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映画『ブリッジ・オブ・スパイ』ネタバレ感想・解説・考察! ソ連とアメリカの捕虜交換をめぐる実話!

映画『ブリッジ・オブ・スパイ』のあらすじ・内容

映画『ブリッジ・オブ・スパイ』は、ソ連とアメリカの捕虜交換をめぐる実話をもとにしたハリウッド映画です。スピルバーグやコーエン兄弟が製作に携わっており、日本でも注目度が高かった作品でもあります。

内容は長丁場で比較的地味めだったこともあり、それほどの大ヒットには至りませんでしたが、昨今の「アカデミー狙い」が横行しているハリウッド映画の中では見ごたえのある作品でした。

今回はそんな『ブリッジ・オブ・スパイ』の個人的な感想や考察を書いていきます!なお、ネタバレには注意してください。

映画『ブリッジ・オブ・スパイ』を観て学んだこと・感じたこと

・困難に挑戦する信念の強さを見習いたい
・「正義」とは何なのかを考えさせられる
・派手なアクションに頼らない硬派な作風が好印象

映画『ブリッジ・オブ・スパイ』の基本情報

公開日2016年1月8日(日本)
監督スティーヴン・スピルバーグ
脚本マット・チャーマン
イーサン・コーエン
ジョエル・コーエン
出演者ジェームズ・ドノヴァン(トム・ハンクス)
ルドルフ・アベル(マーク・ライアンス)
メアリー・ドノヴァン(エイミー・ライアン)
トーマス・ワターズ・Jr(アラン・アルダ)
フランシス・ゲイリー・パワーズ(オースティン・ストウェル)

映画『ブリッジ・オブ・スパイ』のあらすじ・内容

映画『ブリッジ・オブ・スパイ』のあらすじ・内容

アメリカとソ連の超大国が一触即発の状態にあった「冷戦」の時代。アメリカで弁護士を務めていたジム・ドノヴァンは、近年保険関係の分野で実績を挙げるやり手の弁護士として知られていました。

そんな彼のもとに、敵国ソ連のスパイ弁護という仕事が舞い込みます。この弁護はあくまで形式上のものであり、実際の判決はほぼ死刑で確定していました。

 

しかし、ドノヴァンは弁護対象のスパイ・アベルと接触を重ねるうちに、彼を本気で弁護するようになります。

あまりに危険なドノヴァンの行動に周囲は焦り、これを制止しようとしますが、自分の信念を曲げない彼は言うことを聞きません。こうして抵抗を続けるドノヴァンはアベルを懲役刑へと導き、さらにある事件の発生により人質を交換させるチャンスを得ました。

弁護士ながらスパイ交換という大役を任されたドノヴァン。果たして、彼は任務を達成することができるのでしょうか…。

映画『ブリッジ・オブ・スパイ』のネタバレ感想

スピルバーグ・コーエン兄弟・トムハンクスと豪華な製作陣

スピルバーグ・コーエン兄弟・トムハンクスと豪華な製作陣(C)2015 DREAMWORKS II DISTRIBUTION CO., LLC and TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION.

今作の注目点として、豪華なキャストとスタッフがまず挙げられるでしょう。監督のスティーヴン・スピルバーグについてはその実績を今さら語るまでもないかもしれません。ただ、個人的にスピルバーグと主演のトム・ハンクスのコンビは鉄板だと感じていて、二人が組んだ映画にハズレはありません。『プライベート・ライアン』『ターミナル』『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』と傑作揃いで、これほどの名コンビも珍しいでしょう。

さらに、彼らだけでなく脚本を担当するコーエン兄弟もビッグネームと呼ぶにふさわしいスタッフです。アカデミー賞を受賞した『ノーカントリー』や『ファーゴ』など、スリラーとバイオレンスを組み合わせた作品を多く手掛けています。

また、比較的悪人を描く映画が多いながら鋭いコメディの扇子にも定評があり、近年ではNetflixが配給権を獲得した『バスターのバラード』も脚本・製作を手がけています。

 

ただ、今作は実話をもとにした作品ということもあって、スピルバーグやコーエン兄弟独自のカラーはやや控えめになっているかなという印象です。特に、SFやアクション作品でしかスピルバーグを知らない方には馴染みのない作品内容になっているでしょう。

近年のスピルバーグは「ヒューマン」の部分に焦点を当てたドラマ作品をしばしば製作していて、これまでのようなエンタメ主義とは一線を画すところがあります。今作と似たようなところで言えば、2012年に公開された『リンカーン』という伝記映画などが挙げられます。この作品も今作同様今までの彼の作品とは異なる仕上がりで、批評家たちからも高い評価を得ています。

そうしたスピルバーグの作品傾向を踏まえれば、今作もある意味で「彼らしい」作品と表現することができるのかもしれません。そして、これは同時に今作に対して彼が深く関与していることを意味しています。スピルバーグは若手クリエイターにしばしば「名義貸し」をするところがあるというのは映画ファンの間では有名ですが、今作はそうではないのでしょう。

また、トム・ハンクスを除く日本では知名度の低いキャストたちも実力派ぞろいです。例えば、ソ連のスパイ役を務めるマーク・ライアンスは今作の演技でアカデミー賞助演男優賞を獲得しており、彼の長いキャリアがハリウッドで認められるキッカケにもなりました。

信念を曲げないドノヴァンの生き方は見事

信念を曲げないドノヴァンの生き方は見事(C)2015 DREAMWORKS II DISTRIBUTION CO., LLC and TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION.

