人気小説の実写化映画『君の膵臓をたべたい(キミスイ)』。衝撃的なタイトルから繋がる青春ストーリー・結末が魅力的な作品だったのですが、個人的にはキャラクターとセリフに共感できなかったためか、惜しい!と感じる作品でした。
今回はそんな『君の膵臓をたべたい』についての詳しい感想や解説、考察をご紹介していきます。感想と考察ではネタバレを含みますので、映画ご視聴前の方やネタバレを避けたい方はご注意ください!
目次
映画「君の膵臓をたべたい」を観て学んだ事・感じた事
・タイトルと結末の意外性はスゴイ!
・キャラクターとセリフには共感できなかった
・どちらかと言えば男性におすすめの作品
映画「君の膵臓をたべたい」の作品情報
公開日 | 2017年07月28日 |
監督 | 月川翔 |
脚本 | 吉田智子 |
原作 | 住野よる |
出演者 | 北村匠海(僕/志賀春樹) 小栗旬(12年後の僕) 浜辺美波(山内桜良) 大友花恋(恭子) 北川景子(12年後の恭子) 桜田通(委員長) |
映画「君の膵臓をたべたい」のあらすじ・内容
まもなく閉館予定の校内図書館で蔵書整理担当となった教師・志賀春樹。
在校生の頃にも図書委員をしていた春樹は懐かしの図書館・本に触れながら、同じく図書委員だったクラスで人気者の女子・山内桜良と過ごした数か月間を思い出してゆきます。
同じクラスとは言えほとんど関わりもなかった2人でしたが、膵臓の病であと1年生きられるか分からないと宣告されている彼女が書いていた共病文庫を偶然拾ったことから知り合い、秘密を共有する仲良し君として彼女の死ぬ前にやりたいことや行きたいところなど…平凡な毎日に付き合うようになりました。
しかし、彼女の秘密を知らない親友・恭子は突然仲良くなりだした春樹の存在が面白くないらしく、何かにかけて春樹に突っかかるように…。
映画「君の膵臓をたべたい」のネタバレ感想
大人になった春樹が過去を回想していき、現代と過去が交差するストーリーは面白いですし、病気と戦っている最中に突然訪れる死という結末がかなり斬新で、かなり魅力的な映画だったと思います。
ただ、個人的にはどうしても桜良というキャラクターとセリフに違和感があるせいか共感しにくく、そこまで感動したり心動かされたりはしない作品でした。
【解説】現代の僕が過去を回想するストーリー
今作は高校生たちが主役の映画ではあるものの、あくまでも大人になり教師となった春樹が図書館に再び訪れることで蘇った記憶を語る思い出話、思い出すことによって現在で行動を起こすというのが印象的でしたね。
途中からは現在の春樹の語りがなくなって過去映像のみになったりする場面もありますが、それでも過去の出来事に一区切り付く度に現在の春樹が登場して、思い出したことを元に現在で行動を起こすようになっています。
こういった過去の想い出を思い出す映画だと大体の作品が映画の最後に大人になった状態の主人公たちが登場したり、前半は過去を回想して後半に現在の話で締めるというストーリーが多いイメージがあるのですが、今作は途中途中に現在の話が出てくるので新鮮でした。
また、最後にまとめて現在のシーンをやらずに少しずつ現在のストーリーを進めてくれるので、過去の話と平行して現在の話も理解しやすくテンポ良く進んでいくので個人的には観やすかったなと思います。
ちなみにマンガ版と映画版では最初の流れが違うようですね。映画版だと12年後という大人になった僕が古い思い出を思い出す形からストーリーが始まりますが、マンガ版だと冒頭は桜良の葬式後あたりから始まっていました。
原作は読んだことないので分かりませんが、もしかしたらこの12年後の話というのは映画オリジナルの展開なのかもしれません。
個人的には、過去と現在がちょうど良いバランスで交差している魅力的なストーリーだったと思うのですが、マンガを気に入ったから映画の方も観てみるという方・原作ファン・原作に忠実な映画を求めている方にとっては違和感がある展開で、人によって好みが別れる展開なのではないかなと思います。
舞台のような滑舌と動き
今作のヒロイン・桜良を演じている浜辺美波さんの活舌がとても良かったためか、キャラクターの大ぶりな動きや設定のためか、セリフが聞き取りやすくて助かった反面、活舌が良すぎて少し舞台っぽく感じてしまう部分がありました。
キャラクターの設定上しょうがないのかもしれませんが、セリフの1音1音をしっかりとした声量とハッキリとした発声で話し、場所を広く使った動き方がすごく舞台っぽくて、舞台で見ればかなり映えるとは思うのですが、高校生が主役の等身大で身近さが売りの青春映画としては少し違和感がありましたね。
また、その舞台っぽい動きが青春映画のワンシーンで観ると、公共の迷惑になっているのではないかと感じてしまう部分が多く…。
高校生らしい動きと言えばそうなのかもしれませんが、大勢のお客さんがいる店内で突然大声を出したり、大ぶりな動きで自由に動き回っていたり、自分が生活の中で見掛けたら迷惑だなと感じるようなことをしているように見えてしまったので、どうしても気になってしまいました。
