映画『スターウォーズ エピソード8/最後のジェダイ』は、言わずと知れた世界的SF作品「スターウォーズ」シリーズの完全新作であり、ストーリーとしては前作「エピソード7」の続編にあたります。
本作はいよいよルークとレイが出会い、やがて徐々にファーストオーダーの手によって追い詰められていくという苦しい展開を描いた作品です。
しかし、そうしたストーリー構成に関係なく「映画としての出来が非常に悪い」というのが本作の最も目立つ特徴であり、公開直後はその点が集中砲火のように叩かれる結果となってしまいました。
この記事でも「最後のジェダイは良作だった」とは言いません。ただ、公開から時間も経過していることもありますので、なるべく冷静にこの作品を分析していければと思います。なお、ネタバレには注意してください。
目次
映画『スターウォーズ エピソード8/最後のジェダイ』を観て学んだこと・感じたこと
・ファン歴に関係なく映画としての出来が悪い
・映画評論、制作側の圧力といった問題が露呈した
・製作陣には擁護できる点もある
映画『スターウォーズ エピソード8/最後のジェダイ』の基本情報
公開日 | 2017年12月15日 |
監督 | ライアン・ジョンソン |
脚本 | ライアン・ジョンソン |
出演者 | レイ(デイジー・リドリー) フィン(ジョン・ボイエガ) カイロ・レン(アダム・ドライバー) ローズ(ケリー・マリー・トラン) ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル) レイア(キャリー・フィッシンジャー) |
映画『スターウォーズ エピソード8/最後のジェダイ』のあらすじ・内容
遠い昔、はるか彼方の銀河系で…。
戦局が激化するファーストオーダーとの戦いにおいて、レイア率いるレジスタンスは苦戦を強いられていました。
Xウイングに搭乗して敵を迎撃していたポー中佐は、撤退の命令を無視して独断で作戦を継続するものの、終了後にその責を問われて降格を言い渡されるなど彼らの関係性には暗雲が立ち込めていました。
一方、ルークの元を訪ねたレイですが、彼はレイを弟子として育成する気などなく、彼女の存在を無視し続けます。それでも粘り強く交渉を続けたレイは、最終的にかつてルークが旅をしていた盟友のR2やチューバッカの説得もあり、修行を授かることになりました。
そこでレイが耳にしたのは、かつてルークの弟子でありながらフォースの暗黒面に囚われてしまった人物との記憶だったのです…。
映画『スターウォーズ エピソード8/最後のジェダイ』のネタバレ感想
レンのキャラクターやキャリー・フィッシンジャーの存在など、褒めるところもある
まず、本作の批判記事はネットを探せばいくらでも転がっていると思います。個人的にも「批判に値する」映画だと思っているのでそれに反論するつもりはありませんが、当然ながらこれだけの超大作なので全てが不出来なわけではありません。そこで、後々は手厳しく批判していくものの、褒められる点については褒めたいと思います。
真っ先に褒めるべき点は、カイロ・レンというキャラクターがこれまでの暗黒卿とは異なる魅力を我々に見せてくれ点です。前作「フォースの覚醒」の記事では「カイロ・レンのキャラクターは魅力不足」と書きましたが、その点は本作で大幅に良化しています。
前作時点では「よくわからないがカリスマ性に欠ける悪役」というイメージしかなかったものの、本作では父殺しを含む自身の「闇」と「光」が葛藤している様子が見て取れ、その頼りない外見や直情的な性格も相まって「幼さ」を上手に表現できていると感じました。
これまで暗黒卿といえばカリスマ性あふれる悪役ばかりであったため意外といえば意外ですが、こうした見せ方は過去作との明確な差別化もできていると思います。
そして、前作時点ではあまり評価の高くなかったアダム・ドライバーの演技が、この点に大きく貢献していることは言うまでもありません。自身の中に眠る光の存在に苦しめられるレンの姿を非常に上手く表現できており、製作陣の狙い通り「滑稽さ」を示しつつも敵として振舞うレンの姿は、本作で最も評価のできる点でしょう。
他に本作で褒めるところといえば、旧三部作からレイヤ役を務めていたキャリー・フィッシンジャーの遺作として彼女の演技を見ることができたことす。オリジナル放送時点では「外見が姫にしては…」と低く評価されることもありましたが、年を重ねて壮年の女性らしい風格がよく表れていたようにも思えます。
これは映画内でのレイアというキャラクターを褒めているわけではありません。作中の彼女は謎のワープで船に帰還し、さらに船内のトラブルを引き起こしてしまうなど、将としての魅力に欠ける点も多いからです。そのため、あくまでキャリー・フィッシンジャーという一人の女優が「スターウォーズ」を遺作としてあの世へ旅立っていったことに敬意を表して、褒めるべき点と指摘しています。
