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映画『真実』ネタバレ感想・解説・考察!大女優の母親とその娘、真実を知ったときに明かされる本当の姿

映画「真実」のネタバレ感想

映画「真実」は是枝裕和監督の最新作で第76回ヴェネツィア国際映画祭でオープニング上映作品としても選定された作品です。

2018年の「万引き家族」でカンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールを受賞し、国内外で高い評価を集める是枝監督がフランスを代表する2大女優カトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュ、そしてハリウッドのイーサン・ホークをキャストに迎えています。

大女優の母親の自伝本を出版したことで生まれる娘と母親の対立、そして互いの真実を知っていく中で和解をしていく姿が軽やかに描かれています。豪華キャスト陣の演技や家族の姿を自然に描いた是枝監督の演出にも注目です。

今回は映画「真実」のネタバレ感想・解説・考察を書いていきます。

映画「真実」を観て学んだ事・感じた事

・是枝監督が描く家族のリアルな姿を軽やかなタッチで描く作品
・ドヌーヴ、ビノシュ、イーサン・ホークの豪華キャスト陣の演技が凄い
・こじれた母と娘の関係性が真実を知ることによって、1つ1つ縺れを解いていく模様が繊細に描かれる

映画「真実」の作品情報

公開日2019年10月11日
監督是枝裕和
脚本是枝裕和
出演者ファビエンヌ・ダジュヴィル(カトリーヌ・ドヌーヴ)
リュミール(ジュリエット・ビノシュ)
ハンク・クーパー(イーサン・ホーク)
アンナ・ルロワ(リュディヴィーヌ・サニエ)

映画「真実」のあらすじ・内容

映画「真実」のあらすじ・内容(C)2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA

フランスの大女優ファビエンヌが自伝本を出版することを機に、アメリカで脚本家として活動している娘のリュミールとその家族がパリを訪れます。

久々の再会に喜び合う中で、自伝本を読んだリュミールはその内容が嘘だらけだったことに気がつきます。

これまでの家族関係とは異なる内容にリュミールはファビエンヌを問い詰めるのですが、母娘のわだかまりは解消されません。

対立を続ける母と娘、そしてファビエンヌの仕事に同行することになったリュミールは長年明かされることのなかった家族の真実を知っていきます。

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映画「真実」のネタバレ感想

映画「真実」のネタバレ感想(C)2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA

映画「真実」は世界中で高い評価を集める日本の映画監督・是枝裕和による最新作です。

是枝監督は2004年に制作した映画「誰も知らない」で主演の柳楽優弥が史上最年少・日本人初となるカンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞、2018年には「万引き家族」にてカンヌ国際映画祭最高賞となるパルム・ドールを受賞しています。

 

そんな是枝監督がフランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴを主演に迎えて制作した映画「真実」。第76回ヴェネツィア国際映画祭のオープニング作品にも選出されました。

国内外で注目を集める是枝監督の最新作。今回は前回の「万引き家族」とは異なり、軽やかなトーンと家族の愛情をテーマに据えた心温まるストーリーとなっています。

自伝本を出版した大女優のファビエンヌと娘のリュミール、この2人が長年抱えてきた軋轢が、自伝本をきっかけに対立を生み、パリで一緒に過ごす中で初めて知るそれぞれの姿、家族が抱えていた認識のズレを紐解いていき「真実」にたどり着くというストーリーになっています。

全体的に軽やかにストーリーが進んでいき、衝撃的な展開が用意されているといった感じの映画ではなく、微細な関係性の修復を行う家族の模様を眺めながら、爽やかな読後感の残る作品となっています。ここでは映画「真実」の感想を1つ1つの項目に分けて書いていきます。

【解説】長年抱えてきた家族の縺れを解していくストーリー

【解説】長年抱えてきた家族の縺れを解していくストーリー(C)2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA

映画「真実」の中心にあるのは、大女優の母親ファビエンヌと脚本家の娘リュミールによる「対立」と「和解」です。

ファビエンヌが出版した自伝本を読んだリュミールは、その内容が真実とかけ離れた内容だったことに憤慨します。母を問い詰めるリュミールでしたが、ファビエンヌは一向に気にしません。

確かに、自伝本というのは対外的に作られるものであり、「自分で書いた」という強力な根拠によっていくらでも内容を操作できるものでもあります。なので、ファビエンヌが書いた自伝本が嘘だらけで合っても「だから何?」というのが実際のところなのかもしれません。

 

ファビエンヌ自身が「真実なんて退屈なだけ」と言っていたように、彼女のファンが求めているのは女優ファビエンヌの華麗な人生の記録かもしれません。しかし、彼女の家族にとってはその内容が重要だったわけです。

この辺も絶妙で自伝本の内容に固執するのは娘のリュミールだけでした。ここに母親を意識してしまう娘の意地らしさみたいなものを感じてしまいます。

特に女優として家庭よりも仕事を優先してきたファビエンヌ。娘は母の親友でもありライバルでもあったサラの世話になっている時間が多く、母親よりもサラを慕っていました。

自伝本にはそんなサラの存在が1つも書かれておらず、あたかも自分自身が良き母親であったことが書かれています。しかも長年秘書を務めていたリュックのことすら書かれておらず、「存在を否定された気分だ」と突然仕事をやめてしまいます。

