映画『ガールズ&パンツァー 最終章 第2話』は、大人気ミリタリー萌えアニメ「ガールズ&パンツァー」シリーズの最終章6部作の2作目にあたる作品です。
1話から2話の公開まで実に1年半という歳月を経ての公開ということもあり、続編を待ち望むファンの期待は非常に大きなものがありました。ストーリーそのものは、1話のラストで描かれていた「BC学園」戦の後半〜「知波単学園」戦の前半までが描かれ、それ以降は3話に持ち越しとなっています。
今回はそんな『ガールズ&パンツァー 最終章 第2話』の個人的な感想や考察を書いていきます!なお、シリーズおよび最終章のネタバレには注意してください。
目次
映画『ガールズ&パンツァー 最終章 第2話』を観て学んだこと・感じたこと
・洗練されていく大洗女子の戦いに感動
・60分がいい意味で長く感じる作品
・3話が待ち遠しくてたまらない!
映画『ガールズ&パンツァー 最終章 第2話』の基本情報
公開日 | 2019年6月15日 |
監督 | 水島努 |
脚本 | 吉田玲子 |
出演者 | 西住みほ(渕上舞) 河嶋桃(植田佳奈) 澤梓(竹内仁美) マリー(原由実) 西絹代(瀬戸麻沙美) 福田(大空直美) |
映画『ガールズ&パンツァー 最終章 第2話』のあらすじ・内容
生徒会の河嶋桃が留年してしまうのを回避するべく、冬の大会「無限軌道杯」に絶対王者として出場を果たした大洗女子学園。廃校寸前の弱小校であった大洗は見る影もなく、大会においても優勝候補と目されていました。
しかし、その大洗は初戦で対峙した「BC自由学園」を相手に、思わぬ苦戦を強いられることになります。
学園内が不仲で内紛を起こしていると思われたメンバーたちは、敵を油断させるための策略としてそれを演じているに過ぎなかったのです。
苦境からなんとか立ち直りつつあった大洗は、果たしてどのような戦いを見せていくのでしょうか。
映画『ガールズ&パンツァー 最終章 第2話』のネタバレ感想
1年半という期間が空きながらも、納得の出来にファンも大興奮
まず、1話の公開から1年半もの歳月が開いてしまうとは、正直に言って意外でした。もともとガルパンシリーズはテレビ放送の時点でスケジュールを落としていたこともあり、クオリティの高さからか制作が早いほうでないことは承知していました。しかし、「遅くとも2019年中には公開されるのではないか」と思っていたので、年をまたいで公開されるとは…という思いです。
もっとも、作品の出来そのものに関しては非常に完成度が高く、待たされた甲斐があったというものです。本作は「BC自由学園戦後半」「桃の家庭環境」「知波単学園戦前半」の大きく分けて3パートに分かれており、展開そのものも非常に王道で熱くなれる仕上がりでした。
BCについては前作で最大の危機を乗り越えていたこともあり、本作では「いかにして彼女たちを打倒するか」がメインに描かれていました。そこで取られた戦術は非常にダーティなものであったことが大きな特徴で、偽装攻撃によって内紛を誘発したのです。このあたりは記事の最後にまとめていきますが、全体を通じて「みほのダーティープレイ」が目立つ作品であり、大洗が変わりつつあることを実感させてくれました。
個別のシーンで特に印象的だったものについては後述していきますが、作品全体を通じて迫力ある戦闘シーンや軍歌の演奏など、これまで通り「劇場で観ること」の重要性が理解できる作品でもあります。「爆音上映」や「応援上映」など、多様な鑑賞スタイルに対応しているのも本作ならではの特色でしょう。次回作が公開され、さらには最終章が完結するのはいつのことになるのやら、という気がしないでもないですが、待たされたことをつい許してしまう作品であることもまた事実です。
さらに、そう思っているのはどうやら筆者だけではないようです。観客動員に関する数値を見ていくと、公開2日間で約11万8000人を動員する好スタートを記録しています。1話の動員数が11万9000人であることを考えると、ほぼ100%のファンが続編にも足を運んでいるという計算が成り立つのです。どんなヒット作であっても一般に継続的な続編では数字を落とし気味になるものですが、ファンによる支持がどれほど盤石であるかを示しています。
この動員数から判断していくと、最終章が打ち切りになってしまう心配はほとんどないと言ってもいいかもしれません。ただし、スケジュールが伸びるとスタッフやキャストに万が一のことが起こるリスクも増大していきますので、色々な意味で次回作が早めに作られることを願います。
留年の危機を迎えていた河嶋桃の家庭環境が明かされる
そもそも、本作で大洗が「無限軌道杯」に出場するキッカケは「桃の大学進学のため」でした。ただし、1話ではその部分のみがクローズアップされたことにより、「やや出場の動機として弱いのではないか」という指摘がなされることもありました。したがって、本作ではそもそもの「動機」という部分を補強し、より説得力のある展開を演出する必要があったのでしょう。
