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映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』ネタバレ感想・解説・考察!実話をもとにタクシー運転手とジャーナリストの交流を描く感動作!

映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』のあらすじ・内容

映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』は、1980年に韓国で起こった光州事件を報道するドイツ人ジャーナリストと、韓国のタクシー運転手との思いがけない交流を描いた作品です。

実話をもとに構成された本作は韓国で公開されるや否や、たちまち大ヒットとなりました。笑いあり涙ありの展開が終始楽しめるのはもちろんのこと、鑑賞後はその後のふたりについて調べたくなることでしょう。

今回はそんな映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』の感想や解説、考察について紹介します。なお、ネタバレを多く含んでいるので、視聴前に読む場合はご注意ください。

映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』を観て学んだこと・感じたこと

・史実をもとに描かれたタクシー運転手の活躍が素晴らしい
・おっさんが主人公!ソン・ガンホの熱演に注目
・光州事件を呼び水としてジャーナリズムの重要性を伝える作品

映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』の作品情報

公開日2018年4月21日
監督チャン・フン
脚本オム・ユナ
出演者キム・マンソプ(ソン・ガンホ)
ピーター(トーマス・クレッチマン)
ファン・テスル(ユ・ヘジン)
ク・ジェシク(リュ・ジュンヨル)

映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』のあらすじ・内容

映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』のあらすじ・内容

ソウル市内に住むタクシー運転手キム・マンソプは、持ち前の明るさと人の良さが取り柄の男。決して豊かな生活ではないものの、娘とふたりでの暮らしに彼は満足していました。政治には興味がない一方で、韓国ほど住みやすい国はないとマンソプは語ります。

その頃、日本から韓国へひとりのドイツ人が入国します。彼の名前はピーター、東京に派遣されたジャーナリストであり、韓国内の都市である光州の情勢を報道するためにやってきました。

光州への正規ルートが使えないため、ピーターは10万ウォンを用意してタクシー運転手を手配します。大金に目がくらんだマンソプは、光州の情勢など気にすることもないまま、ピーターを乗せてタクシーを走らせるのでした。

時は1980年5月、光州ではまさに韓国史上最大の民衆蜂起のひとつ、光州事件が発生していたのです。

映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』のネタバレ感想

【解説】韓国で大ヒット、実話をもとにした最高のエンターテイメント

【解説】韓国で大ヒット、実話をもとにした最高のエンターテイメント(C)2017 SHOWBOX AND THE LAMP. ALL RIGHTS RESERVED.

映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』は、韓国のタクシー運転手マンソプとドイツ人ジャーナリストのピーター、ふたりの奇妙な出会いと別れを描いた物語です。実際の出来事である光州事件を報道するピーターと、彼を光州まで運び、そして国外へ逃がすために奔走するマンソプ。軍と市民との衝突による惨状を目の当たりにした彼らは、事件の様子を全世界に伝えるため、互いのできることを成し遂げようとします。

本作は実際にあった交流や事件がもとになっています。主人公のキム・マンソプは実際のタクシー運転手、キム・サボクがモデルです。また、ピーターは実際に光州事件の様子を撮影し報道した、ドイツ公共放送連盟の東京特派員ユルゲン・ヒンツペーターがモデルになっています。ユルゲン・ヒンツペーターが光州事件を報道するにあたり、キム・サボクがタクシー運転手として彼を運んだことは事実です。本作はその内容をもとに、一部フィクションを交えて構成されています。

 

前半ではマンソプのゆるい感じが笑いをもたらします。大声で歌を歌いながらタクシーを流す様子や、友人である大家へ家賃を滞納しながらもお金を借りようとするなど、マンソプの明るくおとぼけなキャラクターには思わず笑ってしまうはず。しかし、そんなコメディタッチな展開の端からは、重苦しい空気が滲み出ていることにすぐ気がつくでしょう。マンソプが生活しているソウル市内でも、光州事件の余波ともいうべき学生運動が見られるなど、軍事政権下での民衆蜂起という緊張が顔をのぞかせています。

物語の後半ではコメディ的な要素がなくなり、光州事件における軍と市民との衝突、そして光州事件の事実を世界に伝えようと駆け回るマンソプとピーターの様子が描かれます。ピーターを無事に国外へ脱出させるために、マンソプをはじめとする多くのキャラクターが彼へ協力していくことに。悲惨な状況を食い止めたいと願う光州の人々が、マンソプとピーターへ想いを託してゆくドラマチックな展開は、実際の出来事であったという点を抜きにしても目頭を熱くさせるはずです。

光州事件という韓国史上の痛ましい事件を描きながらも、そこから目が離せない展開につなげていくストーリー構成は、さすが監督チャン・フンだといえるでしょう。2011年に公開された『高地戦』では朝鮮戦争による悲惨さや狂気をリアルに描くなど、史実をもとに物語を組み上げるチャン・フンの手腕には定評があります。『タクシー運転手 約束は海を越えて』もまた、不思議な縁で実際の事件に絡むことになったマンソプとピーターの交流が絶妙なバランスで表現されています。

【解説】ソン・ガンホ演じるタクシー運転手がとにかく熱い

【解説】ソン・ガンホ演じるタクシー運転手がとにかく熱い(C)2017 SHOWBOX AND THE LAMP. ALL RIGHTS RESERVED.

