海外映画/洋画の感想

映画『羊たちの沈黙』ネタバレ感想・解説・考察!クラリス、ハンニバルの演技が凄い!伝説の名作はいま観ても面白い?

異例のアカデミー賞に輝いた傑作

映画『羊たちの沈黙』はジョナサン・デミ監督によるサイコ・スリラー映画です。三十年もの間語り継がれるのも納得できる、非常に味が濃い一本でした。

今回はそんな『羊たちの沈黙』の個人的な感想やネタバレ解説、考察を書いていきます!

目次

映画「羊たちの沈黙」を観て学んだ事・感じた事

・これぞ映画と言うべき圧倒的な映像が満載
・細部にこめられた仕掛けも素晴らしい
・名作ゆえに模倣されすぎて、今では新鮮味がなくなってしまった

映画「羊たちの沈黙」の作品情報

公開日1991年2月14日(米国)
1991年6月14日(日本)
監督ジョナサン・デミ
脚本テッド・タリー
原作トマス・ハリス
出演者クラリス・スターリング(ジョディ・フォスター)
ハンニバル・レクター(アンソニー・ホプキンス)
ジャック・クロフォード(スコット・グレン)
“バッファロー・ビル”(テッド・レヴィン)

映画「羊たちの沈黙」のあらすじ・内容

映画「羊たちの沈黙」のあらすじ・内容

若い女性の生皮を剥ぐ連続猟奇殺人犯、通称 “バッファロー・ビル” をFBIが追っていたある日。FBI訓練生クラリスに、捜査官からある任務を依頼されます。

それは元精神科医の囚人ハンニバルに、 “ビル” の心理分析をさせるというものでした。初めはけんもほろろでしたが、ある出来事をきっかけにハンニバルが取引に応じ始めます。

その間にも、 “ビル” は新たなターゲットを誘拐し続けていて……。

映画「羊たちの沈黙」のネタバレ感想

異例のアカデミー賞に輝いた傑作

異例のアカデミー賞に輝いた傑作© 1991 – MGM

本作は、映画史上に名を残す名作中の名作ホラーです。公開からもうすぐ30年が経とうとしていますが、いまだに名前がとどろく一本です。タイトルは知ってるという方も多いでしょう。しかし、観たことがない、何がすごいのかは知らないという方もまた多いと思います。

そのスゴさは、第64回アカデミー賞の結果を見るのが一番早いでしょう。『羊たちの沈黙』は、作品、監督賞、主演男優、主演女優、脚本(脚色)におけるアカデミー賞主要5部門を独占しました。これは2019年現在に至っても、三回しかない快挙です。加えて作品賞にホラーが選出されることは珍しいことが、一層スゴさを際立たせています。

ゲット・アウト』『エクソシスト』など、ノミネートまではされるものもありますし、他の作品賞にもゾっとするシーンが含まれることはありますが、全編にわたって恐怖を引き出す映画はそうそう勝ち上がれない傾向にあります。にもかかわらず、本作はそれを成し遂げたんですね。

では、具体的に何が評価されたのでしょうか?今回は平成生まれの視点から見てみます。途中までネタバレなしです。

映画だからできる見せ方、クラリス・ハンニバルの演技がスゴイ

映画だからできる見せ方がスゴイ© 1991 – MGM

本作を語る上で欠かせないのは、やはり主演の演技です。これについては、30年経った今でもまったく色あせていません。ジョディ・フォスターが演じた主人公クラリスには、若さゆえの勇気と危うさ、そして突出した美しさがあり、実力でのし上がった女性のヒーローという印象をばっちりアピールしています。FBIの訓練生ということで気持ちはいっぱしでも身体や技術、経験はまだ未熟という様子がよくわかるのもいいですね。

とはいえ、映画史に残るほどの活躍をしたのは、伝説的な悪役ハンニバル・レクターを演じたアンソニー・ホプキンスの方です。ホプキンスは、カズオ・イシグロ原作の映画『日の名残り』では骨の髄まで執事と化したような男ジェームズ・スティーヴンスを演じてもいますが、同一人物とは思えないような表情筋の使い方にゾワゾワさせられること請け合いです。