そのためか、本作は中盤で「桃の家庭環境」が大きくクローズアップされていました。桃の実家は文具屋を営んでおり、寡黙な父と病弱な母が彼女の両親でした。さらに、数多くの兄妹に囲まれたお姉さんという立場であり、様々なものを背負っていたことが明かされます。
「イマイチ動機としては弱い」と見なせる「桃の留年回避」という動機に重さが加わり、視聴者としても納得できるものとなりました。やや取ってつけた環境のような印象は否めないものの、一方でこの背景を知ると今まで桃が見せてきた振舞いをまた違った観点から見ることができます。
例えば、そもそもアニメで廃校を免れるために生徒会が強権を発動してみほに戦車道を選択させたシーン。ここは初見の際に「強引すぎるのでは?」と視聴者に思わせつつ、実は「戦車道大会で優勝しなければ廃校」というやむにやまれぬ事情があった、というネタバラシをかけていく「ミスリード」のための演出だ、というのが従来成立しうる解釈でした。
しかし、本作の展開を考えていくに、桃が高校を変えられる経済的、あるいは学業的な余裕があったとは考えられません。生徒会の面々が彼女の家庭環境をなんとなく察していても不思議ではなく、ある意味であの強引な勧誘は「桃の転学阻止」という側面もゼロではなかったのかもしれません。もちろん愛校心からくる動機であることは明らかですが、与えられている情報からはこうした解釈も不可能ではありません。
いずれにせよ桃の家庭環境が明かされたことで、今後の展開に大きな影響があり、あるいは過去のシーンを再検討するキッカケになるという効果がありました。もちろん、今回は一例として桃を取り上げただけに過ぎず、他のキャラクターたちにも同じような変化は生じています。本作はシリーズを通しで見ていることがほぼ前提になっているというハードルの高さがあるぶん、過去との比較がかなり容易に行なえるという側面があります。恐らく今後にもこうした展開は用意されていることでしょう。
【解説】練度を上げていた知波単と、それを上回る成長を見せた大洗
本作の後半パートで対戦した知波単学園は、アニメ版で後に準優勝となる黒森峰学園に敗れ去っていたことが明かされていた学校です。チハを主力戦車としており戦力的に恵まれているとはいえないものの、黒森峰を追い詰めたとされる実績を誇ります。
しかし、同校最大の弱点はなんといっても「突撃し潔く散る」というモットーが原因となって、「突撃以外の戦術が存在しない」という点です。これによりなかなか良い成績を残すことができていませんでしたが、本作ではこの路線に疑問を抱く絹代を中心に、「突撃一辺倒」からの脱却を果たしています。
この方針転換が非常に面白く、例えば「サヨナラ突撃」のように、待機や後退をうまく「突撃」というワードに関連させながら戦っていました。この路線を築き上げたのは同校の軍師的存在である福田で、彼女の存在や采配によって大洗は苦戦を強いられることになります。
こうして大洗相手に互角の戦いを見せ、時刻は夜を迎えていきます。ここで知波単学園は初めて自分たちのテーマを歌い、これまで同じ学園に所属しながらもバラバラであった一同が団結していきました。
それでも、やはり驚異的な大洗の策略により追い詰められていくことになります。この戦いに関してもみほは非常に狡猾な手段をしばしば用いており、良くも悪くもかつての大洗がそこにないことは注目に値します。
完全に退路を断たれた知波単でしたが、ここで彼女たちはなんと「撤退」という禁断の選択を行ないます。これまではあくまで「後退する突撃」であり、完全な逃走を認めていたわけではありませんでした。しかし、「勝つためには」という認識のもと、ついに戦術的撤退に出たのです。
この一連のシーンにおいて、正直に言って主役は紛れもなく知波単の面々でした。信念を曲げてでも大洗に立ち向かうその姿は応援したくなるものでしたし、劣勢を跳ね返していく光景にかつての大洗を思い出した方も多いのではないかと思います。
ただ、身もふたもないことを言ってしまえば恐らく次話で知波単は敗れ去るのでしょう。これだけ桃の背景を説明しながら「負けました」では済まされませんし、残りの話数からも大洗の敗退は考えられません。
しかし、これだけ奮闘した知波単がどのような「負け方」をするのか、という点は最後まで見届けたいと思いますし、「ヒール」と化しつつある大洗の面々にもどのような変化が生じていくのか、このあたりは要注目です。
【考察】トーナメント表からライバル校の勝敗や今後の展開を予測
劇中にて、「無限軌道杯」全体のトーナメント表が公開されていたことをご存知でしょうか。いくらかメタ的な視点も含まれてしまうかもしれませんが、一方でそこから今後の展開をある程度予測することは可能でしょう。したがって、様々な角度から勝敗をもとに本作の行く末をいくつか予想してみたいと思います。
