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『Fate プリズマ☆イリヤ プリズマ☆ファンタズム』ネタバレ感想・解説・考察!ファンタズムの名を冠したギャグ作品だが…

キャラの出番に偏りが生じており、特にイリヤの出番が限られている

映画『Fate/kalaid liner プリズマ☆イリヤ プリズマ☆ファンタズム』は、FGOなどでおなじみのFateシリーズを原作としたスピンオフ作品をさらにアニメ化した映画です。すでに本作のみのアニメ化は4期を数え、位置づけとしては外伝ながら非常に高い人気を誇ります。

さらに、2017年には「雪下の誓い」という劇場版作品も公開されており、本作以前にも映画化を経験しています。ただし、本作との大きな違いは前作がプリズマイリヤシリーズの本筋を描いた作品であるのに対し、本作は徹底したギャグ調の外伝作品であるという点です。

もともとプリズマイリヤシリーズもFateの本編よりはいくらか明るい世界観を描いていますが、本作はそれに輪をかけた形になります。最近はシリアスなシーンも増えつつあったので、プリヤのギャグを楽しみにしていた型月ファンの筆者に見ない手はありませんでした。

今回はそんな『Fate/kalaid liner プリズマ☆イリヤ プリズマ☆ファンタズム』の個人的な感想や考察を書いていきます!なお、ネタバレには注意してください。

目次

映画『Fate/kalaid liner プリズマ☆イリヤ プリズマ☆ファンタズム』を観て学んだこと・感じたこと

・キャラの出番そのものにやや偏りが…
・ギャグそのものもやや冗長に感じられたかも
・「桜の兄」に関連するシーンはよくできていた

映画『Fate/kalaid liner プリズマ☆イリヤ プリズマ☆ファンタズム』の基本情報

公開日2019年6月14日
監督大沼心
脚本井上堅二
水瀬葉月
出演者イリヤスフィール・フォン・アインツベルン(門脇舞以)
美遊・エーデルフェルト(名塚佳織)
クロエ・フォン・アインツベルン(斎藤千和)
森山那奈亀(伊瀬茉莉也)、嶽間沢龍子(加藤英美里)
栗原雀花(伊藤かな恵)

映画『Fate/kalaid liner プリズマ☆イリヤ プリズマ☆ファンタズム』のあらすじ・内容

映画『Fate/kalaid liner プリズマ☆イリヤ プリズマ☆ファンタズム』のあらすじ・内容

プリズマイリヤのキャラクターたちが総集結し、ドタバタのコメディを繰り広げる「もう一つの世界」。

内容は数々の短編から構成され、平行世界や作中の関係性などがごちゃまぜになった状態で作品が展開されていきます。

言峰のラーメン屋・ルビーが選んだ少女をめぐるifストーリー・全力缶蹴り…など、プリズマイリヤのファンであればフフッと笑えるコメディが目白押し。果たして、この作品は収拾がつくのでしょうか?

映画『Fate/kalaid liner プリズマ☆イリヤ プリズマ☆ファンタズム』の感想

【解説】「ファンタズム」シリーズとTYPE-MOONのコメディ作品には歴史がある

【解説】「ファンタズム」シリーズとTYPE-MOONのコメディ作品には歴史がある(C)2019 ひろやまひろし・TYPE-MOON/KADOKAWA/Prisma☆Phantasm製作委員会

まず、本作のタイトルにある「ファンタズム」の文字を見ただけで、プリヤシリーズを生み出した制作会社TYPE-MOON(型月)のファンであれば映画の内容を大方想像することができます。その理由は、かつてプリヤシリーズの原作である「Stay/Night」や、同社が発売していた「月姫」というゲームのキャラを一斉に登場させたコメディ外伝『カーニバルファンタズム』が人気を博していたからです。

