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映画『レヴェナント: 蘇えりし者』ネタバレ感想・解説・考察!アメリカで伝説として語り継がれる男の物語

映画「レヴェナント: 蘇えりし者」のあらすじ・内容

『レヴェナント: 蘇えりし者』はアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督による伝記映画です。古さと新しさが融合した、無骨な漢の映画でした。

今回はそんな『レヴェナント: 蘇えりし者』の個人的な感想やネタバレ解説、考察を書いていきます!

目次

映画「レヴェナント: 蘇えりし者」を観て学んだ事・感じた事

・ディカプリオ、なんでもやる。役者の枠を超える仕事ぶり!
・戦闘、サバイバル、すべてが生々しい
・昔の少年漫画が好きな人にオススメ

映画「レヴェナント: 蘇えりし者」の作品情報

公開日2015年
監督アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本マーク・L・スミス
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
原作マイケル・パンク『蘇った亡霊:ある復讐の物語』
出演者ヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)
ジョン・フィッツジェラルド(トム・ハーディ)
アンドリュー・ヘンリー隊長(ドーナル・グリーソン)
ジム・ブリッジャー(ウィル・ポールター)

映画「レヴェナント: 蘇えりし者」のあらすじ・内容

映画「レヴェナント: 蘇えりし者」のあらすじ・内容

1823年の暮れ、当時まだ州として組織化されていなかった極寒のアメリカ北部で、主人公ヒュー・グラスは毛皮ハンターたちの道案内をしていました。

ある時一団は先住民の襲撃を受けて半壊し、さらに撤退中グラスが熊に襲われて重傷を負います。余命わずかとされたグラスは、埋葬を命じられた三人のメンバーと共に置き去りにされます。

辛うじて生き延びていると、メンバーの一人フィッツジェラルドが自分の都合のためにグラスを殺そうとします。しかしそこへ、グラスの息子ホークが制止に入り……。

映画「レヴェナント: 蘇えりし者」のネタバレ感想

【解説】いまどき少ない徹底的な「男」の物語

いまどき少ない徹底的な「男」の物語© 20thCentFox/Courtesy Everett Collection

『レヴェナント: 蘇えりし者』に、女性らしさは一切ありません。本作にあるのは獣の臭いと血の臭い、銃や弓による明確な死、美しくも過酷な大自然と、今では絶対にありえないような男の姿です。話し合いや華やかさとは無縁な、無骨で野蛮な世界が描かれています。

そうした男らしさには、西部劇のエッセンスが含まれていると言えるかもしれません。悪役が独善的で邪悪でもありますし、舞台も一応、アメリカ西部の未開拓地ではあります。

とはいえ荒野や鉄道、拳銃やテンガロンハット、単純な勧善懲悪といったコテコテの西部劇らしさはありません。本作の舞台はだだっ広い平野ではなく、凍えるような雪の世界です。あくまで西部劇の男らしさだけを受け継いだ映画と言った方が良いと思います。

20世紀のシブさと21世紀のリアルの融合!

20世紀のシブさと21世紀のリアルの融合!© 20thCentFox/Courtesy Everett Collection

抽象的な話となりますが、物語には流行があります。希望が満ちた時代・国には希望のある物語が好まれ、絶望に陥った時代・国にはつらい物語が受け入れられたりします。人種差別が激しかった時代には当然のように差別が盛り込まれますし、正義や悪を表面的にしか捉えていなかった時代にはわかりやすい悪が存在するものとされてきました。

かつての西部劇も、現代にはない雰囲気を体現することで大流行しました。裏を返せば、今でははっきりタブーと言える、白人至上主義などが色濃いということでもあります。時代を経て、差別に対する社会思想が変化したことで、西部劇の勢いが削がれた歴史もあります(それだけが理由で衰退したわけではありませんが)。

 

