海外映画/洋画の感想

映画『ベイビー・ドライバー』ネタバレ感想・解説・考察!カッコいい音楽とカーアクションにひたすら酔いしれる!

【解説・考察】iPodにニヤリ?音楽好きならさらに楽しめること請け合い

クライムアクションといえば、やたらと強い主人公が血生臭い犯罪集団に立ち向かう作品や、あるいはギャング同士の抗争を描いた作品を思い浮かべる人も多いでしょう。こうしたジャンルが苦手だという人もいるかもしれません。

しかし、『ベイビー・ドライバー』はクライムアクションでありながらも、これまでの同ジャンルの映画とは一線を画したものとなっています。音楽とアクションが奇妙なまでに融合した映像は、ただ眺めているだけで「かっこいい」という感想しか出てこないような、幸せな時間をもたらしてくれるでしょう。

今回はそんな映画『ベイビー・ドライバー』の感想や解説、一部考察について紹介します。なお、本記事は一部ネタバレを含んでいるため、視聴前に読まれる場合は十分にご注意ください。

目次

映画『ベイビー・ドライバー』を観て学んだこと・感じたこと

・フレーズやリズムに合わせた動きはひとつのミュージックビデオそのもの
・スタイリッシュなカーチェイスと音楽が素晴らしい融合を果たしたクライムアクション

・スカッとしたいけどありきたりのアクションを見たくない気分のときにおすすめ

映画『ベイビー・ドライバー』の作品情報

公開日2017年8月19日
監督エドガー・ライト
脚本エドガー・ライト
出演者ベイビー(アンセル・エルゴート)
デボラ(リリー・ジェームズ)
ドク(ケヴィン・スペイシー)
バディ(ジョン・ハム)
ダーリン(エイザ・ゴンザレス)
バッツ(ジェイミー・フォックス)

映画『ベイビー・ドライバー』のあらすじ・内容

映画『ベイビー・ドライバー』のあらすじ・内容

アトランタに住む青年ベイビーは、過去に遭った交通事故の影響で耳鳴りに悩まされており、つねに大好きな音楽を聴いています。

音楽を聴くと彼の神経は極限まで研ぎ澄まされ、一瞬にして天才的なテクニックを誇るドライバーへ変身。その才能を見込まれて、ベイビーは銀行強盗の運び屋として活動していました。

闇社会のボスであるドクとの取り決めから、もうすぐ運び屋としての仕事を終えるベイビー。ちょうどそのころ、彼は行きつけのレストランでウェイトレスのデボラと運命的な出会いを果たします。

デボラや育ての親であるジョーを心配させまいと、ベイビーは運び屋としての仕事を終える日を心待ちにしていました。しかし、事態は思いもよらぬ展開へと向かっていきます。

新作映画も見れる!
U-NEXT31日間の無料お試しはこちら

映画『ベイビー・ドライバー』のネタバレ感想

【解説】監督エドガー・ライトのセンスが際立つ一作

【解説】監督エドガー・ライトのセンスが際立つ一作© 2017 TriStar Pictures, Inc. and MRC II Distribution Company L.P.

映画『ベイビー・ドライバー』は、2017年に公開されたクライムアクションムービーです。主人公のベイビーは無口で、お世辞にも人付き合いが得意とはいえない青年。しかし、ひとたび音楽を聴くと、天才的なドライビングテクニックを発揮するドライバーに早変わりします。

彼はその腕を買われ、銀行強盗における運び屋を担当しています。どれだけ警察が追いかけようとも、彼の車に追いつくことはできません。音楽に乗せて繰り広げられるカーチェイスはまさに圧巻のひとこと。

そんなシーンを最初から最後まで存分に見せてくれる映画かと思いきや、後半は映画全体のグルーブを維持しながらも、銀行強盗グループ内での内部対立から不安をあおる展開へ。仲間や警察から追われる身となったベイビーと、その彼女デボラの結末に向かって、物語は疾走していきます。

 

本作の監督はエドガー・ライト。イングランド出身の監督であり、どちらかというと低予算での映画をメインに作成しています。

エドガー・ライトの代表作といえば、名作『ゾンビ』のパロディであり、ホラーでありながらコメディやラブロマンスの要素を含んだ『ショーン・オブ・ザ・デッド』が有名でしょう。その他、有能さを疎まれて田舎に飛ばされた警察官が、何の変哲もない村に潜む事件に取り組むコメディアクション『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』。売れないバンドマンの主人公が、付き合っている女性の7人の元カレと戦うこととなる『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』などがあります。

どの作品も各方面から高い評価を得ている一方、日本ではそれほど知名度が高くないのかもしれません。実際、本作『ベイビー・ドライバー』の日本における上映規模は、それほど大きくはありませんでした。しかし、公開を心待ちにしていたコアなファンは多かった様子。視聴後は本作を大絶賛したファンのコメントがSNSで拡散され、評判になったといいます。

【解説】主人公のアンセルを含め、癖のあるキャラばかり

【解説】主人公のアンセルを含め、癖のあるキャラばかり© 2017 TriStar Pictures, Inc. and MRC II Distribution Company L.P.