同作は、普段「サーヴァント」や「魔術師」という超常の存在に囲まれつつ、生死をかけて戦うキャラクター達をその世界観から完全に分離させ、いわゆる「ギャグ時空」に放り込むことによって笑いを生み出した作品でした。本編では恐ろしいキャラクターも同作では全開でコメディを見せつけ、そのギャップからかなり人気を博しました。したがって、先ほど触れた「ファンタズム」の文字からギャグ調の内容を予想することができたのです。

 

また、型月の「ギャグ」に関しては、なにも『カニファン』が初出ではありません。基本的にゲーム本編はシリアス色が強いものの、むしろファンディスクや外伝作品では積極的にギャグを取り入れる作風が売りでした。この部分は今でこそ商業的にも大成功を収めていますが、一昔前の型月は「人気同人サークル」であり、いわゆる「同人屋」的な色彩を強く持っていたためです。

ちなみに、そもそもプリヤシリーズに関連する発想は、ステイナイトのファンディスク「Hollow/Ataraxia」において既に登場していました。ゲーム内のとあるイベントで凜が「カレイドステッキ」を手にしてひと騒動を起こすというものがあり、このあたりから「魔法少女もの」へと設定がつなげられたのでしょう。

まとめると、今でこそ大手の一大エンタメ会社へと成長した型月は、かねてより「ギャグ調の作品」を非常に好む傾向があったといえるでしょう。そのため、本作のリリースはファンにとって特に驚くべきものでもなく、かえって「型月らしいなあ」と思わされる作品となっています。

キャラの出番に偏りが生じており、特にイリヤの出番が限られている

キャラの出番に偏りが生じており、特にイリヤの出番が限られている(C)2019 ひろやまひろし・TYPE-MOON/KADOKAWA/Prisma☆Phantasm製作委員会

ここからは本作の評価に入っていきたいのですが、出来に期待していたファンの一人として率直に感想を述べると、決して手放しで褒められる作品ではありませんでした。そう感じた理由はいくつか列挙できるのですが、まずは「キャラクターの出番に偏りが生じすぎている」という点を指摘していきたいと思います。

本作においては、制作側からも「プリヤシリーズのキャラクターが総集結!」という宣伝がなされていました。結論からいえばその言葉に嘘偽りはないものの、肝心の主要キャラクターがかなり出番を抑えられていたのが気になります。

 

そもそも、本作は劇場公開される作品でありながら、放送時間が63分とかなり短めに設計されています。それにもかかわらず言峰や慎二の出番にはかなり多くの尺が割かれており、恐らくイリヤや美遊に関しては描いている時間的な余裕がなかったのでしょう。また、本作の位置づけは外伝作品ですし、本編で出番が限られているキャラクターを優先的に活躍させようという意図はわからないでもないです。

しかし、それを踏まえたとしてもこの出番格差にはやはり不満が残ります。本作にはある種の「キャラアニメ」的な側面があるのは誰もが認めるところでしょう。実際、本編作品におけるイリヤの人気に乗じて制作された作品であることは明らかで、当然ながら彼女を中心とした魔法少女組の活躍を楽しみにしているファンのほうが多いはずです。しかし、ふたを開けてみれば彼女たちの活躍がほぼ見られないのですから、それは不満につながっても致し方ないでしょう。特に、宣伝の段階から「総集結」をうたっているため、事前にその情報を察知することは困難です。

このあたりの改善はそれほど難しくなかったはずで、出番をもう少し公平に近づけることは出来たはずです。もっとも、それが実行されなかった理由としては「ギャグ展開の作りやすさ=出番格差」の式が成立していたためではないかと推測できます。例えば、言峰に関してはお馴染みの「麻婆豆腐」ネタを繰り返すことで尺が確保できますし、慎二に関しても設定が固まっているためギャグ展開を作りやすいという事情は理解できます。

個人的にはギャグアニメで製作上の都合を感じさせる作品はいい作品ではないと感じているので、上記を踏まえてもなお不満は残ります。さらに、言い方は悪いですがこうした「手抜き感」は、ギャグそのものの完成度にも悪影響を及ぼしているように感じました。