しかしながら、明快な善悪の前提があると、活劇は勢いがつくのも事実です。今でも、ヒーロー作品の悪役は言い訳のしようがないような悪行を見せつけがちなことからも、そうした事実を想像してもらえると思います。個人的にパッと思いつくところだと、『デッドプール』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』などの悪役は、中盤まで純粋な悪か微妙なラインだったものの、クライマックス直前になって悪行を暴露するフェーズがありました。そうすることで、「あいつは悪だ!やっちまえ!」と客に思わせることに繋がるんですね。悪をこらしめて自分が正義であるような感覚を得ることがカタルシスになるのは、人類共通のようです。

本作が西部劇から受け継いだのは、この明確な悪の要素でもあります。そして悪に立ち向かう男の姿が、レオナルド・ディカプリオ演じる主人公の身に宿っているのです。そこには差別もなく、またカウボーイ然とした古臭さもありません。もちろん、スーパーヒーロー然とした超能力も持ってはいません。それゆえに無骨ながらもシブく、21世紀のいま観ても違和感のない「漢」が色濃く映されています。要するに、西部劇の「いいとこどり」をしていると言っていいでしょう。

 

さらに、それだけで満足しないのがイニャリトゥ監督のコダワリを感じさせるところです。彼はそこに、現代だからこそ可能になった自然のリアルをがっつりと混ぜ込んできました。本作の前に手掛けた『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』は個人のエゴをリアルを映してアカデミー賞の栄誉を獲得しましたが、今回はそれにまったく触れないのがまた面白いところです。

本作では未開拓地の自然が雄大に、美麗に、そして残忍に待ちうける様子を目の当たりにさせられます。雪や水や風は、どんな人間にも平等に流れていく……。そこには、主人公に絡む人間同士の因縁との奇妙な対比さえ思わせます。どんなにシブくていい男も、大自然に比べればちっぽけだということが痛感させられるのです。実に素晴らしい融合、マリアージュと言ってもいいでしょう!

アカデミー賞に届かせたディカプリオのサバイバル

アカデミー賞に届かせたディカプリオのサバイバル© 20thCentFox/Courtesy Everett Collection

監督が極寒の自然をリアルに描くとなると、自動的に役者が自然と向き合うことになります。しかも主人公は重傷を負い、仲間からも見放されて一人で雪山に取り残される有様!絶体絶命、いくら撮影と言っても過酷極まりない役どころです。

これをやり遂げたのが、あのレオナルド・ディカプリオでした。かつて一世を風靡した、ディカプリオです。よほど若い方でなければ、覚えがある人だと思います。非常に高い人気・知名度を誇る彼ですが、実は長くアカデミー主演男優賞を受賞したことがありませんでした。『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』でも『インセプション』でも、『タイタニック』でさえ、良くてノミネート止まりだったのです。そんな彼がついにオスカーを手にしたのが、この『レヴェナント: 蘇えりし者』だったと言うと、その仕事ぶりのスゴさが理解できるのではないでしょうか。

 

では具体的に、ディカプリオは何をしたのか?こればかりは文字にしても仕方のない部分でしょう。ぜひ映画を観て確かめていただきたいところです。ただ簡単に言うなら、なんでもやっています。本当になんでもです。

先住民に襲われたりグリズリーにも襲われたり、地べたを這ったりなどは文字通り序の口!公開前のあるインタビューでは、ディカプリオ自ら「(本作の撮影のうち)それまで経験したことのなかった難所を3,40は列挙できる」と発言したほどです。大自然に負けず、辛くも生き延びて、悪を成敗しようとする漢の執念をご覧ください!

余談ですが、ディカプリオほど目立ってはいないものの、助演俳優らもいい味を添えています。トム・ハーディは狭量で精神的に醜いフィッツジェラルドの役を巧みに作り上げていますし、アクションシーンも申し分ありません。面白いのはウィル・ポールターで、豪華な顔ぶれが揃った中でのちょい役ながら、妙に存在感を出しています。本作公開の二年後に『デトロイト』で強烈な悪役っぷりを見せるのも納得の佇まいで、不思議と目が行きますよ。