2時間半という長尺の映画ながら、今作の登場人物は決して多くありません。それにも関わらず映画全体が締まって見える要因の一つに、主人公ドノヴァンの強烈なキャラクターが挙げられるでしょう。

まず、彼は非常に面倒ごとを嫌うという特徴があります。オープニングのシーンでもそれはハッキリと例示されますが、飲み物さえも「ネスカフェ、砂糖2つ」といつも同じ注文をします。他にも彼の面倒くさがりな点は作中全体で描写されますが、こうした「欠点」ともいえる特徴が映画にアクセントを与えています。

しかし、一方でドノヴァンは譲らない点は頑として譲りません。それは敵国のスパイ・アベルを救おうとした裁判のシーンや、東ドイツに囚われている学生までもを人質交換の対象にしているシーンによく表れています。これらの点に関しては、言うまでもないですが首を突っ込まなければ「面倒ごと」には巻き込まれずに済むのです。それでも信念を曲げずに困難に立ち向かっていく様子は、視聴者にも勇気を与えるものであったと思います。

 

そして、ドノヴァンの努力は最高の形で幕を閉じることになります。国に戻った彼を英雄として歓迎した人々の中には、彼の行動を訝しい目で見ていた人物もいたことでしょう。しかし、彼はそうした視線に見事な結果で答えてみせたのです。映画全体のカラーはそれほど彼を伝説的な英雄として描き出そうとしているわけではないのですが、それだからこそ「普通のアメリカ人」が偉業を成し遂げたという点がかえって強調されているように感じました。

ただ、ドノヴァンをめぐる解釈について思うところがなかったわけではありません。彼のキャラクターは映画を盛り上げていましたが、一方で「映画的な」キャラクター付けが気になる点もありました。確かに美点も欠点も兼ね備えているドノヴァンですが、強烈なキャラクター性がかえってリアリティを失わせてしまっているような気もします。フィクションにリアリティを追求しても仕方がないのですが、実話をもとにした映画なだけにその部分が浮いてしまって見えたのかもしれません。

これだけ長尺で動きのあるシーンを描かずに映画を盛り上げるためには、必然的にキャラクターを記号的に仕立て上げる必要性があったのは否めませんが、良くも悪くもフィクションらしさが見え隠れしていたのは少し残念なポイントだったかもしれません。

【解説】「スパイ映画」のセオリーをあえて無視した意欲作

【解説】「スパイ映画」のセオリーをあえて無視した意欲作(C)2015 DREAMWORKS II DISTRIBUTION CO., LLC and TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION.

皆さんは「スパイ映画」と言われた時にどのような映画を思い浮かべるでしょうか。筆者の場合は、やはり「007」シリーズが思い浮かびます。スパイ映画というジャンルを確立し、作中に登場するキャラクターやアイテムが一躍人気を博したことからも、その社会的影響力が推し量れるでしょう。

この「007」シリーズが生み出した人気は、後世におけるスパイ映画の流れをある程度決定づけたといっても過言ではありません。スパイといえばジェームズ・ボンドのように、スマートでありながら大迫力のアクションをこなすカリスマというイメージが確立されたことで、ボンドを意識した主人公づくりは業界の常識となっていきました。

また、ボンドのパートナーとして登場する美女は「ボンドガール」と呼称され、彼の周囲を取り巻く豪華なアイテムとともに「カリスマスパイ像」を構築することに大きく影響しました。

 

しかし、今作の内容を振り返ってみると、スパイものの映画では当たり前に描かれる上記のようなセオリーをあえて無視している点がいくつも散見されます。例えば、主人公のドノヴァンはボンドのようにスクリーンで暴れまわることもなければ、誰もが憧れるスマートなスパイとして描かれてもいません。このあたりは、やはり実話をもとにした物語ということも影響しているのでしょう。

さらに、そうした派手なアクションシーンや演出がほぼ存在しないにも関わらず、今作は2時間半という長尺の構成なっています。比較的地味寄りの内容でこの尺を確保するというのは、かなり挑戦的な作品作りといえます。

ただ、この点に関しては非常によくできた映画であったため、長尺特有の退屈さはそれほど気になりませんでした。実在のスパイという存在はボンドのようにスマートなわけではなく、むしろ汚れ仕事に近いものがありました。敵に正体を気取られないことが第一であったため、むしろボンドのように目立つスパイはスパイ失格であるというのが実際のところです。

もちろんフィクションにこのようなツッコミを入れることは野暮ですが、今作のような実話もので過剰なアクションや演出に頼らなかったことは大いに評価できます。確かに映画としては見せ場が減るかもしれませんが、そうしたアクションなしでもしっかりと人間関係や人々の葛藤を描き出すことで魅力的な映画に仕上がっていました。

【解説】元ネタとなった実話部分と関係者のその後

【解説】元ネタとなった実話部分と関係者のその後(C)2015 DREAMWORKS II DISTRIBUTION CO., LLC and TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION.

