トム・クルーズ主演のSFアクション映画『オブリビオン』。SF映画としては割とありふれた設定から始まるのですが、観ていく内に印象がどんどん変わり、引き込まれるような魅力的なストーリーで考察も楽しくなるような映画でした!
今回はそんな『オブリビオン』についての詳しい感想と考察をご紹介していきます。
感想と考察ではネタバレを含みますので、映画ご視聴前の方やネタバレを避けたい方はご注意ください!
目次
映画「オブリビオン」を観て学んだ事・感じた事
・SFから始まるミステリーとアクション
・ハッピーエンドに見せかけた闇深いラスト
・考察を楽しみたい方におすすめの映画
映画「オブリビオン」の作品情報
公開日 | 2013年05月31日 |
監督 | ジョセフ・コシンスキー |
脚本 | カール・ガイダシェク マイケル・デブライン |
出演者 | トム・クルーズ(ジャック・ハーパー) オルガ・キュリレンコ(ジュリア) アンドレア・ライズブロー(ヴィクトリア) モーガン・フリーマン(ビーチ) メリッサ・レオ(サリー) |
映画「オブリビオン」のあらすじ・内容

2077年、エイリアンの攻撃を受けた地球は全壊。生き残った人類は他の惑星への移住を果たしましたが、ジャックとヴィクトリアは任務のために荒廃した地球に残り、ドローンの整備・採水プラントの監視などを行っていました。
そんなある日、ジャックは墜落した宇宙船で眠る美女・ジュリアと出会います。会ったことがないはずなのに見覚えのある女性、彼女もまたジャックの名前を呟きました。
彼女との不思議な結びつきを感じながら、ジャックは次第にエイリアンについて、ドローンについて、自分の記憶について疑問を持つようになりますが…。
映画「オブリビオン」のネタバレ感想

映画序盤はよくある設定のSF映画だなと思ったのですが、ストーリーが進むうちにミステリー・アクションと展開がどんどん広がっていき、中盤には敵が入れ替わるどんでん返し、意味深なエンディングと最後まで引き込まれる展開が続く映画になっています。
よくあるSF映画と思っていたら、いい意味で予想を裏切られた作品でした。
前半は謎に迫るSFミステリー

最初の設定はよくあるSF映画っぽいというか、昔ながらのSF映画・少年漫画のような設定なので少し好みが分かれるかもしれませんが、だんだん謎に迫るようなミステリー展開にシフトしていくので、そこからは比較的どなたでも楽しめるようなSF映画になっていきます。
SF映画と言えば、現世では実現できないような新しい技術や目を引くアクションの迫力、斬新さなどが印象的ですが、今作ではどちらかと言えば謎に迫る主人公たちのストーリーや感情の動きの方がメインになっているように感じました。
地球に帰りたいと願う男や変化を恐れ地球を離れたいと願う女、60年間眠っていた美女、謎のエイリアンなど、キャラクター1人1人が特徴的でインパクトが強いですし、ミステリー展開のストーリーも面白かったです。
前半にも一応銃撃戦などの簡単なアクション要素はありますが、メインはあくまでも人間VSエイリアンによるミステリー、感情の動きをメインにしたストーリーだと感じました。
【解説】後半はドローンVS人類のSFアクション

映画前半のストーリーメインのミステリー展開とは裏腹に、後半はエイリアン側の殺戮ドローンVS生き残りをかけた人類による、激しい銃撃戦などのアクションがメインの展開になっていきます。
映画前半のSFミステリーの展開だけでも1本の映画が出来そうなくらいボリューミーでしたが、エイリアン側テットと人類側ジャックの戦いもかなりボリューミーなので引き込まれて観ているとあっという間に時間が過ぎていきました。
今作は設定がSF、前半がミステリー、後半がアクションの3要素を1本の映画として楽しめるような映画になっているので、普通のSF映画には飽きてしまったという方におすすめな映画ですね。
【解説】ストーリーが進むにつれ敵が入れ替わる

