映画『スターウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』は、世界的SFオペラ映画「スターウォーズ」シリーズの第4作目であり、ルーク・スカイウォーカーの父アナキン・スカイウォーカーが生きた時代を描く「過去編」にあたる作品です。
紛らわしい点として、このシリーズはエピソード4から6が先に製作されており、時系列と製作順が一致していないことをご注意ください。
また、「エピソード6」の公開から実に16年の歳月を経て公開された作品ということもあり、世界が賛否両論で二分されたといっても過言ではありません。
今回はそんな『スターウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』の個人的な感想や考察を書いていきます!なお、ネタバレには注意してください。
目次
映画『スターウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』を観て学んだこと・感じたこと
・進化した3D技術やCGの魅せる世界観は圧巻
・日本人には分かりづらい点が問題になっている
・一つの作品として見れば完成されているようにも思える
映画『スターウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』の基本情報
公開日 | 1999年5月19日(日本) |
監督 | ジョージ・ルーカス |
脚本 | ジョージ・ルーカス |
出演者 | アナキン・スカイウォーカー(ジェイク・ロイド) クワイ=ガン・ジン(リーアム・ニーソン) アミダラ(ナタリー・ポートマン) パルパティーン(イアン・マクダーミド) ジャー・ジャー・ビンクス(アーメド・ベスト) |
映画『スターウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』のあらすじ・内容

遠い昔、はるか彼方の銀河系で――。
世界を牛耳る共和国政府は、腐敗の一途を辿っていました。特にその問題は貿易面において深刻で、辺境の惑星と通商連合の間では対立が深まっていました。
こうした状況下、ついに通商連合は惑星ナブーを包囲し、武力をもって主張を通そうとしていたのです。
そこで紛争仲裁の依頼がジェダイらのもとへ舞い込み、派遣されたのがクワイガンとオビワンでした。彼らは道中の戦闘で船を失うも、なんとか惑星の女王アミダラを救出することに成功します。
しかし、共和国へと帰る手段を持たなかった彼らは、やむなく砂漠の惑星タトゥーインで船の修理を画策するのでした…。
映画『スターウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』のネタバレ感想
久々の新作ということで社会現象と化すほど注目されていた

まず、本作の制作が発表された時点ですでに世界的ビッグタイトルと化していたスターウォーズは、当然ながら大きな注目を浴びることになりました。実はエピソード4以降監督を務めていなかったジョージ・ルーカスが監督・脚本を担当し、さらに新三部作では「アナキンがダースベイダーになるまでの悲劇」を描くことが決定したのです。
こうして製作が進められた本作は、世界中で多額の広告宣伝費が投下されたこともあり、特にアメリカでは映画公開によって、仕事が回らなくなると危惧されるほどに注目を浴びていたのです。当時はまだインターネットで座席を予約することができなかったため、チケットを購入するために長蛇の列ができてしまうほどでした。
加えて、映画公開直前まで前売りチケットの発売を認めていなかったこともあり前売り券が高額で転売されるなど、まさに「社会現象」という言葉にふさわしい盛り上がりを見せていたのです。
この盛り上がりは、結論として見事に売り上げへと結びつくことになります。興行収入の点で見ると作品は大成功し、当時の動員や興行記録をいくつも打ち破っていました。最終的に、売り上げは旧三部作だけでなく新三部作の中でもトップになっており、全世界総額は実に9億ドル(約900億円)以上と推定されています。
こうして興行的には歴史に残る成功を収めた本作。しかし、この部分は後ほど詳しく語りますが、映画としての評価はその売り上げに比べて芳しいとはいえませんでした。これには、恐らく「ファンの期待値が高すぎた」ということと、「ファンの求めている中身とは違った」という二つの要因が作用しているように思われ、特に旧三部作のファンには受け入れられているとは言い難い一面もあります。
ちなみに、この点に関しては「新三部作」すべてが同じような評価を受けており、駄作の比喩とはまた異なる、本当の意味での賛否両論が巻き起こることになるのです。
圧巻のCG技術は見事も、メカデザインの方向性が大きく変化している

