映画「キングダム」は週刊ヤングジャンプに連載されている漫画が原作で、「GANTZ」「いぬやしき」「実写版 BLEACH」などで知られる佐藤信介監督が手がけました。
筆者は原作の漫画やアニメを見たことはなく、内容も詳しく知らない状態で映画を観ましたが、それでも十分楽しめる作品でした。
原作を読んでいる方と読んでいない方では、また違った感想を持つと思いますが、今回は原作未読の筆者が「キングダム」を観た感想や解説を書いていきます。ネタバレも含みますので注意してください。
目次
実写映画「キングダム」を観て学んだこと・感じたこと
・漫画原作の実写化映画の中では成功していると思う
・続編に期待することができるが、映画1作としてまとまっている
・視聴後は原作漫画を読みたくなる!
映画「キングダム」の作品情報
公開日 | 2019年4月19日 |
監督 | 佐藤信介 |
脚本 | 黒岩勉 佐藤信介 原泰久 |
原作 | 原泰久 |
出演者 | 信(山崎賢人) 嬴政 / 漂(吉沢亮) 楊端和(長澤まさみ) 河了貂(橋本環奈) 成蟜(本郷奏多) |
映画「キングダム」のあらすじ・内容
500年の戦いが続く春秋戦国時代、中国の大国「秦」に下僕の少年・信(しん)と漂(ひょう)がいました。二人は下僕という身分から脱出するため、日々剣の腕を磨いています。
ある時、漂は秦の大臣である昌文君(しょうぶんくん)に見出され、嬴政(えいせい)の影武者として仕えることになります。そしてある夜、深手を負った漂が信の元に現れ、信に紙を託して息絶えます。
紙に書かれた場所に信が訪れると、漂と瓜二つの人物である秦の大王・嬴政と出会います。亡くなった漂の想い、そして天下の大将軍になるという夢のため、信は戦いに身を投じます。
映画「キングダム」のネタバレ感想
キングダムの原作漫画を読んでいなくても楽しめる!
冒頭でも触れましたが、筆者はキングダムの原作漫画やアニメを見ることなく映画を視聴しました。もちろん、キングダムという作品自体は知っていましたし、友人からも「かなり面白いよ」と勧められてはいたので、漫画を読んでみたいと思いつつも、原作漫画が50巻を超えてるということで躊躇していました。
キングダムで知っていることと言えば「三国志的な漫画」というくらいで、細かい内容や登場人物については全く知りませんでした。今回はまっさらな気持ちで「キングダム」という作品に初めて触れましたが、かなり面白かったです。
漫画原作の実写映画というと当たりハズレがあり、「進撃の巨人」「鋼の錬金術師」に関しては個人的にガッカリしたのを覚えています。もちろん、作品によって実写化する難しさも違うので一括りにできませんが、キングダムに関しては原作未読であっても面白い!と思える作品でした。
もし「原作の漫画を読んでいないけど大丈夫かな…?」と悩んでいる方は安心してください。
信がずっと声を荒げすぎじゃない?
原作を読んでいないので映画の信が原作と変わらないのかは分からないのですが、映画を観ていて思ったのは、信がとにかく大声で語気を荒げるようにセリフを発するんですよね。
大事なシーンで大きな声でセリフを発するのは理解できますが、それが必要のないシーンでも声を荒げるように喋るので少し意外でした。漫画を読んでいなくても信という主人公の顔はなんとなく分かっていたので、もう少し落ち着いていて利口なキャラだと勝手に思っていましたが違うのですね。
戦争孤児で身分が低いキャラでもあるので、頭が良くないシーンもありましたが、原作でもこのようなキャラなのか確かめたくもなりました。映画の脚本には原作者の原泰久も加わっているので、原作の信も多分このような感じなのでしょうか。
嬴政と漂を演じた吉沢亮の演技が良かった
吉沢亮は秦の王である嬴政と下僕の漂を演じています。顔は同じですが、身分が全く違う二人を見事に演じていて、本当に嬴政と漂とで別の人が演じているのではないかと感じさせる演技でした。
国の王である嬴政はきらびやかな服を身にまとい、一方で下僕の漂が秦に仕える前はボロボロの服を着ています。身分や服装からしても真反対にいる二人なので、それを一人で演じることは中々難しかったのではないでしょうか。
別の人物である嬴政と漂ですが、お互いが重なるようなシーンがあります。例えば、影武者である漂の初陣では、士気の下がる兵士たちを鼓舞し危機を脱出するシーンがありました。ただの下僕の少年のはずが、そこには王の風格を感じさせるものがあります。
そして、信と共に戦う嬴政の姿は、夢を語り合った信と漂の二人に一瞬見えるのです。嬴政を信頼している信もまた、嬴政に漂の姿を重ねているのかもしれません。
少し前に深夜帯のドラマに吉沢亮が出演しているのをチラッと見たのですが、アクションシーンが物凄くカッコいいものの、演技はイマイチなのかな?と感じていました。しかし、今作の漂と嬴政の演じ分けを見て「演技うま!」と思いましたね。
嬴政と漂はこの作品のメイン人物なので、「顔は同じだけど違う人物」の演技が下手だと作品全体の評価にも関わってきてしまいますが、個人的には文句なしの演技でした。
大沢たかお演じる王騎の最強感!!
