『デトロイト』はキャスリン・ビグロー監督によるドラマ映画です。
実際にあった「アルジェ・モーテル事件」という事件をベースにしており、日本では感じられないような負のエネルギーを放った作品です。
今回は映画『デトロイト』の個人的な感想やネタバレ解説、考察を書いていきます!
目次
映画「デトロイト」を観て学んだ事・感じた事
・50年前とはいえ、これが現実!?心が弱ってるときに観ちゃダメ!
・人種差別は根深い。差別が正しいと思っている人がいるからなおさら
・考えたくないけど、警察だって悪いことするかも
映画「デトロイト」の作品情報
公開日 | 2017年7月28日(日本では2018年1月26日) |
監督 | キャスリン・ビグロー |
脚本 | マーク・ボール |
出演者 | メルヴィン・ディスミュークス(ジョン・ボイエガ) フィリップ・クラウス(ウィル・ポールター) ラリー・リード(アルジー・スミス) フレッド・テンプル(ジェイコブ・ラティモア) カール・クーパー(ジェイソン・ミッチェル) |
映画「デトロイト」のあらすじ・内容

1967年7月。デトロイトのとある酒場で、黒人たちがパーティを開いていました。しかしそこは違法酒場。パーティ中に警官たちが乱入して経営者を逮捕したあげく、出席者も強引に連行してしまいます。
その様子を見ていた黒人の市民が抗議するものの、警官たちは聞く耳を持ちません。怒った市民は暴徒と化して、街を破壊しだします。
その頃、ザ・ドラマティックスというボーカルグループがデトロイトを訪れていました。レコード会社との契約がかかった大事なライブが控えていましたが、街は暴動の真っ最中。出番の直前になって、ライブは急きょ中止されてしまいます。
意気消沈しながら避難していると、暴徒によってメンバーがバラバラに。その内の二人は近くに宿をとり、様子を見ることにします。その宿の名は「アルジェ・モーテル」……。
映画「デトロイト」のネタバレ感想・解説
【解説】アルジェ・モーテル事件は実際にあった最悪レベルの暴動・不祥事

1967年7月23日から27日にかけて、当時の合衆国第五都市が市民によって破壊されました。それが「デトロイト暴動(12番街暴動)」です。その最中にデトロイト市警官による蛮行があり、これは「アルジェ・モーテル事件」の名で知られています。
映画『デトロイト』は、このアルジェ・モーテル事件をベースに製作されましたが、暴動にせよ事件にせよ、日本での知名度は無いに等しいと言っていいでしょう。
日本語版Wikipediaの該当記事はどちらも十行未満しかありません。ちなみに、英語以外の多言語だと暴動の記事はだいぶ訳されているようで、事件の方はフランス語で数行書かれているだけです。
一方、英語版の記事は充実していることから、アメリカ国内では影響が大きかったことがうかがえます。実際「デトロイト暴動」では43人が死亡、1189人が負傷、7000人が逮捕。いくらアメリカとはいえ指折りの犯罪規模です。
1863年から参照すると、1992年に塗り替えられるまでは最大でした。また、人種差別の撤廃がまだ完了していなかったことや、警官の横暴を知らしめた点でも、米史的な意義があったのでしょう。
一応この映画自体は、これといった前提知識がなくても鑑賞が可能です。ただ、アメリカ外では知名度が低い出来事が元になっているだけに、前提知識があると見方が変わるのも確かです。そこで以下では、「デトロイト暴動」の前後関係を簡単に解説したいと思います。
【解説】1967年ごろのアメリカってどんな感じ?