今作は展開だけでなく、ストーリーが進むにつれて敵も入れ替わるようになっています。基本的には人類の敵という名目は変わっていないのですが、自分の立場が入れ替わることで敵が入れ替わるっというストーリーが面白かったですね。
前半の敵はスカヴ。地球全壊に追い込んだエイリアンということになっていますが、映画前半部分でははっきりとした姿では登場しないようになっています。
SF映画の敵と言えば、映画『エイリアン』『プレデター』のようなインパクトの強い姿、脅威の能力で人類の前に現れる印象が強かったのですが、今作では名前は頻繁に出てくるものもはっきりとした姿で現れなかったのがとても印象的でした。
地球への侵略者・人類の敵でありながら生存者の位置情報をジャック達に知らせていたり、敵であるジャックを捕獲しようとしたり謎の行動が目立ちます。映画中盤からは敵なのか味方なのか分からず、ますます謎が深まっていきました。
そして、映画後半で明かされるスカヴの正体。消された記憶、自分たちのことを知ることが出来ます。これにより今まで謎だった部分が全て解消され、人類の敵がテットであることが分かりました。
今まで人類側だと思っていた自分たちが実はエイリアン側に属していて、倒そうとしていたのは仲間だったはずの人類だったという敵・味方の逆転がなんとも斬新で、どんどん引き込まれていく面白さがありましたね。
スカヴリーダーとして登場するモーガン・フリーマン

前半は敵、後半は味方として登場するスカヴのリーダーには以前視聴した映画『最高の人生の見つけ方』で良き友人役として登場したモーガン・フリーマンが演じています。最終的には主人公側の味方になりますが、個人的には敵側として登場するモーガン・フリーマンはとても新鮮で驚きました。
楽しそうな笑顔がよく似合う、何だかんだで友達を助けてくれる最高の味方のイメージが強いモーガン・フリーマンが、今作前半では冷酷なリーダーになっていて思わず「えっ!?」と声が出てしまうくらい驚きましたね。
最終的にはジャックの味方となり、命を懸けた囮としてジャックと共にテットの元へ行き、実にカッコいい最後を迎えます。隊のリーダーとして冷静に振る舞いながら、内には強い怒りと希望、勝利への貪欲さみたいなものがある熱い男みたいなキャラクターが個人的にはとてもお気に入りです。
やはり平和な世界で飄々とした笑顔のモーガン・フリーマンの方が好きではあるのですが、今作のような荒廃した世界での熱い男というキャラクターも意外とあっているなと思いました。
エンディングは闇が深い

最後に主人公である49番目のジャックはテットの元で死亡してしまうのですが、その後同じくジャックのクローンである52番目のジャックがジュリアの元にやってきて感動の再会を果たします。
最初このシーンを観た時、凄く不満でした。感動の再会みたいになっているけれども、同じクローンでも49番目のジャックと52番目のジャックは全く別の存在で記憶や経験をシェアしているわけではないですから、なんとも中途半端というか不満が残るエンディングだなと思っていましたね。
ただ、映画視聴後の考察を進めていくと、だいぶこのエンディングに対する考え方が変わってきました。
あくまでも個人的な考察なのでその考え方が本当にこのエンディングに絡んでくるのかは分かりませんが、個人的にはタイトルの意味にとてもマッチした闇が深いエンディングだと思います。
映画「オブリビオン」の考察

ジュリアと一緒にいる子供、オブリビオンというタイトルについて、人類の敵・テットについてなど、今作の謎・気になる部分について考察していきます。
あくまでも個人的な考察なのでこれが正解というわけではありませんが、参考程度に見て頂けると幸いです!
ジュリアの子供はいつのまに?

49番目のジャックの死後、52番目のジャックがジュリアの元にやってきたときにジュリアの側に幼い子供がいました。おそらく49番目のジャックとの子供と思われますが、いったいいつの間に現れたのでしょうか。
今作ではベッドシーンみたいなものはないのでいつの間にと思われるかもしれませんが、ジャックとジュリアが湖の家で過ごしている描写がいくつかあったので、もしかしたら映像として映らないだけでそういった行為がなされていたのかもしれませんね。
偏見かもしれませんが海外の映画だと不必要なくらいベッドシーンがバシバシ映し出される印象が強かったのですが、今作ではそういったシーンが少なくて良かったと思っています。
そのせいである意味子供のことなどに分かりにくい部分が出て来てしまったのかもしれませんが、ベッドシーンに必要性を感じない者としては観やすくて助かりましたね。
oblivion(オブリビオン)の意味

