王道SFアドベンチャー系の映画『スター・トレック イントゥ・ダークネス』。元となるドラマや前作にあたる「スター・トレック」も観ていない状態で視聴してしまいましたが、それでも十分に楽しめるような魅力あふれる、とても観やすいSF映画になっていました。
今回はそんな『スター・トレック イントゥ・ダークネス』についての詳しい感想と解説をご紹介していきます。感想と解説ではネタバレを含みますので、映画ご視聴前の方やネタバレを避けたい方はご注意ください!
目次
映画「スター・トレック イントゥ・ダークネス」観て学んだ事・感じた事
・前作を観ていなくても大丈夫
・王道SFアドベンチャーがお好きな方におすすめ!
映画「スター・トレック イントゥ・ダークネス」の作品情報
公開日 | 2013年08月23日 |
監督 | J・J・エイブラムス |
脚本 | ロベルト・オーチー アレックス・カーツマン デイモン・リンデロフ |
出演者 | クリス・パイン(ジェームス・T・カーク) ザカリー・クイント(スポック) ゾーイ・サルダナ(ウフーラ) ベネディクト・カンバーバッチ(ジョン・ハリソン/カーン) ピーター・ウェラー(マーカス提督) アリス・イヴ(キャロル・マーカス) |
映画「スター・トレック イントゥ・ダークネス」のあらすじ・内容
宇宙暦2259年。惑星の調査中、宇宙艦隊エンタープライズ号の艦長ジェームズ・T・カークは、副艦長・スポックの命を救うために重大な規律違反を犯したことで、艦長を解任されます。
恩人であるパイク提督の計らいで、何とか副艦長としてエンタープライズ号に再び乗り込むことができるようにはなりましたが、副艦長としての初仕事の日、宇宙艦隊データ保管庫爆破事件の犯人ジョン・ハリソン追跡についての会議をしていた最中に、ハリソンが襲撃してきました。
凶弾に当たったパイク提督は命を落とし、怒りと悲しみに支配されていた所にハリソンの位置情報を知ったカークは、自分を艦長に復帰させ、ハリソンを追わせてほしいと志願するのですが…。
映画「スター・トレック イントゥ・ダークネス」のネタバレ感想
映画「スター・トレック イントゥ・ダークネス」は映像や設定、アクション、ストーリーが王道SFアドベンチャーを思わせる少年漫画のような作品になっていて、SF好きとしては純粋な気持ちで楽しめる作品になっていました!
印象的なSF映像
今作ではシンプルなのに美しい、ビビッドな色使いで印象に残りやすいような独特な雰囲気を持ったSF映像が多かったです。
毛細血管のように細い枝が張り巡らされた赤い森。
ひび割れた真っ白な身体に真っ黒な目をした原住民。
地球の生物に似ているようで少し違う宇宙生物たち。
未来的で上に横にと継いでいったような街並みやシャトル。
見た目が印象的だったのはもちろんのこと、色使いが特に良かったです。
未来的なイメージを持ちやすいブルーを基調にしながら、レッド・グリーン・ホワイトなどの鮮やかな色使いをし、かと言って主張し過ぎることなくキレイにまとまっていて、視覚的に目を惹くものがありましたね。
宇宙艦隊のシャトルは色自体はシルバー1色とシンプルなのですが、ワープ機能と関係があると思われる部分はブルーに光っていて、シルバーの中に輝くブルーが映像的に映えていました。
そしてフォルムも良かったですね。宇宙船らしい無駄のない平たく・シンプルなフォルムに、継いだような部分が付いていることで曲線的なフォルムにもなっていて、使い勝手を考えると何とも言えないような感じもするものの、斬新な形をしていて印象には残りやすかったです。
そんなシャトルも良かったのですが…個人的イチオシはハリソンが逃げた惑星・クロノス星のシャトル!
闇に溶け込む黒いボディ、鳥が羽ばたくようにゆっくりと動く翼、シンプルな割に意外とゴツゴツとしているフォルムは、映画『バットマン』のバットモービルを思わせるような見た目でカッコよかったですね。
今作はシンプルなのに印象的な色使い、シンプルなのに斬新なフォルム、そして生物・現代の要素も残っているようなデザインが良かったですね。映像的に映えるのはもちろんのこと、現代っぽさが残っていることで身近に感じられて、胸躍るようなSF映像だったと思います!
