映画『レディ・プレイヤー1』は巨匠・スティーヴン・スピルバーグがVRを題材に、圧倒的な映像でヴァーチャルな世界をみせる2018年公開のSF映画です。
アーネスト・クライン『ゲームウォーズ』を原作に『バック・トゥー・ザ・フューチャー』や『シャイニング』『機動戦士ガンダム』など80年代のポップカルチャーを彩った映画、アニメ、漫画などから様々なキャラが登場していて、懐かしいオマージュの数々に胸が熱くなります。
少年少女が出会い友情を深め、目的を遂げるジュブナイルストーリーも感動的!文句なしに楽しい映画「レディ・プレイヤー1」の感想やネタバレ解説をお届けします。
目次
映画「レディ・プレイヤー1」を観て学んだ事・感じた事
・本編の大半が美しいCGで描かれ、夢のような世界が展開される
・王道のジュブナイル・ストーリーがアニメみたいに胸熱
・Play station VRなど近年話題のVRが映画の中で実現!
・数々の名作が映画のどの部分に散りばめられているか探す楽しさも!
映画「レディ・プレイヤー1」の作品情報
公開日 | 2018年 |
監督 | スティーヴン・スピルバーグ |
脚本 | ザック・ペン |
原作 | スコット・フィッツジェラルド |
出演者 | ウェイド・オーウェン・ワッツ/パーシバル(タイ・シェリダン) サマンサ・イヴリン・クック/アルテミス(オリヴィア・クック) アイロック(T・J・ミラー) オグデン・モロー(サイモン・ペッグ) トシロウ / ダイトウ(森崎ウィン) |
映画「レディ・プレイヤー1」のあらすじ・内容

荒廃した2045年の未来世界。ほとんどの人々がスラム街で暮らすことをよぎなくされた世界で、人々は”オアシス”というVR世界に没入しています。
オアシスの創始者ジェームズ・ハリデーは、オアシスの所有権と56兆円相当の遺産をゲーム内に隠したとの遺言を公表します。VR世界の覇権をめぐる3つの鍵を求めて、人々は今日もVR世界の中に夢中になっていました。
オハイオ州コロンバスに住むウェイド・ワッツは、パーシヴァルという名前でオアシス世界を駆け巡る日々。
一方、VR世界の覇権を狙う世界的大企業IOIも謎に迫りつつありました。
ウェイドはハリデーの過去をヒントに、誰も気づかなかった3つの鍵の謎に迫り、仲間と名声を手にしていきます。
しかし、パーシヴァルというアバターの正体がウェイドだと明らかになり、現実のウェイドに危機が迫ります…。
未来のVR世界が圧倒的CGで映像化!どんな世界?

PlayStation VRなどで話題になっているVR(ヴァーチャル・リアリティ)技術ですが、今の所はまだVRが身近とまでは言えない世界です。
この技術がこれから進歩していけば、いったいどんなことが可能になるのか?『レディ・プレイヤー1』で描かれた未来はそういう疑問に答えています。
『レディ・プレイヤー1』で描かれるVRは、想像が何でも実現できる世界です。
この映画の主人公ウェイド・ワッツは父母を亡くし、叔母とともに集合住宅に住む白人少年。現実世界は荒廃し、人々は日々VR世界オアシスに没入し人生の大半を過ごしています。
現実は悲惨なのに、VR世界ではなりたい自分になれる。お金を儲けることも、美少年、美少女になることも、仲間と旅をすることも。そういうすべてがまるで現実であるかのように感じられる世界がオアシスです。
世界中の人々がそんなVR世界に夢中になっているのだから、未来世界はVRとともにある。そう言ってもいい世界観ですね。
【ネタバレ】VR世界の創始者ジェームズ・ハリデーが残した3つの鍵

VR世界の創始者、ジェームズ・ハリデーが56兆円相当の遺産とVR世界オアシスの継承権をゲームの中に隠したとの遺言を公開したから大変。世界的企業IOIまで人々を組織し、VR世界の覇権を巡って謎を解き明かし、未来を手にしようとしています。
1つ目の謎を解く鍵を手にする方法はVR世界でのレースを完走すること。『バック・トゥー・ザ・フューチャー』に登場するタイムマシンカー・デロリアンに乗りこんで、レースの1位を獲得し、1つ目の鍵を手にしようとします。
しかし、大友克洋監督『AKIRA』の主人公・金田が乗るあの赤いバイクにまたがる美少女・アルテミスが追いかけてきます。
映画『キングコング』からそのまま登場したキングコングが行く手を阻み、ゴールまであと少しというところで、誰もレースを完走できたものはいません。アルテミスがキングコングに捕まってしまうところを間一髪で助けたのがウェイドでした。
誰もゴールに辿り着き、最初の鍵を手にできません。誰が最初の鍵を手にするのか?熱狂のレースを制したのは、ハリデーの人生を追いかけていた名もなき少年・ウェイドでした。
1つ目の謎の舞台はアメリカのレースアニメ『チキチキマシン猛レース』

