデーでも息の長い漫画家のひとり。漫画版の『機動警察パトレイバー』はもちろん、昭和50年代生まれの人なら『究極超人あ~る』などを知っている人も多いでしょう。
パトレイバーの企画に賛同した出渕裕は、今やロボットアニメにおけるメカニカルデザインの巨匠です。本作でもレイバーのデザインのほとんどを担当しています。また、2000年以降は『宇宙戦艦大和2199』や『ラーゼフォン』といったSFアニメの監督も担当しました。
伊藤和典はOVA版やTV版でも多くの脚本を担当。伊藤は熱烈な怪獣映画ファンでもあり、平成ガメラシリーズの生みの親としても知られています。また、キャラクターデザインは『めぞん一刻』や『うる星やつら』などを担当した高田明美です。
そして監督の押井守といえば、今やその名を知らない人はいないでしょう。電脳・義体化した人間が暮らす近未来における、公安9課の活躍を描いたアニメ映画『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』は、アメリカのビルボード誌のビデオ週間売り上げで1位を獲得するなど、海外から高い評価を得ています。その続編にあたる『イノセンス』は日本のアニメーション作品としては史上初めて、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門にて上映されました。
押井の作品にはいずれも独特の雰囲気があり、虚構と現実をテーマとした難解な作品も多くあります。しかし、その点がファンを魅了しているといえるでしょう。また、国内外を問わず押井に影響を受けた業界人は多く、2015年に公開された『パシフィック・リム』の監督ギレルモ・デル・トロなどは押井守の大ファンのひとり。同作はパトレイバーの影響を受けていると明言しています。
【解説】パトレイバーに絶対欠かせない、川井憲次の音楽
パトレイバーといえば、作品を彩る魅力的な楽曲が大きな特徴となっています。音楽を担当するのは川井憲次。OVA版、TVアニメ版、劇場版のほか、2016年に公開された約8分の短編『機動警察パトレイバーREBOOT』、さらには実写版『THE NEXT GENERATION -パトレイバー-』においても彼が音楽を担当しています。
メディアによって監督やスタッフが入れ替わる中、川井だけは一貫した音楽スタッフであり、パトレイバーの世界に欠かせない人物といえるでしょう。
現在は『科捜研の女』シリーズやNHKの連続テレビ小説、NHKスペシャルやBS世界のドキュメンタリーなど、アニメに限らず幅広いフィールドで活躍しています。知らない間に川井の楽曲を聴いている人は多いはずです。
川井の音楽といえば、一度聞いただけでそれとわかる作風が特徴です。ある音楽家の評価によれば、「川井憲次の引き出しはひとつしかない。でもそのひとつはとてつもなく深い」とのこと。また、民謡と和楽器を組み合わせた独特のフレーズも多用されています。
本作の音楽はレイバーを追い詰める緊張感に満ちたものや、場末のゲームセンターのようなBGMなど、バラエティに富んだ楽曲構成となっています。しかし、一番はやはりエンディングテーマの「朝陽の中で」でしょう。特車二課の活躍と勝利を祝したかのような勢いあふれる楽曲を、エンドロールとともにぜひ聴いてみてください。
【解説】今回の主人公は遊馬と後藤
特車二課の面々はみな一癖も二癖もある魅力的なキャラクターばかりです。しかし、本作では主人公の泉野明やほかの隊員よりも、野明のサポートである篠原遊馬、そして隊長の後藤喜一に焦点が当たっています。本作は遊馬と後藤が主人公の物語といえますね。
物語は篠原重工に務めていた天才プログラマー。帆場瑛一がバビロンプロジェクトにおけるレイバー用海上プラットフォーム「方舟」上で投身自殺する場面から始まります。彼はレイバー用の最新型OS「HOS」(Hyper Operating System)の開発者。HOSはインストールするだけでレイバーの基本性能30%アップさせるOSであり、劇中では既に国内のレイバーの8割が導入済みという状態です。
一方、作中では都内各所においてレイバーが突然暴走する事件が頻発。事件の共通点を調べていくと、暴走を起こしたレイバーはいずれもHOSを導入済みだったことが判明します。遊馬が調べた結果、HOSにはレイバーを誤動作させるトロイの木馬型プログラムが仕込まれていたことがわかりました。この時点で、HOSの開発者である帆場と事件の関係性が、一気に形作られていきます。
