日本映画/邦画の感想

映画『日日是好日』のネタバレ感想・解説!丁寧に日々生きることの素晴らしさを知れる作品

映画「日日是好日」のあらすじ・内容

映画「日日是好日(にちにちこれこうじつ)」は伝統文化でもある「茶道」に惹かれた女性が歩む、静かでまっすぐな人生が丁寧に描かれる映画です。

この映画は、エッセイストである森下典子さんによる自伝的エッセイ「日日是好日-「お茶」が教えてくれた15のしあわせ-」を原作としています。

この記事では茶道という世界の奥深さの一端を味わうことができる映画「日日是好日」の感想・解説をネタバレを含みながら書いていきます。

目次

映画「日日是好日」を観て学んだ事・感じた事

・黒木華、樹木希林の圧倒的な演技力に感動
・日本の四季は美しいということを改めて実感する
・「日日是好日」の意味を知り、日々を存分に生きることの大切さが分かる

映画「日日是好日」の作品情報

公開日2018年10月13日
監督大森立嗣
原作森下典子
出演者典子(黒木華)
武田先生(樹木希林)
美智子(多部未華子)

映画「日日是好日」のあらすじ・内容

映画「日日是好日」のあらすじ・内容(C)2018「日日是好日」製作委員会

この映画では、20歳の典子が茶道に出会い茶道を始めて以降の人生が、豊かな四季とともに描かれていきます。

20歳の典子は、同い年の従姉妹である美智子とともに武田先生という茶道の先生のもとで茶道を習うことになります。

人生で初めて入った茶室には、「日日是好日」と書かれた掛け軸がありました。彼女たちはこの文字の示す意味はもちろん、読み方すら分かりません。

そんな彼女たちが茶道と出会い、茶道と向き合いながら人生を歩む姿が、まっすぐ丁寧に描かれていきます。

映画「日日是好日」のネタバレ感想

映画全体が美しい茶道の雰囲気に包まれている

映画全体が美しい茶道の雰囲気に包まれている(C)2018「日日是好日」製作委員会

この映画は、全体として美しく厳かな茶道の雰囲気に包まれています。ピンと張り詰めた水面のような美しさが、画面全体から伝わってきます。

美しく丁寧に映し出された風景はもちろん、役者の放つオーラや雰囲気、映画に登場する小物やセットなど、全ての物にこだわり抜いてつくられたからこそ、こうした世界観がつくられているのだと実感することができます。

まさに史上初の茶道の映画にふさわしい雰囲気が、画面から一貫して伝わってきます。

黒木華の落ち着きがあり静かな演技が圧巻

黒木華の落ち着きがあり静かな演技が圧巻(C)2018「日日是好日」製作委員会

本作の主演は、演技派として知られる黒木華さんです。この映画では黒木さん演じる典子の20歳から44歳までの日々が描かれます。

黒木さんの本作での演技はとにかく落ち着きがあります。典子は、多部未華子さん演じる従姉妹の美智子と比べても、とても引っ込み思案で自己主張がない人物で静かです。もっとも、単に静かというわけではなく、そこに佇む典子の想いは、黒木華さんの丁寧な演技によって、ありありと画面に映し出されます。

 

典子は、この24年間の間に就職に失敗してしまったり、結婚もうまくいかなかったり、父との別れを味わったりと様々な経験を積むことになります。典子は人生の試練・苦しみに悩みますが、典子はお茶を続けました。苦しい状況でもお茶を続ける典子(黒木華)の表情は圧巻で、典子の人生に対する構え方のようなものがヒシヒシと伝わってきます。

うまく自分を表現できない、思い切り感情を吐き出すことができないようなキャラクターを演じることは困難だと思うのですが、その部分を黒木華さんは見事に演じきっています。黒木華さんの演技が好きだという人にとって、本作は必見です。

樹木希林の演技の迫力に息を呑む

樹木希林の演技の迫力に息を呑む(C)2018「日日是好日」製作委員会

本作は、2018年の10月に公開されました。そして、女優・樹木希林さんが亡くなったのは2018年の9月です。樹木希林さんが亡くなるのとほぼ同時期に、この映画は宣伝等のタイミングを迎えていました。

そんな樹木希林さんの遺作といってもいい映画となった本作において、樹木希林さんは武田先生という茶道の先生を演じています。綺麗なお着物をお召しになって、真っ直ぐに背筋を伸ばしてお茶を入れる武田先生(樹木希林)の姿は、まさに長年お茶とともに生きてきた茶道の先生の趣を持っています。お茶を学ぼうとする生徒に対して、お茶の哲学を柔らかく丁寧に教えている姿は、静かな迫力に包まれています。

 

武田先生が劇中で述べる台詞に「こうしてまた初釜(新年の茶席)がやってきて、毎年毎年、同じことの繰り返しなんですけど。でも、私、最近思うんですよ。こうして毎年、同じことができることが幸せなんだぁって」というものがあります。この台詞に込められた意味は茶道の真髄であると同時に、樹木希林さんの演技に対する想いも詰まっているように受け取ることができます。毎回別の人物となってカメラの前に立ち、演技をするということを繰り返すことこそが、樹木希林さんにとっての幸せだったのではないかと感じました。

