三谷幸喜監督作品の中でも有名な『THE 有頂天ホテル』。名前は知っていたものの今まで視聴したことがなかったのですが、キャラクター・ストーリー・くだらなさ共に魅力的で、今まで観てこなかったことを後悔するような作品でした!
今回はそんな『THE 有頂天ホテル』についての詳しい感想と考察をご紹介していきます。感想と考察ではネタバレを含みますので、映画ご視聴前の方やネタバレを避けたい方はご注意ください!
目次
映画「THE 有頂天ホテル」を観て学んだ事・感じた事
・とにかく笑いたいときにおすすめな作品
・三谷幸喜監督作品がお好きな方はぜひ!
映画「THE 有頂天ホテル」の作品情報
公開日 | 2006年01月14日 |
監督 | 三谷幸喜 |
脚本 | 三谷幸喜 |
出演者 | 役所広司(新堂平吉) 松たか子(竹本ハナ) 佐藤浩市(武藤田勝利) 香取慎吾(只野憲二) 角野卓造(堀田衛) YOU(桜チェリー) |
映画「THE 有頂天ホテル」のあらすじ・内容
新年のカウントダウンパーティーを目前に控えた高級ホテル・ホテルアバンティ。
そのパーティーの成功のために忙しく動き回る真面目な副支配人・新堂平吉でしたが、そんな新堂の努力をあざ笑うかのように、従業員と訳あり宿泊者たちによる思いがけないトラブルが次々に発生します。
パーティーで使用予定の垂れ幕の発注ミス…。
大量のマスコミ付で宿泊している汚職議員…。
宿泊客の衣類盗難…。
パーティーに関係あるトラブルならばまだしもなぜ今、パーティーに関係ないトラブルまで巻き起こるのか。さらには数々のトラブル対応に追われる新堂本人にも思いがけないトラブルが…。果たして彼らは無事に新年を迎えることが出来るのでしょうか?!
映画「THE 有頂天ホテル」のネタバレ感想
三谷幸喜監督作品独特の真剣でくだらないストーリー、豪華キャストによる個性豊かなキャラクター、エンディングのオチまで個人的に好きなものが揃っている作品で、最初から最後まで笑い通しの面白い作品でした。
とにかく笑いたい時、三谷幸喜監督作品がお好きな方にはぜひ観てみていただきたいです!
出演するキャストが豪華!
今作は何といってもとにかくキャストが豪華で、大御所・名脇役・人気俳優・女優と誰が主役でもおかしくないくらい、ちょい役からメイン役まで主役級の方々が揃っています。
大御所の方がコメディ映画の中ではっちゃけている姿というのは何とも貴重で、ストーリーと相まって余計に笑えましたね。特に角野卓造さんのはっちゃけぶりには笑いが止まりませんでした。
やはり豪華キャストなだけあって観ていて安心感がありますし、本当にそういう人物なんじゃないかと思ってしまうくらい自然な演技で、抵抗なくストーリーがスッと頭の中に入ってきてくれて違和感なく共感して笑える部分が多かったです。
また豪華なキャスティングというだけでなく、個人的に好きな三谷幸喜監督作品『ステキな金縛り』でも出演されていた西田敏行や生瀬勝久、佐藤浩市、唐沢寿明、篠原涼子、戸田恵子も出演されていたのが嬉しかったですね。
全く違う作品なのですが、同一キャストがいることで三谷幸喜監督作品のシリーズで繋がっているように感じられて、今作でもそれぞれのキャラに思い入れがしやすいですし、ステキな金縛りの方もまた観たいなと感じました。
筆耕係・オダギリジョーという隠しキャラ
今夜は有頂天ホテルなのですね。
オダギリジョー氏も筆耕係の右近さん役でご出演です pic.twitter.com/yOYWcfHfGI— まるつ (@suzu_marumi) October 31, 2015
映画でメイン級のキャラクターのキャスティングに力を入れるというのは良くある話なのですが、今作のスゴイところはあまり目立たない、ストーリーに必要以上に絡んでこないちょい役にまで豪華なキャスティングがなされていることです。
個人的に今作のキャラクターの中で筆耕係が一番気に入っているのですが最後まで誰が演じているのか分からず、エンドロールでキャストを確認してみると…まさかのオダギリジョー!
