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『劇場版響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ』ネタバレ感想・解説・考察!完成度の高い映画だが惜しむべき点も…

新キャラも魅力的でしたが、尺の不足感は否めず…

映画『劇場版響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ』は、大人気アニメシリーズの「響け!ユーフォニアム」の完全新作劇場版として公開された作品です。原作でいえば「波乱の第二楽章」の前後編を映画化した作品であり、同時にTVアニメ2期の続編にあたります。

原作の出来からすでに大外れはないという確信を得ていたので公開直後に鑑賞しましたが、作品の質は相変わらず高く期待を裏切らない出来になっていたと感じました。

今回はそんな『劇場版響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ』の個人的な感想や解説、考察を書いていきます!なお、公開直後の映画につきネタバレには注意してください。

目次

映画『劇場版響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ』を観て学んだこと・感じたこと

・「先輩になる」ということの苦労
・カリスマを失った組織運営の難しさ
・コンクールシーンの完成度は凄まじい

映画『劇場版響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ』の作品情報

公開日2019年4月19日
監督石原立也
脚本花田十輝
出演者黄前久美子(黒沢ともよ)
加藤葉月(朝井彩加)
川島緑輝(豊田萌絵)
高坂麗奈(安済知佳)
塚本秀一(石谷春貴)
中川夏紀(藤村鼓乃美)

映画『劇場版響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ』のあらすじ・内容

映画『劇場版響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ』のあらすじ・内容(C)武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会

昨年度の全日本吹奏楽コンクールも終わり、北宇治高校吹奏楽部を支えていた3年生が部を去りました。こうして新体制を迎えることになった吹奏楽部は、吉川優子を部長として1年生を集め、今年度の全国大会金賞を目標に活動を続けます。

そして、久美子が指導を担当する低音パートには、4人の新入生が加入しました。しかし、この4人は一癖もふた癖もあるキャラクターたちであり、先輩としてさまざまな困難にぶつかる久美子。

もちろん彼ら一年生だけでなく、上級生たちも各々がさまざまな問題に立ち向かうことになります。

果たして、彼らは眼前の問題をクリアし、目標として掲げていた全国大会での金賞を勝ち得ることはできるのでしょうか。

映画『劇場版響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ』のネタバレ感想

新キャラも魅力的でしたが、尺の不足感は否めず…

新キャラも魅力的でしたが、尺の不足感は否めず…(C)武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会

今作は完全新作の劇場アニメではありますが、キャスト・スタッフともに基本的にはTVアニメシリーズからの続投になるので、その点に関しては安心感がありました。実際、彼らは今までと全く変わらずに素晴らしいパフォーマンスを発揮していたように思えます。

そこで個人的に気になっていたのは、今作より新たに登場するキャラクターたちの存在です。原作を既に読んでいた筆者としては、果たして新1年生がどのように描かれるのか、という点が良くも悪くも気がかりでした。とはいえ、冒頭でも書いたように「大外れ」はないと考えていましたが。

 

今作に登場する1年生は多数いますが、特に中心として出番があるのは久石奏(雨宮天)、鈴木美玲(七瀬彩夏)、鈴木さつき(久野美咲)、月永求(土屋神葉)の低音パートに属する4人の一年生です。彼らは非常に個性的な一年生であり、彼らと久美子の衝突や和解が大きなテーマとして描かれているという印象を受けました。

まず、彼らのビジュアルや声の出演に関しては、流石の「京アニクオリティ」だけあって完成度が高いと感じました。既存のキャラに交じっても全く違和感なく、声の出演も安易に芸能人やアイドルを起用することなく実力重視のキャスティングがなされています。

 

また、彼らが個性豊かであることはすでに触れていますが、その個性もとてもリアリティを感じるものでした。一見優秀だが心の奥底に何かを隠していそうな奏、幼馴染への嫉妬を感じる美玲、呼び名に徹底的にこだわるような気難しい求、彼らに囲まれる純粋なさつきと、個性のスタイルや部内での衝突がえぐり出されるようにシビアに描かれています。

ただ、詳しくは後述しますが原作2巻分を2時間弱の映画に押し込んでしまっている感は否めないため、彼らの抱えている問題が発覚してから解決するまでのスピードは気になりました。実際、劇中で奏や美玲は自身の抱えた問題を吐露し、久美子ら先輩たちと本音をぶつけ合いながら壁を取り払っていくというシーンが多く描かれるのですが、それぞれのシーンが「必要最低限だけ」描かれているような印象を受けてしまいがちです。

筆者は原作を知っているので「こういう積み重ねがあっての不満であり、吐露によって解決していくのか」という積み重ねの部分を踏まえることができるのですが、原作未読の視聴者からすれば「描写不足」という感想が生じても全く不思議ではありません。そのため、新キャラの一年生たちに愛着をもつのはなかなかに難しいという構成上の欠点があり、後述する久美子と秀一の恋愛描写や、コンサートシーンの素晴らしい出来と比較するとやや残念にも思えます。

