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映画『ズートピア』ネタバレ感想・解説・考察!社会に根付く偏見や差別を描いた傑作アニマル映画

映画『ズートピア』のあらすじ・内容

映画『ズートピア』は、ディズニー製作のアニマル映画として公開されるや否や世界中で高い評価を獲得し、大ヒットとなった作品です。

その人気は日本においても例外ではなく、劇場に何度も足を運ぶファンや地上波放送に喚起するファンなど、ヒットにつながりやすいディズニー作品の中でも特に人気を博していたといえそうです。

本作ヒットの理由は「単純に可愛らしい動物が活躍する映画」としても「社会問題を暗示した社会派の映画」としても鑑賞できる点にあるのではないでしょうか。

今回はそんな『ズートピア』の個人的な感想や解説、考察を書いていきます!なお、ネタバレには注意してください。

映画『ズートピア』を観て学んだこと・感じたこと

・単純な「動物ミステリー作品」としても面白い
・社会に根付く偏見や差別を見事に表現している
・誰が見ても楽しめる映画として完成されている

映画『ズートピア』の基本情報

公開日2016年4月23日
監督リッチ・ムーア
バイロン・ハワード
ジャレド・ブッシュ
脚本ジャレド・ブッシュ
フィル・ジョンストン
出演者ジュディ・ホップス(上戸彩)
ニック・ワイルド(森川智之)
ボゴ署長(三宅健太)
ベルウェザー(竹内順子)
クロウハウザー(高橋茂雄)
ボニー・ホップス(佐々木優子)

映画『ズートピア』のあらすじ・内容

映画『ズートピア』のあらすじ・内容

肉食動物と草食動物が共存する世界「ズートピア」。かつて対立していた両者も、進化の過程でお互いに協力して生きていく道を選択していました。

そんなズートピアに、警察官を夢見るジュディ・ホップスという女性のウサギがいました。彼女は「ウサギが警察官になる」ということへの偏見に打ち勝ち、見事に自身の夢を叶えます。

しかし、職務を担当することになった彼女に待っていたのは「雑用」に近い仕事ばかりでした。

 

一方、同じズートピアには悪事を重ねてきたキツネのニック・ワイルドという男性が生活しており、彼はひょんなことからジュディに悪事の証拠を握られてしまいます。

その当時「肉食動物が失踪する」という難事件に立ち向かっていたジュディは、ニックの能力をあてにして捜査協力を要求しました。こうして「協力者」となった彼らは、果たして都市に渦巻く騒動を解決することができるのでしょうか。

映画『ズートピア』のネタバレ感想

世界観の発想とそれを容易に実現させるCGの技術は見事

世界観の発想とそれを容易に実現させるCGの技術は見事© 2016 – Walt Disney Studios Motion Pictures

本作は、動物たちしか生きていない世界「ズートピア」を舞台にして物語が展開されていきます。このように「人間がいない世界」を描き出すことは珍しいものではありませんが、本作はこの世界観を非常に細部にわたって作りこんでいる点に特徴があります。

例えば、肉食動物と草食動物をめぐる動物の配置や、動物たちの体形・特徴を差別化して描き出している点などです。ズートピアは、9割を占める草食動物と残り1割を占める肉食動物によって世界が構成されています。このように数は草食動物が優勢ですが、その一方でヒエラルキーの上位に位置しているのは肉食動物なのです。こうした構成は、自然界の姿をほぼそのまま反映しているだけでなく、資本主義下の人間界をも映し出した実に見事かつ自然なものです。

 

また、同じ肉食動物や草食動物であっても、多様な種類の生き物が生息しています。その多様さもしっかりと表現されており、絵柄はデフォルメされている一方で各動物の特徴がしっかりと表現されています。そして、この「特徴」は時に差別を生み出し、虐げるものと虐げられるものが発生するという図式も描き出されています。

このように、動物たちの造形や世界観を考えるだけでも楽しめる作品となっているのは、ディズニーが誇るアニメスタジオ「ピクサー」の技術力に他なりません。「トイ・ストーリー」シリーズや「モンスターズ・インク」などに代表されるように、3Dアニメ界最大の売れっ子兼最高の技術力保持者として業界に君臨してきたピクサー。その勢いは近年になっても他の追随を許さず、「アナと雪の女王」など常に話題作を提供し続けています。

もっとも、近年は3Dアニメ技術も世界中に普及し、「クールジャパン」政策の一環として積極的にアニメ文化を発信している日本も例外ではありません。オール3Dのアニメもしばしば作られるようになってはきましたが、正直ピクサーとの実力差は歴然としています。

その理由は資金や技術などの点が原因であることは言うまでもないですが、ピクサーのハードな制作環境もあるのかもしれません。世界最大のアニメスタジオとして君臨するピクサーですが、内部のディレクターやスタッフには非常に厳しい目標が設定されており、アメリカの企業らしく結果が出なければすぐに肩を叩かれることも。

