映画「Diner ダイナー」は平山夢明の小説が原作で漫画化もされている作品です。実写映画では「さくらん」「ヘルタースケルター」などの作品で知られる蜷川実花監督が手がけました。
「殺し屋専用の食堂」という他の作品にない舞台に、個性的な殺し屋たちが多く登場します。映画の隅々まで目を凝らしてみると、ちょい役でも知名度の高いキャストが登場していたり細かいところまで楽しめる作品でした。
今回は映画「Diner ダイナー」のネタバレ感想や解説、考察などを詳しく書いていこうと思います!
目次
映画「Diner ダイナー」を観て学んだこと・感じたこと
・登場する料理がとにかく美味しそう
・映画の雰囲気や装飾が華やかでキレイな世界観
・突拍子も無い展開、ストーリーは個人的に好き
映画「Diner ダイナー」の作品情報
公開日 | 2019年7月5日 |
監督 | 蜷川実花 |
脚本 | 後藤ひろひと 杉山嘉一 蜷川実花 |
原作 | 平山夢明 |
出演者 | ボンベロ(藤原竜也) オオバカナコ(玉城ティナ) スキン(窪田正孝) キッド(本郷奏多) 無礼図/ブレイズ(真矢ミキ) |
映画「Diner ダイナー」のあらすじ・内容
母に捨てられた過去を持つ女性・オオバカナコは即日で大金を稼ぐため、怪しいバイトに申し込みをしますが、裏社会と繋がっていて拉致、監禁されてしまいます。
そして、殺し屋たちが通うダイナー(食堂)でウエイトレスをすることになり、そこのシェフであるボンベロの元で働くことになります。
一癖も二癖もある殺し屋たちと触れていきながら、カナコは様々なことを学んでいきます…。
映画「Diner ダイナー」のネタバレ感想
腹ペコで観れば死ぬ…。登場する料理がめちゃくちゃ美味しそう
ダイナーのシェフであるボンベロは元々殺し屋であり、組織のトップであるデルモニコに認められ、シェフとしてお店を出しています。他の殺し屋とも顔見知りであり、料理の腕もかなり高いものがあります。
予告編では藤原竜也演じるボンベロが「俺はぁ〜〜〜〜〜ここのぉ〜〜王だ。砂糖の一粒までが俺に従う」という印象に残るセリフがありましたね。天才料理人であるボンベロはハンバーガーやスフレなど、劇中で様々な料理を作るのですが、それが本当に美味しそうなんです。
窪田正孝演じる殺し屋・スキンはスフレが大好きなのですが、フワフワそうなスフレに軽くスプーンを入れただけで、中からクリームがジュワッっと溢れ出してきます。油断しているとヨダレが垂れてしまいそうな、唾をゴクリと飲み込んでしまうようなシーンでした。
他にも肉汁溢れるハンバーガーなど、とにかく飯テロのオンパレードです。腹ペコ状態で映画を視聴すれば、本当に耐えられないと思うので注意してください。筆者は映画を観終わってすぐにハンバーガーを買いに行きました…。
一つ気になったのが、ボンベロがカナコに注意深く言っていた「スキンのスフレだ間違えるなよ」という言葉でした。カナコが料理の名前を間違えることでスキンが激昂することを想像していたのですが、全くそんなことはありませんでしたし、カナコは「スキンのスフレ」という言葉を言わないのですよね。
「あんなに念押ししていたのに言わないんかい!」と心の中で感じたシーンでしたが、その後の展開でスキンの本性が出てしまいます…。
花や食材の色彩が美しく不思議な雰囲気・世界観
監督の蜷川実花といえば個人的に写真家としてのイメージが強いのですが、彼女が監督を務めたからか、一つ一つのシーンが写真で切り取ったような美しい雰囲気があります。ダイナーの看板の淡いピンク色の光や綺麗な花など、とにかく華やかな世界観でした。
芸術的な分野で活躍する人が作る物のなかには、センスが独特すぎてその道のプロにしか理解できず、素人にはよく分からないというものがあったりします。しかし、この作品は誰が見ても「綺麗で不思議な世界」と思わせてくれるものがあります。
個人的に好きだったのが食材の描き方です。天才の料理人が素晴らしい料理を提供するダイナーということもあって、厨房には多くの食材が並んでいます。そこには黄色なら黄色一色の食材がひとまとまりで置かれているのですが、それが物凄く美しいんですよね。
食材を見て「美味しそう」という感想を持つことはありますが「美しい」と感じることはあまり多くないと思います。そして、黄色の中にも様々な色があり、濃い黄色や薄い黄色、発色の良い鮮やかな黄色など、グラデーションのように置かれている食材は「キレイだな」と感じさせてくれました。
窪田正孝演じるスキンがカッコいい!
