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『サイコパス SS Case.2 First Gurdian』ネタバレ感想・解説・考察!アニメ一期の過去部分が初めて明かされる

征陸の生き方はこの時点ですでに確立されていた

映画『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.2 First Gurdian』は、TVアニメとして放送されたサイコパスの劇場版第三作にあたる作品で、同時に三部作として作られた「Sinners of the System」の第二作に相当します。

本作はこれまで時系列順に進んでいた作品と毛色が異なり、アニメ一期で描かれた以前の時間を舞台にしているという点が大きな特徴です。

映画の放送時間が60分であり、メインに取り上げられるキャラもサイコパス世界線ではすでに故人であることから、本作は実質的にスピンオフの要素が強いように感じます。

今回はそんな『Sinners of the System』の個人的な感想や考察を書いていきます!なお、ネタバレには注意してください。

目次

映画『サイコパス Sinners of the System Case.2 First Gurdian』を観て学んだこと・感じたこと

・征陸の活躍は魅力的だがやはり物悲しい
・本作も日本で取りざたされている社会問題について学べる
・サイコパスの物語に繋がる過去の部分を把握できる

映画『サイコパス Sinners of the System Case.2 First Gurdian』の基本情報

公開日2019年2月15日
監督塩谷直義
脚本深見真
出演者須郷鉄平(東地宏樹)
征陸智己(有本欽隆)
青柳璃彩(浅野真澄)
大友逸樹(てらそままさき)
大友燐(大原さやか)
狡噛慎也(関智一)

映画『サイコパス Sinners of the System Case.2 First Gurdian』のあらすじ・内容

映画『サイコパス Sinners of the System Case.2 First Gurdian』のあらすじ・内容

常森朱が公安に配属される四年前の2112年。当時は、軍関係者であってもその詳細を知ることが難しい「フットスタンプ作戦」が実行に移されていました。

そこで国防軍のエースパイロットとして作戦に参加したのが須郷鉄平で、後に公安局でドローン関係の役割を担当することになる人物です。

作戦は国防軍の思惑どおり進行していきましたが、計画から三か月後に無人のドローン兵器が同省を攻撃するという事件が発生します。

事件の全貌を解明するべく軍基地を訪れたのが、執行官として捜査を担当した征陸でした。彼は須郷や青柳とともに調査を実行に移していきますが、その中で「フットスタンプ作戦」の真実が明らかになっていくのです…。

映画『サイコパス Sinners of the System Case.2 First Gurdian』のネタバレ感想

深見真によって手掛けられた時系列の過去を描く物語

深見真によって手掛けられた時系列の過去を描く物語(C)サイコパス製作委員会

本作は、冒頭でも述べたようにアニメ一期の舞台となった2116年から四年をさかのぼった2112年が舞台の映画です。そのため、アニメ作品としては初めて時間軸を過去に置いた形で物語が展開されていきます。

作中ではすでに殉職してしまった征陸や、エースパイロットという過去がありながら執行官の立場になっている須郷など、「現在」を知っている我々からするとその行く末が分かっている状態で映画を視聴することになります。

こうした背景があるためか、本作の脚本は『Case1 罪と罰』で脚本を担当した吉上亮ではなく、アニメ一期・二期および劇場版で脚本としてストーリー構成に貢献し続けてきた深見真がふたたびクレジットされています。やはり、既存のキャラに関する過去編を描く人物としては、これまでの物語を作り上げてきた人選が最適であると判断されたのでしょうか。

そして、この「過去」を描くという部分が我々としては複雑な心境になるわけで、特に征陸の最期に関しては印象に残っているファンが大半でしょう。未来では殉職する彼が刑事らしい洞察力を武器に活躍しているのは嬉しい一方で、避けられない行く末を思うと悲しい気持ちにもなるのです。

 

この点に関して、後で取り上げる主役級の征陸と須郷以外にも、青柳の物語に関しては触れておく必要があるでしょう。当時も監視官の立場にあった青柳は、彼らの捜査に協力する人物の一人として描かれていました。しかし、本作の1年後にあたる時系列を描いたノベライズにおいて、彼女は恋愛関係にあった執行官の神月凌吾を自らの手で殺害しています。それでもあくまで監視官として犯罪係数を上昇させることなく、任務に就き続けていた彼女ですが、最終的に自身もまた執行対象として処刑されてしまうのです。

もっとも、青柳の執行に関してはあくまで死の寸前なっても被害者らを守ろうとしていたこともあり、精神を考えれば間違いなく「善良」な人物であったことは間違いありません。そんな彼女が処刑されなければならない理不尽さを描く物語としての側面がアニメ二期にはありましたが、やはりこのことを思い出すと本作を見ながら胸が苦しくなってしまいます。

ただし、全体を通じて「悲しい気持ちになる」ことはある一方、それは必ずしも脚本の失点ではありません。むしろ、我々ファンの思い入れを絶妙に刺激してくるからこその動揺なのであって、キャラの魅せ方は非常に上手いと考えられます。サイコパスシリーズの中ではキャラに重点を当てた映画であることは事実で、登場人物の中にかねてから好きなキャラが存在すれば必ず映画を楽しむことができると思います。

