穏やかなイメージのある伊藤英明さんが、サイコパスな殺人鬼を演じる映画『悪の教典』。
人当たりの良さそうな伊藤英明さんがどんな風にサイコパスキャラクターを演じるのか、個人的に好きなテーマの映画ということで期待して視聴してみましたが、個人的には残念な結果に終わりました。
今回はそんな悪の教典について詳しい感想と考察をご紹介していきます。結末についてのネタバレを含みますので、映画視聴前の方やネタバレを避けたい方はご注意ください。
目次
映画「悪の教典」を観て学んだ事・感じた事
・山田孝之さんの存在感が凄い
・期待していただけに個人的には残念!
映画「悪の教典」の作品情報
公開日 | 2012年11月10日 |
監督 | 三池崇史 |
脚本 | 三池崇史 |
原作 | 貴志祐介 |
出演者 | 伊藤英明(蓮実聖司/ハスミン) 二階堂ふみ(片桐怜花) 染谷将太(早水圭介) 林遣都(前島雅彦) 山田孝之(柴原徹郎) 水野絵梨奈(安原美彌) |
映画「悪の教典」のあらすじ・内容
生徒達からハスミンと呼ばれ慕われる高校教師・蓮実聖司。
教師の鑑のような人物でしたが、女子生徒との交際やいじめ問題で騒ぐ保護者の死亡、同僚教師への恐喝、裏掲示板騒動など、だんだんと不穏な様子が見られるようになります。
不審に思った生徒・早見圭介が調べてみると、実はハスミンの周りでは以前から不自然な死亡事件が度々起こっていたということを知ってしまいました。その様子を盗聴器で聞いていたハスミンは秘密を知ってしまった人々を全員殺害し、その罪を他の人物に擦り付けようと計画します。いつもと同じように…淡々と…。
良い人の仮面を被ったサイコパス教師が邪魔になった生徒達を次々に殺害していく、学園で繰り広げられるサスペンスホラー映画です。
映画「悪の教典」のネタバレ感想
伊藤英明さん、山田孝之さんなど好きな俳優が出演する映画ということで期待していたのですが、ストーリー展開に不必要なシーンが多く、エンディングが微妙な終わり方をしているため、個人的には記憶に残りにくい残念な映画だと感じました。
最初から最後までしっかりと印象に残っているのは、伊藤英明さんの「to die!?」というセリフと山田孝之さんの「…美彌?」というセリフのみです。
あのシーンに関しては一見の価値ありですよ!
伊藤英明さんの演技は良かったんだけど…
悪の教典は、大好きな映画『陰陽師』で安倍晴明の友・源博雅役を演じた伊藤英明さんが主演の映画ということでかなり期待していましたが、伊藤英明さんの演技は良かったけれど映画としては残念という印象でした。
ハスミンの好かれる人柄、何事にも真っすぐな雰囲気は伊藤英明さんの顔立ちのイメージに合っていていましたし、そんな姿と真逆の淡々と殺人を行っていく冷めた雰囲気、悪びれる様子のなさという演じ分けはとても良かったです。
個人的には、東大を目指す学生が殺されるときに言った「俺、東大行かないと…」というセリフに対して、「ん!? to die!?」と返して射殺する感じはシャレがきいていたし、殺害という行為に対する罪悪感・後悔のなさが表現されていて特に良かったと思います。
しかし、ただそれだけだった…という点が残念でなりません。
主演の伊藤英明さんと並んで重要人物として登場してくる片桐怜花役・二階堂ふみさん、早見圭介役・染谷将太さん、その他ハスミンが殺害していく生徒達のインパクトが弱かったためかと思います。殺戮を生き残る生徒やハスミンの秘密に迫る生徒、信頼していた教師に裏切れる生徒というキャラクターだったのに、インパクトが弱いためか探偵不在のサスペンス映画のようで面白さはありませんでしたし、殺人鬼が迫る恐怖、猟奇的殺人、ハスミンの二面性が映えないように感じました。
個人的に若い俳優・女優さんの顔立ちは見分けがつかず、記憶に残りにくいために余計にそう思うのかもしれませんが、生徒達のキャラクターは少し残念でした。教師陣のキャスティングが豪勢だったので、もう少し教師をメインにしたストーリー構成の方が良かったかなと思います。
大島優子は涙…怖い・グロイ・トラウマになる?
