映画『スターウォーズ エピソード7/フォースの覚醒』は、言わずと知れた世界的SF作品「スターウォーズ」シリーズの完全新作であり、ストーリーとしては旧三部作の続編に相当します。
この作品はウォルト・ディズニー社がルーカス・フィルムを買収してから初めて製作されたスターウォーズのナンバリング作であり、ディズニーの手によってどのような変化を遂げていくのかが注目されました。
さらに、「旧三部作」「新三部作」と同様に、本作を起点とした「続三部作」の製作も内定しており、まさしく新たなスターウォーズの幕開けとなる作品だったのです。
今回はそんな『スターウォーズ エピソード7/フォースの覚醒』の個人的な感想や考察を書いていきます!なお、ネタバレには注意してください。
目次
映画『スターウォーズ エピソード7/フォースの覚醒』を観て学んだこと・感じたこと
・新たな設定の数々はやはり興奮した
・旧作へのリスペクトが多く含まれている
・単体の作品として評価することは難しい
映画『スターウォーズ エピソード7/フォースの覚醒』の作品情報
公開日 | 2015年12月18日 |
監督 | J・J・エイブラムス |
脚本 | ローレンス・カスダン J・J・エイブラムス マイケル・アーント |
出演者 | レイ(デイジー・リドリー) フィン(ジョン・ボイエガ) カイロ・レン(アダム・ドライバー) ハン・ソロ(ハリソン・フォード) ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル) レイア(キャリー・フィッシンジャー) |
映画『スターウォーズ エピソード7/フォースの覚醒』のあらすじ・内容

遠い昔、はるか彼方の銀河系で…。
ルーク・スカイウォーカーを中心とした反乱軍の勝利から30年後。ルークはその姿を消し、彼が不在の銀河では帝国軍の残党が「ファースト・オーダー」という組織を結成しました。
かつての帝国軍を彷彿とさせる強力な軍備に苦戦を強いられたのは、レイア率いるレジスタンスの一味。彼女たちはルークを探し出し、この苦境から脱しようと奮闘していました。
一方、砂漠の惑星ジャグ―にて廃品回収業を営み生計を立てていたレイは、砂漠で徘徊するBB-8を見つけます。彼女はこの機械を保護すると、売却の誘いを断って行動を共にしていました。
こうしてジャグ―で不思議な縁に導かれた彼女たちは、さらに砂漠で放浪していたフィンと出会い、やがてレジスタンスの一味として銀河をめぐる戦いに参加していくことになるのです。
映画『スターウォーズ エピソード7/フォースの覚醒』のネタバレ感想
【解説】ルーカス・フィルムがディズニーによって買収され、続三部作が作られるまでの経緯

まず、冒頭でも触れたように本作はこれまで製作を担当していた「ルーカス・フィルム」が、ディズニー社に買収されて以降初めて製作されたシリーズ作品になります。この事実自体はある程度映画ニュースを追っている方なら誰でもご存知かと思われますが、ここではディズニーによる買収から本作の制作までの経緯を解説していきます。
そもそも、ルーカス・フィルムそのものはルーカスがスターウォーズの製作に先立って創設した映画制作会社で、作品に必要な映像効果などはここで編み出されたと言っても過言ではありません。また、会社としてスターウォーズ関連製品の製造権や映画著作権を有していたため、作品の大ヒットにより「寝ていても大金が転がり込んでくる」というような体制が構築されていました。
それでも、優れた特殊効果の技術を生かして他作品にも積極的な技術提供を行っており、著名な他社映画にも数多くクレジットを確認することができます。
以上のことから、映画制作会社として経営危機を迎えていた、といった事情によって買収されたわけではありません。なぜ買収されたかと言えば答えは単純で、ディズニー側が40億ドル(当時のレートで約3200億円)という莫大な金額を投じて実質的にスターウォーズの権利を買い取ろうと画策したからです。
これはいくらディズニーほどの大企業でも安い買い物ではなかったでしょうが、彼らには「スターウォーズブランド」と「続三部作」の製作によってその投資額を回収して有り余るほどの収益を得られるという目論見があったのでしょう。
そうしたディズニーの「投資政策」の結果として誕生したのがこのエピソード7で、彼らの期待を全面に背負って監督に起用されたのが、SF映画の製作で実績を残していたJ・J・エイブラムスでした。
結論から言ってしまえば作品の出来そのものは手放しで称賛できるものではないものの、こと興行収入の面から見れば全世界累計20億ドルの成績を残しており、ディズニーが見込んでいた投資の成果は見事に表れていたといえるでしょう。
【解説】ストーリー構成・小ネタ共に旧作ファンへのサービスが多い