さて、まずは冒頭で指摘しているように、この作品の「良いところ」と「そうでないところ」を切り分けて語っていきたいと思います。
まず本作を見て真っ先に注目できるのは、過去作ではいくらか怪しい合成やCGも見られた部分が大きく進化しているという点です。確かに旧三部作は心躍るシーンも多い一方で、明らかにキャラクターと背景が浮いてしまっているような、合成がバレバレのシーンも少なくありませんでした。
しかし、本作に関しては技術面が格段に進化しており、CGに関して違和感を覚えることはなかったように記憶しています。スタッフやキャストのコメントを踏まえるとほとんどが「合成」による撮影であったということですが、不自然なシーンがあるようには思えませんでした。このあたりは2019年現在の邦画でも怪しい映画があることを考えると、当時としては紛れもなく最先端のテクノロジーが惜しみなくつぎ込まれていたのでしょう。
特に、作中のポッドレースに関してはその高い技術を存分に楽しむことができ、この映画は映画館で楽しみたい映画といえるでしょう。技術力の向上に関しては、間違いなく過去作よりも優れている点です。
ただ、一方でその技術力を発揮するための根本となるメカデザインの方向性が旧三部作から大きく変更されており、そこは既存のファンを中心に非難が集中していました。確かに、R2-D2やクローン兵のデザインを見てみると、「いかにも近未来」というようなメカばったデザインが特徴的であり、立体的でロマンを感じるように思えます。
これを本作にあてはめて比較してみると、バトルドロイドを始めとする戦闘用ドロイドはデザインがやや平坦であり、男心をくすぐるようなスイッチや角張った機構など、我々がロマンを抱きがちな装飾が廃されてしまっているのは事実です。
既存のメカデザインに惚れこんでいるファンからすると「こんなのスターウォーズのメカとは認めたくない」という意見が出てくるのも理解はできるように感じます。確かに量産型ロボットということを考えれば、無機質で武骨なデザインが採用されるのも分からなくはないのですが、それを言ってしまえばジェダイなる謎の剣士が強大な力を有している世界観自体が不自然極まりないので、そこはリアリティを突き詰めなくてもよかったのではないかと感じます。
このあたりは「ガンダム式の二足歩行ロボットは非効率的」という事実が明かされても、今なお二足歩行兵器が男子の心を掴んで放さないのと同じでしょう。
【解説】ダース・モールの存在感はすさまじいが、それ以外のキャラは…

次に、キャラクターやアクションシーンといった登場人物たちを中心に解説していきます。ここについてもやはり賛否両論噴出してくるので、なるべく中立な形で双方の意見を出していきたいと思います。
まず、キャラクターに関して、個人的には本作で新たに登場したダース・モールは圧巻の存在感を発揮していたように思えました。黒幕としてすでに正体を明かされているダース・シディアスの尖兵として教育されたモールは、まさしく異形という他ない出で立ちをしています。
顔は日本で言うところの「鬼」を連想させるような赤塗りとなっており、さらに顔の一部や服装が黒で染められていることで、誰が見ても悪役であることを悟れるようなデザインになっています。加えて、彼が保有している赤いライトセーバーは通常のそれと異なり、剣が両端から突き出すというデザインをしているため、視覚的にも戦い方の面でも非常に新鮮なものに見えました。
劇中ではクワイガン・オビワンと戦闘をすることになるのですが、クワイガンがモールに倒されるシーンはすさまじい絶望感を覚えました。最終的にオビワンがモールを倒してしまうのですが、悪役ながら強大な存在感を放っているモールを見ていると「ここで殺すのは惜しい、もっと出番を見てみたかった」と思うほど。実に魅力的なキャラクターになっているといえます。
ただし、モール以外のキャラクターに関してはやや描写が不足していて、旧三部作に比べると「キャラ立ち」という面では難があるようにも感じました。後に述べるビンクスは論外としても、幼少のアナキンは幼すぎて無理矢理活躍の場を作っている感じが否めず、これならもう少し成長させた時間軸で物語を進行しても良かったように思えます。
また、ファンが待ち望んでいた旧作キャラの出番も決して多いとはいえず、さらにせっかくジェダイが生き残っているという世界観にもかかわらず、ジェダイの戦闘シーンや活躍があまり描かれていないのは気になりました。
恐らく、ルーカスとしては「エピソード1はアナキン闇落ちのための伏線作」というような位置づけで制作していたように感じますが、ファン側は当然ながら絶滅する前のジェダイ戦を楽しみたいと思っていました。ここは製作意図と観客の需要がミスマッチの状態になってしまっていることを示しており、本作の評価が下がる大きな要因になってしまったのでしょう。
【解説】日本人には分かりづらい「ジャージャービングスの圧倒的な嫌われ原因」