60年代後半のアメリカ大統領は、民主党のジョンソンでした。前任はケネディ、後任はニクソンです。ジョンソンの在任中は国内の社会が混乱し、豊かさや安定性のイメージが崩れたとされています。
象徴的なものはやはり、ベトナム戦争への本格介入でしょう。国内・国外を問わず、当時大反発を受けました。明確なゴールも見えないのに他国の内戦にちょっかいをかけ、罪もない現地の人を殺すということは二度とあってはならないことです。
当然、ベトナム戦争に反対する人はたくさんいましたし、一方でより大きなスケールで、平和運動を起こす人もいました。運動が大きくなることで混乱が大きくなり、大きな混乱に紛れて黒人差別がエスカレートします。
そうなると黒人も黙っておらず、差別撤廃を求める運動もどんどん大きくなっていきます。お気づきの通り、いろんな思想・運動が混ざり合ってもうカオスです!
そして、黒人解放運動の先頭に立ったのがキング牧師。中高の英語の教科書にも載るくらいなので、知っている方も多いでしょう。彼の活躍が功を奏し「公民権法」が制定されたのが1964年、ノーベル平和賞を受賞したのも同じ年です。そして暗殺されてしまったのが、1968年でした。
「デトロイト暴動」と「アルジェ・モーテル事件」が起きたのはその間にあたります。少しずつ黒人に権利が与えられながらも、法は徹底されていないし、命すら脅かされてしまうという時代でした。
【解説】いくらなんでもデトロイト暴動の被害が大きすぎない?

「デトロイト暴動(12番街暴動)」では、その名の通りデトロイトの12番街を中心に、市民たちが暴れて回りました。建物の損壊に加え、略奪、放火、狙撃、不法占拠……今日の日本に生きる私たちにとっては、考えられない有様でした。
暴動中は関係のない人や店まで損害を被りました。例えば、ジョー・フォン・バトルのレコード店。彼は黒人であり店にもそれを明記していましたが、暴動後の店は「wet, fetid debris(ぐっしょりした、匂いのひどいがれき)」に変わっていたそうです。
反戦運動や、白人への抵抗が源流にあるはずなのに、もはや真逆のようです。どうしてこんなことになってしまったのでしょうか?
実は、デトロイト暴動はなんの前触れもなく起きたものではありませんでした。それ以前にも別の街で、度々暴動が起きていたのです。これらは総称として「Long, hot summer of 1967(67年の長く暑い夏)」と呼ばれています。
「他のヤツらもやってるんだから、オレたちもやってやろう!」と思うのは、日本人も同じですよね。当時のデトロイトの人も似たようなことを考えていたのでしょう。
しかも参加者の中には、一連の「暴動」を「失敗した革命」「一揆」だと解釈する人もいました。確かに暴動というのは、当時政治の上層部を独占していた白人の言い分に過ぎず、普段から差別と受け、当事者として参加していた黒人は、一連の行動を一揆や革命だと捉えていても不思議はありません。こうした正当化が、規模を大きくした部分もあったのでしょう。
また、一連の暴動によって差別問題がちょっぴり前進したのも事実です。「暴動」という印象の悪い言葉を使うこと自体、黒人差別だ!なんて話にも発展するかもしれませんね。
ちなみに、「Long, hot summer of 1967」では、併せて80人以上が死亡、2000人以上が負傷、10000人以上が逮捕されたそう(半分以上がデトロイト暴動です)。その被害の大きさもあって、大統領が専用の調査委員会・ケルナー委員会を設立するほどでした。この委員会の調査報告によると、暴動の主な原因となったのは、人種差別による黒人たちの経済的機会損失、要は貧乏です。
つまり、デトロイト暴動は様々な原因が絡み合い、負の連鎖を起こしていたとも考えられます。黒人の自由・権利・お金の問題に、暴動の前例と警察・軍の介入が悪い影響を及ぼして、爆発してしまったと言うと納得できるのではないでしょうか。
デトロイト暴動市民のエネルギーに圧倒される

