映画『スターウォーズ エピソード4 新たなる希望』は、今でこそその名を知らぬ者はいないと思われるほどの世界的SF作品「スターウォーズ」シリーズの記念すべき第一作にあたる作品です。
当初から長編シリーズものとなることを前提に設計されたこの作品は、目論見通りアメリカの映画史に残るほどの興行収入と反響を生み出し、現代まで続くスターウォーズブランドの基礎を築きあげました。
さらに、本作の公開以前は「B級」のレッテルを張られることが多かったSF映画というジャンルまでをブームに変えたのも、この作品の功績とされることが多いほどの影響があります」。
今回はそんな『スターウォーズ エピソード4 新たなる希望』の個人的な感想や解説、考察を書いていきます!なお、ネタバレには注意してください。
目次
映画『スターウォーズ エピソード4 新たなる希望』を観て学んだこと・感じたこと
・徹底した王道ストーリーは完成度が非常に高い
・今見ても色あせない魅力的な設定・世界観の数々
・映像面は厳しいところも多いが勢いでカバーできている力
映画『スターウォーズ エピソード4 新たなる希望』の作品情報
公開日 | 1978年6月24日(日本) |
監督 | ジョージ・ルーカス |
脚本 | ジョージ・ルーカス |
出演者 | ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル) ハン・ソロ(ハリソン・フォード) レイア・オーガナ(キャリー・フィッシャー) C3PO(アンソニー・ダニエルズ) R2D2(ケニー・ベイカー) |
映画『スターウォーズ エピソード4 新たなる希望』のあらすじ・内容
遠い昔、はるか彼方の銀河系で…。
ジェダイと共和国が滅び去って数十年がたった時代。銀河を支配する銀河帝国は独裁的な圧制国家であり、銀河中で反乱の気配が見られるようになりました。
しかし、強大な力を有する銀河帝国の前にそうした勢力は沈黙を選択せざる得なかったのですが、反乱同盟軍が敵の軍事要塞であるデス・スターの設計図データを盗み出すことに成功。
これに危機感を覚えたダースシディアスは、配下のダースベイダーに設計図の奪還と反乱軍の早期発見を命じます。
一方、反乱軍の指導者レイアは帝国軍に囚われてしまうも、危機を脱するべくR2D2とC3POに望みを託して船を脱出させました。
彼らは漂着した惑星タトゥーインで、農場を手伝う青年ルーク・スカイウォーカーに出会うのです…。
映画『スターウォーズ エピソード4 新たなる希望』のネタバレ感想
【解説】製作・公開当初は酷評も多かったと言われる
現代において「初代スターウォーズは駄作」という意見はあるかもしれませんが、「初代スターウォーズは失敗作」という映画関係者は存在しないでしょう。映画本体だけで途方もない売り上げを記録しただけでなく、関連商品や製作陣の出世など、まさに世界中のあらゆる国家に影響を及ぼしているといっても過言ではありません。
しかし、これだけ現代で評価されるこの作品も、制作・公開当初は懐疑的な目を向けられていました。まず、ルーカスは本作の制作にあたって与えられた予算が極端に少なかったことで知られており、彼が過労で倒れるまで働きづめになってしまったとさえ言われています。
また、完成した映画を友人の映画監督や関係者に見せた際にも、その評価は決して芳しいものではなかったようです。あまりの酷評ぶりにルーカスは自信を失い、映画の失敗さえも覚悟していたほど。
さらに、それまで「マニア・子供向け」と考えられていたSF作品に対する映画館側の評価も低く、公開時にルーカスは電話の繋がらない場所まで逃げてしまったと伝わっています。
ところが、言うまでもなくこの作品は大ヒットし、公開当初からその反響は非常に大きなものがありました。ルーカスの友人にして本作のヒットを予見していたとも言われるスティーブン・スピルバーグは、酷評を恐れ逃げだしていたルーカスに盛況ぶりを伝えたという伝説も残されています。
こうした映画をめぐる初動の様子からも、本作およびSF映画というジャンル自体がどれほど低く評価されていたかが理解できるのではないでしょうか。しかし、ルーカスの生み出した本作や、友人であるスピルバーグの生み出すSF作品はハリウッドでも広く受け入れられ、やがて空前のSF映画ブームを引き起こすことになるのです。
そして、ブームが収束して以降もSFという映画ジャンルは完全に定着し、現代でもいわゆる「SF超大作」は頻繁に公開され、興行的にも優れた数値を叩きだす作品は枚挙に暇がありません。
単純明快なストーリーと魅力的な設定の数々は色あせない
ここからは映画本編の内容を解説していこうと思うのですが、正直いまさら初代スターウォーズの魅力をくどくどと語るのは野暮なのかもしれません。とはいえ、現代という時代から改めて本作を論じることもまた意味のあることと思えますので、あえて語り明かしてみたいと思います。