主人公ベイビーを演じるのはアンセル・エルゴート。ハンサムな二枚目というよりは、どことなくぽっちゃりとした様子がかわいらしい俳優です。代表作には2014年の『きっと、星のせいじゃない。』などがあります。

彼が演じるベイビーは、自分の好きな音楽に対して並々ならぬこだわりを持っている青年です。しかし、対人関係に難があり、無口で動じない性格はときに周りの誤解を招くこともあります。

アンセルの演技はベイビーの性格とマッチしているだけではなく、カーチェイスを繰り広げるときの動きや、警官から逃げる際のアクションも様になっているのが特徴。本作の公開時点ではまだ23歳と若く、今後の活躍が期待される俳優のひとりです。

 

ヒロインのデボラはリリー・ジェームズが担当しています。2012年の『タイタンの逆襲』でデビューしたあと、2015年の『シンデレラ』でシンデレラ役を獲得。一気にスター俳優のひとりとなりました。2019年にはビートルズが存在しない世界で売れないシンガーソングライターの奮闘を描く『イエスタデイ』で、ヒロインのエリーを担当しています。

本作でリリーが演じるデボラは、街のレストランでウェイトレスとして働いている女性。互いの境遇、音楽や車といった趣味の一致から、レストランの常連であったベイビーと意気投合し、やがて恋に落ちます。

 

銀行強盗のグループもまた、癖のある特徴的なキャラクターばかりです。銀行強盗の計画を取り仕切るドクを演じるのは、『セブン』や『ユージュアル・サスペクツ』で注目を浴びた名優、ケヴィン・スペイシーです。

作中では、ドクは闇社会のボスであることが伺えます。かつて麻薬を乗せた車をベイビーに盗まれており、そのときに生じた損失の代償として、ベイビーに運び屋を強制しています。

ドクはベイビーのことを高く評価しています。しかし、そこに信頼関係はありません。代償を払い終えたベイビーに対して、デボラや彼の育ての親であるジョーへ危害を加えることをちらつかせるなど、脅迫でもって彼を縛ろうとするのです。しかし、終盤ではベイビーにかつての自分と似たものを感じとり、自ら彼を逃がそうとする場面も。突然にツンデレめいた一面を出すところがどうにも憎めません。

 

ドクに集められた銀行強盗のひとり、バッツは本作に死の匂いをまき散らす危険な男として描かれます。自身の私利私欲のためなら進んで人を殺す性格の持ち主。その短絡的な行動から、他の銀行強盗のメンバーやドクに疎まれています。

バッツを演じるのは、盲目のミュージシャン、レイ・チャールズの生涯を描いた『Ray/レイ』でアカデミー主演男優賞を受賞した、ジェイミー・フォックス。本作では彼にしては珍しく、暴力的で危険な男の演技が見られます。

 

もうひとりの銀行強盗、バディを演じるのはジョン・ハム。2008年に『地球が静止する日』でマイケル・グレイニア博士を演じたほか、2015年の『ミニオンズ』では超天才の発明家、ハーブ・オーバーキルの声を担当しています。

バッツとは対照的にインテリっぽい雰囲気のあるバディ。作中ではクイーンの楽曲に興味を示すなど、銀行強盗のメンバーでは唯一ベイビーに理解を示す兄貴分に……なるかと思いきや、終盤ではもっとも危険な存在へと変貌します。その端正な顔立ちといい、執拗にベイビー追いかける様子といい、本作でも非常に印象に残るキャラクターのひとりです。

また、バディの恋人で同じく銀行強盗のメンバーであるダーリンは歌手のエイザ・ゴンザレスが担当。その他、意外な場面で意外な人物が出てくるなど、キャストにもエドガー・ライトのお遊びが効いています。

【解説】冒頭6分のカーチェイスが本作の名刺代わり

【解説】冒頭6分のカーチェイスが本作の名刺代わり© 2017 TriStar Pictures, Inc. and MRC II Distribution Company L.P.

