ベストセラー小説からドラマ化、そして映画化された『ボクの妻と結婚してください。』。
余命宣告された主人公や残される家族に共感して泣けるだけでなく、驚きの結末まで用意されてまた泣けるような面白い映画でした!
今回はそんな『ボクの妻と結婚してください。』についての詳しい感想や解説、考察をご紹介していきます。感想ではネタバレを含みますので、映画ご視聴前の方やネタバレを避けたい方はご注意ください。
目次
映画「ボクの妻と結婚してください。」を観て学んだ事・感じた事
・主人公や残される家族のことを思うと泣ける
・泣いた後にくる驚きの結末でまた泣ける
・1人で笑って泣きたいときにおすすめの映画
映画「ボクの妻と結婚してください。」の作品情報
公開日 | 2016年11月05日 |
監督 | 三宅喜重 |
脚本 | 金子ありさ |
出演者 | 織田裕二(三村修治) 吉田羊(三村彩子) 込江海翔(三村陽一郎) 原田泰造(伊東正蔵) 高島礼子(知多かおり) 大杉漣(荒城伊知郎) |
映画「ボクの妻と結婚してください。」のあらすじ・内容
バラエティ番組の放送作家・三村修治。忙しく過ごしながらも愛する家族に囲まれた幸せな生活を送っていたある日、自分が末期のすい臓癌であること、余命が6か月しかないことを告げられます。
本来であれば、延命治療を行って家族と残りの人生を静かに過ごすことが正しいことなのかもしれませ。しかし、放送作家として、父として、夫として、家族のために残せるものは何かと三村は『人生最後の企画』を練り始めました。
自分の死後、残される専業主婦の妻・彩子、受験を控えた小学生の息子・陽一郎のために残せるものを考えた末に、三村は妻の再婚相手を探すことを決めます…。
映画「ボクの妻と結婚してください。」のネタバレ感想
突然の余命宣告から始まる夫による妻の婚活というテーマがかなり斬新で、織田裕二さん・吉田羊さん・原田泰造さん・大杉漣さんと豪華キャストによる掛け合いに笑える部分が多いのに、涙なしでは観れない面白い映画だったと思います。
テーマだけでなくどんでん返しのある最後の結末もかなり斬新で、驚きながらもさらに泣けるようになっているので、感動するだけでなくストーリー自体も楽しめるような映画です。
家族や友達とワイワイ観るというよりも、1人でとにかく泣きたいときにおすすめ!
突然の余命宣告をされる修治
放送作家として忙しく過ごすいつもと同じようなある日、すい臓がんであることと余命半年、良くて1年という短い余命を突き付けられます。
医者からは今後は抗がん剤による延命治療を行っていこうと提案されますが、主人公の三村はそれを蹴って残される家族の幸せを願って人生最後の企画、妻の婚活計画を進めることを決めました。
病気による余命半年という宣告、残された人生になにをしようか、どうやって過ごそうか、自分の死後のことを考えるというストーリー展開が映画『最高の人生の見つけ方』に少し似ています。
「最高の人生の見つけ方」が死ぬ前に自分の夢を叶えよう、思い残すことのない人生のために世界中に飛び出そう!という男性的で冒険色の強い映画だったのに比べ、今作は思い残すことがないように放送作家として最後の企画を成功させよう、残された妻と子供のために新しいお父さんを残そうという、家庭に寄り添ったより日常に近い展開の映画でした。
個人的にはどちらかと言えば冒険色の強い方が好きなので、向こうに比べるとややスケールダウンしているように感じる部分はあるのですが、だからこそ今作の方が身近で親近感の湧く印象がありますし、自分と重ね合わせながら観ることでより泣けるような映画だったかなと思います。
冒険色の強い作風の方が好きなのか、身近な作風の方が好きなのか、外国映画か日本映画などの好みによって分かれるのかもしれませんが、『最高の人生の見つけ方』がお好きという方であれば今作も気に入る方が多いのではないでしょうか。
織田裕二さんのイメージが変わる
織田裕二さんと言えば、「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ!」のセリフで有名な『踊る大捜査線』の印象が強かったのですが、今作を観ていてその印象がガラッと変わりました。
踊る大捜査線だと正義漢の強い暑苦しい男の印象が強くて、正直今作のような病気や余命に悩む父・夫といった繊細なキャラクター、日常的な感動作品の雰囲気に合うのかなと不安だったのですが…、踊る大捜査線の時の織田裕二さんとは別人なんじゃないかと思えるくらい、今作の三村というキャラが馴染んでいましたね。
風船のように掴みどころのないふわふわしたところがあるものの、自分の想いや家族への愛が真っすぐなキャラが織田裕二さんの顔立ちや雰囲気に良く合っていて、自然で感動的な良き父・良き夫役だったと思います。
特に織田裕二さんはニコっと爽やかな笑顔が素敵で印象的なので、今作のように家族のために涙をグッと抑えてずっと笑顔でいるようなキャラは特に合っているのかもしれませんね。
織田裕二さんのように代表作があるとどうしてもその作品のイメージに引っ張られてしまう場合が多いのですが、今回のように作品・作風・キャラに合わせてガラッと印象が変わるのを見ると、俳優さんってすごいんだなと驚いてしまいます。
私のように織田裕二さん=踊る大捜査線のイメージが強い方、踊る大捜査線の人か…不安と思ってこの作品を観るのを躊躇っている方も、印象がガラッと変わるのでぜひ観てみていただきたいです!