久美子と秀一の関係が進展していく「恋愛描写」は素晴らしい

久美子と秀一の関係が進展していく「恋愛描写」は素晴らしい(C)武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会

今作は原作のエピソードを大きく削る形で構成されていますが、原作よりも気合を入れて描写されていたのが「恋愛面」であるという印象を受けました。これまでのシリーズでは、滝先生と麗奈のように例外的な関係を除いて、部内での恋愛描写は大半がカットされていました。原作では、久美子は秀一との接し方を悩むような「女子の部分」がアニメよりも描かれていましたが、アニメではそこが大幅に削られていたためです。

しかし、今作ではまるで今までのカットシーンを取り返すように、久美子と秀一の関係性に焦点が当てられています。ちなみに、原作では今作よりも前の時系列にあたる短編で久美子と秀一が正式に付き合い始めたため、今作で描かれる久美子と秀一の関係性はほぼアニメオリジナルといっても過言ではありません。

そして、結論から言えばこの二人の関係性は大変魅力的に描写されていました。これまでは、「ユーフォニアム」「あすか先輩」「麗奈」などとの接点が多く、男性との絡みはあまり強調されていなかったためか、恋する少女としての久美子がとても新鮮で同時に魅力的に感じられました。特に、秀一と久美子が祭りでデートするシーンは非常に完成度が高く、青春恋愛ストーリーとしては恋愛漫画以上に感動させられるものでした。特に、筆者は原作の知識をもとに映画を鑑賞していたため、「不意打ち」のようなアニオリシーンにより感動が深まったのかもしれません。

 

さらに、恋愛にかまけるだけでなく吹奏楽部の活動や後輩の指導で板挟みになっていく久美子の描写もリアルでした。最終的に久美子は全てを両立することを諦め、吹奏楽部の活動に一区切りがつくまでは秀一と距離を置くことを決断します。今作の久美子は、「強豪吹奏楽部で奏者として鍛錬する」「後輩の指導をする」「秀一との恋愛にも興味がある」というように、非常に多くのものを背負った状態で行動を余儀なくされています。これらの点にも、ご都合主義に陥ることなく「高校生らしい」悩み方や決断の下し方をしていた点が高く評価できます。

ちなみに、今作では原作の大きなテーマであった「リズと青い鳥」、つまり3年生のみぞれと希美の関係性についてはほぼ完全にカットされています。その理由は単純で、原作の「リズと青い鳥」に相当する部分は、外伝的にスピンオフ映画として公開されているからです。この作品は独立した作品という位置づけになっており、「リズと青い鳥を見なければ今作は分からない」ということはありません。

しかしながら、制作者によって「リズと青い鳥」を連想させるシーンがいくつも挿入されており、外伝を知っていると楽しめるシーンも多いです。そのため、可能な限り外伝まで視聴してから今作を見に行くことをオススメします。

さらに進化するコンクールシーン!音響のすばらしさも圧巻でした

さらに進化するコンクールシーン!音響のすばらしさも圧巻でした(C)武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会

本シリーズは、総集編や外伝の時点から「劇場で観るべき映画」だと感じていました。その理由は、アニメ作品ながらブラバンシーンを非常に作りこんでいるため、良い音響で楽しむのにふさわしいクオリティを見せつけていたからです。実際、これだけ長期にわたって作品が人気を博し続けているのは、演奏シーンのような「萌え」に直接関連しない部分にも力が入れられているためでしょう。

そして、今作は「誓いのフィナーレ」というサブタイトルにもあるように、ライブシーンのクオリティも一種の到達点にあったように感じます。前作の総集編にあたる「届けたいメロディ」でも見せた5分間におよぶ演奏シーンのノウハウが生かされ、まさしく総力を挙げて作成されたという様子がうかがえます。

通常、楽器の演奏シーンは音響面はともかくとして、絵図としてはやや退屈で地味に映りがちです。吹奏楽の演奏シーンを想像していただければ分かると思いますが、基本的に演者たちはある程度規則的な動きを繰り返しながら演奏を進めていきます。そのため、作画や撮影、演出などに相当こだわらなければ長尺の演奏シーンを魅力的に描くというのは難しいはずです。

しかし、今作では長いライブシーンを全く退屈することなく楽しむことができます。そこには、「いつ・どのタイミングで・誰を・どのような構図や表情で」描くのか、という点に徹頭徹尾のこだわりが隠されているように感じます。実際、作品によっては「このカットに必要性はあるのか?」と感じる場面もないわけではありませんが、今作で不必要に思えたカットや意味不明なカットは一つとして存在しなかったように思えます。

このように非常に高い質を誇っていたライブシーンですが、それだけに尺不足が惜しまれるところです。問題発生から解決までのプロセスをもっとしっかりと描くことができていたら、さらに深い感動を味わえたような気がしてなりません。

【解説】尺不足が想定されるにもかかわらず「劇場アニメ」という選択肢を選んだ理由

【解説】尺不足が想定されるにもかかわらず「劇場アニメ」という選択肢を選んだ理由(C)武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会

