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実写映画『南瓜とマヨネーズ』ネタバレ感想・解説・考察!ダメ男との共依存を描いた恋愛映画

主題歌のような曲を歌う太賀が上手い!劇中歌「ヒゲちゃん」の歌詞の意味

映画『南瓜とマヨネーズ』は同名の人気漫画を原作にした恋愛映画です。

主人公ツチダとアルバイトをろくにせず音楽に人生もかけるせいちゃん、元カレでプレイボーイのハギオなどとの人間模様をリアルに描いています。

せいちゃん演じる太賀の「ヒゲちゃん」の歌が上手く話題にもなりました。また、オダギリジョー演じるハギオのチャラチャラしたプレイボーイぶりもはまっています。

今回は映画「南瓜とマヨネーズ」の感想や解説、考察を紹介します。ネタバレ注意です。

目次

映画『南瓜とマヨネーズ』を観て学んだ事・感じた事

・ダメな男性と恋愛している人に観てほしい
・原作ファンのみならず恋愛映画が好きな人にもオススメ

映画『南瓜とマヨネーズ』の作品情報

公開日2017年11月11日
監督冨永昌敬
脚本冨永昌敬
出演者ツチダ(臼田あさ美)
せいいち(太賀)
ハギオ(オダギリジョー)
可奈子(清水くるみ)
田中 演(浅香航大)

映画『南瓜とマヨネーズ』のあらすじ・内容

映画『南瓜とマヨネーズ』のあらすじ・内容

売れないバンドマンのせいちゃんとその彼女ツチダの日常を描いた恋愛映画です。

せいちゃんは音楽のことで頭がいっぱいでバイトもろくに続かず、生活費をツチダに頼っている状態。ツチダもせいちゃんから離れられず、ナイトクラブのバイトや売春をしてまで音楽活動を支えます。

そんなある日、元カレのハギオと出会って心が揺れ動くツチダ。日常を切り取ったようなリアルな描写が話題をよんだ作品です。

映画『南瓜とマヨネーズ』のネタバレ感想

『南瓜とマヨネーズ』の原作は同名の人気漫画

『南瓜とマヨネーズ』の原作は同名の人気漫画(C)魚喃キリコ/祥伝社・2017「南瓜とマヨネーズ」製作委員会

『南瓜とマヨネーズ』は魚喃キリコという2000年前後に一斉を風靡した漫画家が描く同名漫画が原作です。魚喃キリコは「ガロ」出身の漫画家でおしゃれ系漫画家に位置し、洗練された絵柄とおしゃれ系の人々の「痛々しいストーリー展開がリアル」と人気を博していました。本作は魚喃キリコの代表作ともいえる作品です。

『南瓜とマヨネーズ』は青文字系雑誌の個性派ファッション誌「CUTEiE」にて1998〜1999年に連載されていて、1999年にコミック化されました。原作は都会に生きる男女の孤独感がベースになっています。孤独でいくところがなく、どうしようもない人でも離れられない共依存の関係が描かれています。

スタッフの大半は1970年代後半生まれ

原作をリアルタイムで読んでいたファンは、1970年代後半~1980年代前半生まれの方が多いのではないでしょうか。

本作の映画の制作スタッフは、1970年代後半~1980年代前半の方が多くいます。「リアルタイムで原作を読んでいて、もともと原作が好きだった人たちが映画化したのではないか」と思わせるスタッフ陣です。

漫画が原作の映画は、原作ファンをがっかりさせる作品が多いと思います。でも、「原作を読んでいた人たちが作った作品なら、原作との解離もそれほどないのではないか・・・」と期待させられます。当時の原作ファンの方は、ぜひその目で確かめてみてください。

 

また、「南瓜とマヨネーズ」は2017年公開作品ですが、映画がもつ空気感は2000年です。1980年代前後の空気感をもつ村上春樹の小説のようです。

登場人物のファッションやヘアスタイル、インテリアなどが2000年当時を思い起こさせるので、当時を懐かしみたい方はおすすめです。でも、当時つらい恋愛をしていた方は、当時を思い起こして暗い気持ちになる可能性もあるのでお気を付けください。

