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映画『イップ・マン 序章』ネタバレ感想・解説・考察!カンフー映画の魅力を再発見できるシリーズ第1作

【解説】ブルース・リーの師!実在の人物・葉問の半生を描くシリーズ第1作

カンフー映画と聞いて「燃えよドラゴン」「ドラゴンへの道」、ブルース・リーやジャッキー・チェンを思い浮かべる人は多いでしょう。かつての名俳優が繰り出すアクションの数々は、まさに「素晴らしい」のひと言であり、見る人にある種の爽快感を与えます。

しかし、カンフー映画といえばこの人という俳優も、今やあまり見かけなくなったように感じます。そのため、カンフー映画そのものに古くさいという印象を持つかもしれません。

そのような印象を持った人は、ぜひ『イップ・マン 序章』を見てください。優しいイップ・マンが時に心を痛め、時に怒りに震えながら繰り出すカンフーアクションに、きっと目を奪われるはずです。

今回はそんな『イップ・マン 序章』の感想や解説、考察を紹介します。ネタバレを多く含んでいるので、視聴前に読まれる場合はご注意ください。

映画『イップ・マン 序章』を観て学んだこと・感じたこと

・穏やかで優しい、だけど超人的な強さを誇るイップ・マンがとにかく魅力的
・中国の詠春拳VS日本の空手!占領下の中国における異種格闘アクション
・カンフー映画はもう古いという人にこそ見てほしい作品

映画『イップ・マン 序章』の作品情報

公開日2011年2月19日
監督ウィルソン・イップ
脚本エドモンド・ウォン
出演者イップ・マン(ドニー・イェン)
チョウ・チンチュン(サイモン・ヤム)
三浦(池内博之)
ウィンシン(リン・ホン)
リー・チウ(ラム・カートン)
カム・サンチャウ(ルイス・ファン)

映画『イップ・マン 序章』のあらすじ・内容

映画『イップ・マン 序章』のあらすじ・内容© 2008 – Mandarin Films

1935年の中国広東省仏山市。そこは武術が盛んな街であり、多くの道場が開かれています。仏山に住むイップ・マンは詠春拳の達人であり、仏山でも最強と呼ばれていましたが、彼は自分の強さを誇示することはありません。

日々修行を重ねるイップ・マン。時に街の人との手合わせを行ったり、よそから来た道場破りを追い払ったりしながら、彼は家族と静かに生活していました。

その後、日中戦争が始まり、仏山は日本軍に占領されました。かつての街の活気はどこにもありません。イップ・マンもまた、日本軍に家を没収され、貧しい生活を強いられています。やがて、友人や知人が日本軍との武術試合で殺されたことを知ったイップ・マンは、自分にできることは何なのかを考えるようになります。

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映画『イップ・マン 序章』のネタバレ感想

【解説】ブルース・リーの師!実在の人物・葉問の半生を描くシリーズ第1作

【解説】ブルース・リーの師!実在の人物・葉問の半生を描くシリーズ第1作© 2008 – Mandarin Films

映画『イップ・マン 序章』は2008年に中国及び香港で公開され、3年後の2011年にも日本で上映されました。中国の広東省仏山市を舞台に、詠春拳の使い手であるイップ・マン(葉問)の半生を綴った作品です。

時は1935年、優れた人格者であるイップ・マンが、街の人たちや仏山の道場の人々から慕われる様子や道場破りを圧倒する超人的な強さが描かれます。

しかし、1938年に入ると、日中戦争によって仏山の街は日本軍に占拠。日本軍に虐げられる街の人たちの姿、さらには友人や知人の死を目の当たりにして、穏やかな性格のイップ・マンは激しい怒りを覚えます。

決して自ら力を振るうことはないイップ・マン。しかし、彼の強さに目を付けた日本軍に追われ、イップ・マンは抗うことのできない渦に飲み込まれることに。そのなかで、自分ができることを模索していくという物語です。

 

主人公のイップ・マンは、詠春拳を広く世に知らしめた実在の人物です。詠春拳とは中国武術のひとつ。なんと、実はあのブルース・リーも葉問派詠春拳の使い手でした。そう、イップ・マンはブルース・リーの実の師匠にあたる人物です。