HOSの調査を遊馬に任せ、後藤も生前の帆場の足跡を調べていました。しかし、帆場は限りなく黒であるにも関わらず、調べれば調べるほど、彼の動機がわかりません。なぜHOSにこのようなプログラムを仕込んだのか。帆場の思惑が掴めないまま、事件はバビロンプロジェクトも巻き込んで東京に大きな牙を向けることとなります。
遊馬も後藤もレイバーの操縦者ではないため、実は本作ではレイバー同士の対決よりも、捜査パートのほうがはるかに長くなっています。その傾向は、続編『機動警察パトレイバー 2 the Movie』においてさらに顕著となるのですが……。しかし、捜査過程はそれぞれのキャラクターのバランス良い会話劇とともに進行していくため、見ていて飽きません。
ところで、彼らの姿に公務員然とした人間くさい雰囲気を感じたならば、その感覚は正しいといえるしょう。その雰囲気は『踊る大捜査線』でも見ることができます。同作の監督である本広克行もまた押井守の大ファンであり、『踊る大捜査線』はパトレイバーに寄せて作ったと語っています。
そして、篠原遊馬の声優を務めるのは古川登志夫。『機動戦士ガンダム』のカイ・シデンや『うる星やつら』の主人公・諸星あたる、『ドラゴンボールZ』のピッコロなどを演じています。遊馬は特車二課のレイバー・イングラム一号機を駆る泉野明のバックアップを担当。しかし、本作ではHOSの調査をはじめ、方舟に乗り込んだ特車二課の作戦指揮も担当するなど、強いリーダーシップを発揮します。
一方、後藤喜一を演じているのは大林隆介です。主な出演は『らんま1/2』シリーズの天道早雲など。主役級を演じることは少ないものの、一度聴くと忘れられない、特徴のある声を持っています。
一見しておとぼけっぽいキャラクターの後藤ですが、実は公安出身であり、「カミソリ後藤」の異名を持つほど頭のきれる人物。本作では遊馬の出自や性格を利用してHOSの調査を誘導する一方、終盤ではHOSが大規模な暴走を引き起こすきっかけとなる方舟を解体するにあたり、上司へ責任問題を仄めかして黙認させるなど、食えない性格が魅力です。
『機動警察パトレイバー』において根強いファンが多いキャラのひとりであり、続編『機動警察パトレイバー 2 the Movie』もまた、彼をメインに据えたストーリーが展開されます。
【解説・考察】地道な捜査、東京の姿、埋立地
#1日1本オススメ映画
機動警察パトレイバー THE MOVIE89年作でOSやウイルスの先見性もとより、中高年をはじめとした人間の渋みと粋さなドラマと、若者の熱くもコメディある活躍、小難しすぎないほどよいミステリーさで、ロボットの活躍もイチオシな、とてもバンラスのとれたリアルエンターテイメント pic.twitter.com/GBZLP2cKxz
— 接続設定☯ (@setsuzokusettei) June 9, 2018
帆場とHOSがレイバーの暴走に関係していると早くから注目していた後藤。特車二課を指揮する彼は独断で持ち場を離れられないため、本庁の松井刑事に帆場の操作を依頼します。この捜査シーンが、刑事ものとしての雰囲気をうまく演出しています。
物語の冒頭で帆場は亡くなっているため、松井は帆場の住んでいた家を訪ねてまわります。しかし、レイバーのOS開発という高給取りであったにもかかわらず、帆場は築何十年も経過したアパートに住んでいたことが判明。しかも数年の間に、何十回も同じような物件へ引っ越しをくり返しているのです。
帆場の家を探してまわった松井は、結果を後藤へ報告するにあたり、こんなことを述べています。
「それにしても奇妙な街だなここは。あいつの過去を追っかけてるうちに、何かこう時の流れに取り残されたような、そんな気分になっちまって。ついこの間まで見慣れてた風景があっちで朽ち果てこっちで廃墟になり、ちょっと目を離すときれいさっぱり消えちまってる。それにどんな意味があるのか考えるよりも速くだ。ここじゃ過去なんてものには一文の値打ちもないのかもしれんな」
松井が帆場の家を探してまわる東京の下町の様子は、実際に入念なロケハンを行って描かれているらしく、20世紀末の近未来的な風景との対比が印象的です。彼の感想は、劇中での東京の様子を端的に表しているといえます。それは現実の東京においても同じことがいえるのかもしれません。
そして松井が行き着いた先のひとつが、東京湾の埋立地です。パトレイバーには埋立地が多く登場します。押井の埋立地好きも影響しているのでしょう。特車二課棟が建っているのも13号埋立地、いわゆるお台場です。
