映画『ダ・ヴィンチ・コード』の続編映画『天使と悪魔』。続編といってもストーリーに繋がりがあるわけではなく、テーマも違い、結末の印象も全く違うような作品になっていたので、1つの作品として純粋に楽しむことができました!
今回はそんな『天使と悪魔』についての詳しい感想や解説、考察をご紹介していきます。感想と考察ではネタバレを含みますので、映画ご視聴前の方やネタバレを避けたい方はご注意ください!
目次
映画「天使と悪魔」を観て学んだ事・感じた事
・ダ・ヴィンチ・コードを観ていない方でも観やすい
・イヤミス感のあるラストがお好きな方におすすめ!
映画「天使と悪魔」の作品情報
公開日 | 2009年05月15日 |
監督 | ロン・ハワード |
脚本 | デヴィッド・コープ アキヴァ・ゴールズマン |
出演者 | トム・ハンクス(ロバート・ラングドン) アイェレット・ゾラー(ヴィットリア・ヴェトラ) ユアン・マクレガー(カメルレンゴ) ステラン・スカルスガルド(リヒター隊長) ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ(オリヴェッティ刑事) ニコライ・リー・コス(暗殺者) |
映画「天使と悪魔」のあらすじ・内容
教皇の死去に伴い、カトリック教会の総本山・ヴァチカンでは新しい教皇を選出するためのコンクラーベが行われることになっていたのですが、最有力候補者だった4名の枢機卿たちが誘拐・殺害予告される事件が発生してしまいました。
誘拐犯は教会に迫害された科学者たちが創設した秘密結社・イルミナティ。
イルミナティはさらにとある研究所から反物質も盗み出しており、午前0時直前に枢機卿だけでなく、ヴァチカンもろとも消し去るという犯行予告を送りつけてきました。
その事件解決のために協力を要請された宗教象徴学者であるロバート・ラングドン教授は、犯行予告を元に枢機卿と反物質を取り戻そうとするのですが、そんな事件最中にも関わらずコンクラーベが始まってしまい…。
映画「天使と悪魔」のネタバレ感想
シリーズ作品ではあるもののテーマや相棒、展開が違うためか、シリーズ関係なく1つの作品として純粋に楽しめるような作品になっていて、今作からでも観やすいような作品になっていました。
ただラストがイヤミス系の胸糞悪いエンディングになっているので、苦手な方は多いかもしれませんね。
ミステリーメインのストーリー
前作のダ・ヴィンチ・コードが宗教×歴史がテーマのストーリーだったのに対し、今作では宗教×科学をテーマにしているもののそこまで主張されていないためか、あくまでもミステリーがメインのストーリーになっていました。
正直、前作に比べると宗教的な要素は弱いです。コンクラーベ・教皇の話がストーリーの核になってはいるのですが、そこに秘密結社イルミナティや反物質などの多くの要素が絡み合ってしまっているので、前作の聖杯といった1つのテーマで繰り広げるストーリよりかは宗教色が薄くなっていたように感じました。
かといって科学的な要素が強いかと言われるとそうでもなく、反物質やガリレオが絡んできているものの、ストーリーの中でメインになる感じはありません。
宗教VS科学といった2つの存在が戦う「造られた戦争」という図は面白いのですが、メインテーマとなるほど主張が強くなかったというか、前作に比べるとその辺りは思っていたよりもあっさりと過ぎ去ってしまっているように感じました。
その代わり、ミステリーメインのストーリーになっていて非常に面白かったですね!