今作で主人公級にカッコいいキャラといえば、窪田正孝演じるスキンです!
ダイナーに集まる客は全員が殺し屋なのでどの人物もクセがありますが、スキンはカナコに対して優しく接し、キッドから身を守ったりと強くてカッコいいです。カナコ自身もスキンには心を許していましたしね。
しかし、結局殺し屋であるスキンもクセのある人物だったことがわかります…。ボンベロの作った完璧なスフレを食べたことでこの世に生き続ける意味を無くしてしまい、スキンは我を忘れて暴れまくります。
スキンには「母が作ってくれたのと同じの完璧なスフレを食べたい」という欲望があり、その希望を持ちながら日々生き続けていました。しかし、ボンベロがスキンに出すスフレは味は完璧ながら、中にコインが入っていたり、チェスの駒が入っていたりと完璧なスフレではありませんでした。
これはボンベロが考え抜いた行動ではあるのですが、カナコにはもちろん伝わるわけもなく、カナコはスフレに入った異物を取り除いて完璧なスフレを出してしまうわけです。
結局、カナコがスキンを抱きしめて声をかけるも伝わることはなく、カナコを殺そうとするスキンをボンベロが殺します。カナコからしてみれば、殺し屋専用のダイナーという異常な場所で働き、不安な中で優しく声をかけてくれたのはスキンだけだったので、この展開はつらいですよね。
ボンベロがスキンを殺した後に言った「この世に希望を抱えながら生きている奴もいるんだ」的なセリフがありましたが、こうなるのが分かっているのであれば一言カナコに言ってもいいんじゃない?とも思いました。
カナコとスキンの関係、カナコの性格を考えれば「完璧なスフレをスキンに出してあげたい」と考えることは予想できると思うのですが…。ボンベロもちょっと爪が甘いんですよね。
出演者がとにかく豪華
この映画には藤原竜也、窪田正孝、本郷奏多の他に、斎藤工や金子ノブアキ、真矢みき、土屋アンナ、小栗旬などなど、豪華なキャストが多く出演しています。
そして、その起用の仕方も他の映画にはなくかなり贅沢です。小栗旬は暗殺されて川の中から水死体となって出てきますが、水を含んだその姿はブヨブヨになっていましたし、それを見つけた「白鯨」を読んでいた女性は水曜日のカンパネラのコムアイです。
他にも、テレビに映るお天気キャスターには板野友美、カナコが訪れた旅行代理店の店員は川栄李奈、ダイナーで働いていて今は亡き歴代ウエイトレスには宮脇咲良やMEGUMIなど、ほんの一瞬しか映らない人物にも著名な人物を起用しています。
真矢ミキ演じる無礼図(ブレイズ)とボンベロの銃撃戦で吹き出しそうになる
新しく組織のトップの座を奪い取ったブレイズは、一連のやり取りを見ていたカナコを始末しようとします。
しかし、時間を共にすることでカナコに情が移ったボンベロはカナコを救おうとし、ボンベロとブレイズ一行は銃撃戦になります。映画館でこのブレイズとボンベロの戦いをみて、吹き出しそうになり笑いをこらえるのに必死でした。
というのも、ボンベロとブレイズは互いに銃を撃ちまくるのですが、全くと言っていいほど当たらないんです。遠距離で撃ち合うならまだしも、ダイナーの中という至近距離での撃ち合いです。それなのにまあ当たらない…。
ボンベロはそれなりの殺し屋だった過去を持ちますし、ブレイズに至っては一つの派閥をまとめるトップでもあります。そんな二人の「全く当たらない銃撃戦」を見たときには吹き出しそうになりましたね。むしろ「わざと当ててないだろ!」とツッコミたくなるレベルでした。
