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映画『バッドジーニアス 危険な天才たち』のネタバレ感想・解説・考察!スリルのあるカンニング行為、社会の歪みを描いた作品

映画『バッドジーニス 危険な天才たち』のあらすじ・内容

『バッドジーニアス 危険な天才たち』は、タイで公開されたスリラー映画です。日本では公開初日からSNS等で話題になり、上映館が拡大していき話題作となりました。中国、台湾、香港などでも人気作となり、タイ映画の歴代No.1のヒットとなった作品です。

本作は事実をベースとした大規模なカンニング事件を扱っており、高校生版『オーシャンズ11』とも呼ばれています。そのスリルは『オーシャンズ11』にも負けません。

そんな『バッドジーニアス 危険な天才たち』ですが、この記事では本作の個人的な感想や解説を書いていきます。ネタバレを含む内容となっていますので、映画を未視聴の方はご注意下さい。

目次

映画『バッドジーニアス 危険な天才たち』を見て学んだこと・感じたこと

・カンニングするだけなのにスパイ映画並みのスリルが味わえる
・社会の歪みに対して少年少女たちはどのような行動を取るか
・理不尽に対する不正とは悪いことなのだろうか?

映画『バッドジーニス 危険な天才たち』の作品情報

公開日2018年9月22日
監督ナタウット・プーンピリヤ
脚本ナタウット・プーンピリヤ
出演者リン(チュティモン・ジョンジャルーンスックジン)
バンク(チャーノン・サンティナトーンクン)
パッド(ティーラドン・スパパンピンヨー)
グレース(イッサヤー・ホースワン)

映画『バッドジーニス 危険な天才たち』のあらすじ・内容

映画『バッドジーニス 危険な天才たち』のあらすじ・内容

幼い頃から常に成績トップに君臨し続けていた天才少女のリンは、父と2人で裕福とは言えない暮らしをしていました。しかしその天才的な頭脳を認められ、リンは特待生として進学校に入学します。

新しい学校ではリンの初めての友人となるグレースと出会います。次第に仲良くなった二人でしたが、テスト期間にグレースはリンに試験のカンニングをもちかけました。リンはグレースの頼みを承諾して、見事カンニングを行いグレースを試験で救うことに成功します。

しかし、グレースの彼氏であるパッドは、リンの天才的頭脳とカンニングの話を聞きつけて、リンにあるビジネスの話を持ちかけます。それは、より多くの生徒にカンニングを行い、答えと引き換えに大金をもらうというものでした。

映画『バッドジーニス 危険な天才たち』のネタバレ感想

【解説】カンニングというテーマで魅せるスリラー映画!ハラハラ感が堪らない!

【解説】カンニングというテーマで魅せるスリラー映画!ハラハラ感が堪らない!© GDH 559 Co., Ltd.

『バッドジーニアス 危険な天才たち』は、他の映画では中々味わえないスリルが魅力的な作品です。本作はカンニングをテーマにしたスリラー映画ですが、まるでスパイ映画を見ているような緊張感を楽しめました。

最初は学校内だけのカンニングでしたが、大金が絡むようになりリンたちはより大規模なカンニングを実行することになります。その大規模なカンニングとは、国際的な大学入試のテストであるSTICで時差を利用したカンニング。このSTICでの大規模カンニングがまさに手に汗握る展開の連続でした。

たかがカンニングの話かと思いきや、本当に『ミッション・イン・ポッシブル』を見ているような臨場感を味わえるほどのスリルがあります。特にSTICのカンニングシーンは、手に汗握る展開の連続です。カンニングという凶悪犯罪や盗みよりは、些細な行為かと思われますが、スパイ映画に負けないほどの緊張感がありました。

 

まず面白いと思う点は、カンニングの方法です。リンの学校内でのカンニングは、天才であるリンが問題をすべて解き、ピアノの手で同じ教室にいる生徒達にサインを送るというものでした。しかし、STICのカンニングでは、学校内とは比べ物にならない驚く方法でカンニングを実行します。

STICのカンニングではリンとバンクが協力して問題を解き、試験の休み時間の間にトイレで、隠してたスマホを使って外部に回答を送ります。そして、その回答をバーコードに暗号化させ、そのバーコードを鉛筆に貼り付けて、回答を知るというものでした。試験時間は全国で違うので、時差を利用しているのです。

 

まずリンとバンクの驚異的な頭脳に圧巻されます。ただでさえSTICは、難しい全国規模のテストです。その試験の問題をリンとバンクは完全に問題を回答するだけでなく、回答をその場で丸暗記してしまうのが驚きです。

ここで、回答をスマホで送信する時に手が止まったり、試験管がトイレをノックしてくるなどのシーンがありますが、本当に自分が犯罪を犯しているかのようなドキドキ感がありました。まさに目が一瞬たりとも離せないようなシーンの連続です。

STICの試験中、まさかバンクが途中で捕まってしまうとは思いませんでしたね。試験官が退出したリンを追って、駅のホームまで追いかけてくるシーンも緊張感が高く、最後まで気がぬけません。結末、一体どうなるのかが分からないので、時間を忘れるような体験ができます。

予想外のことがたくさん起きつつも、持ち前の天才的頭脳と機転でピンチを回避していく展開は、まさにスパイ映画と言っていいほどの面白さとスリルがあります。たかがカンニングという行為ですが、本当に『ミッション・イン・ポッシブル』のようなハラハラ感を存分に楽しめる映画でした。

【考察】賄賂で学歴を買う社会で歪んだバンクという人物について

【考察】賄賂で学歴を買う社会で歪んだバンクという人物について© GDH 559 Co., Ltd.