先述の通り、現実のデトロイト暴動は本当に恐ろしい被害をもたらしました。昔とはいえ50年前のことですから、実際の様子が撮られたビデオも残っています。劇中ではそれらが時折差し込まれて映画に現実味をもたらし、カラー映像ばかりなのは、最新技術による彩色でしょうか。違和感はありません。
もちろん、ビグローがメガホンをとった映像もそれらと遜色はなく、どうやって撮影したのかが気になります。暴徒が押し寄せ、鎮圧のために市警のみならず州警察・州陸軍まで駆り出され、数えきれないほどの犯罪と強引な逮捕劇の真横では、いくつもの建物が大炎上。さすがに合成でしょうが、「もしかして本当に火を点けてるんじゃ?」という気にもされられます。
平成生まれにとっては、火がメラメラ燃えている中で普通の人が歩いているだけでどこか恐ろしいものです。国を挙げるほどの学生運動やデモ行進を国内で経験した世代ならば、そこまでのインパクトではないのかもしれませんが、21世紀になってからこれといったものはありません。老人のそぞろ歩きしか見覚えがないくらいです。それに比べると、「本物の暴動はこんなものか!」と驚嘆させられてしまいます。
市民でさえこの有様ですから、警官や軍人も穏やかではありません。全員が銃をもち、怪しい者も気に食わない者も力づくで抑え込もうとしてきます。恐ろしいのは、家の窓からちらと軍隊を見た女の子にさえ、狙撃手呼ばわりして発砲するシーン。丸腰の女の子が狙撃手であるはずもないのに、もうメチャクチャです。
【解説】ザ・ドラマティックスが巻き込まれたのは実話

デトロイト暴動の発端・渦中を一通り映すと、物語はザ・ドラマティックスのメンバーへと焦点を絞っていきます。彼らは実在のグループであり、R&Bやソウルのミュージシャンとして現在も活動中、また実際に「デトロイト暴動」と「アルジェ・モーテル事件」に巻き込まれてしまいました。
実力はありながらもデビューの機会に恵まれなかったザ・ドラマティックス。その日はレコード会社の目を引くべく、大きなライブステージに立つはずでしたが、コンサートの途中で警官が割り込んできます。
暴動の規模が大きくなったため、警察の主導でコンサートは中止に。あとほんの数分で歌えるはずだったザ・ドラマティックスは抗議しますが、観客は我先にと逃げ出してしまいます。
メンバーはがっかりしますが、特に諦めきれなかったのがメンバーの高音(テノール?)担当、ラリー・リード。もぬけの殻になった会場を前に一人で歌う姿は、あまりに切ないものでした。
メンバーはその後バスでデトロイトを離れようとしますが、暴徒がバスごと襲い掛かってきます。追い立てられて降りると街は地獄のようで、暴徒や警官、軍隊があふれ、力を振りかざす中、メンバーは逃げるしかありません。
そうするうち、ラリーは友人のフレッド以外とはぐれてしまいます。二人は仕方なく、アルジェ・モーテルへ。ここでさらなる悪意にさらされることなど、二人は知る由もありませんでした。
悪魔のような警官・クラウスの演技にゾワゾワ

アルジェ・モーテルに泊まる黒人カール・クーパーは、警官や軍隊をからかうつもりでおもちゃのピストルを撃ちます。火薬の音がするだけで弾は出ないのですが、警官隊はこれを狙撃と判断し、すぐにアルジェ・モーテルを囲い込みます。
続けて銃を構えた白人たちが押し入り、宿泊者を乱暴に拘束していきます。その途中でカールは逃走を試みますが、そこをクラウスという市警に射殺されてしまいます。
いくら非常事態が起きているといっても警察は治安部隊なので、戦争が起きているわけでもありませんから人に向けての発砲は厳禁です。しかしこのクラウスは、すでに混乱に乗じて別の黒人を射殺するような男でした。警察の人出が不足しているために例外として勤務を続けているだけで、殺人者には変わりません。そのことに悪びれず、アルジェ・モーテルで二人目を殺してしまうのです。
このクラウス役、ウィル・ポールターの演技がやたらに生々しくて恐ろしい!黒人に対してはためらいもなく引き金を引き、一人目の殺人がバレたときには口をぽかんと開けて、何食わぬ顔をします。白痴のようでもありますが、「そもそもなぜ怒られているのか?」「なにが悪いのか?」もわかっていないのでしょう。
「とんでもないことをやらかした!」と後悔するのが筋でしょうに、そんな素振りも見せず、セリフがなくても黒人を人だと思っていないことが察せられてとてもおぞましいです。映画のキャラクターだというのに憎たらしささえ覚えるほどで、まさに怪演です。
さて、カールを殺したクラウスは、しばらく考えた後にナイフを取り出し、それを静かにカールの手元に置くとそのまま去ります。正当防衛に見せかけるための偽装工作です。この一連のプロセスにおいても、クラウスは罪悪感をまるで見せません。頭にあるのは自分が捕まらないことだけで、そのためなら真実などねじ曲げてしまうのです!
他の面々には、「ナイフを手にもって銃を奪おうとした」などと言い訳して済ませてしまいます。こうなるともう、クラウス一人で観客の不快指数はうなぎのぼり。しかし『デトロイト』では、さらに不愉快なことが続くのです。
【ネタバレ】狂気そのもの、アルジェ・モーテル事件