普通の自伝本であれば、ここまでの事態にはならないはずだと思いますが、家族にとって決定的なものが数多く含まれており、これによって母と娘の対立が生じてしまいます。

これまで家族を蔑ろにされてきたと感じていたリュミールにとって、やはり自伝本の内容は許せなかったのかもしれません。長い間積もっていた感情が自伝本というトリガーによって溢れ出したと解釈できます。

 

このように作品全体としては家族の愛憎渦巻く物語を描き、序盤では「憎」の要素が強まっていきます。だからといって激しくぶつかり合うというよりは、娘は母親に対して呆れているかのようでした。

ただ、母の仕事に同行し、共に時間を共有することでこれまで長年積もっていた心の縺れを少しずつ解していき、記憶の違い、互いに知らなかった互いの姿を知る中で両者が和解していきます。

劇的な展開を用意することなく、全体的に軽やかなストーリー展開の中で、少しずつ関係が修復されていく模様が描かれています。ストーリーが進んでいくスピードが自然で母と娘の関係性がより深く掘り下げられていきます。

互いを理解していきながら、フランスの優美な景色と共に是枝監督が描く家族の姿を存分に楽しむことができます。

【解説】自伝本がきっかけ。娘の知らない母の姿、母の知らない娘の姿

【解説】自伝本がきっかけ。娘の知らない母の姿、母の知らない娘の姿(C)2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA

母と娘の対立のきっかけとなるのは、ファビエンヌが出版した自伝本がきっかけでした。その内容と現実とのギャップに娘は憤りを感じてしまうのですが、映画全体を通じて語られるのは、それぞれが知らなかった互いの本当の姿でした。

仕事一筋で女優業に魂を売ったという印象のあったファビエンヌでしたが、実は娘の劇の発表会にお忍びで行っていたなど、何かと娘を気にかけていたことが明かされていきます。しかし、そんなことを娘が知ることもなく、娘にとっては家族を蔑ろにする母親という印象を持ち続けていました。

女優として自分自身を最優先に考え、それ以外のことを意に介さないイメージだったファビエンヌでしたが、徐々にそれが変化していきます。

撮影現場で共演した新人女優に嫉妬したり、長年大女優としてトップに君臨してきた座を脅かされることに不安を見せるなど、人間らしい一面を見せていきます。これまで仕事一筋で血も涙もないというイメージを母親に持っていた娘にとっては、初めて見る母親の「弱さ」だったことでしょう。

 

また、ファビエンヌが自分の思いを正直に伝えることが苦手な不器用な人間であることも可愛らしく描かれています。

秘書のリュックが入れる紅茶に対していつも「ぬるい…」と文句を言っていたのですが、リュックがいなくなった後、リュミールが入れた紅茶が熱すぎて文句をいいます。リュックは長年仕える秘書としてファビエンヌが猫舌であることを知った上での配慮だったのですが、いなくなったことをきっかけに初めて気が付いたりもします。

孫娘に対しては庭で飼っているピエールという名前の亀は元夫を魔法で姿を変えたものだとからかうなど、周囲の人たちに対してお茶目で愛情を振り撒く姿も伺えます。

しかし、娘はそういった愛情を受けた記憶に乏しく、母親自身もそれを直接的に伝えるタイプでもないがためにわだかまりが生じてしまっていたのです。

 

そして、互いの真実を知ったとき、初めて母と娘は和解することができたという流れになるのですが、この互いのすれ違い、認識のズレ、本音をストレートに言うことができない難しさ、まさに家族をテーマにリアルな関係性を描いた作品と言えます。

今まで言うことができなかった本音を漏らすことによって、互いを理解し長年積もっていた縺れを1つ1つ解いていきます。最後にはハートウォーミングな家族の姿が描かれ、爽やかなラストシーンで物語が幕を閉じます。

家族の対立と和解、そしてそれぞれの真実を丁寧に明らかにしていき、家族の愛情を感じさせる作品だと思いました。

【解説】ドヌーヴにビノシュ、イーサンホーク!豪華キャスト陣にも注目

【解説】ドヌーヴにビノシュ、イーサンホーク!豪華キャスト陣にも注目(C)2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA

映画「真実」ではメインキャストに名だたる豪華俳優陣が名を連ねています。是枝監督の元にこれだけのキャストが集まるということ自体、海外で高い評価を得ているという証拠でもありますね。

主演のファビエンヌを務めたのはフランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴ。「インドシナ」「終電車」でセザール賞を受賞するなどフランスを代表する実績を有しています。

偶然にもファビエンヌも設定上セザール賞を受賞した経験を持っており、役としての大女優を演じるに相応しいキャスティングともいえます。

序盤では高慢で自己中心的な大女優というイメージを持たせながらも、徐々に人間らしい弱い部分や可愛らしさを覗かせつつ、魅力的な人物を演じています。強がるのだけど実は不器用で本音を言うのが苦手、リュックに謝りに行くためのセリフを娘に考えてもらっていたのは象徴的でした。

