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映画『ゲティ家の身代金』のネタバレ感想・解説・考察!大富豪の孫が誘拐される実話を描いた作品

映画『ゲティ家の身代金』のあらすじ・内容

『ゲティ家の身代金』は、ギネスにも認定されたほどの歴史的大富豪ジャン・ポール・ゲティを中心にしたサスペンススリラー映画です。

本作は実際に起きた誘拐事件をベースにしていて、監督は『エイリアン』や『オデッセイ』などを手掛けた巨匠リドリー・スコットによって制作されました。

俳優のキャスティングでスキャンダルがあり、様々な意味で話題になった作品でもあります。今回はそんな『ゲティ家の身代金』の個人的な感想や解説、考察を書いていきます。ネタバレを含む内容となりますので、未視聴の方はご注意ください。

目次

映画『ゲティ家の身代金』を見て学んだこと・感じたこと

・お金が人に与える影響の大きさ
・資本主義の帝王とも言える人物の生き方
・母と大富豪、決して交わることのない2つの意志のぶつかり合いが斬新で面白い

映画『ゲティ家の身代金』の作品情報

公開日2018年5月25日
監督リドリー・スコット
脚本デヴィッド・スカルパ
出演者アビゲイル(ゲイル)・ハリス(ミシェル・ウィリアムズ)
ジャン・ポール・ゲティ(クリストファー・プラマー)
フレッチャー・チェイス(マーク・ウォールバーグ)
ジョン・ポール・ゲティ3世(チャーリー・プラマー)

映画『ゲティ家の身代金』のあらすじ・内容

映画『ゲティ家の身代金』のあらすじ・内容(C)2017 ALL THE MONEY US, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

1973年、世界一の大富豪であるジャン・ポール・ゲティの孫であるジョン・ポール・ゲティ3世が誘拐されるという事件が発生しました。

誘拐犯たちはゲティ3世の身代金1700万ドルをゲティに要求しますが、ゲティは支払いを拒否します。大富豪でありながら守銭奴であるゲティは、孫のためとはいえ誘拐犯に自分の金を払う気などありません。

そんなゲティとは対照的に、3世の母親であるアビゲイルは息子の殺害を恐れて日々恐々としていました。アビゲイルは夫との離婚により、支払いをできる権利がありません。アビゲイルはなんとか身代金を払うようにゲティを説得しますが、ゲティ3世の身には除々に危険が迫っているのでした。

映画『ゲティ家の身代金』のネタバレ感想

実話をベースにした母と大富豪の戦い

実話をベースにした母と大富豪の戦い(C)2017 ALL THE MONEY US, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

『ゲティ家の身代金』の一番の見どころは、誘拐された息子の母親であるゲイルが孫の身代金を一銭も払おうとしない大富豪のゲティに、どうにかして身代金を払わせようとするところです。両者の立場が決して交わることない鋼鉄のような意志が交錯するところが、最後までどうなるかわからない緊張感を生み出しています。

ゲイルは母親であるが故に、なんとしても息子を救いたいという力強い意志をもった女性。一方、ゲティは世界一の大富豪という地位に上り詰めた資本主義の帝王のような存在です。どちらも鋼鉄のような意志を持ち、周囲の人々を圧倒するような振る舞いをしています。

この交わらない2人の意志が、誘拐事件とは別に火花を散らしているのが非常に面白いです。通常のサスペンススリラー映画では、どのような事件が起きて結末や犯人の正体が気になるところですよね。しかし、本作ではどのようにして母親のゲイルが資本主義の帝王のようなゲティから身代金を引き出すのかがワクワクするところです。

そういう見方では本作の切り口は、サスペンススリラー映画としてとても斬新に見えて、他の作品ではなかなか体験できないシナリオだったのではないでしょうか。

 

そしてなんと言ってもインパクトが大きいのは、大富豪であるゲティという人物です。実在した人物であることも驚きですが、ゲティの怪物じみた性格や信念が忘れらないほど印象に残りますよね。

映画をよく見ていると、ゲティの凄まじいほどのどケチな一面が垣間見れます。まさに大富豪となる故の性格のようです。

例えば、家の中に電話ボックスを置いてお客さんから電話代を徴収しますし、大富豪なのにホテルで自分の下着を洗ったりしています。ゲティは世界一の大富豪にもかかわらずなのにです。このような細かいシーンにも拘っていて、ゲティの性格を強く印象付けられます。挙句の果てには、自分の孫の身代金で税金の控除を行おうとするのだから驚きものです。

そのような怪物じみた人物に身代金を払うようにゲイルは説得するのですから、スリラー映画的に斬新だったのは言うまでもありません。ゲイルのような人間味溢れるような母と大富豪でありながら、異常なほどのどケチであるゲティの会話のやり取りは、まさにどう転ぶのか分からない緊張感と面白さがあります。役者の演技も拘っているので、見ごたえのあるサスペンススリラーとして楽しめました。

お金が人に与える影響とは?