ルベツキの撮影はあらゆる良さを受け止める

ルベツキの撮影はあらゆる良さを受け止める© 20thCentFox/Courtesy Everett Collection

どれほど役者がいい演技をしようと、どれほど美しいロケーションを準備しようと、撮影技術が伴っていなければ映画としては台無しになります。その点『レヴェナント』は、さまざまな切り口によって常に映える画を作り出しています。

その立役者はやはり、撮影監督のエマニュエル・ルベツキでしょう。時に先住民族の蹂躙を、時に突き刺さるような冷水、時にそびえたつ山脈を!どこにどんなカメラ置いて、どうやって撮ってんだ?と気にすることも、一周回って忘れてしまいます。とりわけ戦闘シーンの臨場感にはもう脱帽です。今にも返り血を浴びてしまいそうな気になってきます。もしその場に居てもそうは見れないという画の連発には、スゴすぎて笑えてくるかもしれません。

しかも、普通に鑑賞しているだけでは気付けないようなこだわりもあります。イニャリトゥ監督は人工の照明を使わず、太陽光の利用を徹底したため、予定されていた撮影時間の四割が常に移動に割かれたとか。撮影期間も長くなり、途中で雪が溶けてしまったため、撮影場所を北極側から南極側にまで移したなんて話まであります。

こうした撮影実績によって、ルベツキは2015年のアカデミー撮影賞を受賞します。それもただの受賞ではありません。至上類を見ない、『ゼロ・グラビティ』『バードマン あるいは』に続く三年連続の受賞です。こうなるともう、伝説の域に入ってきますね!

【解説】ストーリーは実話ベース、ただし……

ストーリーは実話ベース、ただし……© 20thCentFox/Courtesy Everett Collection

熊に襲われて瀕死となり、仲間に見捨てられながらも一人で生き延びる……というストーリーは、常識的に考えれば不可能としか思えません。けれど主人公のヒュー・グラスは実在の人物であり、しかも実際に同じような状況で生還してもいます。つまり『レヴェナント: 蘇えりし者』は、実話がベースとなって作られているのです!まさに事実は小説より奇なり、というところですね。

とはいえさすがに、実態を完全再現したわけではありません。ヒュー・グラスという人物は、伝説的開拓者あるいはハンターとして、アメリカで一定の人気を保っていました。何度もポエムにされたり、小説にされたりしているほどです。映画化だって『レヴェナント』の前にも一度なされています。本作もまた、マイケル・パンクという人物の小説を原作にしていたりします。

そんな、ある種の英雄の物語というと、やはり年を追うごとに尾ひれがつくものです。日本で言ったら源義経や水戸黄門、遠山の金さんなどが近いかもしれません。これらの人物は大衆が望むヒーローとして、ありもしなかった設定が足され、現実味が薄れていたりしてします。例えば源義経は一ノ谷の合戦で、急な崖を下って平家に奇襲をかけた(鵯越の逆落し)なんて話がありますが、史実的にはありえないとされています。水戸黄門は自ら全国行脚なんてしていませんし、遠山の金さんが立派な刺青を見せびらかしながら悪を裁いたというのも眉唾物だったりします。

 

話をヒュー・グラスに戻しましょう。彼の場合、それこそ真冬にあたる年末の時期に、野生の熊がウロウロしているはずはありません。よく知られているように、熊は寒さが本格的になるより前に冬眠に入ります。しかし劇中では、序盤からすでに降雪が始まっています。正直なところありえません。実際のところ、グラスが熊に襲われたのは夏の話でした。

他にも様々な差異があります。詳細はお調べいただくとしますが、いずれにせよ『レヴェナント』はノンフィクションではありません!半分実話、半分伝説……それくらいの腹積もりでいるのが良いと思います。あまりのリアリティゆえに鵜呑みにしたくなる気持ちはわかりますが、たとえば本作から歴史を知ることなどは出来ないと心得るのが賢明です。

以下ではネタバレを交えながら、もう少し史実との比較をしてみようと思います!

【ネタバレ】伝説の男グラス本当の最後は?

