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映画『ドント・ウォーリー』ネタバレ感想・解説・考察!人生を立ち直らせた風刺漫画家と人々の優しさが染み入る作品

【解説】ジョン・キャラハンという人物について

映画「ドント・ウォーリー」は「her/世界でひとつの彼女」「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」で監督を務めたガス・ヴァン・サントの最新作です。

四肢麻痺で車椅子生活を余儀なくされた風刺漫画家ジョン・キャラハンの半生を描きながら、人が持つ優しさや寛大さを見事に表現しています。

自分の取り巻く運命を受け入れながら過去を乗り越え、人生を切り開いていくジョン・キャラハンの生き様と、彼を支えてくれたかけがえのない人々との関係、そして映画全体を覆うユーモアはなんとも暖かい気持ちにさせてくれます。

実際のジョン・キャラハンの風刺漫画も効果的に挿入されており、そこにも注目です。
今回は映画「ドント・ウォーリー」の個人的な感想やネタバレ解説、考察を書いていきます。

目次

映画「ドント・ウォーリー」を観て学んだ事・感じた事

・自分の抱える根本的な問題に向き合う重要性
・人を許し、許されることによって良好な人間関係を築いていく姿勢
・ジョン・キャラハンの風刺漫画が教えてくれる重要なこと

映画「ドント・ウォーリー」の作品情報

公開日2019年5月3日
監督ガス・ヴァン・サント
脚本ガス・ヴァン・サント
原案ジョン・キャラハン
出演者ジョン・キャラハン(ホアキン・フェニックス)
ドニー(ジョナ・ヒル)
アンヌ(ルーニー・マーラ)
デクスター(ジャック・ブラック)

映画「ドント・ウォーリー」のあらすじ・内容

映画「ドント・ウォーリー」のあらすじ・内容

世界一皮肉屋の風刺漫画家「ジョン・キャラハン」の自伝「Don’t worry,He won’t Get Far on Foot」を映画化した作品です。

交通事故により四肢麻痺になってしまったジョン・キャラハンが、周囲の人々の優しさに触れながらアルコール依存症を克服していき、風刺漫画を書いていきながら、自分の周りにいるかけがえのない人たちの支えと過去を克服していく過程を描いていきます。

映画「ドント・ウォーリー」のネタバレ感想

映画「ドント・ウォーリー」のネタバレ感想(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

アベンジャーズ/エンドゲーム」や「名探偵ピカチュウ」など、この時期に絶対観ておきたい映画が次々と公開される中で、今作はかなり不利な勝負を挑まされていると感じました。

登場するのはスーパーヒーローでもなく、人気キャラクターでもないアルコール依存症を抱えた中年男性です。

私自身この映画を見るまでに、このジョン・キャラハンという人物を知らなかったので、どのような映画になっているのか全く想像できなかったのですが、蓋を開けてみれば、なんともハートウォーミングかつコミカルな作品で、悲しい現実を乗り越えていく人々を描いた感動と幸福感が一体となっているような映画でした。

ここでは、映画「ドント・ウォーリー」の感想を1つ1つの項目に分けて書いていきます。

【解説】ジョン・キャラハンという人物について

【解説】ジョン・キャラハンという人物について(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

まずは、この映画の主人公でもあるジョン・キャラハンという人物について解説していきます。映画の中で多くのことが語られるわけですが、実際に彼がどのうな人生を歩んできたのか知っていきましょう。

ジョン・キャラハンは1951年から2010年まで存命した人物で、コラムニストや風刺漫画家として活躍しました。

21歳のときに自動車事故で四肢麻痺になってしまいます。飲み友達と車に乗っていた際に事故が起きました。酔っ払った友人が運転する車の助手席に乗っていたジョン・キャラハンは、一命を取り止めるものの車椅子での生活を余儀なくされます。

 

その後、彼は漫画家になり、不自由な両手でペンを握りながらコミカルなタッチで数々の漫画を発表していきます。

彼の作風としては障害や病気、差別などといったタブーとされているテーマを取り上げることにありました。風刺的かつ攻撃的な作風は、度々批判の的になっていたのですが、それと同時に支持を集めていきます。

特に、自身が障害者であることに対する同情的な目線に対して批判的な視点を持っており、これらを批判する作品やコメントも多く残っています。

 

そして、彼の漫画はポートランド州立大学の中で生まれます。当時は障害を患った自身の気分転換として書いていたのですが、それが徐々に広く知れ渡っていくことになります。

風刺漫画家であると同時に、彼は重度のアルコール依存症を抱えていました。映画の中でも触れられていましたが、この原因としては、幼少期母親と生き別れて養子として育てられた寂しさがきっかけであるといわれています。

12歳のころからアルコールを摂取していたといわれており、事故にあって四肢麻痺になってからは、アルコール依存症の克服のためのリハビリを受け、27歳の頃には飲酒をやめることに成功したそうです。