肝心のギャグがやや冗長で「カニファン」には遠く及ばず

肝心のギャグがやや冗長で「カニファン」には遠く及ばず(C)2019 ひろやまひろし・TYPE-MOON/KADOKAWA/Prisma☆Phantasm製作委員会

前の項で、本作の「ギャグ」に関する不満を少しだけ述べました。ここからは、その点をさらに深く考えていきたいと思います。

そもそも、本作における「ギャグ」はどのようなものが多かったでしょうか。これを文章で説明することはなかなか難しいのですが、一言でいえば「パロディ」「ギャップ」「イジリ」あたりが中心になっていました。要点だけを抜き出すと今までの型月ギャグとそう変わるところはなく、筆者が好きだったそれと大差はありません。

では、なぜ本作で展開されたコメディシーンはいま一つ笑いに繋がらなかったのでしょうか。その答えが隠れていそうな要素として、個人的には「ギャグの単調さ」と「値段に対しての内容」が挙げられると感じました。

 

まず、ギャグの単調さについては読んで字のごとく、という感じであまり説明することはありません。作中において何度もラーメンに顔を突っ込むシーンがありましたが、一発目の時点ではクスッとできたものの、繰り返し見ることで良さが出てくるような代物ではありませんでした。他にもいくつかギャグの冗長さを取り上げることは可能ですが、こと笑いに関しては「百聞は一見に如かず」ということで、あまり共感を得られないため割愛します。

やや単調なギャグはやがて冗長さにつながり、そこでふと「出番の格差」や「ギャグ展開を作りやすいキャラ」といった点が気になってしまうのです。先ほども述べましたが、本作中だけでなく型月作品は全体的に「同じネタ」を繰り返す傾向にあり、もしかすると『カニファン』を見ていたころに面白かったうえに本作でリピートされたネタも、そのネタそのものに飽きが来ているということなのかもしれません。考えてみれば本作が『カニファン』の二番煎じであることは否めず、ファンとして長年型月作品を楽しんでいることが逆に良くない方向へ作用してしまったのかもしれません。

ただし、もう一つの不満である「値段に対しての内容」という点に関しては、先のものよりもずっとわかりやすいかと思われます。そもそも本作は、60分そこらの尺でありながら通常の映画鑑賞料金と変わりません。そのうえ内容もギャグ中心で本編に関わっていないということを考えれば、劇場で公開せずにOVAとして販売すればよかったのではないか、と思わされます。

実際にOVAとしての販売計画もあるようですが、劇場作品としては実に中途半端な出来にあると言ってしまってよいでしょう。同じ短い尺の映画として同時期に公開された『ガルパン』と比較すると、同じ値段でも明らかに満足度の差が生じてしまいました。

桜の兄「慎二」をめぐるストーリーには一見の価値あり

桜の兄「慎二」をめぐるストーリーには一見の価値あり(C)2019 ひろやまひろし・TYPE-MOON/KADOKAWA/Prisma☆Phantasm製作委員会

ここまで本作に対していくらか否定的な評価が目立ってしまいましたが、もちろん見どころがないわけではありません。個人的に面白かったと感じたのは、桜の兄である慎二が更生するために様々な仕事に挑戦するという一連のシーンです。

この流れは、正直に言って真新しいものではありません。過去にも慎二をイジる展開は何度も見てきましたし、外伝作品に至ってはもはや「ギャグ要因」といっても差し支えないでしょう。しかし、それでもなお素直に「面白い」と感じたこともまた事実なのです。

内容としては慎二が各所で仕事をこなしつつ、それなりに上手くやるものの最終的には書くことが憚られるような実にくだらない下ネタを叫ぶというオチが待っています。単純に仕事をこなしていくシーンもよくできていたのですが、個人的に好みだったのは「慎二がそつなく仕事をこなしている」という点です。