クラウスやその他のデトロイト市警はモーテルの宿泊者数人の身柄を拘束し、銃を突きつけながら壁にへばりつくよう指示します。少し動いたら暴行、余計な口を出しても暴行。銃を持った警官というだけなのに、やりたい放題です。何様のつもりなのか。
その間に他の警官が銃を探すため宿泊室を捜索します。狙撃の容疑で押しかけていますから、おそらく大きなライフルを探していたのでしょう。部屋の中は荒らしまわるわりに、宿泊者のボディチェックはおろそかです。
クラウスたちは乱暴になりながら尋問を開始しますが、物的証拠よりも市民を虐げることの方が大事であるかのような振る舞いです。しかも今度は複数人ですから、一層胸糞が悪くなり、たくさんいるのに誰も制止に入りません。
しばらくするとモーテルの捜索を終えた州警察・州陸軍が撤収を始めるのですが、彼らもクラウスたち市警の暴走を止めません。「さすがにやりすぎじゃないか?」くらいの噂話はしますが、「人権問題に関わりたくない」と言って見て見ぬフリをして立ち去ってしまいます。これにはもうガッカリ!十分な力があるのに悪を止めないようじゃ、同罪のようなものです。
州警察・州陸軍のいなくなったモーテルは、クラウスたちの独擅場に。暴力を振りかざしながら「銃の場所を言え!」と脅し続けます。もちろんモーテル中の捜索は済んでいますし、そもそも出動の原因はカール・クーパーのおもちゃの銃です。いくら脅そうが殴ろうが、銃も証言も出てきません。
それをわかっているのかいないのか、市警たちの横暴はどんどんエスカレートします。「神に祈れ!」とか「聖歌を歌え!」とか「そこのナイフを拾ってオレに向かってこい(そしたら正当防衛で撃ち殺してやる)」とか。
もはや本来の目的からは大きく外れて、ただの黒人いじめになっていきます。本気で聖歌を歌うラリーをバカにして笑ったり、身分証もある退役軍人をヒモ呼ばわりしたり、たまたま居合わせた白人女性に対しては売春婦と決めつけたり。職権乱用しながら他人を攻撃して回るさまは、本当に悪魔のようです。
しかし、いくら攻撃してもやはり証言は出ず、焦りだしたクラウスたちは「死のゲーム」を始めます。宿泊者を一人ずつ別室に連れ込んで当たらないように発砲し、「声をあげたら次は当てる」と言って閉じ込めます。
銃声から、他の宿泊者は閉じ込められた人物が殺されたと判断します。それでも証言が出ないとまた一人を別室へ。さらにまた一人と続け、なんとか自白させようと迫ります。
ところが三人目になってアクシデントが発生。市警のデメンズが勘違いから弾を当ててしまい即死でした。クラウスは職務の失敗を悟り、宿泊者たちを開放することに決めます。これも自分たちの罪の露見を恐れているだけですから、本当に人間とは思えません。
解放するのも一人ずつで、宿泊者たちにいちいち言い含めます。「ここで起きたことは誰にも言うな。誰も死んではいない」と。罪をもみ消そうと必死なんですね。白人女性や退役軍人、ラリーはこれに同意して、モーテルから逃げ出します。ただ、フレッドだけはこれを認めませんでした。「あんたが殺した」と繰り返すうちにクラウスが逆上し、何度も発砲してフレッドまで殺されてしまいます。
【ネタバレ】最後まで胸糞悪い!ラリーのその後は?