これらの自分の人生をまとめた自伝「Don’t worry,He won’t Get Far on Foot」を出版。これが今回の映画の原案となりました。

【解説】ジョン・キャラハンの作風について

【解説】ジョン・キャラハンの作風について(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

映画の中でも度々彼の作品が登場し、ストーリーを彩っていきます。彼の作風としては風刺的かつ攻撃的な1枚絵が多く、その中には批判を浴びるような過激な作品もあります。

彼の自伝「Don’t worry,He won’t Get Far on Foot」に関しても、彼自身の作品のタイトルが元になっています。

その他にも物議を醸し出す作品はたくさんあります。「助けてください。私は盲目で黒人です。でも歌手ではありません」

参考:http://pigsinmaputo.blogspot.com/2012/09/john-callahan.html

「シーツが乾いているとやっぱりいいな」

このような限界スレスレの作品を次々と生み出していきます。このような作品は数々の批判を受けることになるのですが、実際のところ芯を食っている部分もあるわけです。

 

「助けてください。私は盲目で黒人です。でも歌手ではありません」の場合、盲目の黒人ミュージシャン「スティーヴィー・ワンダー」を意識しているといえるのですが、人々はスティーヴィー・ワンダーを観て賞賛をします。

賞賛をしながら、彼が盲目であることや黒人であることを受けて、助けたり優しくするなどの反応を見せるわけですが、それは彼が盲目または黒人であるからではなく、彼が偉大なミュージシャンであるからかもしれません。

偉大なミュージシャンではない盲目の黒人に対して、世間は冷たい目を送っている。そんな世相を痛烈に批判した作品といえます。

 

「シーツが乾いているとやっぱりいいな」に関しても、ジョン・キャラハンらしい視点が盛り込まれています。

このマントをかぶった人物は白人至上主義団体「KKK(クー・クラックス・クラン)」を表しています。今のアメリカでも差別団体として批判の的になっている団体で、差別に対する批判対象として存在しています。

そんな彼らが身につけているシーツのようなものを観て、「やっぱり乾いているといいな」という当たり前の感覚のセリフを言わせています。

 

ここには、白人至上主義団体KKKとはいっても、まず第一に私たちとは変わらない人間であるという示唆が含まれているように感じます。

確かに白人至上主義という思想は差別的な考え方かもしれませんが、私たちは彼らを実際よりも大きな怪物としてみなしているかのような視線を送っています。

それによって大きな分断を招いているといえるのですが、白人至上主義団体であっても、まずは同じ人間であって、同じ隣人であるという視点から議論をスタートさせなければ、良き解決には向かわないといえます。

白人至上主義団体に対する批判への風刺として、彼らは批判されるべき集団かもしれないが、それ以上に「同じ人間である」ことをコミカルなタッチで表現しています。

ジョン・キャラハンの作品は過激で攻撃的とみなされることが多いわけですが、単純にコミカルで笑えるものもありながら、本質的な部分を突いてくる稀有な人物だったことがわかります。

ちなみに、黒人の潜入捜査官がKKKに潜入捜査する映画「ブラック・クランズマン」も素晴らしい作品なのでおすすめです!

【解説】映画を構成するキャスト陣に注目

【解説】映画を構成するキャスト陣に注目(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

クセのある人物でもあるジョン・キャラハンを演じたのは、実力派俳優でもあるホアキン・フェニックスです。

彼は「her/世界でひとつの彼女」「グラディエーター」などの作品でおなじみで、アカデミー賞でのノミネート歴もあります。そんなホアキン・フェニックスの俳優人生の中でも、最高の1本であるという評価がなされています。

さらに、脇を固めるのは大ヒットを記録した「スクール・オブ・ロック」の主演ジャック・ブラック、「her/世界でひとつの彼女」でホアキン・フェニックスと共演したルーニー・マーラ、「マネーボール」などの主演で知られるジョナ・ヒルが登場します。

 

ジャック・ブラックの役どころとしては、ジョン・キャラハンの友人で自動車事故に巻き込まれた際の運転手であるデクスターを演じています。

ルーニー・マーラは四肢麻痺になったジョン・キャラハンを支え、長年恋人関係にあった女性アンヌを演じ、ジョナ・ヒルはジョン・キャラハンが通っていたアルコール依存症克服のための集会のオーナーを演じています。

それぞれのキャラクターが、苦難の人生を抱えていたジョン・キャラハンをそれぞれの形で支えていきます。これらの実力派俳優たちがキャストを固めることによって、映画「ドント・ウォーリー」の楽しくも感動的な雰囲気が作られているといえます。

【解説】映画を通じてジョン・キャラハンが自身の問題を解き明かしていく

【解説】映画を通じてジョン・キャラハンが自身の問題を解き明かしていく(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