香港映画やハリウッド映画でもよく見る構えは、まさにブルース・リーの影響をうけたもの。その原点ともいえるのが、イップ・マンの詠春拳なのです。

もちろん、イップ・マンと日本軍との対決はフィクションです。傍若無人に振る舞う日本人を倒すという構図は、おそらくブルース・リーの代表作『ドラゴン怒りの鉄拳』を模しているのでしょう。

本作の監督はウィルソン・イップ。イップ・マンを演じるドニー・イェンとの作品『SPL/狼よ静かに死ね』などが有名です。また、本作の続編である『イップ・マン 葉問』『イップ・マン 継承』の監督も担当しています。

【解説】演技指導はサモ・ハン・キンポー!ドニー・イェン演じる葉問が魅力的

【解説】演技指導はサモ・ハン・キンポー!ドニー・イェン演じる葉問が魅力的© 2008 – Mandarin Films

主人公のイップ・マンを演じたドニー・イェンは、香港でも名の知れた俳優の一人であり、映画監督でもあります。生まれは1963年の彼が徐々にその存在をアピールし始めたのは2000年代に入ってから。遅咲きの俳優といえるかもしれません。

彼は本作『イップ・マン 序章』で一気にアジアにおける映画スターとなりました。2016年には『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』、2017年には『トリプルX:再起動』にも出演するなど、近年はさまざまな作品に出演しています。

 

このドニー・イェンが演じるイップ・マンのキャラクターが、とにかく魅力的の一言。

裕福な生活をおくり、詠春拳の実力者でもあるイップ・マン。自分の強さに決して驕ることはなく、困っている人を見捨ててはおけない優しい性格の持ち主です。そんな性格のおかげか、仙山の人々は誰もが彼を慕っています。ただし、よその道場から手合わせを頼まれるとつい指導に熱が入ってしまい、家族に呆れられることも。

どちらかといえば小柄なイップ・マンは、格闘家というイメージからはほど遠いといえるでしょう。冒頭、仏山で道場を開くリュウ師匠と手合わせするシーンでは、明らかな体格差が印象的。本当にこれがカンフー映画の主人公かと心配になるほどです。

しかし、ひとたび詠春拳を繰り出せば、その拳の前に立っていられるものはいません。無駄のなく、相手の行動を先読みするかのような動きに加えて、連続してたたき込まれる打撃。超人的な強さを見せるイップ・マンに、誰一人として勝てる相手はいません。

やがて、彼の小柄な体格に対する不安はいつのまにか消えていき、その強さに安心感を覚えることでしょう。しかも、彼の強さは終盤になっても衰えるどころかさらにキレを見せていくので、まさに強い主人公というアクション映画の魅力を体現しているといえるでしょう。ただ、少し強すぎる点も否めないのですが……。

 

後半では日本軍や山賊に虐げられる住民の助けとなるべく、師範となって詠春拳を教えるなど、過酷な状況下で自分のできることを模索していく姿が印象的です。前半とは異なり、苦悩や怒りが拳に乗って繰り出される様子は、見ていて爽快ながらも、どこか胸を締め付けられるものもあります。

また、謙虚な性格もイップ・マンの人間的な魅力の一つでしょう。後半、友人のチョウ・チンチュンから綿花工場の共同経営について申し出があるものの、自分には商才がないからと、イップ・マンはこれを拒否します。

もちろん、チョウが協力を申し出たのは、イップ・マンの人柄を見込んでのことです。また、イップ・マンもその申し出がチョウへ借りを作ることになると理解しています。

誰かに迷惑をかけることを良しとしない彼の精神は、高潔なものとして映ります。一方で、極貧生活に苦しむ家族へ向けた申し訳なさそうな表情からは、彼の複雑な心境が伺えるでしょう。

 

ドニー・イェン自身はカンフーを駆使したアクションが得意な俳優であり、さまざまな映画でアクション監督も行っています。しかし、監督のウィルソン・イップは本作のアクション監督にあえてサモ・ハン・キンポーを起用し、ドニー・イェンに役作りへ集中させたとのこと。その結果もあってか、ドニー・イェンは本作の役作りに際し、10キロもの減量を実行しています。

ところで、サモ・ハン・キンポーといえば、『燃えよデブゴン』を知る人も多いのではないでしょうか。その巨体から繰り出される素早いアクションには、ブルース・リーやジャッキー・チェンにはない魅力が満載。カンフー映画を語る上で外すことのできない俳優です。