もちろん、劇中の台詞ですので、そうした意図はないとは思うのですが、樹木希林さんが亡くなった今、この映画を観ると武田先生の言葉がそのまま樹木希林さんが残した言葉と被って聞こえる台詞が多くあります。

クスッと笑ってしまう山下美月などの登場シーン

クスッと笑ってしまう山下美月などの登場シーン(C)2018「日日是好日」製作委員会

お茶の映画と聞くと、静かで厳かなイメージが湧くかもしれませんが、この映画はそれだけではありません。随所にクスッと笑ってしまうようなシーンが散りばめられています。

畳の縁を踏んではいけないと言われ、上手く歩けなくなったり、正座が難しくてお茶を持ったままひっくり返ってしまったり、足が痺れてしまって動けなくなってしまったり。お茶をやっていない人にとっても、「ああ、お茶をやっているとこんな大変なことがあるんだな」と少し笑ってしまうようなシーンが随所にあります。お茶をやっている人にとっては「あるある」と笑ってしまうようなシーンになっているはずです。

乃木坂46の山下美月さんも本作に出演していますが、山下さんのシーンもまたこうしたクスッと笑ってしまうようなシーンなので見所です。

 

全ての物事に言えることかもしれませんが、どれだけ真剣だったり悲しいときであっても、その隣には笑えることであったり、嬉しいことがひっそりと佇んでいます。きっと100%の真面目さや100%の悲しさというものはどこにもなくて、物事の全てはバランスでできているのだなと感じさせられます。

全体的に四季が描かれ、とても落ち着いた映画ではあるのですが、こうした思わず頬が緩んでしまうような演出もあります。そうした部分も楽しんで観ることができる映画でした。

日本の四季の美しさを改めて実感する

日本の四季の美しさを改めて実感する(C)2018「日日是好日」製作委員会

この映画では、時期を二十四節気(にじゅうしせっき)によって示しています。二十四節気というのは、季節を24に分け分類する方法です。いわゆる立春や夏至などは、この二十四節気の一つです。

そうした二十四節気に基づき、分類された季節を描くこの映画では、はっきりと季節を感じることができます。茶道教室をしている武田先生の庭の景色の風景からはもちろん、海や駅のシーンなどからも季節が立ち上がってきます。お茶の映画なので、お茶菓子によっても、季節を感じることができます。

 

日々をただ生きていると春は花粉症、夏は暑くて、冬はただ寒い…と季節のいい部分に目が向かなくなってしまう人も多いはずです。しかしながら、この映画を観ていると、春の新芽が芽吹き、新しい命が誕生する姿、夏の持つ儚い淡さ、秋の持つ柔らかな鮮やかさ、冬の持つ美しい静寂…そういった四季の持つ素晴らしさを全て感じることができます。

実際には映画を観ているだけなのですが、そこにある一つひとつの季節の中に本当にいるのではないかと錯覚するくらいに、ありありと季節が描かれており、このことは、本作の持つ大きな特長だといえます。

普段はあまり意識することがない四季の美しさも、映画として明確に描かれることで、改めてその美しさに酔いしれることができます。映画を観賞したあとに浴びる外の風は、きっとさっきまで浴びてきた風とは変わって感じるはずです。

すぐに分かるものがいいわけではないことを知る

すぐに分かるものがいいわけではないことを知る(C)2018「日日是好日」製作委員会

武田先生の茶室に入ったとき、典子と美智子は「日日是好日」という掛け軸に出会います。そのとき2人は、「(日日是好日って)どういう意味?」「毎日がいい日ってことでしょ」「でも、それだけ?」というやり取りを交わします。

20歳で茶道と出会った2人にとって、この「日日是好日」という言葉の意味はもちろん、茶道をする意味も人生を生きる意味もすべて、全く分からない状態です。

典子は美智子がお茶をやめてしまい結婚で田舎に行ってしまった後も、1人淡々とお茶を習い続けます。毎年毎年、同じことを繰り返します。典子は就職や結婚に失敗したり、父との別れを味わったりと辛いことを沢山味わいますが、それでもお茶を続けます。淡々と丁寧にお茶に向き合い続けたのです。

 

そして時が経ち、ついに典子は「日日是好日」の持つ意味に気づきます。

この映画を観ていく中で私たちもまた、この「日日是好日」という言葉の意味を考えるようになります。きっと、その答えは一人ひとり違うのだとは思います。しかし、その自分で見つけた答えは、これからの人生にとっても大切なヒント・支えになるのではないかと思います。

「形をまずつくり、そこに心を入れる」という茶道の考え方を知る

「形をまずつくり、そこに心を入れる」という茶道の考え方を知る(C)2018「日日是好日」製作委員会

この映画は、一貫して茶道の在り方を描き続けますが、そこで出てくるのが茶道の作法です。茶道の作法には、何をどの手でどのように持つのか、何回まわすのか、どのような仕草で置くのか、(布などを)どのように畳むのか、畳一畳は何歩で歩かなくてはいけないのか等々、その全てにルールがあります。