 

そして、ファビエンヌの娘リュミールを演じたのはフランスの女優ジュリエット・ビノシュです。彼女自身も「トリコロール/青の愛」でセザール賞を受賞、「イングリッシュ・ペイシェント」ではアカデミー賞を受賞しているフランスを代表する女優でもあります。

そんな彼女が演じるのは母親に対してわだかまりを抱える娘。母親の自伝本を読み内容が著しく現実と異なることに憤慨します。

幼少期から家庭を蔑ろにされてきた記憶を持っているリュミールは、母親のことを印象良く思っていないながらも、何かと女優として母親としてのファビエンヌを意識しています。

そんなに嫌いなら早くアメリカに帰ってしまえばいいのに…とも思ったのですが、それでも母親の仕事に同行したり、演じる姿をしっかりと眺めたり、どこから母と娘の繋がりを感じさせてくれます。

娘が母親に対して抱える葛藤、そしてそれでも途切れることのない母親に対しての意識、真実が徐々に明かされていく中で生じる心境の変化など、カトリーヌ・ドヌーヴ同様に見事な演技でした。

 

そして、ハリウッドからこの映画に参加したのがリュミールの夫役ハンクを演じたイーサン・ホークです。「6才のボクが、大人になるまで。」などで知られる名俳優は、フランス映画のこの作品に見事にハマっています。

母と娘の間に立ちながら両者の視点から関係性を眺め、愛する妻としてリュミールを、同じ俳優として憧れのファビエンヌとして両者の潤滑油的な存在でもありました。

このような豪華なキャスト陣がメインを固めていた映画「真実」。是枝監督の世界観を最大限にまで表現することで、より深みのある魅力的な映画になっています。

【考察】家族といえどあくまで「個人」

【考察】家族といえどあくまで「個人」(C)2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA

映画「真実」のテーマになっていることの1つに家族それぞれが抱える認識の違い、それによる対立があると思います。家族だからといって、全てを理解しあっているというのは単なる思い込みで、あくまで血は繋がっていたとしても「他人」でしかありません。

落語の一節に「夫婦は最も近い他人だ」というセリフがあったのを思い出しましたが、確かにその通りです。家族であってもあくまで個人でしかなく、互いに理解しあえないことは多分にあるでしょう。

 

そして記憶や認識のズレ、ちょっとした会話の不調和によって、「自分のことを理解してくれない」と不満を持ってしまうこともよくあることです。

娘のリュミールは母親に対して、幼少期から愛情を注いでもらえなかったことに対して不満を持っていました。自伝本でも事実とは全く異なることが書かれており、それに対する憤りを持っていました。

大女優とその家族という一般的なシチュエーションではないものの、この関係性自体は普通の家族にも通じる光景かもしれません。

家族であるがゆえに、全てを理解してくれて当たり前という錯覚を持ってしまいがちです。しかし、家族とはいっても長い時間を共にしただけの他人でしかないわけです。

そのギャップが母親と娘の対立を生んでいたのですが、原因自体は個人の先入観や思い込み、記憶の曖昧さがキーになっています。これを1つ1つ紐解いていけば実は暖かい家族像が浮かび上がっていくという構成になっており、普遍的な家族に当てはまるようなストーリーになっています。

 

この部分が今回映画「真実」によって是枝監督が描きたかったシーンの1つだったのかもしれません。「家族」をテーマに作品を作ることが多い是枝監督ですが、この作品では誰もが共感しうる家族の姿が描かれており、だからこそ軽やかなストーリーを自然に眺めながら、終わった後のスッとしたような気持ちにさせられる感覚が生まれたのかもしれません。

こういった長年積もったわだかまりは突然の劇的な出来事によって変化することもあれば、ちょっとした勇気や優しさ、素直さ、人を許す気持ちで少しずつ晴れていくこともあります。

さまざまな人間模様を描きながらも最終的には家族のあるべき姿に着地する。余白も含めて感情の揺れ動きを存分に楽しめる作品となっています。

母と娘の間に内在する微細な感情の動き1つ1つを感じ取りながら、この不思議な関係性を味わってみてください。

映画「真実」は普遍的な家族の関係性を描きながら対立と和解の家庭を描いた作品

これまでの是枝監督の作品からは少しイメージの異なる作品となっている映画「真実」ですが、それでも是枝監督が描くのは「家族」の姿であり、この作品では誰もが共感するような母親と娘の関係性がリアルに描かれています。

素直になれなかったり、記憶のズレから対立してしまうという人間の業をを見事に描きながらも、それを乗り越えていくことによって深まる家族の絆を感じることができます。

世界中で高い評価を得ている是枝監督がまた1つ新たな挑戦をした作品としても注目です。爽やかな読後感と心温まるストーリーが魅力的な映画なのでぜひご覧になってみてください。

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※2019年11月現在の情報です。

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