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映画『ワイルドライフ』ネタバレ感想・解説・考察!家族の崩壊と再生、そして子供の成長を繊細に描く!

映画「ワイルドライフ」のあらすじ・内容

映画「ワイルドライフ」は2019年7月5日に公開されたアメリカ映画で、監督には本作がデビュー作となるポール・ダノが務めています。

母親役には「ドライヴ」「17歳の肖像」で知られるキャリー・マリガン、父親役には「ナイトクローラー」「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」などのジェイク・ギレンホールが起用されました。

1960年代のアメリカを舞台に、家族の崩壊と再生を息子の視点から描いた作品となっています。幸せだった家族が次第にバラバラになっていくのを為す術もなく、どうすることもできない中でも、家族が紡いできた愛情を最後まで残した息子の姿は切なくも美しさを感じさせてくれます。

今回は映画「ワイルドライフ」のネタバレ感想・解説・考察を書いていきます。

映画「ワイルドライフ」を観て学んだ事・感じた事

・崩壊する家族の中で、修復を試みる息子の姿に心打たれる
・大変な中でも少しずつ大人になっていく少年の姿が印象に残る
・頼りになる父親でありたい、愛される母親でありたいという歪みがもたらす大惨事

映画「ワイルドライフ」の作品情報

公開日2019年7月5日
監督ポール・ダノ
脚本ポール・ダノ
出演者ジャネット・ブリンソン(キャリー・マリガン)
ジェリー・ブリンソン(ジェイク・ギレンホール)
ジョー・ブリンソン(エド・オクセンボールド)

映画「ワイルドライフ」のあらすじ・内容

映画「ワイルドライフ」のあらすじ・内容

舞台は1960年代のアメリカ モンタナ州の田舎町。14歳のジョーは父ジェリー、母ジャケットと仲睦まじく暮らしていました。しかし、ジェリーが職場から解雇されたのをきっかけに家庭が急変します。

ジェリーはまともな再就職先を探すでもなく、ついには山火事を食い止めるための出稼ぎに妻と息子を残して行ってしまいます。

家計を支えるために働きに出たジャネットでしたが、夫がいない不安と孤独から徐々に不安定になっていく家族たち。

その間に立つ息子のジョーは幸せだった家族での生活を胸に秘めながらも、崩壊していく家族を為す術もなく立ち尽くすしかありませんでした。

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映画「ワイルドライフ」のネタバレ感想

映画「ワイルドライフ」のネタバレ感想

映画「ワイルドライフ」は35歳の俳優ポール・ダノによる初監督作品でもあります。映画監督としては若手ながらも、家族の愛情と崩壊の両面を丁寧に描き、その中心に立つ息子の姿を力強く描いています。

仲睦まじく暮らしていた家族があることをきっかけにバラバラになってしまう。息子のジョーには常に幸せに暮らしていた頃の記憶が胸に残りつつも、崩壊していく家族を目の当たりにしながら無力感に打ちのめされてしまいます。

 

終盤では夫婦関係が完全に崩壊してしまったにも関わらず、その間に立ち何とか再生させようと動く息子の姿には心を締め付けられるような思いにさせられてしまいます。

愛情を持ちながらもバラバラになっていく家族、そしてその中心に立つ子供の変化、切なさで溢れるラストシーンには、脳裏に焼きつくほどの印象に残りました。ここでは映画「ワイルドライフ」の感想を1つ1つの項目に分けて書いていきます。

【解説】愛情はあるものの問題を抱える夫婦

【解説】愛情はあるものの問題を抱える夫婦

映画「ワイルドライフ」に登場するのは、仲睦まじく愛し合っているにも関わらず問題を抱える夫婦たちです。序盤のシーンでは、父親のジェリーが息子と一緒にアメフトをして遊んだり、母親のジャネットに勉強を教えてもらうなど、理想的な家族でもありました。

収入は少ないものの一軒家に住み、家族一緒に幸せそうな生活が展開されます。しかし、父親の失業とともにこの生活は変化を迎えていきます。

父親は性格的な問題を抱えていました。父親にも関わらず、どこか子供っぽい一面を持っており、再就職先をまともに探そうとしません。これはプライドの高さも影響しているとは思うのですが、やはり父親として子供尊敬される存在でありたいという願望が強いあまり、家計を助けることよりも自分が納得できる場所で働くことを優先します。

一時は解雇されたゴルフ場から再雇用の連絡がくるのですが、それもプライドが邪魔をして断ってしまいます。父ジェリーには何らかの父親像があり、力強くたくましく、家族から頼りになる存在として認められたいという強い願望があるように見えました。

 

そして、そんなジェリーが選んだ再就職は、山火事の鎮火のための出稼ぎでした。それはお世辞にも収入の良い仕事というわけではありません。出稼ぎなので家族とも離れ離れになってしまいます。

にも関わらずジェリーは家族の反対を押し切ってその仕事を選んでしまいます。父親なりに何か大きなことをやり遂げたい、社会の役に立ちたい、家族に尊敬されたい、そのような願望から非合理な選択をしてしまったのでしょう。

ジェリーの心の中には、家計を支えるためにスーパーのレジのようなかっこ悪い仕事をするのは御免だという心情も見てとれます。また、現実を直視しようとしない子供っぽい一面も邪魔をしているのでしょう。

ここには母も息子も察することができない父親のプライドがあるのでしょう。しかし、妻から「あなたは近道がしたいだけ」と指摘されてしまうのも無理はありません。ゴルフ場に勤める前にも職場を転々とし、その都度引越しを繰り返してきたことも父親の性格を表しています。

何か1つのことに真摯に向き合っているわけでもないのに、父親としてのプライドは高く、それが結果的に家族の崩壊を招いてしまいます。

母親は母親で問題がある…

母親は母親で問題がある...