宇宙の調査・保護をする組織
240年ほど未来の世界で宇宙人と地球人が入り混じる地球の安全を守りつつ、宇宙の調査や保護を行う組織というのが、実に王道SFアドベンチャーらしい設定で良かったですね。
SFらしい宇宙的・未来的な要素を持つ正義の味方という組織で、SF好きな方にはもちろんのこと、SFにそこまで触れてこなかったという方でも理解しやすいような王道SF設定だったと思います。
そして地球と地球人だけを守るだけでなく、他惑星や宇宙人も守るというのが未来的で、他惑星・宇宙人との交流がある世界だからこそ自惑星を守るだけではなく、困っている惑星には手助けに行き、反りの合わない惑星とは戦争寸前というのが、地味にリアルな表現だったと感じました。
印象としては映画『メン・イン・ブラック』シリーズ、マンガ『エルドライブ【ēlDLIVE】』あたりと設定の印象、SFの雰囲気は似ていたと思います。
地球を飛び越えて宇宙にいるということで受ける印象が違う部分も結構あるのですが、地球・他惑星・宇宙人を守るために動く正義の組織という点、王道SFアドベンチャーっぽい雰囲気はよく似ていました。
最初からクライマックスなシーン・展開!
今作は最初からクライマックスのような展開を持ってきて、エンディングにまとめていくという形が良かったです。
仲間のために規則を破るか、規則のために仲間を見捨てるかと、冒頭からクライマックスのような盛り上がる展開で始まってくれるので、最初から目と心を掴んでくれるような感じがして観始めやすかったですね。そこからはクライマックスに向かっていく展開が多く…。
船を降ろされる艦長。
自分を見出してくれた恩人が悪の手によって殺害される。
黒幕は実は自分たちの仲間側にいた。
悲しい過去を背負っていた敵。
父のために潜入した娘。
なんとも少年漫画のようで、SF要素を絡めながらも人間関係をメインに展開していくので見応えがありましたし、シリーズ作品ということを考えれば1つ1つがクライマックスに匹敵するくらいの展開で面白かったです。
カークの青い瞳が印象的
今作の主人公・カークのキャラクター、そしてカラフルなSF映像や色使いとよく合ったクリス・パインの濃く、透き通った力強さのある青い瞳が印象的で良かったです。
カークの人に対する優しさや思いやりはあるものの、自分で1度決めたことには人の意見を挟ませないような自分勝手さ、自信家で熱っぽさのあるキャラクターが濃い青でキラキラと輝く瞳とよく合っていました。
海外映画ということでその他の俳優さん・女優さんにも青い瞳の方は多いのですが、クリス・パインの瞳は他のキャラクター以上に濃くて輝く青い瞳をしていたので、ひと際目を惹きましたね。
映画『バットマン ビギンズ』にも青い瞳が印象的な俳優さんが登場していましたが、向こうが淡く透けるような青い瞳だったのに対し、こちらは力強く輝く濃い青い瞳をしていたので、同じ青い瞳でも受ける印象はだいぶ違いました。
個人的に自分勝手なキャラクターというのはあまり好きではないので、カークもあまり好きなキャラクターではなかったのですが、印象的な青い瞳と、向こうを向いててと言われていたのにスケベ心に負けて見てしまうような俗っぽい要素もあったことで、最終的には好きなキャラクターになっていましたね。
ウフーラとスポックカップルが微笑ましい
個人的に今作の中で1番好きだったのはウフーラとスポックのカップルでしたね。
特にケンカのシーンでの、彼女である自分のことを考えずに死を受け入れていたことに怒るウフーラと、誤解を解きたいと言いながら理屈っぽいことばかり言うスポック、そんな2人のケンカに巻き込まれる艦長という構図が良かったです。
どの意見も共感できて、正しいような感じがしたというのはもちろんのこと、仕事中にも関わらず現代と変わらないようなカップルの痴話げんかが繰り広げられていて、何とも笑える部分もありつつ人間的で今作の中でも大きな魅力だったのではないかなと思います。
そして、そんなケンカの仲直りが無言のキスというのも実に良かったです!
2人して言葉でワーワーとケンカした割に、仲直りする時にはケンカを吹っ掛けた女性側が無言で背伸びをして、それに無言のキスで答えるという何とも少女漫画のような展開で、個人的には大好きでしたね。
そういった意味では、恋愛要素も入っている今作は女性でも観やすいSF映画だったのではないかなと感じたので、カップルでSF映画を観たいと考えている方にもおすすめです!