顔がほとんど見えていないキャラですし、ストーリーの中で大切なキャラではあるもののそこまで超重要というわけでもないこのキャラクターにそこまで有名な俳優さんをキャスティングしているとは思わず、最初に名前を観た時には驚きました。
今作はとにかくちょい役のキャストまで豪華で、こんな風にエンドロールを見て初めて気付く俳優・女優というのも多いので、視聴中に誰だろうと推理しながら楽しんだり、エンドロールを見てからもう1度観返して豪華キャストを探して楽しむのもまた面白い映画になっています。
あひるの声にも大御所が
映像で豪華キャストを探すだけでなく、耳で豪華キャストを探すというのも面白いですよ。
今作はなんとあひるのダブダブの声を山寺宏一が、館内アナウンスの声を清水ミチコが担当するという、映像外のキャストの豪華さまであります。ちなみに私は映画視聴中には全く気付かず、視聴後のエンドロールを眺めていて初めて気付きました。
山寺宏一さんのあひるの鳴き声に関しては本当に自然で、確認のために観返してみても本当に人間がやってるの?と思うくらいで、さすがと申しますか…スゴイ声優さんなんだなと改めて驚きましたね。
正直もったいない!と思わなくもないのですが、そういった細かい部分にも力が入っているからこそ映像的な部分にまで違和感なく、ストーリーに入り込むようにして楽しむことができましたし、身近な出来事のように共感して笑える作品だったのかなと思います。
またこういった細かいポイントがあるからこそ、エンドロールまで楽しむことができました。
個性豊かなキャラクター
夜7時57分〜の『土曜プレミアム・THE 有頂天ホテル』豪華キャストが贈る極上のノンストップエンタ―テイメント!最悪の大晦日は、最高の奇跡の始まりだった。 #fujitv https://t.co/jR1ihj0kzR pic.twitter.com/L7E4s7MF3y
— フジテレビ (@fujitv) October 31, 2015
豪華キャストが演じているキャラクターが実に個性的で、ホテルに集まった個性豊かなキャラクターたちのセリフ・行動・関係性というのも、今作の中で大きな魅力でしたね。
男性関係の話をしたい女性、過去に不倫していたシングルマザー、夢を諦めた青年、元妻と再会しちゃった見栄を張りたい男、ホテルで客引きをする女、晴れの日に浮気相手と遭遇してしまった男と…どれもそれだけでストーリーが出来そうなぐらい個性の強いキャラクターになっています。
普通ここまで個性の強いキャラクターが多いと、ストーリーがゴチャゴチャしてしまいそうに感じるのですが、なぜかどのストーリーも別個で楽しめてしまうような展開になっていて全体的にはスッキリとしていました。
そしてゴチャゴチャするどころかどう動くのか、ストーリーの展開がどうなるのか、エンディングがどうなるのかの想像がしにくくて、どう転んでも面白いようなキャラクターというのにとても引き込まれてしまいましたね。
豪華キャストと相まって、とても良いキャラクターたちだったと思います!
真剣でくだらないストーリーが面白い
そんな豪華なキャスト、個性豊かなキャラクターたちで始まるストーリーがまた面白くて、本人たちにとっては至って真剣な事柄で本気で悩んだり、怒ったり、悲しんだりしているからこそくだらなくて笑えました。
ただバカをやっているだけではなく、その背景には真面目なものがあったり本人にとって大切なことがあるというのが個人的には大切だと思っていて、本気で悩んだ末にくだらない行動をとってしまうからこそ共感できて、笑えて、面白いストーリーになっていたと思います。
特に男女問題のくだらなさは何とも身近に感じて、彼女のパンツを履いてしまった男性とそのことを異様に怒っている女性とか、不倫相手が持っている証拠を消し去りたい男性とその証拠を見せびらかす女性、元妻に見栄を張りたい男性と全てに気付いている女性など、全てがありそうな感じだなと。
今作はコメディなので誇張表現がもちろんあるのですが、もう少し小規模であれば自分の身近にもありそうな感じがするストーリーで、焦ってふざけた行動をとってしまうのは共感できますし、そんな姿にはなんとも笑ってしまいましたね。
エンディングにはYOUさんの歌も
そんな真剣でくだらないコメディのあとには分かりやすいハッピーエンドが用意されていて、自業自得な人物には若干のバッドエンドもありつつ、男女問題は大体丸く収まり、歌い手たちの夢は叶う良いエンディングでしたね。
またずっと歌いたいと言いながら歌っていなかった桜チェリーが、エンディングでついに歌うというのが良かったです。
ちなみに歌っていた歌は『If My Friends Could See Me Now』。
エンディングの展開も良かったのですがYOUさんの歌自体がとても良くて、ハスキーだけどノリが良くて、大人っぽいんだけど無邪気な感じがする歌声と歌い方が、今作の雰囲気に良く合っていたと個人的には思います。
元々歌が本業だったYOUさんだからこそあんなに歌がうまいのも納得ですし、楽しそうに歌っている感じが桜チェリーというキャラクターと良く合っていて、歌のうまさ・キャラクター・エンディングを含めてピッタリなキャスティングだったなと感じました。
映画「THE 有頂天ホテル」の考察
様々な人の手に渡る憲二の人形の意味、年越しパーティーのその後の展開がどうなるのかを考察していきます。
あくまでも個人的な考察なのでこれが正解というわけではありませんが、参考程度に見て頂けると幸いです!