一見華々しい3Dアニメの分野ですが、トップをひた走りながらも妥協を許さない徹底した製作体制が「ズートピア」の成功に大きく貢献していることは間違いありません。

ジュディやニックなど動物たちのキャラクターも実に魅力的

ジュディやニックなど動物たちのキャラクターも実に魅力的© 2016 – Walt Disney Studios Motion Pictures

まず、女性の立場ながら優れた警察官を目指すウサギのジュディから見ていきましょう。彼女は優秀な人物ながら、「ウサギである」という理由から警察内で冷遇されるという立場にあります。しかし、優れた観察力とスマートな手法によってキツネのニックを「脅迫」し協力者として擁立しました。

このような強引な手法を選択するのはある意味で「ディズニーらしくない」と感じます。彼女は主人公であり、同時に物語のヒロインでもあるのです。通常、ディズニーのヒロインといえば「美女と野獣」の「美女」しかり「シンデレラ」の「シンデレラ」しかり、意志の強さを持ちつつも積極的に行動に出るタイプのヒロインではありません。

しかし、ジュディは不遇な立場を克服するべく、自らが主導しニックを利用するという手法を披露します。これは、個人的にこれまでの「受動的」なヒロインらに対する「セルフアンチテーゼ」であり、新しい時代に理想とされるヒロインのあり方を象徴的に描いているように感じられました。

 

次に、準主役でありヒーローの立場であるニックに目を向けます。彼は幼少の頃「キツネである」ということを理由に周囲から見捨てられ、彼自身もまた希望を失って生きていました。この図式は、明らかにジュディと対比する形で描かれているのが面白いところです。そして、端的に言えば詐欺や脱税を繰り返しながら悪事を働いていたところ、ジュディにその証拠を掴まれ協力を強制されます。

先ほど書いた「ディズニーらしさ」という点から考えれば、このニックのあり方もまたらしくないといえるでしょう。そもそもヒーロー格の人物がハッキリとした「悪」として描かれているのも意外ですし、いわゆる「王子様」キャラにも全く似つかわしくありません。このあたりは、やはりあえて「外している」と考えるのが自然です。

そして、初めはいがみ合って「ウサギ」と「キツネ」でしかなかった二人ですが、捜査に協力する中でしだいに力を認め合い、呼称が変化していくのも見どころです。他にも数多く魅力的なキャラクターと面白い描き方がなされており、些細な点まで工夫が及んでいる脚本は見事というほかありません。

ミステリーの見どころが多く「子供向け映画」としても面白い

ミステリーの見どころが多く「子供向け映画」としても面白い© 2016 – Walt Disney Studios Motion Pictures

恐らく、本作がこれほど高く評価されている理由は、後述するように動物たちに仮託して現実世界の差別や偏見を比喩している点でしょう。こうしたスパイスが「深い」という評価を受け、一般人だけでなく評論家にも絶賛されています。

この点は筆者としても十分に評価しているのですが、まずそれらの点よりも目を向けるべきは「子供向け映画としての完成度」ではないでしょうか。たとえ深みのある比喩的な映画だとしても、そもそも表向きの物語がつまらなくてはあまり意味がなくなってしまいます。実際、昨今の流行に乗じて安易に差別や偏見を描いた映画の中には、そのテーマを描くことに注力したばかりに、肝心の本筋がパッとしないものも少なくありません。

しかし、本作はそうした「エンタメ的な面白さ」に関しても、十分なクオリティを保っています。映画のジャンルを分類すると「ミステリー」に大別される推理面のトリックも、ニックが働いた悪事の証拠をつかんだ「ニンジン型ペン」で真犯人の発言を録音するという伏線の張り方がよくできていました。

 

また、序盤の窃盗事件で登場したアイテムが、事件全体の謎を解決するためのキーアイテムになっているというのも「おっ」と思わされる展開でした。他にも、万人が楽しめるようなギャグ調のシーンで、筆者も思わず笑っていると実はそのシーンが重要な後の伏線になっているなど、物語の根幹部である「ミステリー」の描き方が非常に上手であると感じました。

そのため、後述する差別や偏見を匂わせる比喩を挿入しつつ、重要な伏線となるトリックを撒き、さらにキャラクターの魅力的なかけあいも演出しているということが指摘できます。

これだけ多くの要素を取り入れてしまうと、並みの脚本であれば描き出したい部分に十分な尺を割り振ることができず、非常に大味な物語になってしまうことでしょう。しかしながら、一つ一つのシーンに表面的な意味と隠された意味を巧みに用いることで、映画として飽きてしまいような長尺を確保していないにもかかわらず、これだけの内容を盛り込むことができているのです。

このあたりは脚本家やシリーズ構成を担当したスタッフの技量が極めて優れていることを証明しており、「子供向け映画」と侮っているとその構成力に驚かされることになるでしょう。

【考察】さまざまな差別や偏見などの社会問題を描き出した「大人向け映画」の大傑作

【考察】さまざまな差別や偏見などの社会問題を描き出した「大人向け映画」の大傑作© 2016 – Walt Disney Studios Motion Pictures