さて、今作が実話に基づいた物語であることは既に何度も触れてきましたが、ここからはその実話に関する解説を加えていきたいと思います。

まず、基本的には映画の内容がほぼすべて実話と合致していると考えていただいて差し支えありません。ドノヴァンもアベルもパワーズも実在の人物であり、映画の内容通り事件を起こしスパイ交換によって解放されています。そのため、ここからは事件後の関係者がどのような生涯を送っていたのかを見ていきましょう。

 

主人公のドノヴァンは、事件後またも捕虜救出の仕事を引き受けています。アメリカによってキューバの反共化を阻止しようとした「ピッグス湾事件」の失敗に伴い、大量のアメリカ側捕虜がキューバに取り残されることになったのです。彼は映画の事件同様にキューバへと渡り、当時指導者の立場にあったカストロと交渉を行っています。この交渉は無事成功し、食品や薬品と引き換えに捕虜を解放させました。

その後は政治活動や執筆活動に精を出し、彼とそのゴーストライターが執筆したとされる「Strangers on a Bridge」という小説が今作誕生の大きなきっかけになったとされています。この原作小説も高く評価されましたが、1970年には心臓発作でこの世を去っています。

 

ドノヴァンによって救われたアベルは、帰国後諜報員の教育を担当していたと言われています。ただし、当時のソ連国内についてはいまだに詳しいことが分かっていない部分も多く、必然的にアベルの後半生も詳細なことは分かっていません。ただ、ドノヴァンの後を追うように1971年には亡くなったと伝わっています。

アベルの交換相手となったパワーズは、帰国後アメリカ世論の大きな批判に晒されます。その論点としては、彼が撃墜された後に機密部品の処分を怠ったという批判や、敵の手に落ちる前に自殺しなかったことへの批判が主だったようです。

なお、帰国後の事情聴取でパワーズは機密情報の一切をソ連に提供していないことを主張しています。その後は1963年から1970年まで航空機メーカーのロッキード社テストパイロットを務めました。しかし、1977年にはロサンゼルス上空でヘリコプターに搭乗中機体トラブルに見舞われ墜落。そのまま息を引き取っています。

このように、今作で描かれなかったその後の人生は、様々な末路を辿っていることがご理解いただけるのではないかと思います。ただ、主要な関係者3名が長生きできず立て続けにこの世を去っているというのは何かしら因果関係があるようにも感じられます。やはり、交渉や敵国の捕虜となったことによる精神的ストレスが健康に害をおよぼしたのでしょうか…。

【考察】良くも悪くも玄人向きの映画かもしれない

【考察】良くも悪くも玄人向きの映画かもしれない(C)2015 DREAMWORKS II DISTRIBUTION CO., LLC and TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION.

今作は佳作と呼べる出来にある作品だとは思いますが、個人の好き嫌いや映画ファン歴に評価を左右されがちな印象を受けました。特に、広告によるスピルバーグやコーエン兄弟のネームバリューにつられて視聴した方の評価は芳しくない傾向にあるようです。これは、先ほども触れたように実話映画で彼らのカラーが控えめになっているためでしょう。

また、良くも悪くも実話を忠実に再現した映画の作りも好みが分かれるものだと思いました。実際、冷戦や戦後史など歴史に関心のある方や、実話を忠実に再現したことによるリアリティを楽しめた方は今作を評価するでしょうし、筆者のように「ボンドとは違うな」というような実験的手法を楽しめる方にも向いているでしょう。しかし、反対に歴史に関心も興味もないという方や、大規模なアクションや演出を楽しみたいという方が今作を評価するとは思えません。

したがって、大衆向け映画の要素はキャスティングとスタッフのみで、内容に関しては玄人向きの映画に仕上がっているといえそうです。日本でも公開前や公開直後はかなり話題に上りましたが、興行収入的には可もなく不可もなく、というラインに落ち着く結果となりました。正直スピルバーグの作品であればもう少し収入が伸びても良かったとは思いますが、冷戦になじみの薄い日本の映画ファンからはそれほど評価されなかったと考えられます。

 

ただ、これはお節介かもしれませんが、現代の国際社会や映画のトレンドを理解するには「冷戦」という戦後アメリカ最大の悩みの種を知っておくべきだと思います。冷戦がどれほどアメリカ社会に影響をおよぼしたかという事については、冷戦に関係するハリウッド映画の量から読み取ることができます。直接的ではない部分でも、「アポロ」シリーズのようなSF関係の映画はたいてい冷戦の影響を色濃く反映しています。

このように、映画を鑑賞するにあたってアメリカ社会の流れを抑えることは、日本のファンが思っているよりも重要なことだと個人的には考えています。

そうした冷戦独特の緊張感は今作を視聴することで体感としてよく理解できると思うので、冷戦の勉強用や教材用に今作を使用してみるのも面白いかもしれません。内容もエログロはほとんどありませんし、最後は主人公の苦労も報われますしね。

(Written by とーじん)

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※2019年5月現在の情報です。