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映画『博士の愛した数式』ネタバレ感想・考察!記憶が失われていく博士との数学を交えた一風変わった絆映画

母親役が深津絵里さんなのが良かった

記憶が失われていく博士と親子の絆を描いた映画『博士の愛した数式』。

記憶がどんどん失われていく博士、そんな博士を思いやり寄り添う親子、1番近くにいるのに遠くの存在にある義姉の日々・絆を描いた、切なくも温かい映画になっていました。

今回はそんな『博士の愛した数式』についての詳しい感想と考察をご紹介していきます。感想と考察ではネタバレを含みますので、映画ご視聴前の方やネタバレを避けたい方はご注意ください!

映画「博士の愛した数式」を観て学んだ事・感じた事

・博士、義姉の関係性が切ない
・恋愛を超えた絆を描いたストーリーがお好きな方におすすめ

映画「博士の愛した数式」の作品情報

公開日2006年01月21日
監督小泉堯史
脚本小泉堯史
出演者寺尾聰(博士)
深津絵里(杏子/ルートの母親)
齋藤隆成(ルート)
吉岡秀隆(先生/大人になったルート)
浅丘ルリ子(未亡人/博士の義姉)

映画「博士の愛した数式」のあらすじ・内容

映画「博士の愛した数式」のあらすじ・内容

シングルマザーの家政婦・杏子が派遣された家は、何人もの家政婦が辞めていっている難しい問題を抱えた家でした。

依頼主は大きな邸宅に住む未亡人。彼女から仕事をするのは離れであること、その家には不慮の交通事故で記憶が80分しかもたない天才数学者の義弟が住んでいること、母屋との行き来はしないこと等の簡単な説明を受けます。

不安を抱えながらも意気込んで離れに向かうと、スーツにいくつもの付箋を付けた老紳士・博士がいました。

人付き合いが下手で話すことと言えば数学のことばかり、頭の中では常に数学のことを考えているような博士に悪戦苦闘しながらも家政婦として働いていたある日、ふっとしたきっかけで杏子が息子の話をすると…。

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映画「博士の愛した数式」のネタバレ感想

記憶が80分しかもたないという設定、数学を交えた独特な表現が相まって、博士のロマンチックな発言に驚いたり、ルート親子の柔らかく温かい関係に心温まるような、ほのぼのとした気分になれる映画になっていました。

教師が思い出を語っていくストーリー展開

教師が思い出を語っていくストーリー展開(C)「博士の愛した数式」製作委員会

大切な人の思い出を生徒に語っていくストーリー展開がマンガのような雰囲気や演出で、映画として観やすくなっていましたし、数学を交えながらでも楽しみながら観ることができました。

教師が生徒に思い出を語っていくという回想をメインにしたストーリー展開は映画『君の膵臓をたべたい』に似ているのですが、話している大切な人が母親と友達のことということで、恋愛映画だった「君の膵臓を食べたい」とは受ける印象が違うように感じましたね。

 

そして、今作では授業中ということもあってか黒板を駆使して解説しながら話していたのが印象的でした。

板書するだけでなくきっちりプレートまで用意して数学についての解説をしてくれるので、数学が苦手・よく分からないという方でも理解しやすいようになっていますし、解説を挟みながら進んでいく雰囲気がマンガっぽく、マンガ好きな方だと親しみやすいのではないかなと思います。

記憶が80分しかもたない

交通事故の後遺症で記憶が80分しかもたない、10年間の記憶も抜け落ちていって彼にとっては10年前のまま時が止まっているという設定が映画『メメント』に似ているのですが、日本映画のためか印象はだいぶ違っているように感じました。

記憶がもたないという設定に関しては、同じことを何度も繰り返し話しているシーンはあるものの、記憶がリセットされる瞬間が映ることは少なかったためか、記憶が消えるという衝撃やインパクトは「メメント」に比べると弱かったかなと思います。

ただ朝起きた瞬間、記憶のない状態で自分のスーツに付いたふせんを見て、記憶がないという衝撃の事実を知った時の絶望や衝撃、悲しみは描かれていて、その分、今作の方が人間的な心理描写は強くなっていました。

映像としてはなかったものの、あれを毎朝繰り返しているのかと想像することで切なさ・悲しみは倍増するようになっています…。

 

そして、大切なことをふせんに書いてスーツに貼っているというのも大きな違いでした。

絶対に忘れてはいけないことを身体に刻み込むという「メメント」のタトゥーも良かったのですが、日本ではあまりタトゥーは良い印象を持たれないものですし、老紳士にタトゥーというのも違和感がありますから…今作のふせんというのは日本的で、キャラクターによく合っていた良い演出でしたね。

そしてそんな彼に対して、誰も適当な気持ちで接していないというのも印象が違う大きなポイント。

どうせ記憶が消えるから…と適当に付き合うのではなく、記憶を失ってしまうけれどもできるだけ相手に悲しみを与えないようにと配慮して付き合い、普通の人と変わらないように真正面から付き合っているというのが印象的でした。