賢さと大胆さでカンニングの手助けをしてがら、お金を稼いでいく天才少女のリンは魅力的な人物ですが、もう1人の天才であるバンクも魅力的な登場人物です。

バンクの魅力は、やはり作中の最初と最後での性格の豹変にあります。最初のバンクは、カンニングビジネスという不正行為を非常に嫌っていました。同時に、パッドたちのようなお金で学歴やテストの結果を買うようなお金持ちの連中も嫌悪しており、その嫌悪っぷりは、友人のカンニングを教師に密告するほどです。

 

しかしバンクは、ある日突然凶悪犯に暴行を受けて怪我を負ってしまい、大学奨学金の試験を受けられなくなってしまいました。そのために、最初は嫌悪していたリン達のカンニングビジネスに仕方なく手をかすことになります。

パッドたちの悪行に激昂しながらも、お金のためにカンニングビジネスに協力したバンクでしたが、STICのカンニング後は人が変わったかのように性格が変わっていました。

カンニングは牢屋に入れられるほどの重罪ではないので、失敗したリスクが低くお金が稼ぎやすいと判断したのでしょう。しかし、あれだけカンニングを毛嫌いしていた真面目な生徒だったのに、お金のことしか考えずカンニングビジネスに積極的になってしまったのは、驚きもありましたが、それ以上にタイ社会の歪さを感じられずにはいられませんでした。

 

真面目で秀才的な生徒であったバンクが、どうしてあのような人物になってしまったのかと考えると、はやり背景にある社会の理不尽さが原因なのではないかと思います。お金で簡単に学歴や結果を買えるお金持ちと比べ、バンクの人生は苦労の連続です。あれだけの頭脳を持ちながら、報われることなくカンニングビジネスに手を貸さなければいけないのは、本当に理不尽で残酷なことだと思います。

そのようなカンニングビジネスで、お金で学歴を買うような連中から大きく儲けられることをバンクは知ります。そして賄賂のようなものを渡して、学歴を手に入れるような社会。そのような歪な社会の構造によって、バンクの持ち前の精神は大きく歪んでしまったのかもしれません。バンクという青年の存在は、本作の物語において皮肉でもあり、歪んだ社会の象徴とも言えます。

【考察】ラストシーンのリンとバンクについて

【考察】ラストシーンのリンとバンクについて© GDH 559 Co., Ltd.

『バッドジーニアス 危険な天才たち』のラストシーンはリンとバンクの会話、そしてリンのカンニングビジネスの告発で締められました。

印象的なシーンだと感じたのが、ラストのリンとバンクの会話です。ラストシーンの2人の会話は、バンクがリンにさらなるカンニングビジネスに誘い、リンにバッサリと断られるという内容でした。ここで印象的と感じたところは、2人の立場が完全に逆転しているところです。

当初のバンクは、カンニングビジネスを嫌悪していました。ですがSTICの後、バンクはカンニングビジネスが低リスクで自分の頭脳なら稼ぎやすいことを悟ります。結果、彼の持ち前の真面目さは失われしまい、嫌悪していたカンニング行為にに喜んで参加する人物に変貌してしまいました。

 

一方、バンクをSTICのカンニングビジネスに誘ったリンは、真面目さが失われたバンクとは真逆のような人物としてラストシーンに登場します。ラストシーンのリンはカンニングビジネスに二度と手を染めないこと誓い、これまでのカンニングビジネスについて告発しようと考えました。これは、かつてバンクが友人のカンニング行為を密告したことに近い行為です。これらのことを見ると、リンとバンクは立場がそっくりそのまま入れ替わっているような状態であると言えるでしょう。当初の主張も性格も完全に逆転しているような状態です。

カンニングビジネスの醜悪さを身をもって経験し手を引くことを誓ったリンと、カンニングビジネスの収益の良さに溺れたバンク。天才的な頭脳をもちながら、真逆の道を進むこといなった2人がラストシーンで向き合い、2人の主張が相容れなくなるところは、非常に皮肉で印象的なシーンだったと思います。もしかしたら、本来はリンがバンクのようになっていたのかもしれないのですから。

 

そして、リンとバンクとの最後の会話の後は、リンがカンニングビジネスを告発するところで締めくくられます。これは、リンがカンニングビジネスという不正行為を全世界の発表することであることと同時に、リンの決意が感じられました。

なぜ、カンニングビジネスに積極的だったリンが、カンニングビジネスを告発する立場になろうと決心したのかというと、リンの父親の影響が大きく影響しているからだと思います。

