シリーズの3作目映画『スター・トレック BEYOND』。シリーズ内の最も新しい映画ということで、今までのシリーズ作品を引き継ぎながら違った展開が生まれ、また新たな魅力がある映画になっていました。
今回はそんな『スター・トレック BEYOND』についての詳しい感想と考察・解説をご紹介していきます。感想と考察・解説ではネタバレを含みますので、映画ご視聴前の方やネタバレを避けたい方はご注意ください!
目次
映画「スター・トレック BEYOND」を観て学んだ事・感じた事
・続編が欲しい…!
・年相応に悩みゆくキャラクターに共感
・映像・ストーリー共にバージョンアップ!
映画「スター・トレック BEYOND」の作品情報
公開日 | 2016年10月21日 |
監督 | ジャスティン・リン |
脚本 | サイモン・ペッグ タグ・ユング |
出演者 | クリス・パイン(ジェームス・T・カーク) ザカリー・クイント(スポック) ゾーイ・サルダナ(ウフーラ) サイモン・ペッグ(モンゴメリー・スコッティ・スコット) カール・アーバン(レナード・ボーンズ・マッコイ) ジョン・チョー(ヒカル・スールー) |
映画「スター・トレック BEYOND」のあらすじ・内容
5年間の宇宙任務も、いよいよ3年目に突入していたエンタープライズ号。
宇宙での長い日々の中で、船長であるジェームス・T・カークは亡くなった父親の年齢をついに追い越し、自分を見失い行き詰まりを感じ始め…、スポックを船長に推薦して船を降りようと考え始めていました。
そしてカークの右腕として友として戦い続けたスポックもウフーラと別れ、スポック大使という大切な人物を失ったことで、これからのことに悩んでいる様子。
そんな最中、カークたちはある惑星に救助活動へと向かうことになりました。特に問題なく救出するだけで終わる簡単な任務のはずが、救助先の惑星に近付いた途端、謎の小型宇宙船に襲われ、旅を共にしていた多くの船員たちを失うことになります…。
映画「スター・トレック BEYOND」のネタバレ感想
表現・ストーリー共に今までのシリーズ作品以上の出来栄えになっていて、新しい要素に驚く部分がありつつ、変化したことによって共感しやすくなっている部分がありつつで、新たな魅力がたっぷり詰まっているシリーズ3作目に相応しい作品になっていました!
宇宙人の表現がバージョンアップ!
今作の宇宙人は今までのシリーズ作品よりも印象的で、人間のようで人間離れした独特な宇宙人が多くなっていました。
今までのシリーズでは、宇宙人に関してはあくまでも人間に色や模様がついた程度の簡単な表現のみだったのですが、今作では人型ではあるものの頭部分に独特な特殊メイクが施されていて、人間っぽいのに人間離れしていてすごく印象的でしたね。
特殊メイクと言ってもコスプレ感はなく、独特ではあるものののSFの世界観に違和感なく馴染んだ表現になっていたと思います。
特にゴツゴツと凹凸がしっかりとあるタイプの宇宙人が多くなっていたので、戦闘民族っぽいというか、戦闘服や銃器ともよく合っていてアクションシーンでも映えているように感じました。
そして、クラールたちの話している言語が違ったのも良かったです。
元々は地球人なわけですから言葉は共通しているはずなのですが、何もない星でずっと生き続けていたために自分たちだけの独特の言語で話し、見た目が変化していき、地球人から宇宙人になっていったという感じがして、長い時間と恨みを感じるような良い表現だったと思います。
原始的で幻想的なSF映像
今作のSF映像は時代を遡ったようにどこか原始的な部分をベースに、そこに宇宙的な要素を組み合わせることで幻想的になっているような、今までのシリーズとは違った意味で印象的なSF映像になっていました。
空間に浮かび上がる映像、宇宙の中に浮かぶ人造の星、明るくカラフルな銃攻撃など、映画『スター・トレック イントゥ・ダークネス』のような未来的で宇宙的なSF映像ももちろん多いです。
ただ、そんな未来的な要素の中にジュラ紀を思わせるジャングルがあったり、骨格が見えるまで壊れゆく宇宙船があったり、全てを食い尽くそうと砂漠を飛び交うバッタのような大量の小型宇宙船があったり、水面に出てくるクジラのように川から出てくる宇宙船とか、どこか原始的な部分もあるようなSF映像というのが印象的でした。
ジェイラの武器や罠に関しても、現代から見れば未来的ではあるものの当時の基準を考えれば原始的に感じてしまうような不思議な感覚があるものばかりで、比較的身近に感じやすいSF映像だったかなと思います。
地球のものが残っていることで地球と似た文明は持っているものの、何もない星を1から作り上げていったために原始的な部分があったのかなと考えると、作品のテーマとよく合ったSF映像でしたね。
なので今作のSF映像は未来的・宇宙的で美しいSFというのを求めている方よりも、原始的な部分に未来的な要素が組み込まれているような、そんな原始的な中のSF要素にカッコよさを感じる方におすすめなSF映像になっていました。
熱血男・カークに変化が訪れる
今まで正義感の塊のようだったカークが、年齢を重ねたことで思い悩んだり、このまま進んでいくことに不安を感じていたりしていて、今までのシリーズの中で1番共感しやすいキャラクターになっていましたね。
今までのカークが少年マンガの主人公のような正義感が強く、宇宙への熱意に燃えている自分勝手さのあるキャラだったのに対し、今作では年齢を重ねたことで悩み、長期任務に疲れ、熱意を失いかけているようなキャラクターに変化しています。
あんなにこだわっていた船長の座もスポックに譲って、自分は前線から退こうとするという、主人公が年齢を重ねたことに伴って良い方向転換をしようとしていて、今までのシリーズとは違った魅力が溢れていましたし、熱いだけの男よりも共感しやすかったです。
最終的にはそんな悩みを乗り越えて、王道SFの主人公らしい熱い男には戻ってしまうのですが、途中経過でちゃんと悩む道があったことが良かったと思います。
今作も序盤シーンからクライマックス!