大ナタを振るう王騎の存在感がこの作品には欠かせません。キングダムに登場するキャラが王騎の強さを認めていて、初めは悪いキャラなのか?とも思いましたがそうではなさそうです。
王騎を演じた大沢たかおの身体の大きさも凄く、この撮影のために17キロも体重を増やしたそうです。さすがプロですね。王騎の若干オネェっぽい口調(?)が気になりましたが、原作ではどんなキャラなのか、今後の展開で信と交わることはあるのかと原作が気になりました。
山民族の王・楊端和を演じる長澤まさみがカッコよくて美しい
今作に長澤まさみが出演することは視聴前から知っていましたが、どんなキャラで登場するかは分かりませんでした。嬴政や信が仮面を被った楊端和と会話をするシーンでは、楊端和が女性だとは知らなかったので、尺的にそろそろ長澤まさみ出てくるよね?まさかこの仮面を被ってるのが長澤まさみ?と考えながら映画を見ていました。原作を知らないと逆にいいですね。
双剣を持って戦う楊端和はクールでとても強く、カッコよさと美しさを兼ね備えています。楊端和以外の山民族のキャラも強く、非常に心強い戦力です。
あの時代って弓矢が最強じゃない?
「キングダム」で描かれる春秋戦国時代には銃はないので、基本的に剣や槍、大ナタのような近接武器で戦います。こういった作品の主人公は剣で戦うのがお決まりですが、この時代は弓矢が最強だと個人的に思うのです。
王都奪還をする信と楊端和たちは弓矢で遠距離攻撃をされ、危機的状況に陥りますが、あの時にバンバン矢を放たれていたら信たちはやられていたと思うんですよね。信は甲冑のような服装ではなく薄手の服を着ていましたし、甲冑を着ている楊端和も肌の露出が多かったので、大人数で矢を放てばかなり戦力を削れると思います。
もし自分が10万の兵を統率する立場にあれば8万人に弓を持たせ、弓矢部隊で中華を統一…なんて想像しましたが、矢を作る資源だったり手間が尋常じゃなさそうですし、弓矢部隊が突破されたらほぼ負けが確実というリスクの高い戦い方でもあります。
それに弓矢は「相手が自軍に攻めてくる」という待ちの戦いに適しているので、自分達から攻める戦いではやはり、刀などの近接武器が結局強いんでしょうね。筆者が国の長であればすぐに滅びそうです。
【ネタバレ】続編も期待できて映画のまとまりが良い
ご存知の通りキングダムは連載が続いていて、2019年4月現在54巻まであります。今作では漫画の1巻〜5巻までの内容が描かれているので、実写化しようと思えばまだまだ続けることができます。
友人からキングダムを勧められた際に「16巻から面白くなる」と言われた記憶があるのですが、今作を観た筆者としては「これ以上面白くなるの!?」という驚きを感じました。まるで1巻〜15巻まではそこまで面白くないような言い方だったので、1巻〜5巻の王都奪還を描いた今作を超えてくるかと思うと、さらに漫画を読みたくなりますし、実写映画の続編も製作されて欲しいです。
成蟜の反乱によって王位が奪われ、楊端和(ようたんわ)率いる山民族を仲間につけ、王位を奪還し、信と政が叶えたい夢のために突き進む…という終わりは物凄くキレイにまとまっていました。見終わった後にモヤモヤ感が残ることもなく、この1作だけで十分に楽しむことができました。
実写化映画の場合、初めから続編ありきで映画を作るか、1作品として上手くまとめて興行収入次第で続編を作るかのどちらかがあります。最近では日本の漫画「銃夢」がハリウッドで実写化されましたが、「アリータ:バトル・エンジェル」はストーリーは面白いものの敵の親玉との戦いは描かれず、2作目以降に続くような終わり方でした。
「アリータ:バトル。エンジェル」は興行収入次第で続編が製作されると言われていて、興行収入は3億9000万ドルを稼ぎ出しましたが、制作費に1億7000万ドルかかっているので続編が製作されるかは今の所わかりません。
原作を読んでいる方であれば、続編が公開されなかったとしてもその後の展開がわかるので問題ありませんが、興行収入が振るわないので1作目だけで終わり!ということになると不完全燃焼感が否めません。
しかし、「キングダム」は映画の続編が作られず例え今作で終わったとしても、終わり方がスッキリとしているので、あまり不満に感じない気がします。それくらい映画として上手くまとまっていました。
【解説】実写版「キングダム」の制作費は10億円?
「キングダム」は日本映画の中ではかなり制作費がかかっていると聞いてはいましたが、制作費は約10億円だそうです。これでも日本映画の中では高いんですね。先ほども紹介しましたがハリウッド映画「アリータ:バトルエンジェル」は制作費が1億7000万ドル(約187億円)ですからね。恐るべしハリウッド映画…。
といっても、10億円であのクオリティの映画が出来るって結構すごくないですか?中国で大規模ロケを行なっているので制作費がかなりかかったようですが、この金額でこのクオリティの高さは素晴らしいと思います。
映画界では制作費の2倍を超える興行収入があれば続編が製作されることが多いそうなので、興行収入が20億円で続編製作の可能性が高まり、30億円を越えればほぼ確実といったところでしょうか。
「実写版 銀魂」は日本だけでも興行収入43億円を超えているので、「キングダム」も心配なさそうに思えます。また、市場の大きい中国でも公開される予定なので30億円は余裕で超えそうな気がします。「実写版 銀魂」も中国国内だけで13億円の興行収入がありましたし、「キングダム」のロケ地が中国であることや中華統一を題材にした作品なので、中国で話題にもなりそうです。
もし続編が公開されるのであれば、今以上に制作費をかけてよりクオリティの高いものを製作して欲しいですね!
【評価】実写化作品としてはかなり成功している
漫画原作の実写映画は注目度も高く、公開前から期待値が高くなります。原作ファンの方からは映画化しないで欲しいという声もよく聞かれますが、今作のレビューを見てみると原作ファンであっても満足している方が多い印象でした。
今作は原作ファンにも評価が高く、原作を知らない方も面白いと感じられる作品なので、実写化作品としては成功している作品です。
原作者の原泰久も脚本に参加していて映画を絶賛しているので、是非今作をチェックしてみてください!