ライブ映像をiPodと思しきタブレットで観ているなど、当時はなかったデバイスが劇中に出てきます。スマホも出てくるので、時代設定としては2017年かと思われます。

映画は原作のイメージをそれほど壊していない

映画は原作のイメージをそれほど壊していない(C)魚喃キリコ/祥伝社・2017「南瓜とマヨネーズ」製作委員会

映画版は映画ならではの派手さがあまりなく、原作イメージ通り自然でゆるくて肩の力が抜けたような気だるいイメージです。タイトルの文字だけがさりげなく出てくるオープニングは原作のイメージ通りです。

しかし、漫画のコマのすみからにじみ出るさりげない演出は、映画だと大画面で俳優さんが演じるので少しわざとらしくなっています。臼田あさ美の演技を大げさに感じる方もいるかもしれません。

原作漫画はモノトーンでコントラストのはっきりしたイラストがとても洗練されています。実写はやはりカラーなので、漫画のような独特の世界観ではありません。ナイトクラブで働く女の子の切なさを描いた映画『月曜日のユカ』のように「モノトーン映画にしても面白かったのではないか?!」などと考えたりもしました。

映画版せいちゃんは男くさくて武骨なイメージ

漫画版せいちゃんは細くて弱そうで中世的かつ草食系男子のようなイメージです。映画版は俳優の太賀が演じていて、ひげを生やした少し筋肉質で男くさい雰囲気です。

太賀は俳優の中野英雄の次男です。映画ではヒゲがあってダラダラしているからか30歳くらいに見えましたが、1993年生まれで当時20代半ばです。

太賀演じるせいちゃんは、頼りないダメ男性の雰囲気がとてもあります。最初の登場シーンのヘラヘラ笑っている姿など、“いい加減な男性”という感じがにじみ出ていて、「演技のうまい俳優さんだな」と思いました。

せいちゃんは夢を追う男でバイトもろくにしませんが、人柄はいい人物として描かれています。ツチダが自分の音楽のために売春していることを知り、まじめに働き始めるなど、倫理観も持っていて性根はくさっていません。

主題歌のような曲を歌う太賀が上手い!劇中歌「ヒゲちゃん」の歌詞の意味

主題歌のような曲を歌う太賀が上手い!劇中歌「ヒゲちゃん」の歌詞の意味(C)魚喃キリコ/祥伝社・2017「南瓜とマヨネーズ」製作委員会

『南瓜とマヨネーズ』で注目された太賀が歌う「ヒゲちゃん」。公式サイトに“主題歌”という表現がなく劇中歌として紹介されていますが、本作のメインの曲と思われます。

太賀はびっくりするほど歌が上手いです。素朴で少しざらざらしていて優しい歌声です。「俳優が歌う歌なんて聴けたものじゃない」と思っている方は、ぜひ一度ご清聴ください。同作のPR映像などで聴くことができます。

「ヒゲちゃん」の音楽監修と制作は、音楽プロデューサーのやくしまるえつこが担当しました。やくしまるえつこは、サブカルの香りを感じさせる少女のような歌声です。彼女も同曲をセルフカバーしています。

 

映画の終盤では、せいちゃんはツチダに向かって自作の曲「ヒゲちゃん」を歌います。「迷子の~迷子の~だれかさんー」などと歌っているので、「ツチダを困らせておいてお前がのんきに“誰かさん”などと他人事のように言うな」とツッコミをいれたくなりしたね。

この“誰かさん”は、自分自身とツチダのことを指しているかと思いました。目的が定まらず音楽に迷っているせいちゃん自身と、誰が好きか自分は何をしたいか分からないツチダのことを歌っているようでした。

原作漫画のせいちゃんはヒゲが生えていません。ヒゲのような模様をもつ猫が出てきます。「ヒゲちゃん」の曲につなげるために、せいちゃんにヒゲを生やさせたのかと感じました。

「何考えてんの」と泣くツチダの痛み

寝ているせいちゃんを揺さぶりながら「何考えてんの」と号泣しつつ話しかけるツチダ。ダメな男性と一緒にいる女性の悲痛なシーンでした。

せいちゃんは仕事が決まったので、働いたことによる疲れで寝ていました。「ああ、仕事が決まったのね。よかったね」というところですが、就職活動をしていて就職が内定したら生活を支えてくれていた彼女にまず報告した方がいいのでは…。