本作は全編にわたって見逃せないシーンがてんこ盛り。特に、映画の冒頭約6分のシーンは、本作の魅力を名刺代わりとして観客へたたきつけるかのような、出色の出来となっています。

冒頭、銃を持って銀行へ向かう3人組と、それを車のなかから見送るベイビーの姿が映ります。iPodから流れてくる音楽に合わせて、ノリノリでポーズやシャウトを決めるベイビー。警報器のけたたましい音とともに、銀行から大きなカバンを持った3人組が戻ってくると、車は急発進します。そこで、ベイビーが銀行強盗のグループに所属する運び屋であることがわかります。

ベイビーたちの車はすぐに警察の追跡を受けることに。ハイウェイを行儀よく走る車の群れをすり抜け、音楽に合わせて急カーブとドリフトが決まるたびに、警察車両を煙に巻いていきます。とっさに発見した同じ色の車をカモフラージュに利用するなど、状況に応じて機転を利かせた運転を軽々と行うため、ヘリですらベイビーの車を追うことができません。

やがてベイビーがかけた曲が終わると同時に、車は停止。その後、別の逃走用車両に乗り換えるという流れになっています。

百聞は一見にしかずとはよく言ったもの。文章で読むよりも、実際に見てみた方がその魅力は十分に伝わるはずです。公式サイトではこの冒頭6分のシーンが無料で視聴できるので、ぜひ見てください。

【解説】フレーズやリズムに合わせた動き!見ていて楽しい演出がいっぱい

【解説】フレーズやリズムに合わせた動き!見ていて楽しい演出がいっぱい© 2017 TriStar Pictures, Inc. and MRC II Distribution Company L.P.

本作の最大の特徴は、かっこいい音楽とアクションの見事なグルーブ感に尽きます。もちろん、音楽は日常シーンでも贅沢に使用していて、楽曲のフレーズやリズムに合わせてベイビーたちが動く様子は、ただ眺めているだけでも楽しくなります。

しかし、音楽に合わせて動くといっても、そこにはいわゆるミュージカル映画のような唐突さはありません。主人公のベイビーは、幼少期に両親を亡くした自動車事故の影響で耳鳴りが止まず、これを無理矢理抑えるために音楽を聴いています。つまり、劇中で流れる音楽はベイビーの世界そのもの。観客はベイビーの聴覚と行動を追体験しているような気分になれるのです。

 

冒頭6分のカーチェイスのあと、ベイビーがコーヒーを買いに行く様子も特筆すべき場面のひとつです。ワンショットで撮影された映像のなかで、ベイビーは音楽を聴きながらノリノリの様子でコーヒーを買いに行きます。流れ行く車、街のペイントや広告、工事の資材、壁や柱に描かれた歌詞のフレーズ。そのすべてが、ただコーヒーを買いに行くベイビーの動きと見事にマッチしています。さながらひとつのミュージックビデオを見ているような印象を受けるでしょう。

銀行強盗のシーンで繰り広げられる銃撃戦でも、台詞や銃を撃つタイミング、警官から逃走する動きのすべてが、音楽のフレーズやリズムに合わせています。計算された演出はただただ見ていて楽しく、いわゆる単純で暴力的なクライムアクションとは一線を画しています。こうしたジャンルが苦手な人でもきっと楽しめるはずです。

【解説】緊張をはらむ後半戦、とにかく目が離せない

【解説】緊張をはらむ後半戦、とにかく目が離せない© 2017 TriStar Pictures, Inc. and MRC II Distribution Company L.P.

物語の中盤、ドクへの借りを返したベイビーは、ようやく銀行強盗から足を洗います。そして、運命的な出会いを果たしたデボラや、育ての親であるジョーに心配をかけないようにするため、まっとうな仕事を探すことに決めるのです。

しかし、ベイビーの運転技術を手放したくないドクは、彼を脅迫して再び銀行強盗の計画へ参加させることに。少しずつ、物語は不穏な方向へ舵を切ることとなります。

単純な展開とは裏腹に、不安を少しずつあおるような演出は秀逸のひとことです。

ベイビーは銀行強盗における運び屋であり、銃を発砲して銀行員や客を直接脅すようなことはしていません。クライムアクションムービーであるにもかかわらず、彼は暴力的な場面からは一歩引いたところにいます。汚れ役を引き受けることなく、運び屋に徹している彼の行動は、他の銀行強盗メンバーからも疎まれる要因となっています。