憲二が新堂にプレゼントした人形の意味
憲二が新堂にプレゼントし、そこからほとんどの登場人物たちの手に渡っていく人形。
運が向いてくると占い師に言われたからずっとギターに付けていたのだけれど、それをつけている間に歌手になる夢が叶うことはなく、『曰くつきの人形』みたいな扱いを受けていましたが、あれは本当に効果のある人形だったのではないかなと個人的には思います。
堀田がヨーコからケータイを奪い取ることができなかったことを思うと、憲二以外の人には効果がなかったのかもしれませんが、多くの人の手に渡りながらもバンダナ・ギターと共に憲二の元に帰ってきたこと、憲二の願いを思えば憲二には効果があったのではないでしょうか。
あの人形は運が向いてくるというだけで願いを叶えてくれる人形ではないわけですから、一般人に毛の生えた程度の憲二の歌唱力を高める力はなくて、歌手デビューをさせることはできないからせめて歌い続けられるようにしていたのだと思われます。
歌うことが大好きな憲二のためにギターとバンダナを憲二の元に届け、まだまだ歌うことを諦めない様にしていたのではないでしょうか。
そしてCDデビューは難しいかもしれませんが、今回の件で大物演歌歌手・徳川との繋がりを持つことができたわけですから、ここから憲二の運が向いてくるかもしれない可能性を考えれば、間違いなく人形の効果はあったのだと思われます。
年越しパーティーのその後は?
エンディングの年越しパーティーでそれぞれの幸せに繋がるような展開になっていましたが、それぞれのその後がどうなっていくのかについては話がなかったので、その部分について考察していきます!
新堂は年越しパーティーの後も変わらず、ホテルの支配人として働き続けていることでしょう。
ただ議員の記者会見中断の責任を瀬尾が取ると言っていたこと、エンディングで瀬尾が総支配人に怒られていたことを思うと、総支配人から責任を取るように迫られた瀬尾の出世の道は断たれ、代わりに新堂に出世の道が開けてくるのだと思われます。
彼であれば慌ただしく見栄っ張りなところはあれど冷静になれば勤務態度に問題はなく、人望もあるわけですから、次期総支配人になるというのはありえない話ではないでしょうから。
そしてエンディングで新堂の元妻が矢部に「彼のことをよろしくね」と言っていたことを思うと、後々は矢部との恋愛展開…再婚なんて話にも繋がっていくのかもしれませんね。
憲二はベルボーイとして復帰し、音楽活動も趣味として続けていくことでしょう。
ただ今作で演歌歌手・徳川に気に入られている様子で、憲二の歌が耳に残ると言われていたことを思うと、彼の元に弟子入りして音楽の道をさらに極めることになったり、彼の付き人として関係を続けることで何らかの形で音楽関係の道を進めるようになるのかもしれません。
桜チェリーとも良い繋がりができたわけですから、2人で組んでチェリーがボーカル、憲二がギターをして歌手デビューする道もあるかも…。
もしデビューしていなかったとしても、路上ライブを再会したときにきっと幼馴染の女性が会いに来てくれるでしょうから、憲二の道にも幸せな展開がありそうな予感がいたしますね。
武藤田はとにかく逃げて逃げて…世間のほとぼりが冷めるまで逃げ続けるのではないでしょうか。
ただ憲二の歌に触発されて汚職を告発すると言ったり、ハナの言葉に触発されて逃げる道を選んだり、エンディングでは手伝ってくれと言われてそのまま駐車場の交通整理をしたりと、かなり流されやすい性格のようですから政治家としての道をそのまま歩み続けるかは怪しいものですね。
もし政治家として復帰したとしても、過去の汚職問題でワイワイと騒がれてまた嫌気がさして逃げ出してしまったり、同じようなことを繰り返してしまうのではないかなと思われます。
パンツを履いたことで破局寸前だったカップルは、年越しパーティーで丹下が異様に喜んでいたことを思うと、きっと年越しに答えると言っていたプロポーズの答えをもらえて…良いお返事だったのでしょう。
年越しパーティーの後はプロポーズしたホテルのチャペルで結婚式を開く話を進めたり、同居する話を進めたりすると思われますが、また丹下の方が何かやらかしそうな予感がいたします…。
それでまた彼女が怒って破局寸前になったり、婚約解消する話になったり、仕事にも支障が出たり…まだまだひと悶着ありそうな感じがいたしますが、何だかんだで丸く収まりそうな感じもしますね。
あのくだらないカップルのやり取りが個人的には結構好きなので、あそこのカップルは幸せになってほしいなと個人的には思ってしまいます。
とにかく笑いたい時におすすめの映画!
主役級の豪華キャストが個性的なキャラクターを演じる三谷幸喜監督のコメディ映画「THE 有頂天ホテル」。真剣でくだらないストーリー、ありえなさそうでありえそうな絶妙なキャラクターの関係性が面白くて、最初から最後までずっと笑えるような映画でした。
三谷幸喜監督の作品が好きな方だけでなく、仕事で落ち込むことがあった、悩みを抱えているという暗くなりがちな時にもパッと明るく笑わせてくれるような作品になっているので、とにかく笑いたいときにおすすめな映画です!
面倒なことは考えずに笑いたい時には、ぜひこちらの映画をチェックしてみてください!