『タクシー運転手 約束は海を越えて』の主人公のひとりであるキム・マンソプは、ソウル市内でタクシー運転手として生計を立てている男です。妻を早くに亡くし、11歳になる娘とふたりで暮らしているマンソプ。タクシーの売上げはいまいちなのか、家賃を4カ月も滞納しているなど、生活は苦しい様子です。

マンソプはお金に少しうるさく、政治への興味や関心はほとんど持っていません。しかし、基本的にお人好しで、困っている人をみると放っておけない性格をしています。そのことが仇になり、客にだまされることもしばしば。物語の冒頭では財布を忘れたという夫婦に詰め寄るも、結局連絡先だけを聞いて彼らを送り届けるなど、具体的なエピソードから彼の人の良い部分が印象強く描かれます。

 

そんなマンソプは、日本からやってきたドイツ人ジャーナリストのピーターと出会い、彼が光州へ行きたがっていることを知ります。奇しくもその日は1980年5月20日であり、光州事件のまっただ中。韓国の民主化運動の立役者である金大中が逮捕され、さらには戒厳軍が光州市で大学を封鎖したことにより、学生と軍の衝突が激化していました。

そのため、光州市に入ることは難しいとされていますが、政治に関心のないマンソプは、そんな光州の状況などまったく知りません。マンソプはピーターが提示する10万ウォンもの報酬に釣られる形で、彼を光州へ送り届けようとします。

学生運動に参加する青年ク・ジェシクや、光州のタクシー運転手であるファン・テスル。光州で暮らす彼らとの出会いを経て、やがてマンソプは光州における軍と市民との凄惨な衝突をその目に焼き付けることになります。しかし、このときはまだマンソプにとって光州事件がシリアスなものには感じられません。それよりも、11歳の娘をソウルにひとり置いてきたことのほうが、彼にとっては一大事なのです。彼の事情を知らないピーターには、マンソプが政治に関心がなく、保身だけを気にしているように見えています。

 

マンソプとピーター、ジェシク、そしてテスルと出会った日の夜、彼らは外国人ジャーナリストのピーターを拘束しようとする私服軍人に追われます。そこで、ふたりを逃がそうとしたジェシクが捕らえられてしまいました。かろうじてテスルの家に逃げ帰ったマンソプとピーターは、自分よりもずっと若いジェシクが身代わりになったことに心を痛めます。マンソプは自責の念に囚われながらも、娘のところへ帰らなければならないと、ひとりソウルへタクシーを走らせるのです。

ここで、マンソプの気の優しい性格が一気に爆発するのが本作の見どころでしょう。タクシーを走らせながら苦悩するマンソプは、自分が戻っても状況は変わらないと理解していました。しかし、彼はタクシー運転手として、やり残したことがあるのです。つまり、客として光州に残してしまったピーターを迎えに行かなくてはならないのだと。それはタクシー運転手としての矜持であるといえるでしょう。そして、軍の弾圧を受ける市民の助けになりたいという気持ちの表れであったともいえるのです。

マンソプの優しい性格は、光州事件という大きな渦のなかでも決してぶれることはありません。しかも、その性格が困っている客を見過ごせないタクシー運転手として表現されているのがにくいところ。マンソプができること、そしてピーターがジャーナリストとしてできることをそれぞれ突き詰めようとするのは、根底では同じであるといえるでしょう。自分の職業を通じて光州事件を世界に伝えようとするという意味においては、マンソプもまたジャーナリズムを体現するひとりなのです。

【解説】ピーターの活躍と苦悩にも注目

【解説】ピーターの活躍と苦悩にも注目(C)2017 SHOWBOX AND THE LAMP. ALL RIGHTS RESERVED.

一方、ジャーナリストであるピーターは本作のもうひとりの主人公です。東京特派員として日本の穏やかな生活に倦んでいたピーターは、知り合ったBBCの特派員から光州できな臭い動きがあることを知ると、危険を顧みずに光州へ渡ることに。ピーターのそんな登場シーンは、彼が世界に起こっている現実を報道したいという意欲を持った、生粋のジャーナリストであることを伺わせます。

そんなピーターは韓国に到着後、タクシー運転手のマンソプに光州まで運んでもらうことになりました。しかし、ピーターはマンソプが自分の保身とお金のことを第一に考えているように見えたため、当初から彼を馬鹿にしたような様子をみせます。マンソプの英語力も高いとはいえず、コミュニケーションの不足は彼らの仲を険悪なものにしていくのでした。そして、お互いのことをきちんと理解しないまま、ついにふたりは殴り合いを繰り広げることに。

そんなピーターも、ジェシクが通訳をしてくれたことによって、娘をひとりソウルへ置いてきたマンソプの辛さを少しずつ理解していきます。そして、テスルの家で同じ夕食をとったマンソプとピーターは、テスルやジェシクの取り成しもあって、ようやく打ち解けた様子をみせるのです。同じ釜の飯を食うとはよく言ったものですが、自然とふたりが、そして4人が馴染んでいく様子はどこかほっこりとした印象を受けるでしょう。それだけに、私服軍人にジェシクが捕らえられたときの彼らの様子は、見ていて辛いものがあります。