ここからは作品内の解説に入っていきます。まず、過去から通しでスターウォーズシリーズを鑑賞している筆者が最も感じたことは「過去作(旧三部作)を意識した演出や展開が非常に多い」ということです。
例えば、大枠のストーリー構成が最も分かりやすい点でしょうか。本作の基本的なストーリー構成はその大部分が「エピソード4」と共通した展開によって成り立っており、これに関しては長年本シリーズのファンをやっていた方ならば、すぐに気づくことができたでしょう。
先に本作のストーリーを整理してみましょう。この作品は、悪の大組織ファーストオーダーに正義の弱小レジスタンスたちが追い詰められている構図からスタートします。
一方で、隠された力を有しているレイはそのことなどつゆ知らず、田舎でゴミ拾いをやっており、彼女は半ばどさくさに紛れる形でレジスタンスの一味となります。そして、敵組織に属するカイロ・レンは「父殺し」を迫られ、最終的に両者の戦いはファーストオーダ―本拠地の崩壊によって一時的にレジスタンス優勢の形で幕を閉じるのです。
この概要をざっと見ただけでも、エピソード4との関連に気づくことができるのではないでしょうか。まず、レイとルーク、反乱同盟軍とレシスタンスの境遇は非常に似通っています。
レイもルークも自分自身に隠された力を自覚しておらず、両親さえも知らないまま秘められた能力にふさわしくない雑用的な仕事に従事しているのです。同時に、強大な敵組織に追い詰められて劣勢を強いられている反乱同盟軍とレジスタンスも同じ図式にあります。
さらに、戦いの過程でなし崩し的に「ジェダイ」として覚醒し、強大な敵の本拠地を崩壊させてひと時のハッピーエンドを手にするのもやはり共通する点となります。
このように、本作はもはや「エピソード4のオマージュ」と呼んでも差し支えがないほど、その筋書きをなぞっていることが理解できるでしょう。もちろんそれはストーリーラインだけでなく、旧作登場キャラがオリジナルのキャストによって演じられ、さらにミレニアムファルコンを始めとするお馴染みの宇宙船や惑星が登場することからも感じられます。
もっとも、すべてが旧作をなぞっているだけかというと、必ずしもそうでない点もあります。例えばレンによる実父ソロの殺害はそれを象徴するシーンであり、旧作では「エピソード6」まで生き延びたベイダーもとい、アナキンのそれとは明らかな差別化が図られていることも事実です。
カイロ・レンまわりの描写はイマイチも、新キャラは見ごたえあり

先で「旧作と共通する点が多い」ということは述べましたが、この点は良くも悪くも「無難に攻めたな」という印象で、斬新さのようなものはあまり感じられませんでした。
しかし、新キャラに関しては明かされていない部分が多いため、分からないことが少なくはないもののキャラ自体は立っており、今後の出来によっては優れたキャラになり得る土壌自体を見出すことは出来ました。
例えば、シリーズで初めて女性として主役を務めるレイの姿は実にりりしく、明かされていない設定の多さも相まって、非常にかっこよくもミステリアスなキャラに仕上がっていたように思えます。結論から言ってしまえば「エピソード8」で彼女の過去を雑に処理してしまったため、その魅力が随分と損なわれることにはなってしまうのですが、本作の鑑賞時点ではそう感じられたのです。
また、レイとセットでポリティカル・コレクトネス的な配慮もあってキャスティングされたようにも思える黒人男性のフィンも、トルーパーから味方に寝返るという一風変わった設定は面白いと感じました。彼に関しても「エピソード8」では単なるお邪魔虫になってしまうのですが、この時点では広げ甲斐のあるキャラだと思っていたような記憶があります。
ただし、概ね魅力的な設定にあふれていた新キャラに対し、本作の「暗黒卿」ポジションであるレンのキャラクターや設定には、いま一つ魅力を感じられませんでした。スターウォーズの歴史を振り返ってみても、たいてい「戦闘要員としての悪役」はカリスマ性に満ちていたため、そことの対比でより過小評価してしまっているのかもしれません。
とはいえ、父であるソロとの因縁はやや唐突でイマイチ感情移入が難しかったという印象は否めず、さらにライトセーバーを手にしたばかりのレイとの戦闘に苦労している様子にはあまりカリスマ性を感じることができませんでした。
新三部作もそうなのですが、スターウォーズシリーズはダース・モール然り、ドゥークー伯爵然り、グリーヴァス将軍然り、たとえ作品の評価がイマイチな時であっても魅力的な敵キャラが多く存在したものです。それらと比較してしまうと、本作のレンとスノーグの「ダークサイド」はやや魅力に欠けるという事実は否めません。
ルークやレイアの「末路」を描く必要はあったのか?