問題のある父親に振り回されてしまう母と息子。ついには家族を残して出稼ぎに行ってしまった父親と離れ離れになってしまったために、母のジャネットは孤独を抱えてしまいます。

問題はあったものの、それでも愛情を絶やすことなく暮らしてきた夫婦だったのですが、このことがきっかけてジャネットは夫の愛情に疑問を持つようになります。

家計を支えるためにプールの指導員の仕事をするも、家賃を払うのも怪しくなっていきます。ついには夫なしで生活することも考えるようになりました。

母親は母親でけっこうしっかりしており、家計のことを最優先に考え、もしもの時は自分が働きに出るなど、かなりまともな人物です。息子に勉強を教え、母親としての仕事を全うしながら、父親がいない中平静を保とうとしていました。

 

しかし、それで乗り切れるほど強くはありません。しっかりしているが故に父親に見切りをつけて、新しいパートナーを探すことを視野に入れます。そんな中、プール教室で出会った男性と浮気してしまいます。

しかも、その男性の家に息子を連れていき夕食を共にするなど、本格的に新しい家庭を作ろうと計画していました。息子にしてみれば、あれだけ優しく、まともだった母親がこのような姿になってしまうのは大きなショックだったでしょう。

優しく愛に溢れていた母親、父親が離職を繰り返す中でもそれを支え、息子を育ててきた母親の変化、愛情だけが支えになっていたのですが、その支えが脆くも崩れ落ちていきます。

互いに愛し合っていたのですが、それぞれに問題を抱えていた夫婦が父親の失業をきっかけに崩壊を迎えていきます。そして、その中心には変化の中で為す術もなく戸惑う息子がいました。

【解説】目を覆うような光景の中で成長する息子

【解説】目を覆うような光景の中で成長する息子

映画「ワイルドライフ」の中心に立つのは、崩壊する家族の中でそれを眺めることしかできない息子のジョーです。

家族が崩壊する中で、彼自信だけは問題を抱えている人物ではありませんでした。ごくごく普通で少し内気な少年だったのですが、父と母の変貌ぶりに対してショックを隠すことができません。

しかし、そんな彼も現実を少しずつ受け止めるかのように成長していきます。切なさに心が追いつかなくなってしまいそうになりますが、それでも彼は最後まで幸せだった頃の愛情に溢れた家族の姿を捨てることはしませんでした。

父親が出稼ぎにいって家計がピンチになったときには、自分もお金を稼ぐために写真館でアルバイトを始めます。父親のすすめでアメフトチームに入っていたのですが、それも自分の意思で辞め、学校では女の子と仲良くなりつつ、彼自身は少しずつ色々な経験を積み、大人への階段を少しずつ上がっていきます。

 

しかし、そんな中で母親は浮気し父は帰ってこない。挙げ句の果てには、母親と浮気相手のキスを目の当たりにするなど、以前とは違う家族の姿に愕然としてしまいます。

大人の都合に巻き込まれる可哀想な子供という見方もできますが、それでも変化を迎える前は理想的な家族でもありました。その中で変化を迎えますが息子は解決する力を持ちません。

ヒーロー的な存在になりたい父親、他者からの愛情を求める母親、その中で彼らが下した選択は家庭を崩壊させるものでした。両親が少しずつ自分勝手な行動を繰り返す中で、息子は立ち尽くします。

家族は変化しているのに自分ではどうにもできない無力感。彼自身がキーパーソンとなって問題を解決するという方法も考えられますが、15歳の少年には無理な話です。

 

そして、出稼ぎから父親が帰ってきた頃、夫婦の関係は完全に冷え切っていました。母親の浮気が発覚して父親が激昂、浮気相手の家にガソリンを撒いて放火するという決定的な出来事を迎えます。

これまで父の離脱、母の浮気と目を背けたくなるような現実が度重なってきた息子も耐えきれなくなり、その場を離れ走り出します。

完全に家族は崩壊。もう以前のような姿に戻ることはできません。あんなに大好きだった家族という存在が失われた瞬間、健気な子供の心には耐えきれないほどの傷を刻みます。

ただ、息子の心にはそれでも家族で紡いできた愛情が僅かばかりに残っていました。父親に失望し母親を軽蔑したとしても、それは紛れもなく自分が愛する父と母です。

 

そんな中、映画のラストシーンではジョーが働く写真館に父と母を招き、家族写真を撮影します。気まずい雰囲気でどんな顔をしていいかわからない父と母ですが、それでも息子は家族3人で並んで座り笑顔で写真を撮ります。