1968年から公開されたアメリカのテレビアニメ『チキチキマシン猛レース』は、11台の個性的なレーシングカーとそのドライバーたちが、雪山や砂漠、荒れ野などを競争する人気番組でした。
任天堂の人気ゲーム『マリオカート』などもこのアニメの影響を受けているでしょう。
そういったアニメやゲームへのオマージュを捧げながら、大都会を舞台に様々な作品からオマージュされたレーシングカーが登場し、キングコングがその邪魔をする。ハラハラさせるこの映画の最初のハイライトです。
人気者になったウェイドが挑む2つ目の鍵の謎

レースを制したウェイドはオアシス世界の人気者になります。アルテミス達とも徐々に仲良くなり、2つ目の鍵の謎を追っていました。
一方、世界的企業IOIはそんなウェイドに取引を持ちかけます。
ウェイドは一人で謎を解き、亡き創始者・ハリデーが望んだ意志を継ぐことを望んでいました。人々をVR世界で労働させるIOI。そんな企業と取引はできない。そう決意したウェイドに対して、IOIは徐々にその本性をみせはじめます。
ハリデー博物館で創始者ハリデーの人生から2つ目の鍵の謎を解き明かそうとしていたウェイドやアルテミスら。
2つ目の鍵の謎が、ハリデーの過去の恋にあると感じ、ハリデーがある女性と踊ったとされるクラブに潜入。ダンスに興じながらウェイドはアルテミスに愛を告白しますが、そんなところにIOIの魔の手が迫ります…。
2つ目の謎の舞台は巨匠キューブリックのホラー『シャイニング』の世界

1980年に制作された映画『シャイニング』は『2001年宇宙の旅』など数々の名作を生み出したスタンリー・キューブリックが監督したホラー映画です。
この『シャイニング』のホテルが2つ目の鍵をめぐる舞台となります。
キューブリックが生み出した恐怖のホテルや双子の少女、血の海などがVR世界の中で蘇り、圧倒的に再現されます。きっと映画ファンならニヤリとする演出でしょう。
最後の鍵の謎に挑むウェイドたち

最後の鍵をめぐって、ウェイドたちを襲うIOI。主人公をかばってアバター・アルテミスであるサマンサがIOIに捕らえられてしまいます。
ウェイドは、オアシスで出会った仲間と現実でも仲間になり、アルテミス(サマンサ)を救出しようとします。そんな彼らの前に、最後の戦いが迫っていました。
最後の謎の舞台はガンダムやメガゴジラが登場する一大決戦!

物語の最後では、遂にVR世界の覇権を狙う大企業IOIと世界中の立ち上がった人々が入り乱れる総力戦になります。
敵のボスがメガゴジラに乗り込んだかと思えば、仲間のダイトウが日本のアニメ『機動戦士ガンダム』のガンダムに乗り込むなど胸熱な展開もあります。
アメリカ・ポップカルチャーだけではなく、日本のアニメーションや特撮映画など世界中のポップカルチャーが入り乱れる面白い一大決戦が展開されます。
ハリデーが残した謎を解くのは果たして誰か?未来はどうなってしまうのか?最後まで目がはなせません。
映画「レディ・プレイヤー1」を観た感想・解説
映画「レディ・プレイヤー1」が教えてくれること

映画の大半はCGで描かれています。現実世界の人物が活躍する部分は二割ぐらいかもしれません。
そして現実とCGの区別がつかないほどVR世界はとてもリアルで、映画を観たりゲームをした後のような「こんな世界に生きられたら良いのに」と感じます。
毎日が大変でどうしようもなかったり、辛くて苦しい時は誰にでもあるものですが、そういう時に映画やゲーム、アニメ、音楽や漫画、小説など、自分の好きなことにのめり込み、そこから元気をもらうことってあると思うのです。
『レディ・プレイヤー1』の主人公は現実ではスラムに住んでいます。だから夢のようなVR世界オアシスにどっぷりつかっています。
映画やアニメなど様々なポップカルチャーに親しんだ僕たちも、どこかこの主人公と同じような思いを抱えてきたのではないでしょうか?
そして映画やアニメ、漫画や音楽などを通じて、友だちを作ったり、恋人と出会ったり、時には感動して泣いたりしたことはあるのではないでしょうか?
筆者は昔、スティーヴン・スピルバーグの作品『E.T.』や『グーニーズ』『レイダース/失われたアーク』など、友人と語り明かした日々を思い出しました。そしてポップカルチャーがあったからこそ、多くの人と出会ったことを思い出します。
今度VR技術がどうなるのか未来のことはわかりませんが、レディ・プレイヤー1を見たことで文化を通じて出会い、語ってきた今までの思い出を改めて思い出すことができました。
『レディ・プレイヤー1』は70歳を超えるスティーヴン・スピルバーグからの贈り物。もしかすると、VR世界に秘密を残したハリデーはスピルバーグ自身がモデルなのかもしれません。
映画の中に散りばめられた人生を攻略する鍵とは?