他のシリーズ作品に比べて新しい変化でバージョンアップしている部分があるのですが、序盤からクライマックスで始まるのだけは変わりませんでしたね。
最初は任務に疲れたカークから始まったことで、冒頭のクライマックスが今作ではないのかなと思っていたのですが、父親と同じように敵船に襲われて船が墜落しかけ、船員たちを脱出させようとしていたにも関わらず連れ去られていき、自分たちは星に墜落。
ずっと仕事を共にしてきた船員たちを誘拐されてしまったというのもかなりのクライマックスではあるのですが、それ以上に自分たちを何度も宇宙へと運んでくれた…パイク提督の形見とも言えるエンタープライズ号が墜落してしまうというのが切なく、盛り上がる展開になっていました。
今までは序盤からクライマックスなものの必ずハッピーエンドで締めるという形だったのですが、今作では船員や船を失い、敵の正体も分からず謎の島に墜落してしまうという、クライマックスというかバッドエンドに近い形から始まるので、同じ序盤クライマックスでも受ける印象はだいぶ違いましたね。
シリーズ3作目にして変わらないようで、しっかりと変わっている要素もある素晴らしい序盤だったと思います。
複数主人公のゲームのような展開
今作では宇宙船が襲われ墜落したためか、それぞれがバラバラに行動することが多いので、複数主人公でそれぞれがヒントを集めながら全てを集めることで真相に至れるような、複数主人公タイプのゲームによく似た展開になっていました。
味方を装った敵と行動を共にするカークとチェコフ。
敵ではない原住民らしき女性と出会ったスコッティ。
傷を負ったスポックを支えながら歩みを進めるマッコイ。
敵に捕まったものの脱出を試みるウフーラとスールー。
それぞれが重要なポジションに立たされていて、ゲームの主人公っぽい動きをすることで作品内の主人公であるカークの印象が薄れてしまっている感じもしますが、みんなが同じくらいに輝いていて全体的な魅力は増しているように感じましたね。
それぞれがそれぞれの場所で隠密行動しながらヒントを集めていき、そのヒントを組み合わせていくことで真実を見出すようなゲームっぽいストーリー展開も、ゲーム好きな方であればハラハラしながら楽しむことができるかと思います。
また、個人的にはスールーが主人公っぽい立場にいたのは意外でしたね。
古い宇宙船を操縦するのを任されていたり、敵の狙っている宝を自分の命に代えても守ろうとしていたり、元々重要なキャラクターではあったものの、シリーズ作品内で今作が1番出番が多く、活躍している作品になっているのではないでしょうか。なのでスールー好きな方にはイチオシな作品ですよ。
スポックとマッコイコンビが最高!
今作にはたくさんの魅力が詰まっていましたが、個人的に1番好きだったのはスポックとマッコイのコンビでしたね。
今までのシリーズ作品でも多少は絡んでいましたが、ここまで長期間絡んでいることはなかったのですごく新鮮でしたし、痛みに朦朧としながら普段とは違ったボケをかましているスポックと、ふざけているようで大真面目なツッコミをするマッコイと言うコンビが本当に可笑しくて…声を出して笑ってしまいました。
1番好きだったのはウフーラたちの位置を知るために彼女のネックレスを…と提案したスポックに対して、「恋人に発信機を付けたのか…?」と少し引き気味に突っ込んでいたマッコイのセリフ。
あれはかなり笑えましたし、真面目なスポックと少し不真面目なマッコイのコンビも結構合っているんだなと思うことが出来ました。
最後にカークの命を救ったのもこのコンビでしたし、今作のたくさんのキャラクターが輝いている中でも1番輝いていたコンビだと思います。
ラストでクラールの正体が明らかに!