先ほどもチラリと触れましたが、本作最大の見どころは可愛らしい動物たちの裏に隠された「社会派映画」としての側面でしょう。実際、単なる深読みではなく、明らかに現実世界の問題を比喩しているであろう内容がいくつも存在します。

例えば、ズートピアの世界観自体が現実の差別を象徴しています。少ないながらヒエラルキーを支配する肉食動物と草食動物。これは明らかに現実の資本家と労働者の位置関係をそのまま反映しています。そして、特定の動物に用いると差別となる用語や、同じく特定の動物のみが利用することのできない施設の存在は、黒人にだけ適応される差別用語や白人専用の店舗を象徴しているといっても過言ではないでしょう。

このように、ズートピアには隠された現実社会の問題がいくつも存在しています。それらはコメディ調の作品の中で確実に存在感を発揮し、差別の実態を知っている我々大人たちをはっとさせてくれます。

 

しかし、本作の「社会派映画」として優れている点は、虐げられている「弱者」の側にもまた、無意識的な差別意識が根付いていることを暗示している点です。出来の悪い社会派映画では、「被差別」の立場に着目しすぎるばかり、片方の立場に対し過剰に肩入れしてしまっている例もあります。これは問題の実態をつかみ切れていないだけでなく、新たな差別を生み出しかねない非常に危険な光景だと考えられるでしょう。

それを防ぐため、本作では「被差別」の立場として描かれている草食動物たちが肉食動物を差別し、さらには町から追放しようとする場面をしっかりと描くことができています。ジュディは「ニックから差別されている」と感じていますが、そのニック本人から「お前も無意識的に肉食動物を差別している」と指摘され、無意識の現象に驚きを感じていました。

こうした例は、もちろん現実でも例外ではありません。もちろん差別側に問題があることは前提ではありますが、一方で被差別側も被害者意識から無意識的に偏見をもってしまうのは日常茶飯事です。そして、それが加速していくと新たな差別を生み出していくことになります。実際、今でこそ「黒人」は差別されていると認識されていますが、このまま被害者意識だけを増幅させていくと、いつの間にか「白人」であること自体が差別の対象になる可能性もゼロではありません。

つまり、単なる被害者の視点から差別の問題を捉えているだけでなく、その一歩先から社会全体に蔓延しかねない「未来の問題」に対する問題提起を行っているという点で、単なる「お説教映画」に留まらない痛烈な社会への風刺が効果的なのです。

【解説】どのような立場の人も楽しめるように作られた映画

【解説】どのような立場の人も楽しめるように作られた映画© 2016 – Walt Disney Studios Motion Pictures

本作は「万人向けの映画」として抜きんでた完成度を誇っている映画です。単純に動物たちが活躍する姿を見たい子ども、その子どもを連れて劇場を訪れた大人、普段から映画鑑賞を趣味にしている映画マニア、社会問題に関心がある学生…と、どの立場から鑑賞しても見どころがあるという点で、傑出した作品であることは疑いようもありません。

そして、この結果は興行収入などのビジネス面にもしっかりと表れており、社会的にも評価されるべき映画が評価されたという印象を抱きました。世界に向けてビジネスを展開しているディズニーとしてもこの結果は大いに満足のいくものであり、ピクサー映画の到達点といえる作品でしょう。

このように本作は非常に素晴らしい映画であったわけですが、筆者が少しだけ懸念しているのは、現在「ズートピア2」という続編が制作されているかもしれないという情報です。公式な発表こそありませんが、本作でキャラクターの声優が続編に向けて映画の制作に協力しているという旨のコメントを残していることから、水面下では製作が進行している可能性が高いでしょう。

もちろん、通常なら素晴らしい作品の続編を歓迎しないわけではありません。しかし、本作に関しては完成度の高さからどうしても観客側のハードルも高く、前作を上回る作品を期待された状態でリリースされることになります。こうなってしまうと、やはりどうしても出来が本作と比較されてしまい、よほど完璧な映画を作らなければ「失敗」の烙印を押されてしまうことが予想されます。

 

一般的に本作のように最初の作品が素晴らしければ素晴らしいほど、続編制作の難易度は上がっていきます。同じ「動物モノ」で例えると、ズートピア同様動物の世界をテーマにした3Dアニメ「けものフレンズ」の失敗が連想されます。この作品も初代は極めて高い評価を受け、公開当時は歴史に残るレベルの大絶賛を獲得しました。

しかし、続編となる「けものフレンズ2」が公開される頃には、制作チームに内紛が起こっていたことが指摘されています。その結果、「全てのファンをアンチに変えた」とまで言われる猛批判が巻き起こってしまい、動画サイトが実施したアンケートで歴代最低の支持率を記録したことで話題になってしまいました。

このように、ただでさえ続編の制作は難易度が高いだけでなく、続編の出来いかんによってはシリーズ全体の作品が不当に過小評価されることも珍しくありません。難しい手綱さばきを強いられるピクサーですが、これまでのノウハウを生かして頑張ってほしいところです。

(Written by とーじん)

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