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映画『ダンケルク』の感想・ネタバレ解説!実際の戦争が元の陸・海・空の戦い、救出物語

映画「ダンケルク」のあらすじ・内容

『ダンケルク』はクリストファー・ノーラン監督による戦争映画です。

アカデミー賞三部門受賞も納得の仕上がりで、死と隣りあう戦場の空気をビリビリ伝えてきます。

そんな映画『ダンケルク』の個人的な感想・ネタバレ解説です!

目次

映画「ダンケルク」を観て学んだ事・感じた事

・日本人には馴染みの薄い舞台・出来事は、予習必須!?
・渦巻く死の恐怖と絶望、ときおり顔を出す希望の構成が絶妙!
・良くも悪くも雰囲気が売り。劇場で観たかった……。

映画「ダンケルク」の作品情報

公開日2017年9月9日(欧米諸国では5月)
監督クリストファー・ノーラン
脚本クリストファー・ノーラン
出演者トミー(フィン・ホワイトヘッド)
ピーター(トム・グリン=カーニー)
コリンズ(ジャック・ロウデン)
ギブソン(アナイリン・バーナード)

映画「ダンケルク」のあらすじ・内容

映画「ダンケルク」のあらすじ・内容

1940年5月。ナチス・ドイツ軍はフランスへの侵攻を開始します。

対する英仏連合軍は防衛に失敗。連合軍が包囲され、フランス北部の港町・ダンケルクに追い詰められたところから、物語が始まります。

ダンケルクには40万の兵士がいるものの、飲み水さえ満足にない有様。大陸には敵軍が構え、空には敵の戦闘機が飛び、英仏の海軍はロクに救助船を出してもくれないという絶望的な状況です。

その中でも連合軍の兵士たちがなんとか生きのび、イギリスへと逃げようとする様を、陸・海・空3つの視点から描いています。

映画「ダンケルク」の感想

史実的な、ヨーロッパの戦争の一場面

史実的な、ヨーロッパの戦争の一場面Warner Bros. Entertainment, Inc

突然ですが質問です!1940年、戦時中のヨーロッパがどうなっていたかみなさんご存知ですか?

全然知らないという方が多いと思います。筆者もそう詳しくはありません。自信をもって答えられるのは、歴史やミリタリー、あるいは映画・文学のマニアの方だけではないでしょうか。

同じころに日本がアメリカ合衆国と戦争をしていた、ということは何度か意識したことがあるでしょう。しかし、遠く離れたイギリスやフランスがどうなっていたかなんて、なかなか気にすることがないと思います。最後にはイギリス側が勝つことや、ヒトラーが悪いことをしていたことなど、日本での平均的な認識って多分そのくらいですよね。

 

実は、第二次世界大戦の序盤ではナチスドイツがかなり優勢で、フランスを打ち負かしてるんです!ドイツ軍の侵攻からパリが落ちるまで、なんとおおよそ一か月。それくらいドイツ軍は強かったのです。当時のイギリス・フランス人にとって、ドイツ軍はとても恐ろしかったことでしょう。

映画『ダンケルク』は、このうちの一週間における、イギリス軍人たちの様子を描いた作品です。服装にせよ乗り物にせよ、描写はかなり史実に忠実。まずイメージできないヨーロッパの戦時中の空気を私たちに伝えてくれます。

日本人には不親切?説明がかなり少ない

日本人には不親切?説明がかなり少ないWarner Bros. Entertainment, Inc

「敵はイギリスとフランスの軍隊を海岸まで追いやった」
「ダンケルクに閉じ込められて、彼らは運命を待っていた」
「救援への希望を抱いて——」
「——奇跡のような」

これは映画の冒頭で出てくる文章を、筆者が独自に訳したものです。なぜここで訳したかといえば、劇中では訳文が出ず、英語でしか書かれていないからに他なりません。

この映画ではただでさえ、登場人物による説明がとても少なくなっています。なぜイギリス・フランス軍がひどい状況にあるかも、いきなり映画を観てしまうと一切わかりません。イギリス陸軍の危機を客観的に、数字として言及しているシーンはありますが、特に強調もされません。少しぼんやりしていると見落としそうになるほどです。