【ネタバレ】伝説の男グラス本当の最後は?© 20thCentFox/Courtesy Everett Collection

まずヒュー・グラスというハンターが、現在のサウスダコタ州パーキンズ郡のグランド川支流そばで、グリズリーに襲われたのは事実のようです。ただ、上でも述べたようにそれは夏のことでした。また映画ではこの熊をグラス一人で倒していますが、実際にはハンターの一団の別のハンターが止めを刺しました。

その後生きる見込みがないとされたグラスが、埋葬役を残して見捨てられるのも事実です。埋葬役にはブリッジャーと、フィッツジェラルドの原型になった人物が任命されたのも共通しています。しかしながら、映画に存在していたグラスの息子、ホークは含まれていません。というかこのとき、グラスは結婚しておらず、当然息子などどこにも存在していなかったようなのです!

要は、「グラスは先住民の妻をめとり、息子共々愛していた」という設定そのものが、後世付け加えられた英雄の尾ひれに過ぎないんですね。映画ではこの後フィッツジェラルドに息子を殺され、その復讐のために復活するわけですが、これも事実に反します。そもそも息子がいませんので。

 

その後映画では、殺された妻や息子のことを夢に見ながら、冬の山でサバイバルを続けます。先住民に追われたり、逃げるために川に潜ったり、崖から転落したり、吹雪を凌ぐために動物の死体の中で眠ったり……。執念の力か、動かなかったはずの片足でいつの間にか踏ん張り、普通に歩くようにもなったりします。これらも、やっていないと否定することはできませんが、肯定する史料もありません。少なくとも実際にグラスがサバイバルしたのは夏ですから、動物の死体の中で眠る必要は無かったことでしょう。

とはいえ、なんだかんだでグラスが生還したのは事実です。これだけでも信じられない話ですね。しかし映画ではそれにとどまらず、ハンターの一団に迎えられた直後、息子の仇をとるためにフィッツジェラルドの追跡に移ります。本当にすごい執念です。

 

では、息子が存在していなかった現実では誰も追いかけなかったのか?というと、そういうわけでもありません。それは、グラスが集団から見捨てられた際、埋葬人がグラスの身ぐるみを剥がしていたことに由来します。盗まれた物品の中にはグラスが大事にしていた銃があり、それを取り返すためにある男を追跡したというのです。気持ちがわからないではないですが、映画に比べるとやはりどうしてもロマンに欠けると思うのは、筆者だけではないでしょう……。

劇中では追跡の末、フィッツジェラルドに深手を負わせることに成功し、最終的に死に至らしめます(自力でトドメを刺さないあたりが、ヒーローらしさを加えている感じもしますね)。一方現実には、犯人の居場所をつきとめて銃を返してもらって終わったそうです。相手が軍人になっていたこともあって、特に手を出すこともなかったとか。平和的ではありますが、映画に比べるとどうしても……みみっちく感じてしまいますね。

つまるところ、伝説は伝説で留めておくが花なのかもしれません。それは古今東西同じなのでしょう。聖徳太子は超天才で、沖田総司は美形だと思い込んでおいたところで、誰も損しませんからね。グラスの半生についても、映画としてうまく脚色してくれたことを評価したいところです。

【評価】西部劇・ヒーロー映画として要チェック

【評価】西部劇・ヒーロー映画として要チェック© 20thCentFox/Courtesy Everett Collection

『レヴェナント: 蘇えりし者』は、とにかく圧倒される映画です。特に主人公の肉弾戦と執念、加えて極地の大自然から、並々ならないパワーを感じることができます。難しい読み取りは必要ありませんし、鑑賞を通して得られる知識も特にはないでしょう。そういった意味で、現代の西部劇あるいはリアリティに特化したヒーロー映画として恐るべき仕上がりになっています。

ただ、これらいずれの要素においてもかなり男性らしさが強く、若干時代を逆行している感は否めません。また映像にはリアリティがあるものの、脚本には非現実的な要素があるのも事実です。その二点だけ了解した上で鑑賞すれば、活劇として忘れられない一本になるでしょう。西部劇やヒーロー映画の愛好家のほか、70〜90年代の少年マンガが大好きな人にとっても、ハズれない映画であると見て間違いないと思います!

(Written by 石田ライガ)

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