「大切なことをきちんと話さない」「言わなくても分かってくれるだろう」「分かっていなくても構わない」という、人を思いやらない利己主義的な人柄が垣間見えるシーンだと感じました。「そこまで言うか」というところですが、せいちゃんからの反応を泣きながら必死に求めるツチダがとてもかわいそうでした。映画終盤にツチダとの関係を清算しようとする理由を知り、彼は人のことを思いやれる人物なのだと感じました。

オダギリジョーはなかなか出てこない

オダギリジョーはなかなか出てこない(C)魚喃キリコ/祥伝社・2017「南瓜とマヨネーズ」製作委員会

ツチダの元カレであるハギオ演じるオダギリジョーはなかなか登場しません。ちらっとは出てきているのかもしれませんが、はっきりと現れて存在感を放つのは、映画がスタートしてから42分後です。

臼田あさ美の演技はとってもキャラクターに馴染んでいて上手なのですが、雑誌「CanCam」などのモデル出身ということもあり、オダギリジョーが出るまではちょっとハラハラしながら観ていました。

オダギリジョーが出てからは安心して映画を観ることができましたね。オダギリジョーはすごく自然で、演技でなく本音を話しているようにさりげなく喋り、ご本人の人柄は知りませんが、クズ男性を上手に演じています。

ツチダから見る“軽く扱われる女性”の特徴

ツチダから見る“軽く扱われる女性”の特徴(C)魚喃キリコ/祥伝社・2017「南瓜とマヨネーズ」製作委員会

ハギオに適当にあしらわれるツチダは、男性から軽く見られている女性なのだと感じました。「軽く見られているのに、必死に追いかけるから余計に軽く扱われるのだよ!」とツッコミたくなります。

ダメ男性から適当に扱われ、大切にされていないようなツチダに胸が痛みます。適当に扱われても怒らず受け入れ、それでも「好き好き」と連呼することは軽く扱われる女性の特徴なのかと感じました。

「こんなにダメな俺のことを好きと言ってくれるなんて大切にしよう」と考えてくれる男性もいるかもしれませんが、ハギオのような男性は「こいつには何をしてもいい」と思ってなめてくるのかもしれません。

 

そして、ツチダのダメっぷりも目を引きます。バイトが長続きしないせいちゃんは、自分の宝物のようなな音楽機材を売ってお金を作ろうとします。

ツチダは「お金の心配をしなくていい。私が働くから」と言います。「せいちゃんの宝物じゃん」と言って止めるツチダに「いいよ、気にしなくて」とせいちゃん。それなのに、機材から音を立てて名残惜しそうにしています。結局、ツチダが3万円でその機材を買い取ります。

ダメですね。ダメダメです。ツチダに頼るせいちゃんもダメですし、ダメなせいちゃんを受け入れるツチダもダメなのでしょう。ツチダのせいでせいちゃんがダメになるのではなく、せいちゃんがダメだからツチダがそうせざるを得ないのです。ツチダ自身のために、「ツチダ、目を覚まして!」と思いましたね。

【ネタバレ】ツチダの友人から飛び出す名言

ハギオとせいちゃんのどちらを選んだらいいか迷うツチダに、友人の可奈子ちゃんから名言が飛び出します。

「ハギオのことが気になるのは、過去のツチダ自身のため」と指摘し、「どっちも別れたほうがいいよ。どっちか選んだら、選ばなかった方にいつまでも情が残るから。」とアドバイス。

「一人の人で満たされていないということはその人ではダメだ」ということだと思いました。「二股をかけているのはもう一人の人が魅力的だから」というより、「今付き合っている人だけでは満たされない」ということです。

今、2人の人に心が揺れ動いている方は「可奈子ちゃんのアドバイスの通り思い切って2人と別れてみたらいいのではないか」と感じました。

原作者の魚喃キリコとは

原作者の魚喃キリコさんは原作に登場する主人公ツチダにそっくりのルックスです。見た目も美しく、ロングの黒髪でサブカル的な雰囲気を身にまとっています。

映画化された別の原作漫画『ストロベリーショートケイクス』にも出演されています。映画に出ましたが、漫画家と女優の二束のわらじというようなフラフラした感じではありません。

映画「恋の門」で漫画家安野モヨコと映画監督庵野秀明が旅館の夫婦として出演したときのような、漫画ありきで友情出演したようなイメージです。執筆される漫画のほとんどが痛々しくて自虐的な恋愛観なので、ご自身の実体験を盛り込んでいるのかなと感じています。

【考察】なぜ2017年に映画化したのか?