たくさんの登場人物たちも自分の気持ちを口にすることはまれで、表情や行動から、推測することを強いられます。

 

加えて先述の英文やラストに出てくる新聞記事。これらも、ほとんど日本語には訳してくれていません。

そういったところがどうも、不親切に思えてしまいます。もしかするとこれも、「情報さえ満足に得られない下級兵士の気持ちを味わえ!」という演出なのかも?そんなふうに思えるほど、言葉がわずかしかありません。

……とは言うものの、欧米ではヨーロッパの戦争の認識が広まっていて当然です。特に映画の題材になった「ダンケルク大撤退」は、イギリス人にとって重要な出来事だそう。そして監督・脚本・製作のクリストファー・ノーランはイギリス人です。彼からすれば、いまさら説明するだけ野暮と考えられたのでしょう。無理からぬ話です。

もし日本の映画で、広島・長崎での原爆投下の説明をダラダラされたら、きっと退屈ですよね。小中学生の社会の授業かな?と思わされるでしょう。それと同じことではないでしょうか。

そうは言っても日本人にわからんものはわからん!ということで、以下で用語の解説をしたいと思います!

【解説】物語の背景や、劇中の単語の意味は?

戦況はどうなってるの?

ダンケルクの戦況はどうなってるの?Warner Bros. Entertainment, Inc

1939年9月1日、あの悪名高いヒトラーがポーランドに攻め入ります。これに対して英仏がドイツに宣戦して、第二次世界大戦が始まりました。

ドイツとフランスは隣同士で長く続く因縁もあるので、すぐに国境の防御を固めました。ただここでは、半年以上戦闘がありませんでした。なぜなら第一次世界大戦の際、国境付近での戦闘は先攻が不利ということが判っていたからです(いわゆる西部戦線)。お互いが迎撃の体制をとったまま、八ヶ月ほどが経過します。

その数か月の間にドイツは北を攻め落とし、戦力と士気を増します。勢いに乗った1940年5月、ドイツはようやくベルギー・オランダ方面から北フランスへの侵攻を開始します。ドイツ軍は二手に分かれており、片方はベルギー(東)側、片方はパリ(南)側から攻めてきたため、英仏連合軍は北海側へ逃げるしかありませんでした。そして行きついた先が、ダンケルクという町だったんです。

そのためダンケルクに追い込まれた英仏の兵士は絶体絶命です。逃げ場がありませんからね。ドイツ軍が本気で攻めてきたら危険でした。

 

ただ、この時のヒトラーは攻勢を緩めます。どうやら、戦車を減らすことに相当ビビっていた、とかなんとか。そのため、ドイツ軍の攻撃が一時止まり、英仏軍人が逃げる余裕ができました。のちにドイツの高級将校も、これは攻めるべきだったと失敗を認めたほどです。

とはいえ英仏の下っ端が、ヒトラーの思惑など知るはずもありません。また、戦闘機による攻撃は続いています。なので劇中では、いつ敵軍にやられるかとビクビクしています。

ダンケルクってどこ?

ダンケルクってどこ?Warner Bros. Entertainment, Inc

フランスの北のはじっこ、ベルギーとの国境も近い港町です。はじっこなので、パリよりもイギリスやベルギーの方が近いくらいの位置です。

ダンケルクからイギリスの東南部までは、海(ドーバー海峡)を挟んで60〜70km。多少迂回したり、場所を選んでも100kmに満たない距離です。気軽には行けませんが、民間のボートでも大きめのものならなんとか往復できるくらいですね。

チャーチルって何?人?

チャーチルは人です。物語が始まる二週間くらい前に、イギリスの首相になりました。

彼の前任(ネヴィル・チェンバレン首相)はヒトラーに対して甘い人でした。いざ戦争が始まっても優柔不断なまま。これらの態度は宥和(ゆうわ)政策と呼ばれており、今では間違いだったと断定されています。

 

一方のチャーチルは真逆です。ドイツがフランスに進行する前から、一貫して強硬な姿勢をとっていました。戦況が悪くなったことで交代し、第二次世界大戦をがっちり戦い抜きました。ダンケル大撤退も、チャーチルに代わってからの出来事です。なので、イギリス本土の政治のシンボルとして名前が挙がっているんですね。

当時から今に至っても、国民からの人気が非常に高いそう。「最も偉大なイギリス人」というランキングでも一位になるほどです。イギリスの歴史を語る上で外せない人の一人ですね。

どうしてスムーズな救助ができないの?