物語の序盤を握るレースを攻略する鍵は、みんなで競争してレースに勝つことではありませんでした。ただゴールを目指して競争する。そういう方法では、レースをクリアできないようになっています。
競争は現実の人生でもあることです。でもみんなで競争することが、この人生をクリアする鍵なのでしょうか?
ここにスピルバーグが仕掛けたひとつの大きなメタファー(謎)があります。主人公のウェイドは、創始者・ハリデーの人生からヒントを得て、このレースをクリアします。
その方法は前へ進むのではなく、車を猛スピードでバックさせることでした。人生もただ前へ進むだけではなく、全力で後ろ向きに進むような発想の転換が大切なのかもしれませんね。
2つ目の謎では、創始者ハリデーの秘密の恋が語られます。ある女性とクラブで踊った記憶を博物館から消していたハリデー。その恋は成就しませんでした。
映画の中で語られるメッセージの中には、愛を手にするために勇気を持つことが語られています。
恋愛とは自分が否定されるかもしれないという恐怖を乗り越え、愛を勝ち取る行為。ハリデーが悔やんでいた恋の謎から、人生を攻略する一つの方法がみえてきます。
3つ目の謎では、ゲーム機アタリの懐かしいゲームが登場して、そのゲームのイースター・エッグをみつけることが鍵になります。
『レディ・プレイヤー1』自体がまるで誰かの人生の謎を解きながら、人生の攻略法を教えるストーリーになっています。この映画はスピルバーグ自体のことが語られているのかもしれませんね。
『レディ・プレイヤー1』を彩る80年代ポップスの魅力

ヴァン・ヘイレンやプリンス、テンプテーションズ、ブルース・スプリングスティーン、アース・ウインド&ファイアー、ニュー・オーダーといった60年代、70年代、80年代を代表するアーティストが生み出したポップソングがレディ・プレイヤー1の影の主役です。
この映画がオマージュを捧げている映画はたくさんありますが、その多くが80年代の映画です。80年代のアメリカや日本はポップカルチャーの全盛期。CDが飛ぶように売れ、映画は大ヒットを連発していました。
軽快で陽気なポップソングは時代の象徴でもあります。この映画は80年代の楽しそうな雰囲気が映像と音楽で再現されていると言ってもいいかもしれません。
思わず踊りだしたくなる楽曲の数々は、VR世界の色あざやかな雰囲気ととてもあっています。未来を感じながら、過去の懐かしいポップソングに踊るとても不思議な映画です。
VR技術の未来は現実の荒廃を生むのか?

インターネットが登場して以来、次々と新しい技術が登場しています。この映画が題材とするVRもそうした技術の一つです。
現実が荒廃し、人々がVR世界の中に閉じこもるという設定は、比喩的にインターネットで過ごす私たちの未来の極端なビジョンでもあるかもしれません。
心理学者・マズローは欲求五段階説という人間の定理を表しています。それはまず、人間には生理的な欲求があり、次に安全の欲求があるというものです。食べることや住むことなどがこの段階にあたります。
その上に社会的欲求があり、このレベルでは学校で勉強することや働くことなどが欲求としてあらわされています。
さらに高次の欲求として、尊厳の欲求や自己実現の欲求があり、これらは内的に満たされたいという欲求です。人間の歴史も衣食住を整えたりと、これらの欲求を社会的に少しずつ実現してきたと言えるかもしれません。
そしてポップカルチャーとは、尊厳欲求や自己実現といった内的な高次の欲求に類するものかもしれないのです。
誰かのように歌いたい、誰かのように作品を生み出したい。そういった欲求はより高いレベルを求める欲求であり、成長の欲求でもあります。インターネットやVRといった技術も、社会の基盤の土台の上に実現されている技術です。
映画で取り上げられるVR世界はこの世界の高次のレベルの技術です。
でも、人が夢ばかりをおいかけていると現実がおろそかになるように、世界が荒廃してしまうかもしれない。そういう意味でこの映画の舞台はディストピアとして描かれています。
人間も社会もより高いレベルの欲求を実現していくには、自分の欲求や夢の低いところを固めつつ、より高いレベルを目指さないと足元が崩れてしまいます。
この映画の現実のディストピアは、こうした社会や人間の欲求をどう解決していく必要があるかということを内包しているかもしれません。
「現実を大切にすること」というメッセージ