原田泰造・吉田羊・大杉漣という豪華なキャスト
織田裕二さん主演の映画ということで、主人公以外のキャラもかなり豪華なキャスティングになっています。
修治の妻役には吉田羊さん。サバサバしながらも家庭的で良き妻というキャラがよく合っていましたし、今作の非常識とも思える夫からの婚活話、夫の余命宣告を受け止めながら、最後まで夫を愛し通す姿がとても印象的でしたね。
織田裕二さんとの日常的な掛け合いは、本当に夫婦なんじゃないかと思えるぐらい自然で微笑ましいしものがありました。
吉田羊さんは映画『グッドモーニングショー』でも妻役を演じられていて、今作とは印象がだいぶ違うもののその雰囲気が好きだったので、個人的には吉田羊さんが妻役ということにはかなり安心感がありますね。
そして、そんな妻の再婚相手として選ばれた男役には原田泰造さんが。まさか芸人さんが出てくるとは思っていなかったので、お見合いの席に原田泰造さんが現れた時にはピックリしました。
俳優さんとして映画に出演している原田泰造さんを初めて観ましたが、思っていた以上に自然な動きと表情で、高学歴・高収入を鼻にかけることもなく、明るく笑顔の良く似合う男性というキャラが良く合っていたと思います。
三村の正体がバレたことで関係が終わってしまうのかなとハラハラしてしまいましたが、修治の身を案じつつ、修治と彩子の願いを叶え、最後まで修治の友人として共にいてくれた姿には感動しました。
自分でも再婚相手として彼をプッシュしたくなるぐらい、今作の中でも大切なカッコいい男性だったと思います。
ストーリーにガツガツ登場するわけではないけれども、主人公を支える人物として良い味を出していた大杉漣さん。
何かを察しながらも全てを受け入れ、トラブルが起きた時には「お前らしくいけ」と助言してくれる良き上司役、ふわふわしながらも真っすぐな修治の周りを固めるキャラクターとして大杉漣さんがピッタリハマっていました。
どなたもぴったりなキャスティングでしたし、今作には欠かすことのできない重要な方達でしたね。
婚活話が面白かった
自分の死後も妻が幸せであることを願って、妻の再婚相手を探すために婚活を始める修治。
婚活が身近にない者としては、男性でありながら男性の再婚相手を探す修治の行動、最近の婚活事情、女にとって婚活とはみたいな姿が観れて面白かったです。
職場では洒落っ気のない女性が婚活パーティーでは決めこみ「婚活は女にとって試合」「よっしゃぁ…GO!」と戦場に向かうような姿や、良き男性に自己PRしている女性を跳ね除け、既婚者としてバッサリ否定している修治の姿が特に好きでした。
妻が大変であることに理解を示しながらも、「断言しましょう。休日にそんな手の込んだ料理は作らない!」と言い切っている姿は既婚者あるあるといった感じで笑えましたね。
個人的には最近の婚活事情が観れたのも面白かったです。昔ながらの結婚相談所とか、親戚のおばさんからのお見合い写真攻撃などで自分の中の婚活知識は止まっていたので、最近のアプリを導入したプロフィール交換とか告白とか、おしゃれなパーティーなどに驚きました。
些細なことなのですが、そういった細かいつくりに引き込まれるものがありましたね。
映画全体の笑いの雰囲気が好き
先ほどの婚活話もそうですが、全体的に作品の中に盛り込まれている笑いの雰囲気が個人的には大好きでした。
特に妻と修治の掛け合いが1番好きです。ブラインドの隙間から妻を覗いていたら気付かれて目の前に妻の目が来る感じとか、妻に好みの男性を聞いたときに自分とは真逆の男の特徴を言われる感じ、「友達に全然面食いじゃないよねって言われる」という妻のセリフに、少し間を置いてから「失敬だな」と返す感じには声を出して笑いました。
その他にも伊東にお見合いを断られながらも諦めずに妻をプッシュし続ける修治とか、旦那立ち合いのお見合いとか、暴走する修治に何だかんだでみんな負けてしまうというか、受け入れてしまう姿は笑えたし好きでしたね。
そしてただ面白いだけでなく、その背後には病気の影がちらついているというのが良かったです。
コメディ映画ではなくヒューマンドラマなので、良い部分だけでなく死が迫ってきてしまっていること、面白いだけで終わらない展開、最後の結末までしっかりとあったことでメリハリがあったように感じました。
そのメリハリがあるからこそ笑える部分、泣ける部分がしっかりとあったのかなと思います。
【解説】その後の結末に驚き!