征陸の生き方はこの時点ですでに確立されていた

征陸の生き方はこの時点ですでに確立されていた(C)サイコパス製作委員会

アニメ一期では「とっつぁん」として親しまれ、ベテランの刑事らしい能力と経験を存分に発揮した征陸。その彼は、当然ながらこの時期から既に優秀な執行官でした。警視庁出身者らしく証拠や状況などから推理を組み立てていく姿は、外見と相まって往年の刑事ドラマを彷彿とさせます。老齢に差し掛かりながらもアクションのキレは抜群で、執行官としてまだまだ現役であることがよくわかりました。

また、一期でも描かれていた部分ではありますが、自分自身がシビュラシステム導入時に「潜在犯」として扱われたことから、息子の宜野座に多大な迷惑をかけたことを深く認識しており、作中では「息子のためなら何でもする」と父親らしい愛情を見せてくれます。もっとも、皆さんもご存知のように宜野座は彼の存命中一貫して否定的な態度をとっており、その愛情に見返りはありませんでした。

 

そして、息子に向けた父としての決意は皮肉にも彼の最期に果たされることになってしまいます。槙島がテロを試みた際、それを防ごうと攻勢を仕掛けた宜野座が命の危機に瀕したタイミングで彼を救って致命傷を負ったことはよく知られていることでしょう。その後、死の間際になって宜野座と和解を果たし、彼は息子の手の中で息を引き取っています。征陸の死後は彼のへの評価が和らぎはじめているようで、父に似ている目元を隠すための眼鏡をはずし彼が愛した酒をたしなむようになるなど、征陸は尊敬を得ることができたのでしょう。

ここを整理していくと分かりますが、彼の息子に対する愛情はすでに本作の時点で確立しており、まさしく「有言実行」を果たしたことになります。もともと征陸は非常に好きなキャラクターであっただけに、個人的には劇場で息子に対する思いと決意を語る彼の姿に思わず涙したことをよく覚えています。

そして、前作では彼が命を賭して守った宜野座が執行官として、上司として、人間として成長しているところをスクリーンで見ていたこともあって、彼の犠牲は決して無駄ではなかったことを実感しました。恐らく筆者のような感想を持たせるためにあえて時系列的には未来の話となる前作を先んじて公開したのでしょうが、この配置によって本作および前作の魅力が数倍増しになっているような気さえしています。

【解説】「他人を犠牲に生きること」の責任と受け止め方を明確に描き出している

【解説】「他人を犠牲に生きること」の責任と受け止め方を明確に描き出している(C)サイコパス製作委員会

本作において、主役格の須郷はパイロットとして知らず知らずのうちに大量虐殺に関与してしまい、彼は終始その責任に苦しむことになりました。特に、フットスタンプ事件を追っていく中で、黒幕である燐にさえ「あなたは軍人には向いていない」と指摘されています。もちろん、彼女の言葉は須郷の人格を否定するものではなく、彼は憎むべき立場の軍人としては善良すぎるため、心から軍を退いてほしいという思いからきているものなのでしょう。

そして、敬愛する上司と大量の人民を手にかけた須郷は軍をやめ、ドローン関係の研究所で働いたようです。もっとも、事件の影響からか潜在犯として認定され、二期の時点では執行官としての立場に置かれています。

 

さらに、この須郷や本作を語るうえで欠かせないのが二期における彼と青柳の行動でしょう。敵の策略によって犯罪係数を大幅に上昇させてしまった青柳を、須郷はそれが誰だか分からない状態で執行してしまったのです。これにより青柳は跡形もなく消し飛んでしまい、彼はふたたび「上司殺し」の汚名と責任を背負うことになります。

それでも、彼は少々の休息を挟んだのち、執行官として現場に復帰しています。この点は本作で須郷の過去を描いたことにより「彼の精神的な成長」を感じられる描写に変化したといっても過言ではありません。本作で数々の責任や罪と対峙し、紆余曲折あってそれを乗り越えたという結果が映し出された姿であると考えられるからです。

個人的にはこのことを「成長」と形容できるかは微妙であると感じています。実際、客観的に考えて無自覚とはいえ、他人を殺めた人間であればふさぎ込むのは当然のことであり、潜在犯になってしまったとしても仕方がないと思います。しかし、それを比較的容易に乗り越えてしまうあたり、彼もまた「サイコパス」へ着実に近づいているという解釈も可能でしょう。したがって、執行官としては成長を見せた一方、人間的には感受性が衰えたという見方もできるでしょう。

ちなみに、須郷が青柳を撃ち殺したことで、彼女は「自分自身の手で同僚であり恋人でもある人物を執行」したうえで、「自分自身も部下の手で処刑された」人物ということになります。このあたりは本作を取り巻く世界観がどれほど厳しいものであるかを象徴しており、監視官や執行官は世の中における「負の側面」を押し付けられた末の存在であることがよくわかるのではないでしょうか。