茶道をしていない側からすると、「なんでそこまで…」と思ってしまう作法があります。それでも武田先生は、典子や美智子に対して、本当に細かく茶道の作法を教え続けます。

 

典子や美智子は、このようなあまりにも厳格な形作りに対して不思議そうにしますが、それに対し武田先生は「お茶はね、まず形なのよ。はじめに形をつくっておいて、後から心が入るものなのね」と説明します。

この「まず形をつくり、そこに心が入れる」という考え方は一般的な考え方ではないはずです。まずは気持ちを大切にする、そうすればいつか形がついてくるという考え方も十分成り立つからです。しかし、茶道はあくまでまず形から。そこに心が入るのだと言い切ります。

どちらの考え方が正しいのか、そのことに正解はないと思います。ただ、この映画を観ていると「まず形をつくり、そこに心を入れる」という考え方もまた、とても合理的なのではないかと思えてきます。

形という、いわば「器(うつわ)」を用意しておかなければ、そこに心を注ぐことはできない。「器」がなければ、心も入りようがないのではないか、そう考えることができるようになってきます。

典子は実際、24年もの歳月を掛けて茶道の形という「器」を用意することができ、その後はじめて自分がお茶をする意味、お茶をする歓びに出逢うことができました。時間はかかったとしても、本当に丁寧に心を注ぐためには、そこにまず「器」がなければいけない。そんな、日本的な様式美の哲学も知ることができます。

「日日是好日」という言葉の意味を味わう

「日日是好日」という言葉の意味を味わう(C)2018「日日是好日」製作委員会

何度も触れていますが、映画のタイトルにもなっている言葉である「日日是好日」、この言葉に典子はお茶を初める初日に、武田先生の茶室で出会います。この言葉の意味が当初は分からなかった典子ですが、24年の時を経てその意味にたどり着きます。

同じことの繰り返しに見えるこの出来事は、全てが移ろいゆく時の中の一瞬の出来事であり、その一瞬、その一日をただ楽しむ。どんな日だったとしてもその日を存分に味わう、それこそが「日日是好日」の意味だと。

 

この「日日是好日」という言葉は、元々禅語という禅の言葉だとされています。

この言葉は、表面的に読むと単に「毎日が素晴らしい」という意味になると思うのですが、先程も触れた典子と美智子のやり取りの中でもある通り、果たしてそれだけの意味なのかというのが本作のテーマになります。

禅語としての解釈としても、これが正しい解釈というものはないようですが、解釈としては「毎日が良い日となるように努めるべき」という日々を向上させるための言葉として理解する解釈や、「あるがままが大切なのだ」という現状を受け止めることの大切さを強調するような解釈もあるようです。

 

そんな中、典子がお茶を通してたどり着いた「日日是好日」の意味は、全てが移ろいゆく時の中の一瞬の出来事であり、その一瞬、その一日をただ楽しむ。どんな日だったとしてもその日を存分に味わうというものだ、とみてとれます。

確かに目の前にある出来事が一定の周期で何度も繰り返すようなものだったとしても、時間は前に進み続けています。出来事それ自体は、それ一回きりの一期一会の出来事です。例えば家族の一家団欒なども、毎日毎日繰り返して、それが永遠に続くかのような錯覚に陥りますが、その日、その時の一家団欒はもう一生過ごすことができません。

さらに、実際には誰かが家を離れたり、亡くなったりすることは必然です。一家団欒という出来事が一生続くということはあり得ません。とはいっても、繰り返しに感じてしまうのが、人間の性ではあるとも思います。

 

そんな中で、典子の人生を映画として観ることで「ああ、これが移ろいゆくときの流れか…」と感じることができます。

毎年毎年、季節は繰り返しているけれど、そこに存在している典子の状況はゆっくりとしかし確実に変化していっており、時の変化を感じざるを得ません。そんな典子は、淡々とお茶に向き合い続ける。そうした中で、人生で起きる一期一会を知り、そして「日日是好日」の意味がおぼろげながらも立ち上がってきます。

「日日是好日」とはそういう意味だったのか!と気づいた瞬間、私たちの送る日常は本来とてつもなく輝いていて、素晴らしいものなのだと気づくことができます。

人生に丁寧に向き合いたいと考えている人にオススメ

人生に丁寧に向き合いたいと考えている人にオススメ

日々を生きていると、本当に多忙で煩わしいことに心が奪われがちです。いくら心を休めようと思っても、連絡が途切れることはありませんし、仕事をはじめとした雑事は忘れようとすればするほど、脳裏に浮かんでしまうものです。

そんな時、この映画を観ることを心からオススメします。

季節の美しさ、黒木華・多部未華子・樹木希林の演技の凄さを味わっているうちに、映画の世界観に没入することができ、次第に「日々を生きることの意味」、それ自体に向き合うことができるようになってきます。

日々に少し疲れてしまった方や、気持ちが焦ってしまっていて日々を見つめ直したい方に、本当にオススメできる映画です。

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