【解説】魅力の乏しいストーリーにキャラの魅力や斬新さもないとなると…
では、ここからいよいよ本題に入っていきます。本作を評するうえでまず指摘しなければならないのは、たとえスターウォーズのシリーズ作品でなかったとしても、その出来が決して褒められることはないという点です。
そもそも、世界観を全て排しても非常に陳腐で、かつありきたりなストーリー構成をしていることは否めません。
例えば作中を通じて描かれるポーとレジスタンスの上層部による不和にしても、命令無視とその処罰から最後の自己犠牲に繋がるまで、展開としてありきたりなうえに見ているこちら側がイライラするような出来に仕上がっています。
そもそも論として、上官と部下の喧嘩自体がスターウォーズに求められている要素かどうかという点は置いておいても、一つの演出として見どころが皆無です。
また、監督の意向か作中の要所要所に差し込まれるギャグもかなり寒いですし、ただでさえ微妙な作品を見せられているこちらとしては笑いよりも腹立たしさが勝ってしまいます。
さらに、やたらアッサリと打倒される最高指導者のスノーグや茶番にしか見えない殺陣シーン・不可解なレイアの浮遊に「オウム真理教」を彷彿とさせるようなルークの座禅など、もはや欠陥を指摘すればいくらでも挙がってしまうほど陳腐なシーンが多いです。
そして、極めつけはローズとフィンによるコードブレイカー捜索シーンで、ここに至ってはシーン単体としても魅力に欠けるうえに作品の構造上その必要性すらもよくわからず、ただただ呆れてしまうばかりでした。こうしたフラストレーションから、ローズ役を務めたケリー・マリー・トランに猛批判が集中したのも共感は出来ませんが、理解は出来てしまいます。彼らはここだけでなくフィナーレでも恋愛ごっこに興じていますからね。
ただし、一つだけ言っておくと本作のローズというキャラクターは脚本や設定の時点からそもそも「終わっている」のであり、その失態を役者一人に押し付けるような批判の方法はフェアではないとも思います。確かにローズの外見はいわゆる「美人」ではなかったというのを否定こそできませんが、たとえローズ役を絶世の美人が担ったところで評価が変わったとは思えません。
【解説】シリーズ作品として過去を否定・矛盾するような致命的な演出の数々
ここまで「一つの映像作品としての問題点」を指摘してきましたが、それよりさらにやっかいなのは「過去作の名誉を傷つけるような致命的な点が多すぎる」ということです。
まず問題となるのは「レイアによるフォースの使い方」でしょう。先ほどから何度も述べていますが、レイアは宇宙空間に放り出された後にフォースの力によって船体に復帰するというパフォーマンスを披露しています。
しかし、いくらレイアが血統的にフォースに覚醒しても可笑しくないとはいえ、ここに至って急にフォースを操るのはかなり不自然ですし、それも空中浮遊はかなり高レベルの技術になるでしょう。となればやはり急にレイアがフォースを用いるのは整合性を欠いていますし、そもそもフォースが使えるのであれば旧三部作の時点でいくらかの危機を自力で乗り越えられたのでは?と思ってしまいます。
次に指摘できるのは、「ルークのキャラクター設定が非常に不自然」という点です。そもそも、旧三部作の時点からルークは良くも悪くも「純真」であり、邪悪の権化であるベイダーを前にしても分かり合えると信じて疑わなかったほどの性格をしています。
しかし、本作のルークは弟子の育成に失敗したばかりではなく、一度は信頼関係を築いたはずのレンを度々殺害しようとしているのです。これは過去のルーク像と明らかに矛盾してしまいますし、「30年の間に性格が変わってしまったんだ」と無理矢理説明を加えるほかありません。
仮にルークとレンの対立を描くのであれば、最後まで弟子を信じたルークがレンに殺害されるとか、そういう展開のほうがいくらか自然に思えます。
そして極めつけは、終盤のホルド―中将による捨て身のハイパードライブ作戦です。これは恐らく「自己犠牲によって部隊を救う」ことによってこちら側を感動させようと考えていたのでしょうが、展開として陳腐なうえに作品の戦いに関わる致命的な演出になっていると思ってしまいました。
そもそも、これまでの作戦でハイパードライブが敵への攻撃に用いられたことはありません。そのため、我々からしてみれば「自爆特攻でこれだけ有効打を与えられるのであれば、前からやればよかったじゃない」とつい考えてしまいます。
このように、単純な映画として出来に問題があるだけではなく、スターウォーズのナンバリング作品として大きな矛盾を生み出すことになってしまった作品でもあるというのが、本作の実像なのです。
【解説】なぜ映画評論家はそろって本作を高く評価したのか