今作のタイトルにもなっているoblivion(オブリビオン)には、忘れ(られ)る、忘れ(られ)ている状態、忘却などの意味があります。
このタイトルには記憶を消されて全てを忘れてしまっている全クローンジャック・ヴィカのこと、そしてエンディングで52番目のジャックの登場によってジュリアから忘れられてしまう49番目のジャックのことを表しているのではないでしょうか。
ジュリアはジャックが変わっていることに気付いていない、もしくは気にしていないようですから、おそらくこれからは49番目のジャックと変わらないように52番目のジャックと過ごし、52番目のジャックが父親として家族仲良く過ごしていくと考えられます。
個人的には記憶を共有している49番目のジャックをジャックと同一視するのは納得できますが、その後の出来事を共有していない49番目のジャックと52番目のジャックを同一視するのには違和感がありますね。そういった意味で、あのエンディングは闇が深いなと感じました。
そして、オブリビオンという意味をジャックだけでなくテットにも当てはめて考えるのであれば、テットはエネルギーを回収するために地球、もしくは他の惑星でつくられたAI搭載の機械であったのだけれど、作成者たちが新しいエネルギー源を発見したか滅亡してしまったために忘れ去られてしまった存在なのではないでしょうか。
忘れられてしまったために任務を遂行することができないテットはいつしか何のためにエネルギーを回収しているのかも忘れ、ただただ星から星へ移り住みながらエネルギーを吸い尽くすまで侵略するだけの存在になってしまったのだと考えられます。
もしくは星を侵略していく内に自分が機械であることを忘れて神だと思い込むようになってしまい、テットに乗船していた生き物・作成した星の人々を全て殺害し、自分1人で星々のエネルギーを吸い取りながら生きていく存在になってしまったのかもしれません。
まぁ、機械であるテットにとってはエネルギーは食事と同じようなものと考えるのであれば、ただ人間のためにエネルギーを集めるのではなく、自分が生きていくためにエネルギーを回収するように変わったのだとも考えられますね。
テットはなぜ海水を吸い出しているのか

人類の敵として登場するテット。その正体は星から星へと移り住みながら星のエネルギーを吸い尽くすまで侵略する地球外の機械で、地球へはエネルギーとして海水を奪うためにやってきたようです。
現代ではまだ研究段階ですが、海水をエネルギーに変換する『核融合』という技術・研究があるそうなので、今作ではその技術がすでに完成している想定なのでしょう。
地球には石油・石炭・天然ガスといったエネルギー源もあるかもしれませんが、それらは数に限りがありますし取るためには手間であり危険です。その点、海水であれば地球上に大量にあり海の上ならばどこからでも吸い上げることが出来ますし、他のエネルギーよりも安全に手に入れることが出来るので、豊富な水がある地球と核融合によるエネルギー変換はぴったりな組み合わせ。
そこから得られるエネルギーはかなりのものなので、テットは多少の手間をかけても人類を滅亡させ、大量の水を残らず吸い取ろうとしていたのだとと考えられます。
なぜジャックとヴィカはテット側にいるのか

ジャックとヴィカは映画前半では人類側ではなくテット側にいました。本人たちは人類側の立場だと思っていたようですが、実際はエイリアンであるテット達のために働き、地球に残っている人類を狩るためのドローンの管理や整備、海水を吸い上げるためのプラントのパトロールをしていましたが、なぜそのようになってしまったのでしょうか。
元々ジャックとヴィカ、そしてジャックの妻であるジュリアとその他乗組員は極秘任務のためにロケットで宇宙にいたとき、テットと遭遇しました。
回避しようとしますが失敗してしまったため、テットに取り込まれる前にスリープ中のジュリア達だけでもなんとか助けようとスリープするためのロケット部分のみを切り離し、自分たちはテットに捕まってしまったようです。
その後、海水を吸い上げるために邪魔になりそうな地球の生命体を全て排除するため、テットはジャックとヴィカのクローンを大量に生成し、地球で人類同士を戦わせて地球を全壊に追い込みました。
そして余ったクローンはドローンの整備・管理、プラントの保全のために活用したのではないでしょうか。1体のクローンに広い地球を管理させるのは効率が悪いのでいくつかに地域を区切って担当を決め、担当地区以外は『危険区域』と言って入らない様にしておき、自分たちがクローンであることを気付かせないようにしていたのだと考えられます。
なぜわざわざクローンに管理させるのかというと、機械らしい合理的な理由からなのではないでしょうか。せっかく生成したクローンを廃棄するのはもったいないですし、人類を殺すためのドローンを人類に管理させておくことでテット自身は海水の吸出しのみに専念できるので、クローンの活用はかなり理にかなっていると思います。
結局はジュリアというテットにとっては想定外のアクシデントが起こってしまったために計画が破綻してしまいましたが、もしジュリアが現れなければ永遠にジャックとヴィカのクローンに地球を管理させ、海水を吸い上げ終わったら地球と大量のクローンを捨ててまた次の星に向かっていたことでしょう。
映画「オブリビオン」は考察まで楽しめる作品でした

設定自体はややありきたりなSFといった印象があるのですが、そこから始まるミステリー・アクションの展開が斬新で面白く、見ごたえのある映画でした。さらにそこからタイトルの意味について、テットの存在についてと考察まで楽しめるような映画だったので、個人的にかなり大満足の映画です!
SFがお好きな方からそうでない方にまでおすすめな映画なので、興味のある方はぜひ視聴してみてください。
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