『南瓜とマヨネーズ』は2000年に大ヒットした漫画ですが、なぜ2017年に映画化したのでしょうか。それは、最近ダメな人と生活をともにする人が増えたからだと思います。

あえて今の時代に「ダメな人との関係を見直そう」「自分の幸せについて考えよう」というメッセージを発しているような気もしました。今、ずるずるとダメな関係を続けている人は、本作を観て一度冷静になってみてはいかがでしょうか。

【考察】『南瓜とマヨネーズ』のタイトルの意味

【考察】『南瓜とマヨネーズ』のタイトルの意味(C)魚喃キリコ/祥伝社・2017「南瓜とマヨネーズ」製作委員会

『南瓜とマヨネーズ』というちょっと読みにくいタイトルに込められた意味は何でしょうか。原作者の魚喃キリコさんは、ペンネームからして読みにくいですよね。一見して読めないようなネーミングが好きなのかもしれません。

南瓜(かぼちゃ)はせいちゃんでマヨネーズはツチダを示しているのだと思いました。南瓜は固くて扱いにくく、でも上手に料理をするとおいしい。せいちゃんは、音楽に対しての考えが意固地で音楽仲間とももめたりする少し頭の硬い男性です。

マヨネーズは何とも合いやすくて、トロリとして決まった形をもたない調味料です。ツチダは、せいちゃんを愛していながら、元カレのハギオに会ったらハギオへのおもいが燃え上がって気持ちが流れていきます。邪見に扱われても、その人にすがるような女性です

そんな固い個体と液体のような2人をイメージしたタイトルだと感じました。

【考察】原作ファンは映画版の結末を観ても楽しめる

原作漫画ファンの人のうち、映画版を観るのが怖い人もいるかもしれません。映画版は、結末を含め原作にはない要素も含められています。「漫画の世界観が壊されていたらどうしよう」と思うかもしれません。

原作漫画版と映画版を比べると、映画版は漫画版の“ゆるく流されていくどうしようもない不条理さ”はそのまま描かれています。カラー作品で俳優が演じる以上、少し雰囲気は異なりますが、原作のもつ世界観は壊れていないと感じました。

実写化されているからか、漫画版の毒気は少し抜けています。漫画版で悪い奴だったキャラクターも少しいい人に描かれていて、作品全体から漂う暗さが軽減しています。人物描写が細やかなになっていて、人間模様も楽しめます。ただ、連載当時に漫画版から強烈に放たれていたサブカルチャーを感じさせる洗練された印象は映画版にありません。

【考察】原作が人気だった理由を時代背景から解説

原作が発表された2000年前後は、倉田真由美作の漫画「だめんず・うぉ〜か〜」が流行するなど、ダメ男性にはまる女性が話題になっていました。その後、草食系男子ブームへと移行します。

就職氷河期に入ってしばらく経ち、学校卒業後に就職できない男性が増えてきた時代です。当時の20代前半には「自分探し」「自己実現」を求める考え方があり「自分のやりたいことをつらぬく」というのが「カッコいい」風潮でした。

特にサブカル文化の住人たちにその傾向が強かったと思います。『南瓜とマヨネーズ』のど真ん中の読者層はサブカル文化の住人たちです。本作は当時のそういった人たちから「リアルに描かれている」と熱い支持を得ました。

「南瓜とマヨナーズ」はダメ男性と別れたい女性に観てほしい作品

『南瓜とマヨネーズ』の感想と解説を紹介しました。本作は人気漫画を原作にしていて、ダメ男性に依存する女性の姿を描いています。

原作のイメージをそれほど壊しておらず、原作より少し明るいタッチで救いがあり、人物描写が細やかな作品に仕上がっています。ダメ男性と別れられない方やいつも恋愛がうまくいかない方は、一度ご覧になってみてください!

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