しかし、物語の中盤、現金輸送車を強奪するシーンにおいて、バッツが輸送車の運転手を射殺すると、ベイビーの周囲に暴力的な空気が漂いはじめます。ここで初めて血が流れるシーンが登場し、死の匂いが作品全体に表出するのです。頭を撃ち抜かれた運転手にさらっとカメラを向ける様子は、何気ないワンシーンのようでいて、明らかにベイビーの世界が変わったことを示すものであり、徐々に不安を与えていきます。

 

その後、ドクに殺されたメンバーの死体処理や、強盗に使用する銃器の取引における凄惨な殺し合い、そして2回目の銀行強盗における警察との銃撃戦など、死人の数は一気に増えていきます。

ただの運び屋だったベイビーが、まさに生か死かというバイオレンスの渦中に飲み込まれていきます。そして彼自身も、ある出来事がきっかけとなり、メンバーのバディから執拗に追いかけられることに。作中での前半と後半の雰囲気はかなり異なっており、ベイビーとデボラの結末も含めて目が離せない内容となっています。

【解説・考察】iPodにニヤリ?音楽好きならさらに楽しめること請け合い

【解説・考察】iPodにニヤリ?音楽好きならさらに楽しめること請け合い© 2017 TriStar Pictures, Inc. and MRC II Distribution Company L.P.

本作は音楽が好きな人にとって楽しめる要素が目白押し。たとえば、洋楽に詳しい人であれば、流れる楽曲のひとつひとつにニヤリとすることも多いでしょう。

冒頭のカーチェイスで流れる、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンの「Bellbottoms」。ベイビーとデボラが出会うシーンで、彼女から教えてもらうカーラ・トーマスの「B-A-B-Y」。バディと意気投合するときに、ふたりでイヤホンを共有して聞き入る、クイーンの「Brighton Rock」など。ベイビー自身が音楽好きという設定のおかげで、どの楽曲も自然と物語に組み込まれています。

音楽に対してこだわりの深い人であれば、ベイビーの行動のひとつひとつにも納得する部分が多いのではないでしょうか。たとえば、彼は音楽のジャンルごとに複数のiPodを使い分けており、たびたびポケットから別のiPodを出す様子が描かれています。

 

また、彼の部屋からは古いカセットテープやレコーダーが多数出てくるのも見逃せません。ベイビーはただ音楽を聴くだけではなく、人の声を録音して加工し、自分だけのリミックスを作成するのが趣味です。

デボラの声はもちろん、銀行強盗の計画を打ち合わせている最中のドクやメンバーの声なども片っ端から録音しては加工して作曲し、テープに録音していきます。そのことがあとでドクに知れ渡ることとなり、ベイビーは窮地へと追い込まれるのですが……。

どうしてベイビーがそんな趣味を持つに至ったのか、明確な説明はありません。しかし、作品全体を俯瞰してみれば、それはおそらくミュージシャンであった母親の影響によるものだということが、それとなくわかります。

ベイビーは幼少のころ、誕生日プレゼントとしてiPodをもらっており、それで音楽を聴くのを楽しみにしていました。ミュージシャンであったあった母親もまた、ギターでの弾き語りをベイビーに聴かせており、その楽曲をテープに録音しています。

ベイビーのテープコレクションには、自分が手がけた作品だけではなく、母親が作ったテープも含まれています。それは彼にとって形見であると同時に、多くのコレクションを生み出すきっかけとなったのでしょう。

 

物語の終盤、デボラと逃避行を続ける車のなかで、母親のテープが流れるシーンはまさに本作の音楽部分を締めくくるに相応しい場面といえます。ベイビーが自首するというラストは、母親の声に押されたものであったのかもしれません。

音楽の効果的な使用によって、これまでのクライムアクションとはまったく異なる作品となった『ベイビー・ドライバー』。アクション映画が苦手だという人にもぜひ見て欲しい一作です。

映画の配信本数が多い!U-NEXTの31日間の無料お試しキャンペーン

U-NEXTには見放題の邦画や洋画が多くあり、ポイントを使うことで最新の映画も見ることができます!

毎月1,200円分のポイントを貰うことができるので、個人的に動画配信サービスの中でも一番おすすめです。

無料のお試しキャンペーンがあり、無料期間中に解約することもできるので、まだ試していない方は是非どうぞ!

新作映画も見れる!
U-NEXT31日間の無料お試しはこちら

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です