悪の教典はAKB特別上映会の際に、当時メンバーだった大島優子さんが「わたしはこの映画が嫌いです。命が簡単に奪われていくたびに涙が止まりませんでした。」と言って涙ながらにその場を退場したことで有名なようですね。
映画の感想は個々人によるものなのでこれに関しては何とも言えませんが、個人的には怖い・グロイ・トラウマになるといった感想はありませんでした。
むしろ殺し方が凝っているわけではありませんし、長く苦しめようとしている感じもなかったので、こういった猟奇的殺人をテーマにしている映画にしては良心的に殺している方ではないのかなと思います。
ただ、普段穏やかなイメージがある伊藤英明さんが淡々と生徒を殺していく姿、猟銃で次々に射殺していく描写、壁や床に飛び散る血液というのは人によっては怖い・グロテスクだと感じるのかもしれません。
淡々と殺害していく様子にむしろ狂気を感じる!という方もいらっしゃるのかもしれませんが、個人的にはそういった感想もありませんでした。猟銃1本でほとんどの生徒を殺そうとしていて、やや手際の悪さというか殺戮のテンポの悪さを感じたので、そのせいであまり恐怖感を感じることが出来なかったのかもしれません。
林遣都&美術教師のベッドシーンは必要?
悪の教典では前島雅彦役・林遣都さんと美術教師による、教師と生徒&同性愛カップルのベッドシーンも話題のようですが、正直必要性を感じませんでした。
年々、LGBT関連や男性教師による男子生徒への性的暴行などもニュースで報道されるようになってきているので、学園を舞台にした映画でそういったシーンがあるのは良いとは思うのですが、教師による生徒殺戮がテーマのこの映画では必要ないのではないでしょうか。
同性愛カップルであることは、最終的に美術教師が男子生徒との無理心中を図ったものというハスミンの計画のために必要なことだったとしても、ベッドシーンは絶対に必要ないですよね。主演である伊藤英明さんのベッドシーンは事後の状態でチラッと映る程度なのに、なぜ林遣都さんと美術教師の行為のシーンはじっくりと撮ったのでしょうか。
伊藤英明さんもベッドシーンこそチラッと映る程度で少ないものの、全裸でいるシーンが多かったように思います。廃墟のような自宅にいるときはほぼ裸でしたし、上半身だけ裸ならまだしもなぜ全裸なのか…。あんなに何度も全裸状態で映るのは、正直ウンザリしてしまいます。
R15+の映画ということでセクシーなシーンが多いのかもしれませんが、物語に不必要なセクシ―演出は映画を観る上で邪魔に感じました。
美彌のパンツを言い当てる山田孝之
悪の教典で一番記憶に残るのは、脇役のはずの柴原徹郎役・山田孝之さんです。
最初はハスミンと関係を持つ女生徒・安原美彌の万引きをネタに肉体関係を迫るという淫行教師で登場していたのですが、文化祭準備途中にはドラムを叩いて生徒に注目されていたり、生徒にジュースでも買えとお小遣いを渡していたり、ハスミンが殺戮を繰り返す時にはさすまたを持って駆け付けたり、ちょっとカッコイイキャラクターでもありました。
個人的にドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズや『闇金ウシジマくん』シリーズなどで山田孝之さんが大好きなためかもしれませんが、良い人なのかダメな人なのかミステリアスなキャラクター、謎の存在感と一瞬で笑いをとるインパクトが凄くてとにかく目立つし印象に残るキャラクターでしたね。