モーテルの死体を隠すことなどできませんし、事件の際銃を持っていたのは警察関係者と事件の途中で現れたある黒人警備員だけでした。日が変わって市警本部はクラウスたちが殺したものと判断し、モーテルで尋問をしていた彼らに事情聴取を行います。
ここでもクラウスは正当防衛を主張して罪を逃れようとしますが、デメンズだけは正直に告白。失職を恐れながらも、自分たちの殺人を暴きます。並みの映画であれば、これによってクラウスたちに正義の裁きが下されるところでしょう。
ですが憎らしいことに、クラウスはこれにも抵抗します。発覚後即座に弁護士を雇って、無実を主張しだすのです!弁護士がどう働きかけたのかわかりませんが、一時は黒人警備員がモーテルでの殺人の容疑を着せられます。これはもちろん冤罪です。
しかし、警察側は聞く耳を持つことはなく、抗議むなしく逮捕・勾留されます。檻の中は黒人だらけで、ここにも差別の影が落ちています。
事件はその後裁判になり、ラリー含めて事件に関わったモーテル宿泊者たちが証人喚問され、クラウスたちの是非が問われます。証人たちは報復を恐れず、正直に事件の全容を話していきます。
しかし、殺害されたのは全員黒人で被疑者は白人、陪審員も過半数が白人でした。そのことが大きく響いたのでしょう。最終的な判決はなんと無罪。黒人やテレビ局が避難を飛ばす中、クラウスはうまそうに煙草を吸うばかりで、これがまた画面を殴って割りたいほどの憎たらしさです。最高に不愉快に思わせるからこその名演技ですね。
一方のラリーは失意に沈み、ライブ活動ができなくなってしまいました。その後、ザ・ドラマティックスはラリー以外のメンバーを加えてデビューしそれなりにヒットします。ラリーの方は街の教会で聖歌隊として歌うだけに、あまりの不平等に心が痛みます。
【考察】最後の最後まで黒人は報われることはなかった
ご紹介したように、この映画の序盤はデトロイト暴動の発端をなぞります。上では触れませんでしたが、冒頭では戦前からの黒人差別の歴史をアニメーションにしたものが流れています。
つまり映画『デトロイト』の構成は、数分のアニメーション→デトロイト暴動の前半→アルジェ・モーテル事件→クラウスたちの裁判の4段階に分けることができます。
この4段階のうち、見どころは事件とその後の裁判です。逆に言えば、黒人差別の歴史も、デトロイト暴動も、あくまで「事件」の背景説明としての役割しか持ちませんでした。事件までにこういうことがあったという紹介にしかなっておらず、物語として見どころに絡む部分がほとんどないのです。
その割には妙に迫力があって尺も長く、それでいてデトロイト暴動が結局どうやって収束したのかについては触れません。暴動が後の社会にどんな影響を与えたのかも不明なのに、タイトルは『デトロイト』なので、個人的には『アルジェ・モーテル』の方が良かったのではないかと思うほど消化不良でした。
また、事件をドラマとして考察すると、二つの問題が浮かんできます。一つは人物のあやふやさです。描かれ方として事件の中心人物は悪役のクラウスでしたが、クラウスは中盤まで出てきません。
また、公式サイトの人物紹介として筆頭に出てくるのは別人で、冤罪逮捕された黒人警備員・ディスミュークスなんです。彼の受難は映画の後半であるだけに、なぜ主要人物扱いされているのかはわかりませんし、他の人物にしても掘り下げが中途半端で、結局これは一貫したストーリーなのか?それとも群像劇なのか?見終わってからも確証がもてませんでした。
もう一つはカタルシスのなさです。初めから最後まで、黒人が報われることはただの一度もありません。バッドエンドを否定するつもりはありませんが、それならそれで中盤にいいことを挟まないと起伏がありませんし、もし現実がそれだけ苦痛に満ちたものだったとしても、ドラマとして映画にするのであれば、もう少し脚色を加えても問題はなかったでしょう。
総じてこの映画はドラマなのかドキュメンタリーなのか、はたまたノンフィクションなのかがぼやけてしまったのは、個人的にマイナス点でした。
それでも真に迫る暴動の様子とウィル・ポールター演じるクラウスの姿は、やはり素晴らしいものがあり、ストーリーとしての不出来を差し引いても十分観た価値がありました。
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