どうしてスムーズな救助ができないの?

劇中で一度だけ触れられましたが、イギリス海軍は戦力を温存しています。イギリスにとって最も大事なのは当然、イギリス本土。ナチスの電撃戦は驚異的な速度が特徴でしたから、できる限り戦力をイギリス本土に留めたかったのでしょう。そのため軍艦がなかなか来ません。

また、軍艦は浅瀬には行けません。もっともサイズが小さい駆逐艦でも、浜辺に寄って直接乗り込むことは不可能です。桟橋があれば乗り込むこともできますが、一度に40万の兵士が押し寄せたら大変なことになります。

なので、兵士が必要としていたのは小型船。これが用意できないから、苦労しているんですね。

 

なお、飛行船を飛ばすのは無理な話です。ドイツの戦闘機が飛び、イギリス空軍がそれに応戦している状態ですからね。海路しか不可能でした。

余談ですが、史実としてはダンケルク周辺海域に、ドイツによる機雷が大量にバラまかれています。映画では描写がありませんでしたが、これも障害でした。申し訳程度に掃海艇(マインスイーパ。機雷を除去するための船)がちょっぴり出てくるだけですね。イギリス空軍に守られる対象でしかありませんでしたが。

三つに分けて描かれる歴史

三つに分けて描かれる歴史Warner Bros. Entertainment, Inc

話は陸・海・空の三つが、それぞれに進行していきます。

従来、歴史を学ぶ上で知る「ダンケルク大撤退」は、どうしても海にばかり注目されがちでした。しかし本当は救出された「陸」の兵士にこそある苦労もあり、一見関係のなさそうな「空」の支えもありました。この映画は、この三つをリアリティをもって描くことに成功しています。

とはいえ映画として語るうえで、視点が分かれているだけならさほど驚くものでもないでしょう。でもそれだけではありません。実はこれらはそれぞれ時間の流れが違っています。

終盤になってようやく三つのタイミングが重なって、一つのカタルシスを生んでいます。その無駄のなさと鮮やかさにこそ、クリストファー・ノーランの才が光っているとも言えるでしょう。アカデミー賞で編集賞を獲得しているわけですから、まさに世界中が認めた構成です。

 

陸(THE MOLE——one week)で描かれるのは、イギリスの高地連隊(ハイランダー)隊員たち。敗走しダンケルクからなんとか生きて抜け出そうとします。兵士の大半はここに属しており、もっとも死者が出るのもここです。

主人公的にスポットが当てられるのが、そのハイランダーのトミー。ワーナーの映画としては信じられないかもしれませんが、これといった特徴も能力もないごく普通の兵士です。せいぜい、浜辺で出会ったギブソンを信じ抜こうとするシーンがある程度。それ以外は何も、人物を知れる部分がありません。

けれど特徴がないからこそ、「戦争に翻弄される、現実にいたかもしれない一兵士」としての立ち位置が際立ちます。なにせ敗走する数十万の軍人のうちの一人なのです。妙ちきりんなキャラを発揮していたら、リアリティがなくなるでしょう。

 

そんなトミーたち、「陸」の時間は、劇中で一週間。七日間のうちにさまざまな出来事を通し、最も過酷な現実を味わうことになります。

THE LAND(陸)ではなく、THE MOLE(モグラ)と題されているのも、その表れなのでしょう。情報も十分にない暗闇で、生きるために必死でもがく……まさに、モグラです。

 

海(THE SEA——one day)を進行するのは、海軍……ではなく、船乗りの一般市民。ダンケルク大撤退では、たくさんの兵をイギリスへと避難させるべく、民間の貨物船や漁船まで徴用されます。それらの船に海軍兵が乗り込んで、ダンケルクへ向かうわけですね。

ただその際に、軍は作戦の概要を市民にも伝えました。すると一部の市民は、海兵に操舵を任せず自分でダンケルクに行って作戦を手伝ったそうです。先述のチャーチルの自著では、400隻ほどがそうだったとか。一般人が自分自身の意思で戦場に行くなんて信じにくいですが、現実にあったんですね。