個人的にはもう少し自然な演出がなされていれば良かったなと思います。
桜良がちょっとうざい…
そしてその自由奔放な動き・キャラクターのためか、女性としては少し桜良がうざったく感じてしまいました。
春樹との関係に関しても自分の落ち度で落とした物を拾ってくれたクラスメートを自分勝手に巻き込んだり、自分の都合で連れまわしたり、彼の都合はおかまいなしで動き回ってますし、公共の場である店内での自由過ぎる行動もやはり気になります。
クラス内で春樹とのことが噂になったことで彼に迷惑を掛けているにも関わらず、それを悪いと思っている様子もなく、やめてと言われている膵臓に関するブラックジョークもずっとやめませんし…。
そして、個人的には図書委員のとしての仕事の雑さが一番気になりましたね。
彼の気を惹きたいからと言って「ちょっと雑でもいいじゃん」「宝探しみたい」と適当に本棚に入れていたりするのは、図書委員として真面目に仕事をしている春樹に対しても他の委員に対しても失礼で迷惑な行動だと思いました。
恋愛映画は大好きなのですが、自分の都合で周りの人々に迷惑を掛けるタイプのヒロイン・主人公にはどうしても共感し難く、彼女の行動が気になるあまり、そんな彼女を何だかんだで受け入れて好意を持っていく春樹にも共感できませんでした…。恋愛映画としては個人的には合わなかったかなと思います。
死を身近に感じているからこそのカラ元気、明るく生きていこうとするキャラという設定なのかもしれませんが人の迷惑を考えられない自己中にしか見えず、女性からは嫌われるタイプの女性像というように感じてしまいました。
桜田通さんの委員長が良かった!
今作中で1番好きなキャラは桜田通さん演じる委員長でしたね!
映画中ではつまらないことで怒る粘着質な元カレというお世辞にも良いキャラとは言えないポジションなのですが、個人的に表面上は良い子を演じながら内面が腹黒いタイプのキャラが好きなので、良い人で終わらずに爆発していた委員長は良いキャラしてたと思います。
上履きや本を隠したり、家の周りをうろついてストーカーしていたのは行き過ぎた行動だとは思いますが、自分を振った元カノがクラスの冴えない男子と突然仲良くしだしたら気になるのは当たり前ですし、何でお前が…と思う心理も理解できました。
そして桜田通さんの演技がまた良いですよね。自分の想いが桜良に伝わっていないと知った時の「何でなんだよ!」と叫んだときの迫力、鬼気迫る感じ、良い子の皮が剥がれて腹黒さが全面に出てきている感じがキャラクターと良く合っていて、さらに委員長の良さを高めているように感じました。
ちなみに桜田通さんはこの映画当時26歳と、実際の高校生とは10歳程度の歳の差があるのですが、高校生役として違和感なく馴染んでいてそこにも驚きましたね。
何だかんだでずっと春樹の側にいてくれるガム君も良かったのですが、個人的には委員長の方がイチオシです!
セリフにあまり共感できなかった…
個人的にキャラクターに共感できなかったためからか、彼らのセリフにも共感できず、自分の中に響くものはありませんでした。
2人の出会いに関して桜良が言った「偶然じゃない。運命なんかでもない。君のしてきた選択と私がしてきた選択が私たちを会わせたの。私たちは自分の意志で出会ったんだよ。」というセリフ。
偶然や運命を否定しているのは良いのですが、自分たちの意志で出会ったというのは違うのではないかなと個人的に思いました。
桜良が自分の意志で共病文庫を春樹の前に落としていたとすれば、桜良側の意志で出会いのきっかけをつくったということで自分の意志で出会ったというのには納得できるのですが、それを拾った春樹に関してはただ偶然なのではないでしょうか。
その時点ではその本が桜良の物かどうかを春樹は知らなかったわけですから、春樹は桜良と出会おうと思って本を拾ったわけではないので「私たちの意志で出会った」というセリフは少し違うかなと思いました。
そして、退院後のデートで春樹が桜良に宛てたメール「生きることを愛し、世界を愛し、人を愛し、自分を愛し、君は本当にスゴイ」や、そのメールの最後や桜良の手紙の最後に書かれた「君の膵臓をたべたい」という一文など、自分の世界の中だけで完結しているセリフに感じられて、個人的には共感しにくい部分がありました。
全体的に名言っぽい良いことを言っているとは思うのですが、少しクサすぎるような感じがありますし、映画として第三者の視点で観ているとちょっとついていけないなと感じてしまうようなセリフでしたね。
通り魔に殺害されるという結末
今作は通り魔に殺害されるという結末の衝撃、裏切り感は非常に良かったです。
病気を患うヒロインが余命を待たずに通り魔に殺害されてしまうというのが、後味は悪いもののリアルな展開だったと個人的には思いましたし、ただの青春・恋愛映画として完結することなくブツンと2人の関係が途切れてしまうような展開がとても斬新でした。