クラールの正体が実は宇宙人ではなく地球人で、自分を見捨てた連邦への復讐のために戦いを仕掛けてきたというのは意外な展開でしたね。
敵の印象としては『スター・トレック イントゥ・ダークネス』のカーンに近くて、敵は結局宇宙人ではなく身体を改造した地球人で、残虐性はあるものの連邦のせいで不幸になったから復讐を目指しているということで、完全な悪とは言い難い切なさもあるというか、ツラい体験が人格を歪めてしまった感じがする敵になっていました。
個人的にクラールの正体が地球人とか、宇宙船の船長だった等は一切考えていなかったので、結末で正体が明らかになったときには驚きましたね。
スター・トレックでそんなミステリーっぽい展開が用意されているとは正直思っていなかったので、良い意味で斜め上の展開が用意されていて驚きながらも最後まで楽しむことができました。
続編がありそうな定番エンディング
船を失い、船員やヨークタウンの人々を失いそうになっていましたが、何だかんだで船員を取返してヨークタウンの人々を守ることもでき、カークは船に乗り続ける決断をして、ウフーラとスポックは復縁…皆が幸せになる定番のエンディングでしたね。
王道SFらしい敵を倒して全員が幸せになる、ザ・ハッピーエンドといったエンディング。
個人的にはカークは船を降りる決断をしたものの、恩人・パイク提督の意志を継いで宇宙の平和を守れるように組織の内側から尽力する、新しく船長となるスポックや後進を育てていくというエンディングでも面白かったとは思うのですが…。
これはこれで王道SF!と言う感じがして、好みの別れにくい定番感があって良いですね。
今作は2016年に公開されたシリーズ最新作ということで、それ以降の新作は公開されていません。展開的には続編があってもおかしくなさそうな感じでまとめているとは思うのですが…。
調べてみると続編の話はあるものの出演者のギャラ交渉が上手くいかず、つくるのかつくらないのか分からない状態のようです。ぜひとも続編を公開してほしいですが…難しいのかもしれませんね。
映画「スター・トレック BEYOND」の考察・解説
前作まで観ていなくても大丈夫なのかを考察していきます。あくまでも個人的な考察なのでこれが正解というわけではありませんが、参考程度に見て頂けると幸いです!
最後にはジェイラが流した曲についても調べているので、興味のある方はぜひそちらもチェックしてみてください。
前作までを観ていなくても大丈夫?
ストーリー的には映画『スター・トレック』と『イントゥ・ダークネス』のストーリーを受けての続きになるのですが、今までのストーリーを受け入れながらも新しい展開の多い作品になっていました。
「イントゥ・ダークネス」の最後に話されていた5年間の長期任務に出た3年後の話で、その任務の最中に歳を重ねたことで変化していったり、変わらない部分があったりするカーク、スポック、スールー、マッコイといった人々を描いている作品なので、今作に関しては前の2作を観ていた方が楽しみやすい作品かなと思います。
一応序盤に簡単な説明・人物紹介がなされているので、今作だけ視聴しても何となくは理解できるようにはなっていますが、未来のスポックが死亡してしまうという話だけは『スター・トレック』を視聴していないと理解できない部分なので、少なくとも『スター・トレック』だけは視聴しておいた方が良いかもしれません。
ジェイラが流した曲について
古い宇宙船の修理中に流していた曲、そしてクラールたちの飛行を邪魔するための妨害電波として流した曲が、映画を盛り上げてくれるようなノリの良い曲になっていて気になったので調べてみました!
古い宇宙船の修理中に流れていたのが、Public Enemyの『Fight The Power』。
妨害電波として流していたのが、Beastie Boysの『Sabotage』。
個人的にはsabotageの方が特に好きで、曲を流した時の決意と希望に満ちた瞳で微笑むカークの表情とよく合っていましたし、波のように次々と爆破していく小型宇宙船の勢いとマッチしていて非常に良かったです。
よく見るとチェコフ、スールー、スポックといった意外な人たちも曲にノッていて、曲・映像的に魅力を与えるだけでなく、キャラクターにも魅力を与えているような曲と演出で非常にテンションが上がりました!
「スター・トレック BEYOND」の続編が欲しい…!
今作はシリーズ3作品の中であまり人気のない作品となってしまったらしいのですが、シリーズ通して観ることで魅力が高まるような、今までの2作品を受けつつ新しい要素も追加されている非常に面白い作品になっていたと思います。
ぜひともこの作品を最後にせず、ここからの続編も登場してほしいですね!