銃撃メインのアクションが映える
今作は未来的な銃をメインにしたアクションになっていたので、SF映像と相まって画面映えしていましたし、画面全体やキャラの動きも観やすく、SF映画として魅力的なアクションになっていましたね。
映画『メン・イン・ブラック』シリーズ、映画『マイノリティ・リポート』のような衝撃波に近い銃を使った銃撃アクションがメインで、そこにナイフを奪い取ったり投げたりと肉体的なアクションはあるものの、あくまでも武器をメインにしたアクションというのが魅力的でした。
スポックがカーンと戦う時には肉体メインの殴り合いのケンカのような戦いになってしまうのですが、あれは艦長を失った悲しみに支配されたスポックの冷静さを欠いた戦いであったこと、街中の戦いであったことを考慮すればそこまで違和感はなかったかなと思います。
欲を言えば銃撃メインのまま締めてもらいたかった感じはしますが、普段は感情を抑え込んでいるスポックが、悲しみと怒りを前に殴るということで心情を表した良い戦いではあったかな…。
カーンに攻撃された後、重力機能を失ったシャトルでのアクションも良かったですね。
重力機能を失ったことでぐるぐると回転するシャトルの中、何とか直そうとスコットと走るカークが時には道を飛び越え、時に柵にしがみ付いて何とか生き延びていたりする姿が、SF映画でありながらジャングルでの戦いのようなサバイバル感を醸し出していて面白かったです。
スコットたち船員のキャラクターが魅力的
今作はカーク以外のスポック・ウフーラ・スコット・スールー・マッコイといった、エンタープライズ号の船員たちも良いキャラをしていて、カークと絡んだり各々が絡むことで面白いストーリーを繰り広げていて魅力的でしたね。
スコットは特に良いキャラをしていて、シャトルを降ろされたことでヤケ酒飲んでいたのに、カークからの電話があれば取って恨みごとを言いつつも頼まれたことを調べ、それ以上のことまでこなしていて優秀なのにすごく感情的で人間らしく、今作の中でも輝くキャラクターだったと思います。
最後にしれっとキャプテン席に座っていたスールーとか、何かと毒を吐きつつも爆弾の起爆とかまでこなしちゃう多才なマッコイ医師とか、1人1人のキャラがとにかく立っていて、動いたり喋ったりするたびに面白くなるようなシーンが多かったです。
その他の人々もすごく感情的で自分勝手で人間らしさがあって、人間関係や人間の感情が全面に出ている感じがして、今作の魅力を深めてくれていましたね。
スッキリとまとまったラスト・エンディング
今作は冒頭から終盤までにかけてストーリー内で何度も展開を繰り広げているためか、エンディングは逆にスッキリとしていました。
艦長としての責任感に欠けていたカークは、クルーのために放射線の中に飛び込みシャトルを直し、論理的だったスポックが艦長の死に悲しみ、冒頭の火山の話がここに繋がり。
中盤で自首してきたカーンから採取した血液を注射していた生物が蘇生した姿を見て、カーンを生け捕りにして血液を採取、それを輸血することでカークを生き返らせたり。逃亡しようとしていたところをスポックに捕まってしまったカーンは殺されることもなく、カークのための血液を採取したあとは起こされる前の状態、永遠の眠りにつかされました。
そして、エンタープライズ号の船員たちと艦長に正式に復帰したカークは、カークとスポックが冒頭で話していた前人未到の5年間の調査に出発…。前半~中盤にかけての伏線を回収するような、キレイにまとまった面白いエンディングだったと思います。
正直、伏線が隠されていたわけではなく想像がついていたので、エンディングでどんでん返しが!という程の衝撃はありませんでしたが、作品の中のストーリーを上手くまとめあげたエンディングで面白かったですね。
映画「スター・トレック イントゥ・ダークネス」の解説
映画「スター・トレック イントゥ・ダークネス」を観たいけど、TVドラマや前シリーズ、前作を観ていなくても話を理解できるか、問題なかったかについて解説していきます。
あくまでも個人的な解説なのでこれが正解というわけではありませんが、参考程度に見て頂けると幸いです!
前作を観ていなくても大丈夫?
「スター・トレック」はTVドラマから劇場版、そして今作のシリーズと続く長く愛され続けている作品なのですが、私はTVドラマも前シリーズも知らず、2009年から始まった今シリーズの2作目から観始めてしまいましたが…それでも今作は十分に楽しむことができました。
シリーズ作品を観ていないために、カークの過去について、船員たちとのなれそめについて、カークとパイク艦長との関係性などは分かりませんでしたが、分からなくても今作内だけのことであれば理解できたので、そこまで問題はありませんでしたね。
今作で登場した敵・ハリソンが前シリーズから引き続き登場しているキャラなのかは不明ですが、今作内で彼の謎についてもしっかりと語られているので、敵の情報に関しての不明点というのは特になかったですね。
もちろん前作を知っていた方が今作での展開にさらに驚きがあったり、衝撃があったのかもしれないのでシリーズ通して観ることができるのであればそちらの方が良いとは思いますが、まずはお試しで観てみたいという方であれば今作から観始めても問題はなさそうです。
王道SFアドベンチャーがお好きな方に
ドラマ・前シリーズからお好きという方でなくとも、スター・トレックシリーズに少しだけ興味があるという方、王道SFアドベンチャーがお好きな方にもおすすめできるような映画になっていました。
前作を知らなくても楽しめるので、興味のある方はぜひチェックしてみてください!