さて、ここまではキャラクターの出来について解説を加えてきたのですが、個人的に一つだけ言わせてもらいたいのは「興行収入以外の面で旧三部作の続編を製作する必要が本当にあったのか」という点だけは旧作のファンとしてツッコまずにはいられません。
なぜこんなことを言うかというと、続三部作の存在はすなわち「旧三部作の戦いが世界に平和をもたらさなかった」ということを意味してしまうからです。エピソード6ではルークの活躍によって銀河に平和が訪れ、後付けにはなってしまいますが「エピソード1」から続いてきた因縁に終止符を打つ形になります。
しかし、当然ながらその続編を製作するということは、つまり「ルークたちのもたらしたものは、かりそめの平和に過ぎなかった」と、彼らの冒険を否定する材料にさえなってしまうのです。これは過去作のテーマをほぼ全否定しているようにさえ感じられてしまったので、やはり残念な気分にはなってしまいました。
実際、本作に出てくるソロはかなり落ちぶれてしまっており、ルークも弟子の育成に失敗してかなり偏屈な人物になってしまっていました。こうして「過去の思い出を破壊する」という要素が少なからず存在するので、旧作ファンに向けた演出を多数盛り込んでいるのはそうしたファンに向けての「謝罪」に見えてしまうほどです。
もっとも、こうしてエピソード6の30年後に時系列を設定する以上、ルークたちが決して無事平穏に過ごしてるわけではないという設定そのものは理解できます。この時代を描くのであれば彼らを登場させないわけにはいきませんし、ストーリー構成上彼らの築き上げた世界を否定するのも無理はありません。
ただ、そもそも論として、「こういう描き方しかないのであれば、これほど近い時系列で続編を作らなければよかったのでは」と思わずにはいられません。幸いスターウォーズという作品は銀河全体を舞台にしており、かつ時系列を大きく動かすことによる弊害もそれほど見られない世界観をしています。
それならば旧三部作とこれほど近い時系列で旧作キャラを登場させるのではなく、エピソード1より大昔あるいはエピソード6のはるか未来を描けばよかったと考えてしまうのです。
もっとも、そうなれば世界観を一から作り直す必要がありますし、旧作キャラの人気にあやかることができないので、ディズニーの求める安定した興行収入を得られることはできなかったでしょう。ただ、思い切って未来の話をする以上は、旧作を破壊する恐れのある近未来を避けてほしかったというのが偽らざる本音です。
【評価】物語の序盤として作られているため、単体で評価するのは難しいが…

最後に、本作に関する評価をまとめて記事の締めにしたいと思います。何度か言及したように、本作の評価は次回作の出来いかんによって左右される点が多い映画でした。
これはこの作品を明らかに「三部作の第一作」として描いているためで、単体の映画とは言えども起承転結でいえば「起」でしかないのです。そのため、単体で作品を評することは難しいでしょう。
ただ、すでにご存知の方も多いように次作のエピソード8は、賛否両論さえ巻き起こらない明確な「ハズレ映画」に仕上がってしまいました。そのため、8に向けた伏線として一定の評価を下されていた本作も、連動してその評価を落としてしまったのは否めないでしょう。
個人的には公開当初からこの作品を高くは評価していませんでした。その理由は文中でも述べているように、
・中途半端に旧作を再現し、また中途半端に旧作を破壊している
・全体的にとにかく「守り」の映画である
・ディズニーの商業主義がにじみ出てしまっている
というあたりがいけ好かないと感じていたからです。
もちろん、映画を製作するうえでヒットさせることは大切ですし、たいていの映画人はそれを夢見て作品作りに没頭しているわけです。しかし、本作の場合はルーカス・フィルム買収の経緯を見ても分かるように「投資」的な意味合いがあまりにも強すぎます。
そのため、想像にはなりますがJ・J・エイブラムスとしてもディズニー側の強烈な介入を受けていたように思えてなりませんし、彼が自由に製作していればまた異なる結果が生じていたようにも感じられます。
ちょうど現在話題になっているMCUの権利騒ぎにしてもそうですが、昨今の投資ファンド化しているディズニーの姿勢には、一映画ファンとして疑問を抱かずにはいられません。彼らほどの大企業になると「売り上げ」と「高い人権意識」の双方を求められるという事情は分からないでもないのですが、そのために映画の中身が損なわれては本末転倒です。
今はこれまでの遺産で人気を維持しているスターウォーズシリーズですが、8の大失敗を受けて市場の反応はいささか冷ややかになっているようにも感じられます。
(Written by とーじん)
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