過去の歴史の上に現代がありますが、この映画も過去のポップカルチャーの上に、まるですべての映画を統合したように生み出されている珠玉の作品です。
だからこそ、映画のメッセージとして現実を大切にすることが最後に語られています。
どんな夢も現実生活の上に成り立っています。この映画の舞台であるオアシスも現実の一部。だからこそどれだけVR技術が発達して、想像がどんなことも実現できる世界になったとしても、目の前にある現実を少しずつでも良いものにしていかなければ、その夢は泡のようにきえてしまいます。
時には夢のような世界で辛いことを忘れ空想にふける。心理学的にもそれはとても大切なことですが、まず生きていること自体が楽しいと思えなければエネルギーが湧いてきません。
映画の主人公に感情移入したり、ゲームの世界でキャラクターを思い通りに操ったり。そういう疑似体験を通じて、自分がどんなことに感動し、どんなふうな夢を実現させたいのか、少しずつ自分というものを理解していきます。
そしてポップカルチャーを通じて作品を消費するだけではなく、この映画の主人公のように映画が語っていること自体から何かを見つけることができればより良い人生をおくれるかもしれません。
スピルバーグが生み出してきた映画たち

巨匠、エンターテインメント映画の神など様々な敬称で賛辞を送られる名監督スティーヴン・スピルバーグ。
1980年代にはハリソン・フォードが主演した『インディー・ジョーンズ』シリーズなどが大ヒットし、少年と宇宙人との交流を描いた『E.T.』も公開されています。
1990年代には『ジュラシック・パーク』でCGで恐竜を再現するなど画期的な映像表現にチャレンジします。また『プライベート・ライアン』でアカデミー賞を受賞するなど、娯楽作だけではなく、世界的な名匠として広く愛されてきました。
2000年代には、『マイノリティ・リポート』など今作にも繋がる革新的な未来世界を描いてみせ、今のSFに繋がる新しいヴィジョンもみせてきました。ヒットメイカーとしても有名な彼が監督した作品は世界中で大ヒットし、監督作品の全米生涯興行収入は100億ドル(1兆円)を超えています。
SF映画は未来を語る
スピルバーグの映画だけではなく、映画に描かれてきたSFは夢のような世界でもありながら、いつか実現するかもしれない未来についての示唆を与えてくれます。
映画『2001年宇宙の旅』では、人工知能と人間の戦いが描かれたり、映画『マイノリティ・リポート』では、犯罪予知や空間に浮かぶディスプレイが登場したり……。
本作でも様々なポップカルチャーのオマージュが登場しながら、最先端の未来世界が描かれています。そのなかにはVR世界に没入できるゴーグルなど、いつか現実に実現するかもしれませんね。
レディ・プレイヤー1は新しい技術、友情や愛が描かれた作品!

スティーヴン・スピルバーグは少年や少女を主人公に圧倒的に革新的な映像でジュヴナイルを語り続けてきた監督という側面もあると思います。アカデミー賞を受賞するような社会的な作品も監督していますが、少年や少女を楽しませる娯楽作を撮影してきた名匠は、きっと少年や少女に夢や希望を語ってきたのではないでしょうか?
本作では新しいVRという技術をうまく使ってこれまでのポップカルチャーの総決算とも言えるエンターテンメントを生み出しています。
でも、その裏側では、人生についての示唆がたくさん語られています。
人と友情を結ぶことや愛を手にすること、先人たちから学ぶことなど、人生を生きる上で最も大切なことが伝わってきます。映画を観ながら、その温かいメッセージに思わず何度も涙ぐみました。
VRやインターネットといった技術は、ひょっとすると現実を侵食してしまうような技術なのかもしれません。あまりのめりこみすぎると、現実がおろそかになってしまいます。
しかし、これまでも多くのジュヴナイルが子どもたちに愛され、親しまれてきた理由は、子どもたちへの人生を通じた温かいメッセージが作品の中にあるからだと思います。
小説だってヴァーチャル・リアリティとなんら変わりはないと筆者は思います。それは誰かが生み出した架空の物語を読む行為だからです。映画や漫画、アニメやゲーム、そして音楽などのポップカルチャーが愛されるのは、その世界観を通じて多くの人に伝わる新しいメッセージがあるから。
映画って本当に良いものだと感じられる作品に出会えることは人生の喜びの一つです。
温かく優しいメッセージに溢れたジュブナイル。そんなかつて触れてきた作品たちを思い出す素晴らしい映画でした!
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