ハスミンに射殺される間際には、お土産として脱ぎたての美彌のパンツを渡されてニオイを嗅ぐ、そしてニオイでパンツの持ち主を言い当てるという変態すぎる死に際がまた笑えて最高でした。感想を調べてみるとこの死に際には下品、無駄という意見もあるようですが、私と同じように勇者ヨシヒコや闇金ウシジマくんのような真面目に不真面目な雰囲気、シュールな笑いがお好きな方には気に入るシーンなのではないかと思います。
正直、山田孝之さんが笑いどころのちょい役で終わっているのはもったいない感じもしますが、この無駄遣い感も個人的にはかなり気に入っています。
突っ込みどころが多い
悪の教典には気になる点や突っ込みどころが多いので、リアリティを求める方やサスペンス好きな方にはイマイチな作品なのかもしれません。
個人的に一番気になったのは警察の対応。学生時代からハスミンの周りで不自然な死亡事件が何件も起きているにも関わらず、ハスミンをマークしてるわけでも調査するわけでもなく、なぜハスミンがこんなにも疑われていないのかが疑問です。
最後に生存した生徒の1人が「お前がみんなを殺したんだ!」と掴みかかろうとしている時にもハスミンが疑われる様子はなく、AEDの録音データという証拠が出たからやっと逮捕されることになっていますよね。なぜ生徒の方は微塵も信じられることなく、疑惑の多いハスミンの方が絶大な信頼を得ているのか疑問です。他の生徒達は射殺されているにも関わらず、1人だけちょっとした傷と拘束だけで生きているのは明らかにおかしいですよね。
確かに周囲から寄せられている信頼、評判の良さ、パッと見の人柄の良さ、立場などもあるのかもしれませんが、あそこまで疑われていないのはさすがに不自然でした。
イジメ騒動で保護者が死亡した件で警察が事情聴取に来た時にも、釣井先生がハスミンの事や以前赴任していた学校のことなどヒントを伝えているにも関わらず、なぜそのまま何事もなく帰っていってるのでしょうか。てっきりそこで警察がハスミンの事を調べ始め真相に迫っていく展開だと思ったのに、実際に調べまわったのは1生徒である早見圭介の方でしたよね。
先生と生徒の戦いというストーリー展開のためには致し方ないことなのかもしれませんが、そうであれば最初から警察をストーリーに絡ませなければいいのにとも感じました。セクシー演出と同じように、中途半端なシーンでした。
バッドエンドとしてもハッピーエンドとしても微妙
教師の鑑のような人物が実はシリアル・キラーとして生徒達を惨殺するも、生存者がいたために逮捕。しかし先生は精神鑑定狙いの演技で余裕…というエンディングでしたが、全体的に中途半端でバッドエンドとしてもハッピーエンドとしても微妙だと感じました。
二面性のあるシリアル・キラーというテーマは良いのですが、犯人として逮捕される工程もイマイチですし、結局殺しきるわけでも逃げ切るわけでもない感じが何とも中途半端です。
個人的には生徒達全員を殺害した後に計画を成功させて、新たな地でまた教師を始めたり快適な生活を送るシーンで終わるか、裁判で精神鑑定に持ち込み無罪判決を受けるとこまでやるか、最後に生き残った生徒が「何故みんなを殺したんですか…?」と問うとか、何かキリの良いエンディングが欲しかったですね。
to be continued…?
映画の最後、「こいつはもう次のゲームを始めてるんだ」という生存生徒のセリフ、口笛を吹きながら逮捕される先生、実は生きていた美彌…そしてto be continuedという字幕で終わりますが、続編を出す予定なのでしょうか?