妻のウエディングドレスを見届けた修治は家族と過ごす穏やかな日々の中、笑顔で死去。修治が亡くなったことで妻は伊東と正式に再婚するのかなと少し複雑に思っていたところに、驚きの結末が待っていました。
修治の妻が全てを知り伊東にお見合いを断られてしまったあと、実は修治の妻は伊東の元を訪れ、修治の願いを叶えたいから協力してほしいと話をしに行きます。それを受けて伊東は修治の友人として協力を約束し、妻の再婚相手役を演じていたのです。
修治の人生最後の企画では、妻に再婚相手を用意して病気をドッキリ発表する予定でしたが、最終的には妻の方が修治に対して逆ドッキリを仕掛けていたという結末です。
修治は自分の死後に妻が再婚し、息子と新しい父と共に幸せな家庭を築いていくことを願っていました。
この結末はその願いを叶えてはいないのだけれども、放送作家である夫に最後に自分からも楽しさを提供しながら夫が安心して逝けるようにという妻の願いがこもっており、修治が妻を愛していたように、妻も修治を愛していたことが分かる良い結末だったと思います。
修治を愛していたからこそ、修治の思い出と共に幸せに生きていくことを決めているように感じて、少女漫画のようなロマンチックさがあってまた泣けましたね。
こういったテーマの映画だと感動する結末が多い印象があるのですが、今作のようにどんでん返しが用意されているのはかなり斬新で驚きましたが、作品としてストーリーが面白くなりますし、幸せな家族で良かったと安心できる結末でした。
泣けるセリフ、泣けるシーンが多い
今作は泣けるセリフ、泣けるシーンがとにかく多かったですね。好きなものをいくつか紹介します。
三村が妻に病気を打ち明けるときのセリフ。
「僕は彩子を幸せにするために結婚しました。けれど、それがもうすぐできなくなります。」
伊東にお見合いをしてもらいたいと願う三村のセリフ。
「しょうがないでしょ。見えちゃったんだから。
彩子と陽一郎が笑ってる…新しいお父さんと笑ってる。それを見てボクはあぁ良かったって…2人はそのままだって安心できるんだ。しょうがないじゃないですか。」
最後の手紙の一文。
「いつかまた巡り合えたら、またボクと結婚してください。」
そして結婚式。
「1度目は自分が新郎側で、父から娘を託されて幸せにすることを誓ったけれども、今度は自分が託す側になって夫として妻を託し、妻に関する注意事項を伝えて家族の幸せを願っています。」
そのどれもが泣けました。誰だって死にたくはないけれども、未来を共に生きることが出来ないからという想いから出た「しょうがない」というセリフがとても重く、それならば残された者の幸せを確認して安心して死にたいという三村の願いを思うと涙が止まりません。
この辺りは、個人的には映画『帰ってきたドラえもん』と似た部分があると感じました。
ドラえもんでは残される側の想いが強く表現されていて、今作では残す側の想いが強く表現されているという違いはありますが、どちらも相手のことを想って何かしたい、安心させたいという想いが表現されているところは同じだと思っています。
その他にも妻が三村の手帳に残した言葉。病気のことを分かっていながら、この先の未来もずっと一緒にいたい、生きてほしいとまっすぐに言ったセリフには胸を打つものがありました。嘘をついていたこと、隠していたことを咎めるのではなく、一緒にいたいという言葉が先に来ていたのがまた泣けますね。
そして最後の修治のいなくなった食卓。修治は自分の席に新しいお父さんが座ること、自分がいなくても楽しい食卓を囲んでくれることを夢見ていましたが、妻と陽一郎にとってはそこはずっと修治の席で、修治がいなくなった後も、修治の席を愛おしそうに見ている感じが泣けました。
やはり主人公である修治の方が泣けるシーンやセリフが強く印象に残りますが、残される妻側の気持ちを想うと、その他のシーンでも泣ける部分は多いです。残す側の修治、残される側の妻のどちらの想いも共感できからこそ、観れば観るほど泣ける映画だったと思います。
家族とワイワイ観る、友達と観るというよりは、1人でストーリーにのめり込みながら泣きたいときにおすすめの映画ですね。
驚きの結末にまた泣ける映画
笑いながら観れる部分も多いですが、後半は進行する三村の病気や残される家族のことが描かれているのでかなり泣けますし、最後の結末には驚きながら涙なしでは観れない面白い映画だったと思います。
泣ける映画を求めている方、ストーリーを楽しみながら泣けるような映画をお求めの方におすすめな映画なので、驚きの結末に泣きたい方はぜひチェックしてみてください!
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