彼が何を話し、何をするかまで話してしまうとネタバレになってしまいますが、そのすべてをひっくるめて「人食いハンニバル」という稀代の悪役を作り出しました。ダース・ベイダーのようなものとはまた違う、「独自の美学と、超人的な能力をもった殺人鬼」というイメージを1991年に作り出したことが、何よりのポイントです。

 

『羊たちの沈黙』ではそんな卓越した演技を、たびたび顔をズームインしつつ、真正面から見せてきます。ともすれば昨今の邦画でもやりがちな手法ではあるのですが、世界を圧倒した名優の顔であるだけに “圧” が違います。ただ単に国内で売れている美形を見せるようなものではなく、フォーカスされた人物の状況・心理が克明に表れるものになっています。

シワの一つまでもが問われるような顔づくりには、「この人じゃなきゃダメだ!」と思わせる力があります。他の俳優だったらこうはならなかったでしょうし、もちろん小説では出せるはずもありません。同じ出演者で舞台を演じたとしても、同じような迫力は出ないでしょう。映画だからこそ人を接近して映し、そのキャラクター性を引き出したことが、効果的な特徴になっています。

ハンニバルだけでなく二人の犯罪者を並列して描く

二人の犯罪者を並列して描く© 1991 – MGM

これだけハンニバルの話をしてしまうと、「ハンニバルがFBIを恐怖に陥れるストーリー」というイメージを持たれるかもしれません。筆者も最初に観る前はそう思い込んでおり、実際の物語とのギャップに肩透かしを食らったような気分になりました。ハンニバルは誰もが恐れる人物であり、劇中でもFBIを手玉に取ることはあるのですが、実はそれが本筋ではありません。本作のベースラインはあくまで、「訓練生のクラリスが別の連続殺人犯 “バッファロー・ビル” を追跡していく」というものです。

いくらハンニバルが超ド級の危険人物であるとは言っても、あくまで囚人です。普通に考えて、さらなる悪事を働くことはできません。監獄の中で物語が進行するはずもありませんよね。FBIはあくまで娑婆の犯罪者を追っていて、その捜査に同じ犯罪者のハンニバルが口を出していくことで “ビル” を追い詰めていきます。

とはいえハンニバルもただで協力することはなく、交渉したり、煙に巻いたり、クラリスをおちょくったりしてきます。その結果 “ビル” とハンニバル、そしてクラリスがどうなっていくのを並列して描いているのが『羊たちの沈黙』ということになります。どんな風に進展していくかは、次で見てみましょう。

ここからネタバレありです!

【ネタバレ】二人の犯罪者がどう関わる?

【ネタバレ】二人の犯罪者がどう関わる?© 1991 – MGM

クラリスが最初にハンニバルの元を訪れた際、ハンニバルは彼女に、詫びかつヒントとして昔の患者を紹介します。患者を追った末に見つけたのは、のどにメンガタスズメという種の蛾が押し込まれた男の生首でした。クラリスはハンニバルの元へ戻り、意味を尋ねます。彼は生首については煙に巻きつつも、今いる監獄から出るために “ビル” の捜査に協力することを申し出ます。

そうこうする間に “ビル” は新たなターゲットとして上院議員の娘を誘拐していました。捜査官はクラリスを通じ、議員の名を騙った偽取引をハンニバルに持ち掛けます。ハンニバルはこの取引のきな臭さを感じ取ったのかどうか、さらなる条件としてクラリスの幼少時の記憶を要求します。クラリスは、男で一つで自分を育ててくれた父が十歳の時に殉職したことがつらい思い出であると語りつつ、 “ビル” の情報を得ます。

その後すぐ、ハンニバルがいる精神病院の院長に取引のウソがバレます。出世を目論む院長はその議員へ単独でコンタクトをとり、偽取引と似た条件でハンニバルとの取引するよう呼びかけます。議員とハンニバルの双方がこれに合意し、ハンニバルと議員はメンフィスで面会します。その場でハンニバルは「犯人の名前はルイス・フレンド(Louis Friend)」などと発言した後、テネシーの別の監獄へ移されて行きます。