個人的には今作で納得のいかない部分が多いですし、エンディングも微妙な感じで終わってしまったので続編が出るのは良いと思うのですが、これ以上に何をするつもりなのでしょう。ここから何を続けるつもりなのか、続編を見たら今作での疑問点に納得がいくのか…、楽しみとは違った意味合いで気になるところです。
続編ではありませんが、この映画が上映される前に『悪の教典 ‐序章‐』というWebドラマは出ているらしく、この殺戮が起こる前の前日譚のような形でどうやってハスミンが裏の顔を隠して生きてきたのかが分かるらしいです。
現在はdTVで視聴できるようなので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
映画「悪の教典」の個人的な考察
映画内では明確に語られなかったハスミンが両親や生徒達を殺害する理由について、そしてネット上にあったリストカット女生徒の生存説について、個人的な考察をご紹介していきます。
あくまでも個人的な考察なのでこれが正解というわけではありませんが、こういう考え方もあるのかと参考程度に見て頂けると幸いです。
ハスミンはなぜ両親や生徒達を殺害するの?
ハスミンは「快楽のための殺人ではない」と言っていますが、ではなぜ周りの人々を次々に殺害していくのでしょうか。
個人的にはただ邪魔だったからだと考えています。
両親や釣井先生、早見、美彌はハスミンの裏の顔や過去のことに繋がる秘密を知ってしまったために殺害されました。自分の邪魔をする、秘密を誰かに話すかもしれない、秘密をネタに自分を脅してくるかもしれないという不安から来るような理由というよりも、ただ知ったから殺すというだけだと個人的には思います。
秘密を知ってしまった人物はおそらくハスミンにとって『蚊』と同じような感覚なのだと思われます。
蚊を見つけた時に刺されたら痒くなるから、周りをブンブン飛び回って不快だからといった分かりやすい理由を付けてから殺したりしないのと同じように、とりあえず自分にとって邪魔になりそうなものを見つけたら殺すという反射的なものなのではないでしょうか。ハスミンにとってはそれが蚊ではなく、人間だったというだけのことだと考えられます。
そして、クラスの生徒全員を殺害したのは『ゴキブリ』と同じ感覚だったのでしょう。
ゴキブリを1匹見つけたら100匹いるという事と同じように、秘密を知っている者が1人いたら他の人々も知っているかもしれないという考えから、全員駆除しなければという考えにいたったのだと思います。猟銃はハスミンにとってバルサンのようなものだったのかもしれませんね。
映画冒頭でハスミンの両親らしき人物が「あの子には共感能力がない」「何が正しくて何が間違ってるか理解していない」と言っていることから、ハスミンは殺しを悪いことだとは思っていないと考えられます。
殺される人の悲しみや恐怖、憎悪などは理解できず、罪悪感や後悔もなく、ただ自分にとって邪魔になりそうなものを排除しただけなのではないでしょうか。
リストカット生徒も実は生き残り?
生き残り生徒は2名ではなく、教室でリストカットしていた女生徒も実は生きているんじゃないかという考え方もあるようですが、個人的にはその考えには否定派です。
マネキンに血糊で特殊メイクを施していた美術部員の生徒が近くにいたため、彼に特殊メイクでリストカット跡をつくらせて自分は死んだふりをしていたんじゃないかという考えらしいのですが、だとしたらなんで特殊メイクを施した本人はぼーっとそばにしゃがみこんでいたのでしょうか?
もし特殊メイクで死んだふりをしようと思っているのであれば、この美術部員の生徒には恋人の美術教師という死にたくない理由があるはずなので、自分にも特殊メイクを施して隠れておくと思うのです。
この考え方だと、人にやっておいて自分にはしないという結果にどうしても違和感があるので、個人的にはリストカット女生徒は本当に自殺していると考えられます。
観返そうとはあまり思わない…
悪の教典は殺戮シーンの狂気もエンディング・ストーリーの面白さもなく、不必要に感じるシーンばかりが悪目立ちする残念な作品でした。面白そうなテーマと伊藤英明さん主演の映画ということで期待していただけに、この内容は残念でした…。
個人的にはまた観返そうとは思いませんが、伊藤英明さんの「to die!?」と山田孝之さんの「…美彌?」というシーンだけは気が向いたときにまた観たいと思います。
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