まず、2回戦は「知波単×大洗」「サンダース×継続」「黒森峰×プラウダ」「聖グロ×アンツィオ」の全4戦です。知波単と大洗に関しては先ほども触れたように大洗の勝利で堅いと思いますが、その対戦相手はまだ確定していません。しかし、結論からいえば「継続高校」で八割方決定しているのではないかと予想できます。その理由は単純で、すでにサンダースと大洗は対戦経験があるのに対し、継続は未対戦の状態にあるからです。メタ的な観点からいえば主人公チームと戦わない高校をわざわざ新規で登場させるのはあまりにも手間がかかりすぎにも思えるので、その観点からも堅い予想だと思います。
他の組み合わせに関しては、それぞれ「黒森峰」と「聖グロ」の勝利になると予想できるでしょう。プラウダと黒森峰はそれぞれ大洗と対戦経験がありますが、みほとの因縁を考えれば黒森峰の方がより上位にふさわしいでしょう。一方、聖グロとアンツィオは大洗との対戦経験を考えれば聖グロ勝利を予想するのが自然ですし、アニメ版ではカットの憂き目に遭ったアンツィオがそれほど重要な役割を占めるとは思えません。
ただし、予想が難しいのは恐らく勝ち上がるであろう大洗の「決勝における対戦相手」です。今までの予想を整理すると、向こうのトーナメントは「黒森峰×聖グロ」と推測できます。そして、この両校はどちらも決勝で大洗と対戦するにふさわしい格があるように感じられ、一方でどちらの学校にも懸念点が存在します。
まず、黒森峰は言うまでもなくみほと強い因縁があり、その点を強調すれば決勝の相手として十分成立し得ます。一方で、これを実現させると決勝カードが何度も同一になってしまい、どうしても「二番煎じ」感が否めません。
他方、聖グロは大洗との大会における対戦経験がなく、さらに同校は作中で唯一大洗に負けたことがない学校でもあります。そのため、彼女たちが決勝に進出すれば本気になったダージリンを始めとする面々の戦いぶりを描くことができますし、最終章で打ち倒す相手としてはふさわしい存在にも思えます。ただし、以前の大会では黒森峰に敗れてしまっており、単純な勝負ではやや分が悪いという側面もあります。
個人的に決勝対戦校が「聖グロ」である確率が60%、「黒森峰」である確率が40%、と予想しておきます。もっとも、今後の話で対戦校の様子も描かれることになると思いますし、転入生や新たな因縁が生じればこの予想が一気に覆ることも十二分にあり得るでしょう。あくまで「現時点」の予想であることをご留意ください。
【考察】戦い方を変えつつある西住みほのスタイルを問う展開が訪れるのでは?
前の項で次話以降の勝敗予想を行ないましたが、ここで肝心の主人公である「西住みほ」に関する考察を実施して記事を締めくくりたいと思います。なぜみほ単体に着目して考察を行なっていくかというと、文中でも何度か指摘した「戦い方」という側面に明らかな変化がみられるからです。
これまで、アニメシリーズから一貫して「正々堂々」と戦ったきた大洗。この正統派スタイルを支えてきたのは紛れもなくみほであり、かつて黒森峰を追われた際の「人命優先」という考え方にもそうした方針が現れています。
しかし、最終章においてはBC・知波単戦ともに「ダーティー」な戦い方が非常に目立っていました。その戦術については先ほども説明したので詳しくは述べませんが、同士討ちの誘発に猪突猛進さを逆手に取った沼地への誘い込みなど、軍師としては優秀さを発揮する一方で明らかな戦術の変化が感じられます。そのため、作中では大洗よりも敵の学校をついつい応援したくなってしまいました。大洗に対する感覚はこれまでの黒森峰に近いものがあり、これを意図しているとすればこの先で何かしらのトラブルが発生するのではないかと踏んでいます。
ここからはあくまで完全な予想になってしまうのですが、勝利を追い求めるあまり非道な戦術をためらいなく実行していくみほに対して、あんこうさんチームの面々がそれを諫めるという展開があっても不思議ではないと考えます。実際、このままいくと大洗の勝利を眺めるだけの映画となってしまい、展開上の制約が大きくなってしまいます。対戦校の成長を描いていくという手法も有効だとは思いますが、あまりに繰り返してしまうとマンネリ化の恐れもあります。
こうした点を整理していくと、「大洗を敗退させない」のは前提で、「大洗にドラマを生み出す」というストーリーがどこかで必要になってくるでしょう。そうなった時、これだけ狡猾な戦法を取り続けてきたことが伏線として機能することは想定できなくはないと思っています。
いずれにしても、第3話が公開されればまた推理材料も増えるでしょうし、当面は同作の早期発表を願うほかありませんね。
(Written by とーじん)