 

その後クラリスは自腹でテネシーへ行き、ハンニバルと面会します。そこで “Louis Friend” は “iron sulfide” (硫化鉄。見た目が金に似ており、よく見間違えられるものの実際には価値の低い金属 “Fool’s Gold” の一種)のアナグラムであると指摘します。そして “ビル” の本名を訊きただそうとしますが、彼はここでもまたクラリスの記憶を引き出すことを条件に出します。

父が殉職した後のクラリスは牧場を営む親せきの家に預けられますが、二か月で施設に映されていました。彼女は子羊たちが悲鳴を上げながら屠殺されていることに耐えられず、ある日命を救おうと勝手な行動を起こしました。しかし子羊は牧場から逃げる意思を持っておらず、幼いクラリスには一匹だって連れて逃げることはできませんでした。そのことがトラウマとなり、しばしば子羊の悲鳴がフラッシュバックしているのだと言います。答えに満足したハンニバルは書類を渡し、クラリスは帰らされます。その夜、ハンニバルは超人的な手腕で看守を殺し、檻を出て、警官を騙して脱走し、行方をくらませます。公開当時はここが高く評価されたものと思われます。

 

一方クラリスは、ハンニバルから渡された書類から、 “ビル” が最初の犠牲者に強い切望を抱いていたことに気づきます。FBI側はルイス・フレンドの情報を追っていたためにクラリスの読みを信頼せず、彼女は一人で最初の犠牲者の周辺を洗っていきます。FBIが空振りしたころ、クラリスは真犯人の家にたどり着き、議員の娘の無事を確認した後、戦闘の末に “ビル” を射殺します。

実際にはハンニバルのヒントありきとはいえ、表向きは訓練生一人で連続殺人犯を倒して被害者を救ったということで、クラリスは世間的にも注目を受けました。その後正式にFBIとして配属された日、彼女は脱走したハンニバルから電話を受けます。「子羊の悲鳴はやんだか?」と訊く彼の目線の先には、かつてハンニバルが捕らわれていた病院の院長がいました。戦慄するクラリスをよそに、ハンニバルは院長を追って雑踏に消えていくのでした……。

【解説】魅力は本当にハンニバルにしかない?

【解説】魅力は本当にハンニバルにしかない?© 1991 – MGM

プロットからしても、本作の主人公は間違いなくクラリスであり、彼女のキャラクター性も間違いなく魅力的です。「愛する父親の影を追ってFBIを目指しており、父の命を奪った犯罪者への怒りに若さが相まって無謀なほど勇敢な一方、子羊を救えなかった経験から自分の無力さに悩んでいる」という像がかなり立体的に描かれている点は、ストーリーとしてかなり優秀です。独力で “ビル” を成敗したことで無力感を克服する点も、王道的で心を掴みます。

平凡なサスペンスは、「若い捜査官が犯人を逮捕してオワリ」となりがちです。推理の見せ方次第ではそれでも十分娯楽として成立するのは確かですが、表層的で似通ったストーリーになりかねません。対して『羊たちの沈黙』では、捜査官が犯罪者と交流しつつ、それによって内面的な救いを得るというプロセスを並行して進めたことで、ただならない深みが出ています。この物語構造だけでも、評価に値するはずです。

 

とはいえ大半の観客は、本作の魅力をハンニバル・レクターという稀代の悪役にばかり見出しました。不気味な言葉遣いや恐ろしい脱走劇、『羅生門』のように先の悪事を想像させる余韻のある消え方……それらのインパクトは、やはり何物にも代えがたいほど大きなものだったということでしょう。本作には『ハンニバル』『レッド・ドラゴン』『ハンニバル・ライジング』という三本の続編があるのですが、題名からも察しがつくように、どれもハンニバル個人を中心に据えた作品になっています。人気の裏付けと言うほかないと思います。

ちなみに『ハンニバル』は『羊たちの沈黙』に勝るとも劣らないホラー描写(特にクライマックスで、ある男に制裁を与えるシーン)で一定の人気を得ている一方で、『ハンニバル・ライジング』にはかなりの非難を受けました。アンソニー・ホプキンスがキャスティングされていないだけならともかく、単純に出来の悪い映画という扱いになっています。