お金が人に与える影響とは?(C)2017 ALL THE MONEY US, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

『ゲティ家の身代金』は「お金」が大きなテーマの一つです。この映画はお金に翻弄する人間達の姿を描いており、一番お金をもっているゲティもその1人だったのではないかと思います。

ゲティは確かに尋常でないほどのどケチですが、孫を助けたいという気持ちがなかったわけではありません。他にも「1人の身代金を安易に払えば、他の孫も狙われる可能性がある」というゲティの意見は説得力のある指摘です。

実際に誘拐犯から送られてきた孫の切り取られた耳に、ゲティは少なからず動揺していました。身代金を値切るという前代未聞の事態はありましたが、ゲティは最終的には身代金も払います。

 

ゲティは確かにどケチですが、孫に対して薄情なわけではありませんでした。そのことを象徴しているところが、ゲティの孫へのお土産です。孫へのお土産は高価なお土産だと思われていましたが、実際はほとんど価値のないものでした。自分の美術館を作ろうとするゲティが、このような価値を見間違うとは思えません。おそらくゲティは価値がないことを知っていて、お土産を孫に渡したのではないでしょうか。それは「お金は使いたくないけど君のことは大切には思ってるよ」という意味です。

このようなことから、ゲティは孫を救いたくなかったわけではなく、自分のお金を使うのが嫌だっただけなのかもしれません。

孫を救いだすことが本作の登場人物たちの最終的な願いなら、まさに登場人物のほとんどがお金に振り回されたと言えます。例えば、ゲティ2世はゲティ家の大金の一部を手に入れたことで身を滅ぼしてしまいます。ゲティ家の大金は、物語に登場する人物全てに影響を及ぼしているのです。

ゲティも身代金がなければ、真っ先に孫を救出するように動いたと思います。莫大な身代金が絡んだ故に、ゲティはあんなにも孫の救出に戸惑いました。そういう意味ではゲティも知らず知らずのうちに、ゲティ家のお金に振り回されていた人物の1人ではないかと思います。

莫大な身代金の話がなかったら、ゲティと孫の関係ももう少しまともな関係でいられたのかもしれません。そういった意味では悲しい話でもある気がしますね。お金が人間関係をおかしくしてしまう。そんなことを思い知らされるような映画でした。

【解説】当初のゲティ役だったケビン・スペイシー降格の理由

【解説】当初のゲティ役だったケビン・スペイシー降格の理由(C)2017 ALL THE MONEY US, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

本作のゲティ役はクリストファー・プラマーが務めていますが、当初はケビン・スペイシーが演じる予定でした。ケビン・スペイシーは、『ユージュアル・サスペクツ』や『セブン』など、サスペンス映画で活躍している俳優ですよね。確かに、『ゲティ家の身代金』のゲティ役でもぴったりな役だったのではないかと思います。

結果的にケビン・スペイシーは降格となってしまったわけですが、その理由は女性へのセクハラのスキャンダルです。このスキャンダルにより、急遽クリストファー・プラマーがゲティ役に抜擢されました。これらの出来事は映画の公開間近だったので、なんと2週間で全てのシーンを取り直したとのことです。

リドリー・スコット監督によると、ケビン・スペイシーが演じるゲティはもっと冷たい人物のイメージだったそうなので、当初の設定よりも性格が柔らかめに描かれていたのかもしれません。本作であのどケチな性格なのですから、本作以上に冷たい性格となると、どのようなものだったのか非常に気になります。

 

また、ケビン・スペイシーが女性に対するスキャンダルで降格されたのも、皮肉だなと思いました。本作である『ゲティ家の身代金』は、ゲティ以外にゲイルという母親が焦点に当てられています。

強い意志をもった母親であるゲティの女性としての強さは、作中でも注目すべきところです。リドリー・スコット監督の映画は、『エイリアン』など強い女性が描かれていることが多いですが、本作も例外ではありません。

新聞記者にえげつない質問を浴びせられても、気丈に振る舞いながら息子を助けるために奮闘する姿は感動すら覚えます。女性が強い映画であったことは間違いありません。ある意味で、ゲイルは男社会に翻弄された人物でもあったのだと思います。

映画の時代背景的にまだ、女性が表立って活躍することがなかった時代です。そのような時代にゲイルのような力強い女性が描かれているのは、この映画が女性にとって、大きく意味が変わってくるものではないかと思います。

 

さらには、ゲイル役を演じたミシェル・ウィリアムズの再撮影ギャラは、チェイス役を務めたウォールバーグの1000倍以上の差がありました。このことが世間に知れ渡ると、たちまち男女の賃金格差の問題として世間の大きな話題となったのです。

そのような背景を含めて、『ゲティ家の身代金』は、女性に関して非常に関わりが大きい映画でもあったのではないかと思います。

そして女性の映画でもあるからこそ、ケビン・スペイシーのセクハラスキャンダルは皮肉に感じられるのです。セクハラのスキャンダルに関しては、偶然かもしれませんがそれでも十分に皮肉だったと思います。

【解説】チンクアンタとうい人物の存在について

【解説】チンクアンタとうい人物の存在について(C)2017 ALL THE MONEY US, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