この作品は「ファンの思っていた・求めていたスターウォーズではなかった」という部分が主な批判の対象となっています。しかし、本作で一番ファンの反感を買ったのは、ただ一人の脇役キャラクター、ジャージャービングスの存在に他なりません。
皆さんも記憶には残っていると思われますが、ビングスは恐竜人のような外観をしているナブーの民で、オビワンらの協力者として作中でも活躍していました。ただし、声がやや人を馬鹿にしたようなところもあり、さらにミスを起こして見方を困らせることもありました。加えてキャラクターの性格がよく言えば陽気で、悪く言えばうっとうしいというタイプのため、嫌いな方がいるという事実には納得できるでしょう。
しかし、ビンクスの嫌われようは尋常ではなく、「世界で一番嫌われているキャラクター」とまで揶揄されていることをご存知でしょうか。ビングスは最低の映画賞として知られるゴールデンラズベリー賞を受賞したほか、「ビングスを世の中から消す方法」という趣旨のサイトが大人気となるなど、常軌を逸した嫌われ方をしていることが事実なのです。
この嫌われ方は尋常なものではなく、筆者も嫌われそうなキャラだとは思う一方で、ここまで嫌われる理由はピンときませんでした。そのため、嫌われている要因を分析してみると、日本人には分かりづらい英語圏特有の問題が潜んでいると分かってきたのです。
まず、映画を吹き替え版で視聴した方は、字幕版で一度映画を見なおしてみるとよいでしょう。ビングスの声は確かに「ウザく」感じられると思います。さらに、ここからが問題なのですが、ビングスには人種差別的な思想が反映されていると指摘されることもあります。これはどういうことかというと、ビングスの話す英語は典型的な黒人英語であると言われてるためです。他のキャラはイギリス英語やアメリカ英語を話しているらしく、ここには作為的なものを感じざるを得ません。
しかし、これだけではまだ差別とは言い難いのも事実です。確かに明らかな黒人英語を取り入れたことは事実ですが、そういう映画は他にも存在します。むしろ問題は、作中において「使えない奴」とされる能力面と、寒気がするような見た目を有するキャラに、黒人訛りの英語を組み合わせているという点に他ならないのです。
これでは、「黒人は使えなくて気持ち悪い」というメッセージが隠されていると勘繰られても致し方なく、ビングスが嫌われるのも納得ができるでしょう。当時はまだ人種差別に対する意識がそれほどでもなかったため大きな問題にはならなかったものの、仮に2019年でこういった内容の映画を公開していれば世界中で炎上したことは間違いありません。
【評価】ファン歴や文化的背景で、作品評価が大きく一変する

ここまで、この作品がいかに賛否両論ある作品かということについて語ってきました。その内容をまとめていくと、筆者はある傾向があるように感じました。それは、「ファン歴」や「文化的背景」によって作品の評価が大きく変わるということです。
結論から言えば、個人的にこの作品は決して嫌いではありません。むしろ、どちらかといえば好きな部類に入るくらいです。ただ、自分の現状を上記の点にあてはめて考えると、以下のようになります。
・初スターウォ―ズがこの作品(その後全ての作品を視聴)
・英語に疎い日本人
・好きな作品の一つだが「マニア」というほどではない
このような方には、筆者と同じように「言われているほど悪い映画だとは思わない」という方も多いと思います。実際、旧三部作を知らない状態で本作を見れば、過去のそれと比較しなければ作品的な欠陥も少なく、映画としての完成度は決して低いとも思えません。
しかし、良くも悪くも旧三部作とは明確に違う作品であり、やはり過去の作品に思い入れがあれば新三部作を到底受け入れられないという意見もよく分かります。そう考えると、続き物であることを考えれば既存のファンに受け入れられなかったこの作品は失敗作と呼ばれても仕方はないと思います。
とはいえ、個人的な意見を言わせてもらえば、近年になってふたたび製作が再開した「エピソード7」および「エピソード8」と比べれば、1~3は映画として優れていると断言したいところです。実際、7に関しては旧作ファンを大切にした作品でしたが、様々な伏線を8に丸投げしているような印象がありました。そして我々のもとに姿を現した8は「新参・古参のファン」が一致団結してNOを突きつけた大問題作であり、それらと比べれば決して悪い映画とも思えません。
まとめると、スターウォーズという重い看板を背負ってしまったばっかりに、実態以上に低い評価を与えられている作品。それが本作であると個人的には考えています。少なくとも目を覆いたくなった昨今の新作とは異なり、映画単体としても個別のシーンにしても見せ場は十分に用意されています。
もしいまだに本シリーズを全く知らないという方が本作を見て、古参のファンほどに失望するとは到底思えません。
(Written by とーじん)
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※2019年9月現在の情報です。