そんな人々に囲まれていたからこそ博士は変わることが出来た、例え記憶を失っていくとしても日々楽しく過ごせたと思うと、何ともほっこりするような心温まるような映画だったなと思います。

数学を交えた表現が独特

人付き合いが下手な博士が数学の話をするときだけは饒舌に、そして要所要所で数学を交えた表現を入れてくるのが独特で、驚く部分・納得する部分等がありつつ面白い表現だったなと思います。

個人的に一番好きだったのは、食事のメニューを聞いた杏子に対して「数学と愛を交わしているところにズカズカ踏み込んでくるなんて、トイレを覗くより失礼じゃないか!」といったときの表現。

意志のない数学というものと愛を交わしているんだという表現のあとに、トイレを覗くという俗な表現を持ってくるあたりが独特で、納得できるような「え…?!」となるような表現になっています。

人が大切にしているものは人それぞれですから、言い方こそ悪いものの理解できないわけではないのですが、質問くらいパッと答えればいいのにとイラっとしなくもない…そんな印象を受ける独特な表現をしたセリフでした。

数学が苦手な人だとよく分からないと感じる表現もあるかもしれませんが、解説が入っているので一応分かりやすいようにはなっていますし、数式のポイントさえ理解しておけばストーリー的には問題なかったので、数学が苦手な人にもおすすめです!

意外とロマンチストな博士

今作において、堅物に見えて意外とロマンチストな博士というキャラクターはかなり重要になっていました。

最初は数学のことばかり考えていて人付き合いが下手、すぐに数学の話を持ち出す、人付き合いが下手なのに数学の話になると饒舌でグイグイくるキャラクターが、ドラマ「ガリレオ」や映画「真夏の方程式」の湯川学のようだなと思っていましたが、それは最初だけで途中からはだいぶ印象が変わってきます。

料理をしている杏子に「君が料理をつくっている姿が好きなんだ」と言ってみたり、時計と誕生日という共通点を見つけて喜んでいたり、堅物に見えて意外とロマンチストな部分があって、面倒に感じることもあれど悪い人ではないというのは伝わってきました。

 

そしてルートの勉強を見ているときには、分からないという彼に対して「音読が良かった」とまずは褒めるところから始め、楽しく理解してもらおうと配慮していたり、教え上手で教師として魅力的な一面も見せています。

家に子供が1人と聞いて本気で心配していたり、勉強を教えるだけでなく野球の練習にも付き合い、時には散歩にも付き合い…人付き合いが下手なものの、子煩悩で優しさの溢れる良いキャラクターになっていましたね。

同じようで新たな発見の多い日々

10年前から記憶がもたないということで、同じような日々を毎日繰り返しているようにも見えるのですが、ルートや杏子と出会ったことでその日々に新たな発見が生まれ、彩りのある日々を送るようになっていたのが微笑ましかったですね。

例え博士は忘れてしまったとしても毎日が新鮮で楽しい日々を送っていますし、他の人にとっては消えない大切な思い出として残ることで関係は深めていくことが出来たので、毎日が無駄ではないことに溢れていた感じがして良かったなと思います。

そういった日々を思うと、設定はメメントに似ているものの作品の雰囲気としては、1週間で友達との記憶がリセットされてしまう少女を描いたマンガ『一週間フレンズ。』に似ていましたね。

忘れてしまうけれども新たな発見・喜びに溢れた日々、冷たく堅物っぽい人物がどんどん温和になっていき笑顔が増えていくという展開、そして友情のような愛情のような絶妙な関係性というのもよく似ていたと思います。

10歳にして大人過ぎる子供・ルート

10歳にして大人過ぎる子供・ルート(C)「博士の愛した数式」製作委員会

10歳にして大人過ぎる杏子の息子・ルートもいいキャラしてましたね。

自分たちの生活のこと、母親の仕事のことを理解して1人で過ごす時間が多かったためか、記憶障害を持つ博士とも折り合いを付けて仲良く付き合い、博士に練習を見てもらうにあたって野球チームのメンバーに事前に気を付けてほしいことを伝えておいたり、なんとも大人な対応。

 

そして博士が悲しい顔をしたときには見逃さず、それとなく母親に意思表示をしてみたり。
その件について母親が謝罪をしてきたときには素直に聞き入れて、すぐに笑顔で仲直りしよう!と言ったり。ママにしれっと美人と言ってみたり。

10歳とは思えない大人の対応、人付き合いのうまさ、思慮深い性格をしていて、人によっては違和感を感じるくらい大人びた子供でした。

個人的には子供っぽい部分もちゃんとありつつ、明るく元気な杏子と記憶を失うことで人付き合いの難しい博士を繋ぐような、架け橋になってくれる良いキャラクターだったと思えたので、気になるほどではなかったですね。

母親役が深津絵里さんなのが良かった

母親役が深津絵里さんなのが良かった(C)「博士の愛した数式」製作委員会

映画『ステキな金縛り』の深津絵里さんが大好きだったのですが、今作ではそんな「ステキな金縛り」でのキャラクターと似た雰囲気を持っていて、深津絵里さんのお顔立ち・雰囲気とよく合っていました。