【解説】アジアンテイストな雰囲気によく似合う川井憲次の音楽

【解説】アジアンテイストな雰囲気によく似合う川井憲次の音楽© 2008 – Mandarin Films

ドニー・イェンの演技に目を奪われがちですが、本作を彩る音楽もまた、見逃せない魅力の一つです。

音楽を担当するのは、映画やドラマでの劇伴を多数制作している日本人の音楽家・川井憲次です。日本のアニメーション映画監督・押井守のほぼすべての作品で音楽担当をしているのは有名ですね。

川井憲次の音楽といえば、まさに「川井節」ともいえるような、どの曲にも通ずるフレーズが入っているのが印象的です。また、アジアンテイストな楽曲にも定評があります。2004年に公開された映画『イノセンス』では、九龍城のような雰囲気とサイバーパンクが融合した街に、見事なまでにとけ込んだ川井の楽曲が作品全体を彩ります。

アジアの民謡音楽のような雰囲気すら醸し出すBGMは本作でも健在。『イップ・マン 序章』の雰囲気との調和に酔いしれてください。

 

特に、ぜひ聴いてほしいのが物語の後半、山賊の襲撃に晒された綿花工場の従業員たちが、イップ・マンに詠春拳の教えを請うシーンです。従業員たちは自分で身を守るべく、イップ・マンから詠春拳を学びます。

老若男女を問わず、イップ・マンの動きを模して集団で動く様子は、これぞ武術シーンと呼びたくなるものです。仕事の空き時間にも修行を欠かさない姿からは、彼らの向上心が伺えるでしょう。

山賊に負けないという従業員の意思や、それに応えるイップ・マンの心情を鼓舞するかのようにして、川井の壮大なBGMが響き渡ります。全体的にフラットな抑揚でもって進む本作ですが、このシーンだけは勢いだけで感動してしまえるような出来となっています。

【解説】日常シーンが主軸となる前半から、戦中の陰惨な空気が漂う後半へ

【解説】日常シーンが主軸となる前半から、戦中の陰惨な空気が漂う後半へ© 2008 – Mandarin Films

本作で特徴的な作りとなっているのが、時間軸の切り替わりです。

前半は仙山の街で起こる小さな事件を主軸に、イップ・マンの日常が描かれています。家族とのエピソード、友人や知人との交流、道場荒らしとの対決を通じて、イップ・マンの人となりを知れるパートです。また、街には武術道場が立ち並び、そこで修行する門下生の様子が印象的に映し出されます。

 

その後、突如として舞台は1938年へと切り替わります。時はまさに日中戦争のまっただ中。街のいたるところに住民の死体がころがっており、生き残った人々も日本軍に怯えながら生活をしています。

裕福な暮らしをしていたイップ・マンもまた、屋敷や財産を日本軍に接収されてしまい、妻と子どもを抱えて極貧生活を強いられています。彩りに満ちた街の様子は一変し、街はがれきと灰色にまみれた、見るも無惨な様子を見せます。

戦時下の状況を思えば、その緊張感は容易に推察できるでしょう。実際、イップ・マンの周囲には数々の悲惨な出来事が起こっていきます。視聴者はいつその状況がイップ・マンやその家族に及ぶかもしれないといった不安を抱えながら、彼の様子を追いかけていくこととなるのです。

【解説・考察】やはり悪者として描かれる日本軍

【解説・考察】やはり悪者として描かれる日本軍© 2008 – Mandarin Films

日中戦争を舞台としているので仕方がないとはいえ、作中では仙山を占領していた日本軍の描かれ方が、悪役めいています。人によっては少し苦手意識を覚えるかも知れません。

仙山を占領した日本軍の大将である三浦は武術を好んでおり、自らも空手の達人です。軍を使って現地の中国人から腕に自信のあるものを集め、報酬の米とひきかえに、自分の部下と戦わせています

一見すると、三浦は中国人を見くびることなく、武術の前には人種など関係ないと語るような人物です。日中の文化交流の一環でもあるとする中国人と日本人の試合は、現地の中国人に対する彼の計らいのようにも見えるでしょう。

しかし、それは三浦の個人的な趣味を満たすための趣向に過ぎないことがわかります。結果、イップ・マンの友人であるラムは三浦に挑んで死亡。やむなく軍に出入りして米を稼いでいたリュウ師範も、三人がかりでの対決に敗北し、最後には三浦の部下である佐藤に射殺されてしまいます。