とある遊覧船の所有者・ミスター・ドーソンは、その一部の市民でした。軍の徴用を受ける際、「船長はこの私だ」と言って自分でダンケルクへ向かってしまいます。息子のピーター、街の青年ジョージも一緒です。三人ともイギリスらしい、フォーマル寄りの服を着替えもしない。けれど、戦場とは似つかないこの三人が奇跡の一端をにないます。

この「海」の時間は劇中で一日。ここでは、勇敢な市民の姿を見せてくれます。

 

空(THE AIR——one hour)は、イギリス空軍に所属する三人組によって話が進みます。彼らは三人とも、イギリス空軍を代表する名機・スーパーマリーン スピットファイアに乗り込む空のファイターです。ダンケルク周辺のドイツ軍機と戦うために飛びます。

颯爽と飛行する彼らですが、三人のうち隊長は早々に退場。話は残る二人、コリンズとファリアに絞られます。うちファリアの計器は故障し燃料の把握がうまくできなるなど、こちらもトラブル続き。それでも淡々と職務を全うする姿には、「陸」「海」にはない華やかさがあります。

「空」の時間は短く、わずかに一時間。だからといって出番が少ないわけではありません。閉じ込められた歩兵や、民間の遊覧船よりも戦闘機はよほど速い。そんなことを思わせます。

陸海空三つの軸は、序盤では一切関わり合いがありません。終盤になって「海」の一日が「陸」に追いつき、「空」の一時間が「海」に追いつくのです。それにより、ひたすら戦争の辛さを映さざるを得ない「陸」の物語に、程よいスパイスがかかります。ここにノーランの神業を感じさせます。

当時の世界へと引き込むような音響

当時の世界へと引き込むような音響

近代の戦争では実に兵器が多いですよね。銃はもちろん、戦闘機と機銃、爆撃、軍艦と魚雷。『ダンケルク』には出てきませんが、戦車や毒ガスも。それぞれ別物ですが、人を殺すに十分な殺傷力をもっています。どれも当たればひとたまりもありませんよね。

こういった兵器の音に対して、この作品は忠実です。無骨に近づいてくる金属や爆薬の音が死や絶望に直結してくる。なすすべもない下っ端の恐怖を表すのに、これほど適したものもないでしょう。

 

また、劇伴として多用されるのが時計の秒針の音。これがさらに、気持ちを急かします。

「陸」「海」「空」いづれも時間との闘いでもありますから、より説得力があります。英仏連合軍にとっては、いつドイツ軍が攻めてくるやもわかりませんからね。早くしなければ、40万の兵士の命が危ない!そんなハラハラした思いを抱かせます。

戦争映画の型にとらわれない

戦争映画の型にとらわれないWarner Bros. Entertainment, Inc

戦争としてのリアリティや臨場感についてこれだけ言及すると、「血なまぐさい兵士の死体とか映されるんじゃ」と思われる人もいるでしょう。流血を敬遠して、戦争映画を観なかった……という意見は、なにも不思議ではありません。銃で撃たれて血まみれになったり、刺されて血が噴き出すような描写を嫌う人は少なくないと思います。

でも実は『ダンケルク』に、ぞっとするような暴力シーンは皆無です。現にこの作品には年齢制限がありません。12歳以下に見せても不都合な部分はないほどです(話としては難しいので、本当に子どもが観たら寝てしまうと思いますが)。

そう。お気づきかと思いますが、『ダンケルク』はぞっとするようなホラー・バイオレンス要素を排除しながら、戦争のひどさ・むごさを伝え、現実味を持たせることに成功しているんです!

「戦争は人が死ぬからダメ」という意見は至極真っ当ですが、単にそれだけで済ませていいものじゃない。どこまで逃げ切れるかもわからず、生きようとする人が突然死んでしまう。1940年5月のダンケルクでは、40万人もの兵士たちがそう思っていたことでしょう。彼らの空気・雰囲気を、言葉にも流血にも頼らずに感じさせる!これが、『ダンケルク』のすごさの一つでもあります。

絶望と希望を分ける編集が見事!