極め付けは、狭いダイナーでボンベロとブレイズが横に飛び、その瞬間スローモーションになりながら互いに銃を撃ち合うシーンです。二人は手の届きそうなくらい近い距離にいて、弾丸を遮る遮蔽物もなく、両手に拳銃を持って互いに撃ちまくります。しかし、これもまた当たらないんです。ここが笑いのピークでしたね。
筆者はそれまで真面目にこの映画を見ていたのですが、この時に「大真面目に見る映画じゃない」と気づきました。これはこの作品を面白くないだとか、悪く言っているわけではなく、良い意味で「エンターテイメント性に特化した作品なんだな」と理解しました。
同じように感じた作品に「エクスペンダブルズ」があります。この映画にはシルヴェスター・スタローンやジェイソン・ステイサムなど、アクション映画にお馴染みの顔ぶれが多く出演していますが、この作品もまた敵の撃った銃弾が主人公たちに全然当たらないんですよね。
しかし、この作品の面白さは銃を撃ちまくり、建物を壊し、派手なアクションが見どころなので、「普通だったら銃弾当たってるよね」という現実的な考えはナンセンスなのです。「銃撃戦」という派手な雰囲気を楽しむものであり、エンターテイメントを追求した映画なのです。
「Diner ダイナー」もまた、銃撃戦の勝敗というよりは銃を派手に撃ち合い、店内の物が次々に壊されていくことこそが見どころなんだなと感じました。そう考えるとより一層楽しめましたね。
全然死なない藤原竜也
銃撃戦の終盤では先ほどまでの戦いが嘘かのように、ボンベロに銃弾が当たりはじめます。
しかし、銃弾を何発もあびるボンベロは倒れず、死にそうな声になりながらも生きています。この光景にも既視感があり、何だったけと思い返してみると「ターミネーター2」の敵のT-1000でした。あの撃っても撃っても全く倒せない液体金属ターミネーターです。
「ターミネーター2」のT-1000並みにしぶといボンベロ…いや藤原竜也は生命力が凄いんです。しかし、カナコを逃がすためにボンベロは自分の体を張ってブレイズを倒します。
【考察】物語のラスト、カナコの元へ訪れたボンベロは生きてたの?
カナコはダイナーを出た後、訪れたいと思っていたメキシコで自分の店を開きます。そこにはボンベロ専用の席が用意されていますが、虚しくもずっと空席のままです。
しかし、映画のラストにはカナコの店にボンベロと菊千代が訪れます。ボンベロはT-1000でも死んでしまうくらいのダメージを負っていたので、生きていることはないだろうと思っていたので驚きでした。
個人的には、これはカナコが頭の中で思い浮かべる「ボンベロが私のお店に来てくれたらなぁ…」という願望であり、幻覚のように覚めてしまうのかなとも思いましたが、物語のラストでは実際に生きているかどうかは分からない終わりを迎えます。原作ではどうなっているのか気になりますね。
ちなみに、カナコがお店を開いたメキシコでは「死者の日」というお祭り的な行事が盛大に行われます。
この死者の日というのは映画「リメンバー・ミー」でも描かれていますが、家族みんなで故人への想いを馳せ、死者の日に死後の世界から故人がやってくるという言い伝えがあります。日本でいうお盆のようなものですね。
そう言った点からも、ボンベロと菊千代は既に死んでいて、死者の日にカナコに会いに来たという見方もできます。ボンベロに当たる光の感じからも、死者が現れたかのような神々しさがあり、生きているともとれるが死んでいるともとれるシーンでした。
しぶといボンベロが生きているということも考えられるので、ただただカナコに会いに来たというのであれば嬉しいんですけどね。結末を明確にせず、視聴者の想像に任せる終わり方は故人的には良かったです!