前作を視聴済みのため、味方キャラクターが裏切りそうな予感がして疑ってしまうし、それを抜きにしてもイルミナティというどこにでも潜入する秘密結社の存在があるからこそ、全ての人物が敵なのではないかと疑いを持つようになり…。
全員が怪しく見えるからこそ、犯人を探し出すミステリー作品としては多くの魅力が詰まっているような、最後に向けてストーリーをしっかりと盛り上げてくれているようなミステリー作品になっていました。
前作の宗教・歴史系の話が苦手だったという方、ミステリー好きな方であれば今作の方が観やすい作品になっているかもしれません。
続編だけど前作との繋がりはなし
「ダ・ヴィンチ・コード」から続くシリーズ作品になってはいるのですが、主人公こそ継続されているもののテーマ・敵・相棒・事件が違っているので、前作からの繋がりはほぼありませんでした。
主人公であるラングドン教授はさすがにそのままなのですが、前作でラングドンの相棒として行動を共にしていたヌヴーは今作では一切登場せず、新しい相棒としてヴィットリアが登場します。
舞台が違うためファーシュ警部も登場せず…、前作から継続して登場しているのはラングドンのみです。なので、シリーズ関係なく今作から観始めても問題なさそうです。
前作から登場しているラングドンに関しては序盤で簡単な紹介があるので、大学教授(学者)ということさえ分かれば、ストーリー的には前作を観ていなくてもそこまで問題はないと思います。
また、冒頭のヴァチカンに向かう前、協力要請に来た警察官と話しているときに少し前作での話が出てきますが、前作を観ていた方が理解しやすくなる程度なので、今作を観る上では分からなくも問題はないです。
ストーリー的に、神や幽霊よりも怖いのは人間という点は変わっていませんでしたね。
神に仕えている信心と信念をもった人間が自分の想いを貫き通すために人を殺していく、味方のフリをして近付き最後には裏切る、そんな人間の腹黒さや胸糞悪さが描かれている点に関しては変わっていません。
なので、前作の人間の裏切りや胸糞悪さが好きだった方であれば、今作も気に入るという方が多いのではないかなと思います。
今作もじっくりと観ないと難しい
前作もそうでしたが今作もながら観には向かず、じっくりと観て、じっくりとセリフを聞いていないと理解しにくい部分が多いような映画になっていました。
個人的には、前作以上に分かりにくい部分が多かったです。前作に比べると登場人物が多い分、それぞれの役職や関係性、名前を覚えるのが少し面倒に感じてしまう部分もありましたし、敵に関してはイルミナティという名前は序盤で出てくるものの、目的が最後までハッキリとしないためにイマイチ理解しにくかったですね。
前作の宗教×歴史は個人的に好きなジャンルでしたし、登場人物も少なく、自分たちと敵の目的もハッキリしていたので真剣に聞けば理解しやすいようになっていたのですが、今作は真剣に聞いていても「ん?」となってしまう部分が多く、理解するのに時間がかかりました。
私のように理解しにくい部分が多かったという方は、ぜひ1度サラッと視聴してみて結末を知った上で、2巡目に細かい部分を確認しながら観ていくのがおすすめです!
そうすることで重要な人物が誰なのか、どこに伏線があったのか、展開を確認しながら観ることが出来るので、1回で完全に理解しようとするよりも簡単にスッキリと理解しやすくなりますよ。
ラングドンとヴィットリアのコンビも良い
前作の女刑事・ヌヴーと大学教授・ラングドンのコンビも凸凹なようでマッチしていて好きだったのですが、今作の研究者・ヴィットリアとラングドンのコンビも良かったですね。
科学と宗教、研究している物こそ違う物の似た者同士で、でも性格は正反対でヴィットリアの勢いのある自由奔放さに戸惑い振り回されるラングドンといった、似ているようで凸凹なコンビのバランスが良くて、観ていて笑えるシーンが多かったです。
ガリレオの貴重な資料をビッと破いて持ち出したり、そのことをラングドンがずっと「彼女(がやったん)だ」と言っていたり…、「新婚夫婦のフリしないと」と手を繋いでいるシーンなどは、緊迫した状況にも関わらずクスっと笑えるような微笑ましさがありました。
このヴィットリア役の女優さんの知的で自由奔放な雰囲気、強気な性格によく合う美貌がヴィットリアというキャラクターにピッタリで、だからこそラングドンとのコンビも余計に相性良く見えたのかもしれませんね。
いい意味で前作と似ているようで違う相棒になっていて、前作を観ていても観ていなくても楽しめる相棒で良かったなと思います。
アドベンチャー・怖い要素が強い
前作よりもミステリー要素が強くなっているだけでなく、今作ではアドベンチャー要素や怖い要素も強くなっているように感じました。
前作では移動方法こそ斬新な乗り物・展開が多く、移動時間自体は短かったのでそこまでアドベンチャー要素を強くは感じなかったのですが、今作は移動方法が車移動メインで普通なものの、1つ1つの移動シーンが長くなっているためかアドベンチャー感を強く感じましたね。
また前作が敵から逃げながら暗号解読をしていたのに対し、今作では敵を追っていく形で真実に迫って行ったり、敵からの攻撃で死にかけたり、制限時間内に敵を捕まえられなければ爆発というタイムリミットがあったのも、アドベンチャー要素を強く感じた要因かもしれません。
そして今作は殺害方法が前作に比べてエグいので、人によっては怖いと感じるかもしれないシーンが多かったです。
全員の胸に焼き印が押されていて、1人は地下に放置されて腐りかけの遺体をネズミがかじっている状態で発見され、1人は肺に穴を開けられた状態で放置され、1人は火あぶりにされた状態で放置。
映像はそこまでガッツリと映されているわけではないのでグロイというほどではないのですが、雰囲気が映画『ソウ』とか『サイレントヒル』に近いものがあるのでエグく、人によっては怖いと感じる映像になっているかなと思います。
そういったのが苦手な方だと、今作は苦手な映画かもしれません。
【解説】被害者・救世主が犯人という展開
被害者・救世主が実は犯人だったという展開、そしてそれが分かった後のラストの展開は非常に胸糞悪いものになっていました。
4人の枢機卿誘拐殺人事件が終わったと思いきや最後に殺されかけてしまい、傷を追いながらも何とか生き延びたあとは、自分の命を捨てる覚悟で反物質を持ち出して空高く飛び、ヴァチカンと民衆を救おうとする…何とも救世主らしいキャラクター。
この作品においてそんな救世主キャラクターは怪しいなと思って観ていたら、やはり彼が犯人で、全ては彼の計画・狂言でした。
個人的には彼が犯人だったこと以上に、狂言だったという部分に驚きましたね。
彼はイルミナティなどではなく、ただ宗教のために狂ってしまった人物で、イルミナティのことは全て狂言だったというのが面白くて、大きな犯罪を犯しているにも関わらず1人で計画して、大きな犯罪を犯している割には小さな犯行動機というのが個人的に好きでした。
印象としてはアニメ『名探偵コナン』『金田一少年の事件簿』に近い雰囲気があって、何とも狂気や胸糞悪さを感じるような犯人像で良かったと思います。
【解説】イヤミス感のあるラスト、胸糞の悪い結末が良い!