絶望と希望を分ける編集が見事!

流血もないのに、この映画では軍人たちの絶望や死をひしひしと感じることができます。なぜでしょう?そのキーワードは「閉塞」です。

『ダンケルク』の人物たちは何度も何度も、閉じ込められることになります。それは時に海の中であり、遊覧船の部屋の中であり、軍艦の中であり、コクピットの中であり、オランダ商船の中であり、流れ出した重油の中であり。もちろん大多数は、ダンケルクの浜辺に閉じ込められたまま身動きが取れないでいます。

先述の通り、ダンケルクから陸路で逃げることはできません。残された希望は海にしかない。それでもなんとか生き抜こうとする者は、「陸」「海」「空」のいずれにおいても、狭い空間へと入り込みます。ダンケルクから逃げてそういった空間にたどり着いたとしても、逃げられない点では同じ。ほとんど何もできないまま、別の脅威にさらされることばかりです。溺れる危険であったり、ダンケルクの恐怖のフラッシュバックであったり、敵軍の魚雷であったり、銃弾であったり、火事であったり。「陸」の兵士たちはこれでもかというほど、希望を絶たれ続けます。

ダンケルクに居座り続けても、救援が来るかはわからない。敵軍が攻めてくる方が早いかもしれない。どちらかが来る前に、空爆されてしまうかもしれない。かといってあの手この手で海に出ても、うまくいきません。

 

さらに怖いのは、この映画では敵の姿が極端に映らないようになっていることです。

いったいどこから撃ってきているのか?敵の戦艦がいるのか?潜水艦がいるのか?どこから魚雷を撃ってきたのか?それがわからない。わからないから、一層怖い。敵がはっきり見えていれば、反対方向に逃げれば済む話ですからね。どこにひそんでいるか一切不明、というのがサバイバル要素ももたらしています。

……そうして繰り返される絶望は、血のインパクトがなくても十分すぎるほど伝わってきます。

 

ただそれでも、兵士たちは生に執着します。中には少数、自暴自棄になって入水自殺を図る者もいました。けれど大多数は生きることを諦めません。ダンケルクの浜で待ち続けるか、一か八かで海に出るかの違いはあれど、「ここで死ぬつもりはない!」という意思はずっと消えません。

だからこそかすかな希望がとても大きなものに錯覚できるし、束の間喜べてしまう。けれど喜びがまた絶望にそのまま反転。この展開の運び方も、『ダンケルク』の醍醐味の一つでしょう。もし二流の監督が同じことをしたら、「また同じ展開かよ」と思わせるに違いありません。

DVDでは、作品世界に入り切れない…

DVDでは、作品世界に入り切れない…

ここまで再三主張したように、この映画のスゴさは圧倒的な臨場感にあります。そしてこの臨場感は、映像と音響の質に大きく左右されてしまいます。作品そのものがどれだけよくできていても、ディスプレイの周りが自分の家の壁だったり、スピーカーがのっぺりしていると現実に引き戻されてしまいますからね。

もちろん全ての映画が、臨場感・リアリティを提供してくるわけではありません。作り物・ファンタジーとして楽しむものもあれば、脚本・シナリオが見どころの映画もあるのは、言うまでもないことでしょう。そういった作品にとってリアリティはさほど重要ではありません。架空の物語として楽しめますし、その方が気楽です。

けれど『ダンケルク』は別です。まるで自分が戦場にいて、苦しむ兵士と重なったような気分を味わうべき映画です。そのためには、可能な限り映像と音響の質にこだわりたい! 生々しい演出が、観客を作品世界に引き込んできます。

 

実際この作品は、IMAXという通常よりも大きいフィルムで撮影されています。そのため、専用の大きいスクリーンへ映像をいっぱいに映すことが可能です。音響に関しても、アカデミー賞で録音賞・音響編集賞を共に受賞していることが、コダワリを示すなによりの証拠になると思います。

2018年も終わろうとしている現在、この作品を劇場で観る機会は、なかなか無いと思います。大都市の名画館ならありそうですが、年に一度あるかどうかでしょう。IMAX対応ともなると、もはや国内では不可能かもしれません。でももし、そうした貴重な機会に巡り合えた場合は是非観てみてください。

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