まず、この作品の一番目立つ点は「ド王道の分かりやすいストーリーと心ときめくSF設定の融合」に他ならないでしょう。仮にSF的な側面を全て排して本作を眺めてみると、出来のいい王道展開が見えてくると思います。敵に捕らわれた姫が見つけたのは、実は伝説の生き残りで、彼が新たなる希望となって巨悪を打倒する。端的に本作の内容を述べてしまえば、これだけで済んでしまうのです。
しかし、こうしたシンプルなストーリーを輝かせているのは、今見ても斬新で魅力的な世界観の存在でしょう。我々からすればもはや当たり前の存在になっているような設定の数々は、当然ながら本作が世に生まれるまでは実在しないモノであったのですから驚きです。
本作において魅力的な設定を語ってしまうととてもではないですが字数が足りないため省略しますが、当時としては未知の設定を輝かせるためにはあれくらい単純なストーリーのほうが情報量として分かりやすかったのかもしれませんね。
さて、では少し話を変えてみて、「現代という時代でもなお、設定面にほれ込みながら本作を楽しめるか」という点を考えてみたいと思います。確かに我々のような既存のファンは、今見てもなおその優れた内容に舌を巻くかもしれません。しかし、仮に今の今まで本作を未視聴の方でも我々のように楽しむことができるのか。
この点については個人差もあるため一概にこそ言えませんが、私はある程度楽しむことができると考えています。その理由は、スターウォーズという作品をたとえ見たことがなかったとしても、作中に登場する設定やキャラ、BGMはあまりにも有名なので「これどこかで見たことある!」という視点で楽しめるのではないかと思うからです。
例えば、映画冒頭の文字が流れるプロローグ。我々からすればお馴染みの演出になるわけで、この演出をパロディにした作品はいくらでも挙げることが可能です。もちろん、単純な演出としてもワクワク感をかきたてられる素晴らしいものであるとは感じますが、中には「これの元ネタってスターウォーズだったのか」と思う方が必ずいらっしゃると思います。それだけ、本作がエンタメ界全体に与えた影響は計り知れないということです。
公開当時は映像面の評価も高かったが、今見るとやや粗も目立つ
先ほどの項で「今見ても楽しめるのではないか」と述べましたが、残念ながら現代の映画に対して明らかに見劣りする点があることも指摘しておかなければなりません。それは、合成やCGグラフィックといった映像面の問題です。
とはいえ、公開当初は本作の映像面も大喝采を受けていたことはまた事実。そもそも本作以前にはこれほどの特撮映画は例がなく、彼らはそのノウハウを一から作り出さなければならなかったと言われています。そのため、本作が生み出した技術やノウハウが共有されると、これまで映像化不可能とされていたSF作品が次々と生み出されていくことになるのです。
したがって、本作の映像が不出来だと言いたいわけではありません。ただ、今見るとやや不自然なシーンも多いというのは、恐らくファンでさえも認めるところでしょう。特に、キャラクターと背景の合成周りがやや貧弱に感じられました。
現代のSF映画で「CGと人間の境界」を感じることはほとんどないと言ってもいいでしょう。それだけ技術が発達しているということもあり、少なくとも映像を見る限りでは完全に世界と一体化しています。
ところが、本作ではそのあたりが明らかにわかってしまうのです。特にジャングルを疾走するようなシーンで顕著なのですが、このあたりには技術的な壁が存在しています。
ただし、こうした「技術的に不十分な点が多い」というのはルーカスも承知していたことで、技術的に再現がまだ困難であった1~3を後回しにして、あえてエピソード4からシリーズをスタートさせたのは、こうした技術面の制約から生じた妥協策でした。
そのため、ルーカスは本作の公開から20年が経過した1997年に「特別編」と題して、公開当時は十分に見せることができなかった数々のシーンをCGグラフィックで作り変えているという事実があります。
特別編ではいくつかの箇所が劇的に改善されており、今から視聴するのであればこちらをオススメしたいところです。もっとも、あくまで施されたのは一部のリマスターであり、現代に公開されているようなSF映画と同質の映像美を求めると、痛い目に遭うことは確実ですが。
エピソード4を視聴する場合は、あくまで映像面に目をつぶって設定や物語を楽しむよう工夫するのがいいのかもしれません。それでも見て後悔しない映画だとは思いますので。
【解説】デス・スター周りの設定は、ローグワンでの補完を知るとなお楽しめる