被害者・救世主と思われた人物が犯人と言うだけでも十分胸糞悪い結末なのですが、今作はその後に続く展開も何とも胸糞悪いものになっていて、イヤミス好きな人にはたまらないラストになっていました。
カメルレンゴが犯人と分かった後、すぐに逮捕するのではなく警察がじわじわと追い詰めるように追い込んでいき、最後にはカメルレンゴは焼身自殺してしまうという…警察の動きもカメルレンゴの動きも実に狂気的。
そして正義のために動いていた人々は特に語られることなく亡くなってしまい、悪であるカメルレンゴの死は美談として民衆に語られていく…何ともやりきれないものがありました。
新教皇が決まった後に教授に手渡されていた持ち出し禁止の本も、個人的には全てを黙っていろという賄賂にしか見えませんでしたし…。
枢機卿が1人生き残り、新しい教皇になったことで全ては丸く収まったように見えますが、それも誘拐事件が起こったからこそ、彼だけが生き残ったからこそ選ばれたのかと思うと、何ともハッピーエンドとは言い難いものがありました。
個人的にはイヤミス作品大好きなので胸糞悪さの残る良い結末だったと思いますが、人によっては受け付けない作品になるかもしれませんね。
映画「天使と悪魔」の考察
作品のイヤミス感がさらに増すように、新教皇となったルカという人物について考察していきます。
あくまでも個人的な考察なのでこれが正解というわけではありませんが、参考程度に見て頂けると幸いです!
新教皇・ルカという人物について
新教皇に選ばれたのは噴水で溺死させられそうになっていた枢機卿。
ラングドンが助けたことによって九死に一生を得た彼ですが、実は彼自身もカメルレンゴのように被害者を装った犯人の1人だったのではないでしょうか。
彼が1番助かる可能性の高い4番目の被害者だった点。
溺死という死ぬまでの猶予がある・無傷で生き残る可能性のある殺害方法だった点。
自分たちが監禁されていた場所を知っていた点。
暗殺者が「宗教がらみの連中は、みんな俺に頼ってくる」「依頼は色んな宗教の関係者から来るがね」と言っていた点。
以上のことから、元々はルカが暗殺者に他の3人の枢機卿を殺害するように暗殺者に依頼を出しており、その後にカメルレンゴが4人全員の殺害計画を依頼してきたために、ルカがカメルレンゴの計画に乗っかり被害者のフリをして、自分1人だけ助かるように計画していたのかもしれない可能性が出てきます。
暗殺者は仕事に誇りを持っていそうなタイプでしたから、おそらく最初の依頼を優先して最初の依頼者であるルカにカメルレンゴの依頼内容を伝えていたと思いますし、同じ依頼内容で2つ分の料金を得ることができるのですから暗殺者にとってはお得。そしてルカは誘拐されながら自分だけが生き残ることで、新教皇への道を確実なものにすることができますからお得。2人の利害が一致したことで実現した二重暗殺計画ですね。
全てが計画の内だったとするのであれば、もしかしたら最後に暗殺者を殺害したのはカメルレンゴではなく、ルカの方だったのかもしれません。監禁場所を話すことで彼が逮捕されれば良し、もし逃げた場合には爆弾で死ぬように仕組んでいたのかも…。
こう考えると結末の胸糞悪さがさらに増すので、個人的にはこうであればいいなと思っています。
イヤミス系の映画が好きな方におすすめ!
シリーズ作品でありながら前作とは違ったテーマやキャラ、敵、事件を描いた作品になっていて、シリーズ関係なく今作からでも十分楽しめるような作品になっていました。
前作とは違ったイヤミス感の強い結末も大きな魅力となっているので、イヤミス系作品がお好きな方は、前作を知らなくても楽しむことが出来るのでぜひぜひチェックしてみてください!
映画「天使と悪魔」の動画が観れる動画配信サービス一覧
配信状況 | 無料お試し | |
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※2019年9月現在の情報です。
「イヤミス」という言葉をドヤ顔でくどいほど連発しているけど、一般的には浸透していない言葉だよ…。だっさ。
というコメントをする自分が一番ダサいのであった…。