【考察】ドローンや米軍基地といった社会問題を比喩している

【考察】ドローンや米軍基地といった社会問題を比喩している(C)サイコパス製作委員会

シリーズを通して常に「イエスオアノー」で容易に応えることができない根の深い問題を取り上げ、アニメという世界で表現し続けてきたサイコパス。そして、その例に漏れず本作もいくつかの現代的な社会問題を取り上げています。

まず一つは、国防省を襲撃したドローンに代表される「ドローン問題」です。劇中では無人兵器として明確な悪意をもって運用されており、ドローン専門の研究員が確認されるなど利便性・脅威度ともに現代のそれとは比べ物にならないのでしょう。

つまり、本作が描き出しているドローン問題のそれは「我々の未来に起こり得る事態への問題提起」という見方をすることができます。実際、すでに各国でドローンをめぐる問題が頻発しており、日本においても法整備が着々と進んでいます。

もちろん「空中を自由に飛行する物体そのものが危険である」といった直接的な問題もあります。ただ、本作で取り上げているような問題はむしろ「国家の安全保障を脅かす存在」としてのドローンでしょう。サイズも小さく操作も容易なうえに、小型のカメラや発信機を取り付けることも容易な機器は、国の機密情報を盗み出すのにこれ以上最適なものはありません。実際、アメリカは中国のドローン技術を警戒しているとされ、同国の大手ドローンメーカーに対する取引の停止を示唆しているという報道もあるくらいです。

このように、本作で描かれるドローンの存在は明らかに現実とリンクした形の問題提起であると考えることが可能です。

 

また、本作の舞台は「沖縄」で、さらに国防省とはいえ「基地問題」がテーマとして取り上げられていました。これは明確な言及こそありませんが、日本における在沖縄米軍問題を比喩していると判断するのが自然です。

実際、政治家は「県外移設」を公約に掲げていましたが、政権交代や情勢の変化などで普天間から辺野古への移設にとどまってしまうという見方が一般的です。これに地域住民は猛反対しており、日本においてトップクラスに左派が強い県になっているのは報道などで指摘されている通りです。

そして、本作が最も指摘したかった点は「基地の存在による住民への被害」という点ではないでしょうか。作中では、沖縄が戦場と化した結果、須郷による住民や軍関係者を巻き込んだ大規模な殺人が発生してしまいました。映画では住民の被害はそれほど強調されませんでしたが、ここには「アメリカの最前線になったら沖縄もこうなってしまうかも」という製作陣からのメッセージが込められているような気がします。

個人的な米軍基地への賛否は控えさせていただきますが、映画からはそういう思想を感じ取ることができました。

「確定した過去」を知ることができたのはファン冥利に尽きる

「確定した過去」を知ることができたのはファン冥利に尽きる(C)サイコパス製作委員会

ここまで、本作の見どころや解説を書き連ねてきました。その評価としては、個人的にここまで公開されてきたサイコパスの映画では一番の出来なのではないかと感じました。やはり、これまでも書いてきたようにアニメ一期への思い入れが強い筆者としては、征陸や公安の過去を知ることができたのは満足がいく内容で、良作の部類に入るのではないかと感じています。

もっとも、当然ながら不満点がないわけではありません。やはり「劇場版」をうたってしっかりと料金を徴収しておきながら60分という上映時間はファン泣かせだと思いますし、これまでの作品と比べると描いている社会問題もやや「ありきたり」感が否めなかったのは事実です。さらに、どこまでいっても過去編は過去編であり、どうしても結末が想像できてしまうのは好き嫌いの分かれるところでしょう。

ただ、それでも筆者のように高評価を下すファンは少なくないと思いますし、その分かれ目はキャラクターやサイコパスという作品そのものに対する思い入れの差なのではないでしょうか。特に本作は良くも悪くも「キャラ重視」の傾向があり、その部分に愛着を持てるか否かはかなり重要なファクターになっている気がします。

流石にいきなり本作からサイコパスの世界に触れる方は少ないと思いますが、そうなってしまうと作品の魅力を十分に楽しむことができないのは自明でしょう。したがって、「キャラ」をサイコパスの魅力と感じるか、「ディープな世界観」をそう感じるか、そのあたりは自分なりに整理をしておくと映画との相性が分かってよいでしょう。

 

ちなみに、本作のようにアニメ一期以前の過去部分を知ることのできる作品は、本作のほかに、吉上亮が執筆した『PSYCHO-PASS ASYLUM』シリーズや同著『GENESIS』シリーズ、桜井光の『追跡者 縢秀星』など、全てを挙げていくとキリがないほど多数の外伝作品に衆力されています。

流石に全てを追っていくのは大変だと思いますので、まずは本編を視聴してみて「この人物が好き」や「過去を追ってみたい」というキャラができた後、該当する人物にまつわるエピソードを収録したノベライズ作品をお楽しみになってみることをオススメします。

(Written by とーじん)

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