このエピソード4で作品を盛り上げるポイントは、帝国軍が所有する惑星型兵器「デス・スター」をめぐる攻防です。最終的にルークの活躍によってこの凶悪兵器は破壊されることになるのですが、ファンの間では「最強兵器のくせに弱点丸わかりすぎなのでは?」ということがネタにされることもしばしばでした。
実際、デス・スターは帝国軍の作戦において明らかに重要な存在であるにもかかわらず、パッと映画を見ただけではあまりにもずさんな防衛体制に思えなくもありません。また、反乱軍の弱点把握についても、特段大きなドラマなくいきなり狙いを定めているのは、多少不自然なシーンに見えなくもありません。
しかし、こうした「脚本上の弱点」を補強したのが、近年公開されたスピンオフ作品「ローグ・ワン」の存在です。この作品は、ジェダイが崩壊してからルークの時代に至るまでの物語を描いた作品で、反乱軍の戦士たちが命を賭してデス・スターの設計図を入手する過程を知ることができます。ローグ・ワンは非常に出来が良かったこともあり、この作品を見てから本作を再度見てみると「アッサリに見えたデス・スター打倒の裏にはこれだけの犠牲があったのか」と一転して完成度の高いシーンへと昇華しているように感じられるのです。
もっとも、ローグ・ワンにおいて描かれたデス・スターの設計図をめぐる物語は、完全なる後付けでもありません。皆さんの記憶にあるかは微妙なところですが、本作のプロローグ部分で
「反乱軍のスパイは帝国軍の究極兵器の設計図を盗み出すことに成功」
としっかり語られているのです。実際、スピンオフを手掛けた監督のギャレス・エドワースも「このテキストから発想を膨らませてローグ・ワンを企画した」と語っており、既存の作品を見事に補完してみせたスピンオフの鑑ともいうべき作品です。
もローグ・ワンの登場人物に関しては、そのほとんどがベイダー卿によって虐殺されてしまうため、残念ながら直接的な形でエピソード4と関わりがある人物は多くありません。
しかし、ローグ・ワンのラストと本作の導入部分は完全にリンクしているため、個人的には本作視聴前にローグ・ワンを見ておくと、映画の見方が全く異なるものになるのではないかと考えています。
ローグ・ワンについては本サイトでも記事を書いており、作品単体としても非常に完成度の高い映画です。エピソード4を視聴する際には、ぜひ合わせてローグ・ワンも視聴されることをオススメしたいですね。
【評価】当時から現代にいたるまで、エンタメ界に与えた影響は余りにも大きい
ここまでの内容から、本作が映画界にどれほど大きな影響を与えてきたかが明らかになったと思われます。もちろんその影響力は映画だけに留まるものではなく、全世界のあらゆるエンタメにすら及んでいるのは明らかです。
特に、先ほどから述べているようなSF映画というジャンルに与えた影響は余りにも大きいでしょう。ストーリーの根本や設定は、ルーカスが心酔する黒澤明作品の影響が数多くみられますが、それを宇宙空間へと持ち出したことが本作最大の功績です。
皆さんもご存知のように、宇宙を舞台にした作品は以前にも存在しました。鬼才スタンリー・キューブリックが生み出した「2001年宇宙の旅」などが分かりやすいかもしれませんが、何も宇宙を描くこと自体に斬新さがあったわけではないのです。
本作が歴史を変えた点は、いわゆる「エンタメ的な宇宙」を描き出した点にあると考えています。例えば、先に述べた「2001年宇宙の旅」は、いわゆる「典型的なSF作品の傑作」であり、複雑な設定と宇宙の神秘を描き出したような作品です。この作品も殿堂入りレベルの名作ですが、どうしても小難しさのようなものが拭えず、あくまで映画通のための作品という位置づけにあったような印象を受けます。
しかし、このエピソード4では、宇宙空間に「エンタメ的な雰囲気」をもちだしているのです。これを分かりやすく述べると、「舞台は宇宙ながら誰が見ても楽しめる作品に仕上がっている」ということがいえます。もちろんこれは本作だけが生み出した発想ではないのでしょうが、宇宙を誰が見ても楽しめるエンタメの領域として描き出した功績はあまりに大きいです。
こうして、マニアのための「映画における宇宙」は一般大衆にとっても身近なものとなり、SF作品のブームが巻き起こったのではないでしょうか。今考えればこれは当たり前のようにも思われるようなことですが、当時の宇宙観からすればまさにコペルニクス的転回に等しい衝撃があったのかもしれません。
この後にスターウォーズシリーズは世界的作品となり「出せば売れる」とまで噂されるようなモンスタータイトルに成長していきます。
しかし、この作品は生まれる前から成功を約束されていたという類の作品ではなく、ジョージ・ルーカスによる人生を賭したギャンブルが最高の形でヒットした、そういう歴史をもっているタイトルであるということがもっと一般にも知られていくことを願います
(Written by とーじん)