ここまで今作には数多くの優れた点があることには言及してきましたが、そのたびごとに「尺不足が惜しまれる」という感想を挟まざるを得ませんでした。実際、映画としての出来が良かっただけに、なおさらこの欠点が強調されてしまうのです。個性豊かな一年生や大迫力のライブシーンは確かに単体でも十分楽しめるものでしたが、やはり積み重ねがあればもっと感動が深かったのも事実でしょう。

しかし、この「尺不足」という問題に関していえば、全く想定外の事態であったとは思えません。筆者を含め、映画の公開が決まった時点でこの点を懸念しているファンは少なくありませんでした。

そもそも、小説丸々2巻を2時間弱の尺で映画化を選択したことが問題といえば問題であり、この尺不足という厳しい問題については、ファンだけにとどまらず製作陣すらもその制約を認識していたのではないでしょうか。そのため、尺不足感を感じてしまったのは製作陣の落ち度ではなく、より会社の上層部に問題の根源が隠されているのです。

 

もっとも、今作に関しての尺不足は「京アニ作品の慣例」に従った結果生じただけ、という見方もすることができます。実際、京アニの作品は原則「人気アニメでもアニメ3期目の放送は行わない」という特徴があります。例えば、『涼宮ハルヒの憂鬱』は1期2期と劇場版でアニメ化が終わっており、3期がつくれるだけの原作と人気がありながら新規プロジェクトは進行していません。また、『けいおん!』も全く同様の放送構成をしているため、京アニの基本的な考え方は「アニメ1期+2期+劇場版」という構成なのかもしれません。

今作の尺不足は予見された事態ではありましたが、尺が多く確保できるアニメ3期目という選択ではなく、あえて劇場版を選択したという見方ができるのではないでしょうか。ファンからすればなんともやきもきしてしまう考え方ではありますが、筆者としてはこの姿勢こそが京アニの「リーディングカンパニー」としての立ち位置を確保できている理由であると感じています。

これはどういうことかというと、ヒット作の続編という存在は言うなれば「約束されたヒット作」といえますが、一方で「守りの作品作り」を強いられることが多いという特性があるためです。続編ものはある程度のヒットが見込めますが、冒険が難しくだんだんと飽きられていくことが予想されます。そのため、京アニとしては続編を重視するよりも「新たなヒット作」を生み出すことに力を入れているのではないでしょうか。

【考察】続編の可能性は「今作の興行収入次第」であると感じる

【考察】続編の可能性は「今作の興行収入次第」であると感じる(C)武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会

今作を見終わった方が最も気にされるのは「続編の有無」ではないでしょうか。原作ファンはすでに続編にあたる小説が出版されているので言うまでもないですが、初見の方も最後にあっさりと敗退してしまった点などからも分かるように、続編を前提とした物語であることはなんとなく察せたのではないかと思います。

ただ、原作小説で続編が発売されていることと、続編が実際にアニメ化されるかという事は全くの別問題です。実際、原作は先に進んでいるにもかかわらず、その部分がアニメ化されないというのはよくある話で、今作の続編が出るかどうかは全く確定していないというのが実情です。そこで、ここからは続編の制作を後押しする要素と遠ざける要素の両面から続編の可能性を考えていきます。

 

まず、続編が出る可能性を裏付ける根拠は「原作小説の立ち位置」にあります。原作を読んでいた方は分かると思いますが、作者の武田先生としては「初年度で物語を畳もうとしていた」節が確認できます。しかし、アニメ化によってシリーズ人気に火が付き、おそらく京アニやファンの後押しがあって続編にあたる小説が執筆されたと考えることもできます。つまり、アニメ人気と原作小説は密接にリンクしており、今作の売り上げによっては完結編に相当しそうな久美子3年生編が製作されても全く不思議ではないでしょう。

しかし、一方で続編を遠ざける要素についても触れなければなりません。まず一点は、先ほど触れた京アニの「アニメ1期+2期+劇場版」でワンセットという法則でしょう。この考え方にあてはめていくと、続編への望みは薄いという事になります。ただ、過去にはこの法則に当てはまらない作品もあるほか、原作小説に大きく介入しているという点で過去の作品とは異なる点があることも指摘できます。

 

もう一点は噂程度の信ぴょう性ですが、以前公開されたスピンオフの「リズと青い鳥」の興行収入が芳しくなかったという話を聞いたことがあります。詳細な数値は記憶していないのですが、同時期に公開されたアニメ作品と比べても数字的に落ちるところがあったように感じたことを覚えています。これが仮に事実であれば、売れっ子制作会社の京アニが売り上げの見込めない作品を製作するとは考えられず、続編は立ち消えになっても不思議ではありません。

つまり、論点を整理すると続編は「今作の興行収入次第」ということになるのではないでしょうか。この記事を読んでくださった皆様はすでに映画を視聴済みかと思いますが、続編を望む方はリピーターとして何度も劇場に足を運ぶことをオススメします。

(Witten by とーじん)

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