リンたちの学校でのカンニング行為は、バンクの告発によって教師たちにバレてしまいました。その時、当然リンも呼び出されてリンの父親にも連絡がいきました。教師であるリンの父は、カンニングとい不誠実な行為をしたリンに激昂します。

リンはお金に苦労している父親を楽にしてあげたいという気持ちから、カンニングビジネスに手をつけました。しかし、リンはそのような悪質な行為で得たお金などいらないとリンの父親に怒鳴られてしまいました。

このようなことから見て、リンの父親は決して裕福とは言えませんが、とても誠実な人物であることがわかります。そんな父親の叱りを受けていて、実の娘であるリンならば自分の父親の誠実さを一番よく理解していたはずです。リンがバンクのようにカンニングビジネスに染まりきらなかった大きな理由は、誠実な父親がいたからだと思います。

 

一方、バンクの周りにはリンの父親のような存在はいませんでした。彼には、誠実な道を教えてくれる人物がいなかったのです。リンとバンクの2人は同じような天才的な頭脳を持っていますが、リンの父親のような素晴らしい親、或いは教育者の有無が決定的な差になっています。いくら最後に道を決めるのは自分だといっても、このような父親の存在の有無は無視できない事柄でしょう。

どんな天才的な頭脳の持ち主でも、正しい道を示してくれる親のような存在がいなければ、道を誤ってしまう。リンとバンクの2人の関係は、そういった大切な存在を示唆しているのかもしれません。

【考察】リンたちが過ごす社会の問題

【考察】リンたちが過ごす社会の問題© GDH 559 Co., Ltd.

『バッドジーニアス 危険な天才たち』でリンたちが過ごしている社会は、非常に歪んだ構造になっています。お金持ちの家の子供は高いお金を払って良い成績を買い、裕福でない家庭の子は埋もれてしまう。そんな賄賂を受け取っている学校が、子供たちに「正しくあれ」と教えているのです。

そのような社会の歪みや矛盾をリン達は敏感に感じ取っています。作中でリンが「世界に騙されない。私達が世界を騙すのだ」と発言していますよね。これは歪つで理不尽な社会に翻弄されているリンやバンクのような人たちの、社会に対する反抗の表れでもあったのだと思います。

本作は中国で起きた実際の事件をモチーフに製作されていますが、現実のタイでも本作のような社会問題が存在しています。裕福な家庭が学校などに賄賂を渡すことは、現実のタイでよく起きていることであると、監督のインタビューで発言されていました。しかも賄賂に慣れすぎて、社会的に問題視されなくなりつつあるという状況とのことです。お金がある家庭は賄賂などでチャンスがたくさんありますが、お金がない家庭はほとんどチャンスをつかめない。そのような状態が日常化している教育システムが、歪であることは言うまでもありません。本作はそのような現実の歪なタイの教育問題に対して、本作は一石を投じる社会的な作品でもあったわけです。

 

映画のラストシーンでは、リンがカンニングビジネスについて告発するところで幕を閉じます。この告発も当然ながら、歪んだ社会に対するリンの反抗です。リンは一貫してタイの歪な社会システムに対して疑問を投げかけています。高い能力もないのに賄賂や不正をしている人間が、誠実に働いている人や能力のある人よりも良い思いをしているのか。賄賂を受け取っている学校が、なぜ正しくあれと子供に説いてるのか。

リンは当初の頃は父親のためにカンニングビジネスに手を染め、STICでは社会に対する反抗で大規模なカンニングを行いました。そして、最後は今までやってきたカンニングビジネスの告発です。一見リンの行動は一貫していないようにも見えますが、実はタイ社会について疑問を抱き、疑問を投げかけ続けているという点は一貫しています。

バンクのように裕福層からカンニングを請負い、大金を稼いでいくのもある意味では、社会に対する反抗です。しかし、カンニングビジネスの告発というのは、彼女が最後に見出した、歪な社会に対する正しい戦い方だったのではないでしょうか。リンは誠実な父親の影響から、自分が正しいと思ったやり方で社会と戦うと決意したのです。このようなことを見ると、リンの成長を感じられる話でもあったと思います。

 

映画ではカンニングビジネスに関わった主要人物達が、警察官か記者に尋問を受けているようなシーンがいくつか見られます。恐らくこれは、リンがカンニングビジネスを告発した後に、カンニングビジネスの関係者が捕らえられた後のシーンなのでしょう。

リン以外のカンニングビジネスの中心となっていた人物であるグレースやパッドがカンニングビジネス告発後にどのような目にあったのかは、映画では描かれていません。バンクと同じように留学を取り消されたか、あるいは退学になったのかも不明です。しかし、あまり悲観していないところから、逮捕まではいってないのではないかと思います。そこでも賄賂で解決している可能性もあります。

もしかしたら、グレースやパッドはバンクと一緒にまたカンニングビジネスをするつもりなのかもしれません。彼らは反省している様子もないので、問題に思わないほど教育システムが腐敗しているのだと感じさせる作品でした。

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