【考察】面白いがゆえの宿命も

【考察】面白いがゆえの宿命も© 1991 – MGM

以上、本作は非常に優れた映画なのですが、一つ重大な欠点があります。それは「約30年前に、これ以上ないほど評価されすぎた」ということです。素晴らしい作品なのでごく当然ですし、もちろん名誉なことなのですが、どうしても避けられない弊害もあります。平たく言えば、パクられすぎたんです。

大ヒットした作品には、何かしらヒットした理由となるセールスポイントがあるものです。それらのセールスポイントは民衆に好まれ、また求められるようにもなります。その結果、同じような要素を持った作品が後に続いていきます。それは『スター・ウォーズ』(特にエピソード4・5・6)や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』といった、他の途方もない名作もそうです。それがストーリー的なヤマであれ、あるいはガジェット的なものであれ、売れるとなればどんどんパクられてしまいます。

『羊たちの沈黙』では言うまでもなく、ハンニバル・レクターがこれに当たります。「天才的な頭脳をもつ精神科医で、芸術や人を食べることを愛する」というすべての要素がそのまま模倣されることはないにしろ、なんらかの部分で共通するキャラクターは、今となっては多数存在しています。それゆえに、おそらく当時はあったであろう新鮮味が、極度に落ちているのは事実です。

本作はスリラーでもあるだけに、その影響が特に強く出ているようにも思います。恐怖の感情は、「次の瞬間どうなるかわからない!」という想いと深く関わっています。裏を返せば、展開が読めてしまうと怖さがかなりなくなることになります。なにも「古いホラーは全部怖くない」という意味ではありません。後世になってもマネできない演出がある映画は、いつまでたっても怖いです(キューブリック監督作なんかはそれに属するのかなと思います)。しかし爆発的なヒットを飛ばし、繰り返しマネされてしまったものからは、かつての恐ろしさが減ってしまいます。『キャリー』あたりもそうですが、「なんか見たことあるな」という既視感が強くてさほど怖さを感じられません。

 

もちろん本作の魅力は、ハンニバルの設定やスリルには留まりません。アンソニー・ホプキンスが演じるハンニバルは、『羊たちの沈黙』『ハンニバル』『レッド・ドラゴン』の中でしか見られないですしね。それでも、時代が下ったことで魅力が何割か削がれたことは否定できないと思います。

【評価】主要人物の演技だけでも格別の映画

【評価】主要人物の演技だけでも格別の映画© 1991 – MGM

『羊たちの沈黙』が90年代におけるトップクラスの映画であることは誰の目にも明らかです。様々な点で精巧に作られているのは間違いありませんが、公開から三十年の間で陳腐化してしまった部分もあります。ホラー・ミステリーとしての魅力は、今や公開当時の半分ほどしかないように見受けられます。

それでもなお、ストーリーの精密さや主要人物の演技において、目を見張るものがあります。今となっては30年前の視聴者と同じ感動を得るのは難しいかもしれませんが、いまだに一度は観る価値のある映画と言えるでしょう。ホラーのつもりで観るとやや拍子抜けしてしまう可能性もありますが、一種の古典として手を出すと、年若い人も十分惹かれるのではないでしょうか。

(Written by 石田ライガ)

映画「羊たちの沈黙」の動画が観れる動画配信サービス一覧

 配信状況無料お試し
Hulu2週間
Netflix×30日間
FOD×1ヶ月
U-NEXT31日間
auビデオパス×30日間
映画の配信本数が多い!U-NEXTの31日間の無料お試しキャンペーン

U-NEXTには見放題の邦画や洋画が多くあり、ポイントを使うことで最新の映画も見ることができます!

毎月1,200円分のポイントを貰うことができるので、個人的に動画配信サービスの中でも一番おすすめです。

無料のお試しキャンペーンがあり、無料期間中に解約することもできるので、まだ試していない方は是非どうぞ!

新作映画も見れる!
U-NEXT31日間の無料お試しはこちら

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です