一生懸命仕事に取り組んでいて、理不尽に屈することなく真向からぶつかっていく人柄、いつも笑顔を絶やさずニコニコと微笑んでいる姿、どんな状況でも明るく前向きに過ごしているキャラクターが、ステキな金縛りのときとそっくりで良かったです。

正直、深津絵里さんに母親役というイメージはなかったのですが、今作で観てみると明るく前向きなキャラクターが、子供にも真正面から向き合う理想的な母親像とピッタリで、ステキな母親役としてピッタリでしたね。

ジャンル的には恋愛映画ではなかった

パッケージ・タイトルから記憶を失っていく博士と、家政婦としてやってきた杏子の恋愛映画だと思ったのですが、ジャンル的には恋愛映画ではなく、家族・友人との絆を描いた一風変わった人間ドラマ系の作品だったかなと思います。

恋愛映画に見えないこともないのですが…、作品を通して観た印象としては恋愛感情ではないと感じました。

博士にとって愛する人はいつまでも依頼主でもある未亡人の義姉で、杏子は大切な人ではあるもののあくまでも友人としての愛情であって、博士のことを友人と言っていた杏子にも恋愛感情はないと思われます。

 

博士とルートも親子ではなく、あくまでも友人。強いて言えば家族のようで家族ではない、映画『万引き家族』のような、一風変わった絆で結ばれていく関係性だったかなと思います。

そのため内容的にも感動する・泣けるという感じではなく、ほっこりとするような心温まる映画だったかなという印象です。

映画「博士の愛した数式」の考察

博士の心情を表す2つの数式『eπi=-1』『eπi+1=0』の意味について、ラストにルートが黒板に書いていた『時は流れず』の意味について考察していきます。

あくまでも個人的な考察なのでこれが正解というわけではありませんが、参考程度に見て頂けると幸いです!

『eπi=-1』『eπi+1=0』の意味

『eπi=-1』は子供を失った悲しみ、その悲しみがずっとなくならないことを表した数式でした。

兄の嫁、夫の弟でありながら許されざる不倫関係にあった2人に子供が生まれようとしていたのですが、不倫関係だったためか義姉は子供を中絶してしまったようです…。

そのことを悲しんだ博士は義姉に宛てた手紙の中で、「僕の心は『eπi=-1』です。この数式が永遠に-1であるように、宿した命の一滴を取り戻すことはできないでしょう」と記していました。

つまり1度失った子供の命は取り戻せない、僕の悲しみの心はずっと変わらないということを表しています。

 

しかしそれが義姉との話し合いの時には、数式が『eπi+1=0』に変化していました。

これには例え周りの環境が変化していったとしても、子供を失ったという僕の悲しみの心はなくならない…でもそこに1を加えることで悲しみは少しずつ癒えていき、いずれは0へと変化していくということを表していたのだと思われます。

そしてその数式を愛する義姉に渡すことで、あなたもそろそろ悲しみから解放されても良いのでは?という意味を込めていたのではないでしょうか。

子を失ったことを忘れようということではありません。あくまでもその悲しみを癒していこう、過去ばかりではなく前も向いていこう、悲しみのしがらみから解放されようという…一緒に生きていこうという意思表示だったのではないかなと思います。

ラストの『時は流れず』の意味

ラストに博士と大人になったルートがチャッチボールをしていて、その側で杏子と義姉が見守っているシーンで終わっていますが、あのシーンとルートが黒板に書いた『時は流れず』という言葉には、変わらないという意味があったのだと思います。

博士の時は過ぎ去っていかないから、出会ってから19年が経過していようともルートはいつまでもルートのまま。

家政婦である杏子の息子で、野球好きの少年で、頭の平たいルート頭の男の子、そしていつでも初対面で新しい刺激をくれる男の子…博士が変わっていかないように、ルートの方もいつまでも博士への想いは変わっていないということではないでしょうか。

 

ただ変化したのは、時は流れずとも悲しみを持った博士と義姉の心は癒されていき、変わり映えのしない日常が幸せな日々へと変化していったということかな。

もしくはラストのシーンが白黒になっていたことを思うと、博士たちはすでに亡くなっているのかもしれません。

それでも2人と出会ったことで幸せな日々を送ることができた、幸せな最後を迎えることが出来た、例え亡くなっているとしても心の中の博士はいつまでも博士のままということだと思います。

「博士の愛した数式」はほのぼのと心温まる映画

思っていたジャンルとは違ったニュアンスの映画だったので驚きましたが、魅力的なキャラクター、物語の中に数学を絡めてくる独特な表現で、悲しみとはまた違った温かな切なさを感じるような心温まる映画になっていました。

悲しみというよりかはほのぼのとした印象を受ける映画になっていたので、感動系の映画が苦手な方にもおすすめです!

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※2019年9月現在の情報です。

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