映画の序盤から中盤にかけて、四肢麻痺になったジョン・キャラハンは周囲に対してストレスを抱えており、それを愚痴にすることがしばしばありました。自身の過酷な運命を考えれば、それも仕方のないことかもしれません。彼は自身のヘルパーに対して、細かいことで怒りをぶつけたりもしました。

しかし、元はと言えば自動車事故も自分が原因で生じたことです。酔っ払いながら友人とバーをはしごし、泥酔した友人が運転する車に乗車した時点で、彼の運命は決まっていたのかもしれません。

彼が参加したアルコール依存症克服の集会では、事あるごとに愚痴を連ねます。しかし、ドニーに諭されるように、その原因を辿っていくと自分にあることと向き合わなければなりません。

 

この映画は風刺漫画家であるジョン・キャラハンの半生を描いた映画でもありますが、この映画で描かれているのは「自身を取り巻く問題との向き合い方」でもあります。

四肢麻痺で車椅子での生活を余儀なくされたことの原因が自分にあったように、アルコールに依存している原因が、幼少期に母親に捨てられた寂しさにあったように、自分の抱える問題と向き合いながら、根本的な原因を解き明かしていく過程こそが重要なのだといえます。

映画「ビューティフル・ボーイ」の中では「薬物は根本的な問題ではなく、問題から目をそらすための手段である」という指摘がなされていました。ジョン・キャラハン自身もアルコールや自身の抱えるストレスを問題と認識していましたが、彼自身の根幹に問題があることが浮かび上がっていきます。

そこで自分の弱さを受け入れながら、自分の本質的な問題と向き合っていく、まさに彼が風刺漫画で表現したような、表面的な問題の裏にある本質的な問いを浮かび上がらせるようなプロセスが描かれています。

「許す」こと、そして弱い自分を「受け入れること」

「許す」こと、そして弱い自分を「受け入れること」(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

このようにジョン・キャラハンが自分の問題と向き合っていく中で、彼自身にとって重要な考えに至ります。それが「許す」ことでした。

四肢麻痺を患ってからも、それ以前からも抱えていた周囲に対するストレスに対して、自分が原因であることに気がつき、それらを許し自分からも謝ることによって、和解していきます。

福祉事務所の職員や彼を介護してきたヘルパー、さらには自分が四肢麻痺になる原因でもある友人のデクスターにも会いにいき和解を遂げます。そのような過程の中で、ジョン・キャラハン自身が、自分がどれほど優しくかけがえのない人々に囲まれていたのかを知ります。

 

そして、このような考え方が彼の人生を大きく好転させてもいきます。彼自身が許す事、向き合うことを身につけ、最終的には自分自身を捨てた母親さえも許せるようになりました。

自分が抱える根本的な問題と向き合い、そして「許す」という重要な作業を乗り越えた彼にもうお酒は必要ありませんでした。アルコール依存症を克服し、風刺漫画家としての地位を得た彼の人生は以前に比べると劇的に改善し、周囲との人間関係も良好になっていくのでした。

その中で、ジョン・キャラハン自身も世の中には、かなり多くの優しさが存在していることに気がつきますし、映画を見ている私たちもそれに気づかされます。

【考察】主演を務めたホアキン・フェニックスはアルコール依存症だった?

【考察】主演を務めたホアキン・フェニックスはアルコール依存症だった?(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

映画「ドント・ウォーリー」で、主演のジョン・キャラハンを務めたホアキン・フェニックスですが、実は彼もジョン・キャラハンと同じアルコール依存症を患った経験がありました。

2005年には病院での中毒克服の治療を受けていることも取り上げられ、こういった経験も今回の役柄に活かされているのかもしれません。

 

また、このジョン・キャラハンという人物を映画化する話は以前からあり、元々は映画「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」に出演したロビン・ウィリアムズから、監督のガス・ヴァン・サントに相談がいっていたそうです。

企画はたちあがっていたのですが、惜しくも2014年にロビン・ウィリアムズが死去、その後を続く形でホアキン・フェニックスが主演を務めることになりました。ジョン・キャラハンを演じる上で、彼の仕草や話し方を研究し、内面までも表現する演技を見せつけました。

映画「ドント・ウォーリー」は人の優しさに気づかされる1人の男の物語

映画「ドント・ウォーリー」は人の優しさに気づかされる1人の男の物語(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

映画「ドント・ウォーリー」の感想を書いていきましたが、ジョン・キャラハンという風刺漫画家の人生を通じて勇気や優しさ、人がもつ寛大さを教えてくれる映画だと感じました。

楽しくもユーモアに富みながらも、深刻な問題と向き合っていく彼の姿に胸を打たれることでしょう。

人間の持つ優しさ、人生を降りなかった彼の生き様をぜひご覧になってください。

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