埋立地は土地開発の象徴のひとつ。そこには過去に値打ちすら与えず、ただ未来だけを盲目的に模索し続ける都会の姿があるのかもしれません。
【解説】暴走する零式、レイバー同士のバトルが魅力的
本作におけるレイバー戦は、序盤で暴走した土木用レイバーを止めるシーン、終盤で方舟に停められた無数のレイバーとの攻防、そして零式との対決です。
序盤の暴走レイバーを止めるシーンは、パトレイバーの立ち位置をよく表しているといえるでしょう。レイバー犯罪はある意味で日常的なものであり、特車二課は警察内でも特殊な位置づけです。しかし、まるで街のおまわりさんのようにしてこのレイバーを止めようとするのが印象的で、このシーンだけで本作の世界観がよくわかります。
後半の方舟におけるレイバー戦は、ある意味でロボットアニメとしての本作の真骨頂です。特車二課のレイバーはイングラム一号機と二号機の2体だけ。無数の暴走レイバーを退けながら方舟の頂上を目指す展開は、これまでの操作パートから一変して手に汗握るシーンとなっています。
そして、忘れてはならないのが零式の存在でしょう。零式は警察に近々配備予定の新型レイバーであり、イングラムよりもさらにスタイリッシュなフォルムが特徴。流れるような動作でマニピュレーター自体を抜き手のように操り、素手でレイバーを破壊するなど、そのスペックは折り紙付きです。
そんな零式もまたHOSを搭載していたため当然のように暴走し、特車二課に立ちふさがることに。野明のイングラム一号機と零式の戦いは事実上のラストバトル。短いシーンながらも死力を尽くした展開は熱く、本作をロボットアニメたらしめるものとなっています。
【考察】旧約聖書と帆場暎一の動機
帆場暎一の捜査を進めれば進めるほど、死んだ彼の息遣いがそこかしこに感じられるのが本作の魅力のひとつといえるでしょう。
たとえば、HOSの解析におけるパスワードは「E.HOBA」であり、自身を旧約聖書のエホバになぞらえているのがわかります。そうしてパスワードを打ち込むと、次のようなメッセージと併せて、画面上には赤い「BABEL」の文字列が並ぶことに。
「エホバくだりて、かの人々の建つる街と塔を見たまえり。いざ我らくだり、かしこにて彼らの言葉を乱し、互いに言葉を通ずることを得ざらしめん。ゆえにその名は、バベルと呼ばる。」
このメッセージは、旧約聖書における創世記からの引用です。明らかに帆場は、自分をエホバとみなしています。
もちろん、BABELとはバベルの塔のことを指しているのでしょう。バベルの塔とは、人間が神に近づこうとして立てた塔であり、神がこれを崩したと一般的には解釈されています。
ここでいう塔とは何を表しているのでしょう。実は、HOSに仕組まれたトロイの木馬型プログラムには稼働条件があり、強風によって建物から発せられる低周波音がトリガーになっています。
しかも、「方舟」から発生した低周波音は東京全域を飲み込み、一気に都内のレイバーが暴走するという仕組みです。つまり、今作におけるバベルの塔とは、バビロンプロジェクトのために高く積み上げられた方舟であると解釈できます。
本来、バベルの塔は神が崩すものです。しかし、帆場は神やその使いではなく、人間としてこの計画を練っていたことがわかります。エホバの発音については、ヤーベあるいはヤハウェと発音するのが正しく、エホバというのは誤って広まった呼び方であることが作中で明かされます。そして、これを聞いた帆場は狂喜したというくだりがあるのです。
方舟が崩れると、レイバーの暴走はなくなってしまいます。一方、方舟が崩れなければ、HOSを搭載したレイバーが一斉に東京で暴れだします。
おそらく、帆場にとってはどちらでもよかったのでしょう。作中で後藤は、次のように語っています。
「(方舟の破壊が)もし失敗するようなことがあれば湾岸一帯は壊滅、被害がどこまで広がるか見当もつかん。しかし成功したとしても、バビロンプロジェクトは方舟を失って大きく後退することになる。どっちに転んでも分のない勝負さ」
どちらに転んでも東京の発展にブレーキをかける展開となります。それこそ、帆場の狙いだったのでしょう。
帆場の動機が作中で明らかになることはありませんが、彼の家を訪ねてまわった松井の感想から、それとなく動機を推し量ることはできるでしょう。月並みですが、それは過去を忘れ、ただ発展だけを追い求めた東京に対する憤りであり、神に代わって鉄槌を下すという意思だったのかもしれません。