映画『ボクの妻と結婚してください。』『湯を沸かすほどの熱い愛』などの病魔に侵されていく主人公をテーマにした映画だと、大体が余命宣告された通りの期間を生き抜くものの最後は病気のため死亡という結末が多かったので、似たようなテーマでありながらここまで違った結末があるのかと、その結末によって作品の印象がガラッと変わるということに驚きましたね。
そして今作は青春をテーマにした映画だからこそ、大切な女性の姿がキレイな記憶・状態のまま終わっているというのが良かったと思います。
最終的には希望の最中、通り魔に殺害されてしまうという悲惨な状況で人生を終えてしまっているものの、春樹の中では病気と戦いながらも前向きに生きている彼女の姿のままなわけですから、青春の思い出としてキレイなまま残っていました。
大人になった現在に思い出される彼女もそんな美しい姿のままで、病気に苦しむ姿ではなく、美しい姿のまま春樹の中で永遠に生き続けるというのが実に高校生らしいですし青春っぽくて、良い結末だったのではないかなと思います。
映画「君の膵臓をたべたい」の考察
2人が出会うきっかけとなった共病文庫はわざと落とされたものなのではないか、タイトルにもなっている「君の膵臓をたべたい」の意味、友達への遺書をあえて春樹に手紙として託した理由について考察していきます。
あくまでも個人的な考察なのでこれが正解というわけではありませんが、参考程度に見て頂けると幸いです!
共病文庫はわざと落とした?
あんなにバサッと音がするほど勢いよく落とした本に気付かないというのは不自然ですし、春樹が本を拾ってから序文を読むまでの時間をあえて与えているように感じたので、もしかしたら桜良は共病文庫をわざと春樹の側に落としたのではないでしょうか。
桜良は元々春樹に興味があったようですから、病院で偶然見かけた春樹に話しかけたいと思った桜良が、彼に近付くきっかけのためにわざと本を落としたと考えれば「私たちが出会ったのは偶然じゃない」というセリフにも納得がいきます。
共病文庫内に「秘密を知られた。焦った」とあったのは、拾ってもらって話すきっかけをつくろうとは思っていたけど中身を読まれるとは思っておらず焦ったという意味か、後々共病文庫のことを読む両親・春樹のことを考えての女子高生らしいちょっとした見栄や嘘だったのではないでしょうか。
個人的には桜良というキャラクタ―的に、わざと落としたという方が納得できるなと思います。
「君の膵臓をたべたい」のタイトルの意味
桜良にとっては健康な膵臓を食べることで、自分の膵臓を治して生き続けたいという意味だと思われますが、春樹にとっては相手の膵臓を食べることで自分の中で生き続けてほしいという想いがあったのではないでしょうか。もしくは相手の一部を自分に取り込むことで、君のような人になりたいという想いもあったのかも。
この作品が恋愛映画ということ、肝臓の機能を思えばもう1つ違った考え方もできます。
『肝臓がないと人はエネルギーを得られなくて死ぬ』という肝臓の機能を思えば、自分に元気を与えてくれる君は、私にとって肝臓のようなものという想いがあったのかもしれません。
自分にとって元気の源である君がいなくては私は生きていけません、私にとっては君は生きる気力を与えてくれる人でしたという、彼らなりの告白だったのではないでしょうか。
映画内の中で語られていないことなので分からない部分もありますが、彼らが大切な場面で「君の膵臓をたべたい」というセリフを入れていることを思うと、「生きたい」「好き」といったことを表しているのではないかなと思います。
友達への遺書を春樹に手紙として託した理由
恭子の遺書への追伸で「彼とも友達になってね。」とあったこと、桜良が生前「恭子のことをよろしく」「友達になって」と言っていたことを思うと、2人が友達になれるようなキッカケをつくっていたのではないでしょうか。
恭子には何も告げず、春樹なら必ず見つけてくれると信じて彼にだけヒントを残し、彼の手から恭子の元に手紙が渡ることで話すきっかけをつくり、手紙を読んだ恭子が彼と友達になってくれるようしていたのだと思います。
自分が居なくなった後に恭子と春樹が寂しがらないように、友達作りがへたくそな友人たちが新しい友達をつくれるようにと、2人の友人・桜良からの最後の紹介状だったのではないでしょうか。
ストーリーと結末が良かった!
映画「君の膵臓をたべたい」は過去と現在が交差しているストーリーや、病気に侵されたヒロインが通り魔にあって殺害されるという衝撃の結末は魅力的だったと思います。
キャラクターに共感できる方であればもっと楽しめる作品だと思うので、興味のある方はぜひチェックしてみてください!
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※2019年8月現在の情報です。