ゲティとゲイルのやり取りに目が行きがちですが、誘拐犯のリーダーであったチンクアンタも強く印象に残る登場人物でした。

チンクアンタはゲティ3世を誘拐した犯人でもあるのですが、物語が進むにつれて、違う犯罪組織に3世を渡します。後に、中々身代金を払わないゲティのどケチっぷりを見て、痺れを切らしてしまい、ゲティ3世とゲイルに同情を示すようになりました。

チンクアンタは「自分の息子が誘拐されたなら、身代金なんて借金してでも盗んでも作る」と発言しています。

チンクアンタは元々、貧しいイタリアのマフィアだったので、お金がないという点ではゲイルと同じでした。しかし、ゲイルと同じように家族が一番大事という価値観は、チンクアンタもゲイルも同じです。そのようなことから、映画を見ていて共感しやすいのもゲイルとチンクアンタでした。

 

この2人は、立場や境遇が違うだけで根本的な家族観や価値観は似たようなものだったと思います。

チンクアンタが3世を引き渡したマフィアは、「ンドランゲタ」という実在する組織なのですが、これは非常に大規模な犯罪組織です。その規模は、なんとイタリアの数%のGDPを担っており、公的組織にも関与していながら警察でも取り締まることができないほど。

そんな庶民からは想像もつかないような大金を動かしている巨大組織やゲティのような帝王のような人物が、お金のやり取りしているわけです。ゲイルやチンクアンタのような家族を大事にしている庶民には理解できないような世界でしょう。

チンクアンタにとっては、「ンドランゲタ」もゲティも同じような怪物にしか思えなかったのかもしれません。「ンドランゲタ」のような巨大組織のことを考えると、チンクアンタは誘拐犯側の庶民、つまりはゲイルと同じ立ち位置としてみることができると思います。

チンクアンタは誘拐犯ではありましたが、ゲイルとは価値観も立ち位置も似ていたのです。そのようなことから、チンクアンタも巨大なお金をもつ人間に振り回された人物の1人だったのだと思います。

【解説・考察】ラストシーンの意味は?

ラストシーンの意味は?(C)2017 ALL THE MONEY US, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

『ゲティ家の身代金』のラストシーンは非常に印象深いものでした。

ゲティが母子の絵が描かれている絵画を購入し、自分で集めた美術品に囲まれ静かに息を引き取るシーンです。印象的には、はやりゲティの孤独感が漂うシーンでした。自分が購入した母子の絵を大事そうに抱え、寂しそうな目で眺めるゲティも印象的です。

もしかしたら、世界一の大富豪の孤独や苦悩など理解できるような人は地球上でいないのかもしれません。例えば、映画の冒頭で孫のゲティ3世はがゲティのことをまるで異星人のように語っています。ゲイルや誘拐犯のチンクアンタにとって資本主義の帝王のようなゲティは、まさに理解しがたい異星人のようにしか見えなかったのでしょう。

 

他にもゲティは、ゲティ3世の父親である2世の身の破滅を見ていました。もちろん2世だけの話だけではなく、多くの人間がお金目的でゲティに寄ってきたのでしょう。そんな状態にゲティは、自分に寄ってくる人間は全て自分の金を目的とした者たちであると、うんざりしている様子もありました。

実際に誘拐事件に関しても、自分のお金を狙ったゲティ3世による狂言誘拐ではないかと、疑っている様子もあります。そのようなことからも自分に接近してくる人間に対して、いかにゲティが不信感を抱いていたのかがわかります。

まるでゲティ本人よりもその背後にあるゲティ家のお金しか見ていないような者たち。そのような人たちばかりを見てきて、ゲティは人間関係にかなり嫌気がさしていてのではないかと思います。

このようなシーンを見ていると、ゲティはお金を稼げば稼ぐほど関わってくる人間が自分のお金しか見ないような人間ばっかりだと思うようになり、ゲティは人間不信に陥ってしまったのかもしれません。

 

一方ゲイルのようにお金は二の次で、純粋に子供の身を案じて信頼していることは、人間不信に陥ってしまったゲティにとっては理解しがたい存在に映っていたのではないでしょうか。ゲイルにとってゲティは異星人のような存在だと書きましたが、ゲイルのようなお金に目がくらまずに純粋な人間関係をもっている人間は、ゲティにとって異星人のように映っていたのかもしませんね。

そんな人間不信に陥ったゲティの心を癒やしてくれるのは、お金で換金した価値の落ちない大量の美術品だけだったとも想像できます。

しかし、ゲティの生き方は間違った生き方だったわけではありません。誘拐に対して「1人身代金を払うと、他の孫も狙われてしまう」という論は、現代のテロリストに対する対策としても通ずる話です。そういった意味では、ゲイルはテロリスト対策の先駆者でもあったのではないでしょうか。

 

また、資本主義の世界ではゲティのような強い意志が必要になる時も少なくない気がします。

ゲティは確かに孤独であり、一般人から見たら異星人のような存在であったのかもしれませんが、その生涯は学ぶべきことが多い一生だったのではないでしょうか。だからこそ、ゲイルたちが最後に見たゲティの顔の彫刻を見て、渋い顔をするシーンにも意味をもつと思います。

まさにゲティは後世の記憶に受け継がれ、多くの人に多大な影響を与えた怪物のような人物だったのです。

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