ここまで見てきたように、本作は決して出来の良い映画ではないと考えています。しかし、興味深い点としては、日米問わず公開直後に本作に対する賛辞が止まなかったことです。アメリカの評論サイトRotten Tomatosでは映画支持率90%を記録し、さらにメタスコアに関しても86のスコアが与えられるなど、一見すると好評を博していました。
しかし、映画が公開されて観客視点からのアマチュアレビューがアップされるようになると、筆者同様に本作に対する酷評が相次ぎます。プロの評論家とアマチュアのレビューにおける評価の差はすさまじく、単に評論家と観客の視点は異なるというだけでは説明がつかない現象が勃発してしまうのです。
では、なぜこういう事態が起こってしまったのでしょうか。筆者も映画ライターとして活動しているため同業者の目線で解説してみると、二つの可能性が考えられると思います。
まず一つは、いわゆる「好意的なレビュー」を書く著者やメディアには、大本のディズニー側から原稿料として報酬が発生している可能性です。もちろんこれは仮説にすぎないのですが、これが事実であればプロの評論家のみが映画を絶賛し、金銭を受け取っていない素人の評論家が作品を酷評した理由のつじつまがあってきます。
そしてもう一つの可能性は、先とは真逆に否定的なレビューを書く著者やメディアには、「今後、映画メディアやライターの仕事がし辛くなる」という何かしらの圧力がかけられているという懸念です。これでもやはりあからさまな乖離を説明することが可能でしょうし、個人的にはこちらの可能性のほうが高いと踏んでいます。
そもそも論として、映画メディアは大きくなればなるほど映画の評判に関わってくるので、彼らが否定的な見解を示すことは興行収入の低迷に繋がりかねません。となれば、あくまで立場が下の映画メディアに対しては「忖度」を要求し、それによっていわゆる「ステマ」を横行させることで映画の興行収入が低迷することを防ぐのも戦略上成立し得るでしょう。
これをやられてしまうと我々ライター側としてはたまったものではなく、メディアの意向に合わせて必然的に「提灯記事」を仕上げざるを得ません。そうしなければ仕事を失ってしまうことに繋がりますので、仮にこれが真実ならばビジネス的には正しくもひどく迷惑で被害者の多い戦略と言わざるを得ません。なぜなら、偽りの好評価レビューに騙されて損をするのは、結局のところ一般視聴者に他ならないからです。
【評価】シンプルに一つの映画として出来が悪いが、製作陣に自由度が無さすぎた
ここまで作品の内容や批評のスタンスについて、かなり手厳しい批判を加えてきました。これは単にスターウォーズのファンとして憤りを感じているというだけでなく、そもそも映画そのものとして出来が悪いということも大きく影響しています。
極めつけは「チャレンジした上の出来の悪さ」ではなく、「中途半端に守り、悪い意味で予想外の点で攻める」という不可解な製作スタイルも理解するのは難しいです。
これは前作からそうなのですが、基本的に続三部作は「旧三部作の構成をかなり取り入れる」という手法によって製作されており、この点に関して言えば「守り」の映画になっています。本作も師匠との修行は「エピソード5」のヨーダとのそれを彷彿とさせますし、敵に苦戦する状況から希望を見出す構成も同じく5に似通っていると感じました。
しかし、先々で述べてきたような「予期せぬ展開」がなぜか要所要所で登場し、それが映画の出来を著しく損なっているという印象が否めません。ここは、監督兼脚本担当のライアン・ジョンソンの力量がシンプルに足りなかったのでしょう。
ここに至っても、やはり作品の出来そのものを擁護するつもりはありません。実際、前作は個人的にこそあまり好みではなかったものの、世間の評判はおおむね好評であり、少なくとも賛否両論を生み出していたことは間違いないでしょう。
ただ、果たして本当に本作が「製作陣の自由」に製作できたかどうかは疑問を感じずにいられません。実際、昨今のディズニー映画に見られる数々の特徴が無理矢理映画に押し込まれているという印象は否めませんし、ただでさえ難しいスターウォーズ作品をそうした制約の上で形にすることは至難の業だったのでしょう。
となれば、むしろ本作を担当したライアン・ジョンソンがとんでもなく駄目な監督だったというよりは、そうした制約の中で一定のクオリティを収めたJ・J・エイブラムスの力量を褒めるべきなのかもしれません。
ちょうど続編にあたる「エピソード9」は彼が再び製作を担当しますし、果たして本作でファンに見放されつつあるシリーズをどう再生していくのか、その点には注目したいところです。
(Written by とーじん)
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