以前までの仲睦まじい家族に戻るのは不可能であっても、それでも家族としての繋がりを残そうとするジョーの姿を表したラストシーンは暖かくも美しい瞬間でした。それと共に、色々なことはあったけど、それでも家族としてもう一度再出発できるのではないかという希望も感じさせられます。

それを繋ぎ止めたのは紛れもないジョー自身です。彼がさまざまな経験を得て、少しだけ大人になり、家族の愛情をもう一度育もうとする美しい姿がありました。

【解説】ジェリーとジャネットから与えられたもの

【解説】ジェリーとジャネットから与えられたもの

普通だったら父親が失職して、意味のわからない出稼ぎにいき、母親が浮気して息子のことを放置し出したら、息子としては家族を見放してもいいぐらいです。

家出をしたり、グレたりするほどの出来事をジョーは経験しているはずです。それでも家族で一緒に写真を撮ったラストシーンのように、家族としての形に一番こだわっていたのは彼が以前の幸せな家族の姿に固執しているからではないと思います。

ジョー自身も少なからず両親を尊敬しており、両親から学んできたことも色々あります。
ジョーからみれば父親は男らしく、逞しい存在でもあります。ジェリー自身は自分の行動で息子に尊敬され、何かを与えたいと思っていた一方で、失職して何も与えられない自分に葛藤していたのかもしれませんが、ジョーは車の運転を父親から学んでいます。

ジョーにしてみれば、父親は車の運転を教えてくれた人であり、それだけでも尊敬に値するはずです。力強くアメフトをして一緒に遊んでいたときも、父親の力強さや逞しさ、大きさを感じていたことでしょう。

母親からも勉強を教えてもらっていたり、家計を支えるために奮闘する姿から得るものはあったはずです。ジョー自身が何も与えられていないと感じていたのであれば、このような親は尊敬に値しませんし、修復も不可能だったことでしょう。

 

しかし、ジョーは両親から大きな愛情を与えられ、成長する中でさまざまなことを親から学んできたはずです。

いくらダメな姿を見せたとしても、家族が崩壊したとしても、ジョーの頭の中にあるのは頼れる父親と優しい母親のままだったことでしょう。だからこそ修復が不可能な状態にあったとしても、ジョーはまた元の家族に戻れるように行動を起こしたのだと思います。

【考察】大規模な山火事のメタファー。ラストシーンの家族写真に繋がる

【解説】大規模な山火事のメタファー。ラストシーンの家族写真に繋がる

映画「ワイルドライフ」の舞台は1960年代のアメリカ・モンタナ州。劇中では大規模な山火事が発生しており、消化のために大勢の人が駆り出されていました。その中でこのような言葉が登場しました。

「山火事は悪いことばかりではない。燃えた草木は灰となって、豊かな土壌を作り、そこからまた草木が生えてくる。」

これは、この映画全体で描かれる家族の姿のメタファーでもあります。山火事という大惨事を迎えた全てが崩壊した家族ではあったのですが、それが収まれば豊かな土壌を作り、また新しい草木が生えてくる。

まさに、ラストシーンに映し出される家族写真の姿が新しく芽生えようとする草木といえるでしょう。家族の関係は完全に崩壊してしまいました。山火事によって元の山の姿には戻れないように、家族も元の姿には戻れないでしょう。

しかし、その危機を乗り越えれば、また新しい家族を築くことができる可能性を表しています。

【解説】キャリー・マリガンの演技が素晴らしかった

【解説】キャリー・マリガンの演技が素晴らしかった

母親のジャネット役を演じたのが、「ドライヴ」や「17歳の肖像」でも知られるキャリー・マリガンです。「ドライヴ」では小さな息子を持つ若い母親役を演じていて、可愛らしさと切なさを兼ね備えた魅力を持っていました。

今回の映画「ワイルドライフ」は、役の設定と実年齢が同じ34歳。思春期の子供を持つ母親役を演じていました。

34歳にしてはかなり老け込んだような印象を感じたのですが、父親に振り回されながらも懸命に家族を支えようとする姿、そして不安と孤独を感じながら、愛情を求めて息子を置き去りにする葛藤。

愛ゆえに見逃してきた夫の欠陥を愛が薄れてきたときに怒りが爆発する様など、見事な演技を見せています。評論家から「キャリア史上最高の演技」と評されるほどの見る価値のある演技でした。

映画「ワイルドライフ」は美しくも切ない家族の物語

映画「ワイルドライフ」は美しくも切ない家族の物語

映画「ワイルドライフ」は家族の崩壊と再生を描きながら、その中心に立つ少年の成長を繊細に描いた胸に深く刺さる映画です。父親と母親、それぞれに葛藤があり、苦しみがある中でバラバラになっていく家族。

そして、それでも何とか家族の形を修復しようと努める息子の姿には切なさと力強さを感じます。30代のポール・ダノが若い才能をフルに使って作り上げた普遍的な家族の物語です。

繊細で優しく、同時に切ないストーリーとラストシーンがもたらす温かい余韻は印象に残るでしょう。

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