 

一方、その佐藤は中国人を見下すような、あからさまな悪役として描かれている人物です。イップ・マンの知人であり、通訳を担当するリー・チウに対して、感情的に手を挙げるシーンが目立ちます。

イップ・マンの妻にも手を出そうとするなど、中国人をただの道具としてしか見ていない性格の佐藤。結局、そのことが原因となってイップ・マンに倒されることとなります。

ところで、三浦の描き方を見る限りでは、ここ数十年における中国映画での日本人の描き方はずいぶん変わったように感じます。本作とよく似た『ドラゴン怒りの鉄拳』などでは、悪者としての日本人はもっと露骨に描かれているのが特徴です。ヒーローもののような勧善懲悪のストーリーで、日本人はただのやられ役として扱われます。

結局、三浦のしていることも決して褒められたものではありません。しかし、武術を尊び理解する者という性格など、中国人の理解者となる可能性があったのではと思わせるような描き方が印象的なキャラクターでもあるのです。ただ、その三浦も、イップ・マンからは暴力で人を従わせていると散々にけなされているのですが……。

【解説】詠春拳VS空手という異種格闘はやはり楽しい

【解説】詠春拳VS空手という異種格闘はやはり楽しい© 2008 – Mandarin Films

友人のラムやリュウ師範を殺され、怒りが頂点に達したイップ・マン。彼は三浦の開いた試合に乗り込んでいき、なんと三浦の部下10人を相手に戦うこととなります。このシーンは、詠春拳VS空手という異種格闘の楽しさを存分に演出しているシーンであり、イップ・マンの強さを強調する場面です。

10人の部下はいずれも日本軍に所属しており、その強さは想像するまでもありません。しかし、イップ・マンは決して臆することなく、周囲からの攻撃を軽くいなしながら、一人ずつ相手を確実に仕留めていきます。

その蹴りは顔面を鈍く潰し、その拳は血を飛ばす――まさに戦いの権化とも呼べるような、鬼神のごとき強さで一方的に相手を潰して回ります。その様子には、前半で見せていたような穏やかな動きはなく、ただイップ・マンの静かな怒りが滲んでいるのがわかるでしょう。

 

しかし、一方でイップ・マンのその暴力的な動きに胸を締め付けられます。彼は穏やかな人物であり、決して自ら強さをひけらかすことはありません。そんな彼が、ラムやリュウ師範の死に対する怒りを容赦無くぶつけていく……。普段の穏やかな笑顔を思うと、殺戮マシーンのように動き回って相手を仕留めるイップ・マンの姿は、見ていて辛いものがあります。

試合で10人を破ったイップ・マンは、三浦に目を付けられることに。友人のチョウが経営する綿花工場の従業員を人質に取られ、イップ・マンは三浦に捕らえられてしまいます。

三浦はイップ・マンを殺すつもりはありませんが、佐藤がイップ・マンに殴られているため、軍の大将として示しを付けておく必要があります。

そこで、日本軍に詠春拳を教える師範になれば、身柄は保証してやるとイップ・マンに取引を持ちかけます。彼の申し出に、イップ・マンは自分の武術が見たければ勝負をしろと吐き捨てるのでした。

 

こうして、仙山の住人が見守るなか、三浦とイップ・マンは1対1の勝負を行うこととなります。空手の達人と詠春拳の達人、まさに本作のクライマックスに相応しい異種格闘の幕開けといえるでしょう。

ただ、作中で驚異的な強さを発揮していた三浦も、イップ・マンの前にはほとんど手も足もでないまま、地に伏すこととなります。その点は少し残念な部分といえるかもしれません。

穏やかな性格と超人的な強さを併せ持ち、絶対に倒せないと思われる相手を倒すというカタルシスで視聴者を魅了する、『イップ・マン 序章』。今まで見たことのないカンフー映画を探している人にも、カンフー映画に苦手意識を持っている人にも、おすすめの一作です。

なお、イップ・マンが相手と互角の勝負を強いられる様子を見たいならば、続編『イップ・マン 葉問』『イップ・マン 継承』と併せて鑑賞されることをおすすめします!

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※2019年10月現在の情報です。

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