どうしてこの点を強調するかというと、本編において慎二が一見すると「無能」に描かれているものの、よく観察していくとそれが正しいとは言い切れないという設定をうまく反映しているからです。そもそも、本編の慎二は言うなれば「かませ犬」的な立ち位置にあり、魔術一族に生まれながら能力の低い出来損ないとして描かれていました。しかし、その一方で魔術以外の側面に関しては人並み以上の才覚があったようで、作中でも弓道を上手にこなし女子からの人気も決して低くはありません。

 

ただ、いかんせん魔術の才能がすべての世界観において、彼の能力不足は致命的でした。想像ではありますが幼いころから「魔術」に対する劣等感に悩まされ、性格がゆがんでいってしまったのです。

本作で描かれている慎二の奮闘は、ギャグシーンながらも「あったかもしれない世界」、つまりパラレルワールドの設定をうまく生かしており、かつ原作をうまく補完する構成になっています。

こうした良さをギャグに隠れて発揮してくれたのはファンとして非常にうれしいものであり、本作における優れていた点として指摘することができるでしょう。ただ、こういうことができるのなら全編をもっと練り直してほしかったうえに、原作に思い入れがなければ無視しがちなシーンであるということを考えると、やはり賛否両論があるのは致し方ないのかもしれません。

【考察】プリヤの「ギャグ作品」と「カニファン」との決定的な差は作品のコンセプトにある?

【考察】プリヤの「ギャグ作品」と「カニファン」との決定的な差は作品のコンセプトにある?(C)2019 ひろやまひろし・TYPE-MOON/KADOKAWA/Prisma☆Phantasm製作委員会

いくつか褒められる点こそ存在したものの、本作の全体的な評価は決して高くありません。これは筆者だけでなくツイッターなどでの書き込みからもその傾向が感じられるので、個人差こそあれ世間的な評価もほぼ変わらないのでしょう。

では、結局これまで愛されてきた『カニファン』と同じようなことを繰り返したにも関わらず、なぜそうした評価に落ち着いてしまったのかを考えてみましょう。その要因として考えられるのは、そもそもの「原作」がもつ作風の違いなのかもしれません。

本作の原作は、「プリズマイリヤ」シリーズに他なりません。一応プリヤの原作がステイナイトであることを踏まえれば二次創作という見方もできますが、少なくとも本作の原作がプリヤであることに変わりはないでしょう。

そして、プリヤシリーズは何度か触れているように、原則として明るい世界観が売りです。そもそも「魔法少女もの」という点から着想が得られているように、あくまで緩い学校生活や日常風景が持ち味でした。それがしだいに原作のレベルでシリアス度が増していくことになったので、一見すればギャグの外伝は十分に成立しえます。

 

しかし、筆者の考えとして、プリヤシリーズのシリアスが好評な理由は「あの絵柄と世界観で熱いバトルを繰り広げている」という点にあると思うのです。一見すれば日常アニメにすら見えてしまうデフォルメされた絵柄ですが、その裏にある情熱がギャップとなって人気を博しているのだと、少なくとも筆者は解釈しています。

ここで何を言いたいかというと、本作が受けたのは「デフォルメでシリアスを展開する」というギャップであって、「デフォルメでギャグを展開する」というやり口では原作初期と何ら変わり映えせず、意外性を生み出せていないのではないでしょうか。むしろギャグに適した絵柄であることが、かえって「ありきたり」感につながってしまった可能性を指摘しておきます。

この良い反例となるのが、上記で何度も説明した『カニファン』シリーズです。この作品は本作と何ら変わらぬ要素を持っていることはすでに触れましたが、大きく異なる点は「原作のカラー」にあります。フェイトも月姫も、原作のレベルではバンバン人が死に壊れていくという、非常にダークな世界観が持ち味です。一見するとギャグの世界観には合わないように思われますが、むしろ「普段はギャグに適していない」からこそ、外伝としてコメディを制作した際にそのギャップが生きたのではないでしょうか。

したがって、上記の内容を一言でまとめると「ファンタズムの名を冠するが、カニファンとは別物の背景を持っていることが大きな違いである」と表現できるのではないかと思われます。

(Written by とーじん)

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