ジェシクの身を案じるマンソプとピーター。けれども、娘のことが気がかりなマンソプがソウルへ戻っていこうとするのを、ピーターは止めることができません。

 

翌日、マンソプが光州へ戻ってきた頃には、光州事件の犠牲者はたった1日で膨大な数に膨れ上がっていました。そこにはうなだれるテスルとジェシクの遺体が。ピーターは、目の前で起こったむごたらしい現実にカメラを向けられず、ただ打ちひしがれています。けれどもマンソプは、ジェシクの死に深い悲しみを覚えながらも、ピーターに対してこの悲惨な状況をカメラに収めろと檄を飛ばすのです。

ここでピーターが気力を振り絞って再びカメラを向けていく様子は、ジャーナリストとしての使命を思い出した瞬間として印象深いものがあります。それは図らずも、自分に使命を思い出されてくれたマンソプとの絆が深く結ばれた瞬間でもあるといえるでしょう。ピーターは死傷者であふれる病院の悲惨な状況を、軍によって容赦無く射殺されていく市民の姿を必死の覚悟で記録していきます。

【解説】おっさんたちの活躍を支える魅力的な脇役

【解説】おっさんたちの活躍を支える魅力的な脇役(C)2017 SHOWBOX AND THE LAMP. ALL RIGHTS RESERVED.

『タクシー運転手 約束は海を越えて』は光州事件におけるタクシー運転手とジャーナリストの交流が中心となっている一方で、彼らを支える脇役がどれも印象深く、魅力的です。たとえば、デモへ積極的に関わろうとするジェシクは、少年のようなあどけなさを残しながらも、軍事政権下で上辺だけの民主主義が採用されている韓国の状況を憂いています。また、英語が話せるため、自然とマンソプとピーターをつなぐキーパーソンとしての役割を担っているのが彼の特徴です。

ジェシクはマンソプと同じ韓国人ですが、彼の政治や思想に対する考え方は、マンソプとはまったく異なっています。同じ国でこうも考え方が違う人がいるというのは、1980年代の韓国における民主主義運動の高まりを印象づけるとともに、当時の情報統制がいかに厳しいものであったかを示唆しているといえるでしょう。

 

一方、テスルをはじめとする光州のタクシー運転手も、気の良い人たちばかりです。当初、光州のタクシー運転手たちは、とある勘違いからマンソプが悪質な運転手だと誤解しており、非常に嫌な感じのキャラクターとして描かれます。しかし、故障したマンソプのタクシーを修理してくれるなど、困っている人を見過ごせないという点はマンソプと同じです。

そのなかでもテスルは優柔不断でありながらも、最初からマンソプのことを信用しているなど、心優しい性格が印象的なキャラクターだといえるでしょう。ソウルに置いてきた娘が気がかりなマンソプを理解し、さらにはジェシクを自分の弟のように可愛がるなど、マンソプに負けない位に気の良い人物として描かれます。

ジェシクと同じように軍の非道に対して憤るタクシー運転手たち。彼らは光州のいち市民として、ピーターに光州事件の現実を記録し、世界に伝えて欲しいと望むことになります。そして、市民が傷ついていくのを見過ごせない彼らがとった行動とは、タクシー運転手として車を盾にバリケードを築き、軍の発砲から市民を守ることでした。動けばすぐに射殺される状況のなか、緑のタクシーの群れが果敢にバリケードとなり市民を救う様子は、中年男性の活躍も相まってエールを送りたくなります。

マンソプ、ピーター、ジェシク、テスル、そして光州のタクシー運転手たち。彼らが同じ目的に向かって絆を強く結んでいくという展開は、実はたった数日のあいだの出来事なのです。

【解説】光州事件が勃発した軍事政権下の1980年代

【解説】光州事件が勃発した軍事政権下の1980年代(C)2017 SHOWBOX AND THE LAMP. ALL RIGHTS RESERVED.

『タクシー運転手 約束は海を越えて』の物語の中心となっている光州事件。韓国においては軍事政権下における軍と、民主主義を掲げて蜂起した民衆が衝突した痛ましい事件として有名です。事件が勃発した1980年代は、韓国にとって非常に重要な時期であったといえるでしょう。

当時は朝鮮戦争から長く続いた軍事政権が陰りをみせ始め、民主化のムードが一気に高まっていた時代です。しかし、これを恐れた軍は全国に戒厳令を発するとともに、民主化の指導者であった金大中を逮捕するなど、軍が再び圧政を強めようと画策した時代でもあるといえるでしょう。なお、光州事件の直接の引き金は諸説あるものの、その遠因は金大中の逮捕によるところが大きいといわれています。

韓国では多くの人が知っている事件であるせいか、光州事件そのものについて、本作で詳細に説明されることはありません。一方、私たち日本人のなかで光州事件のことを知っている人は、ほとんどいないのではないでしょうか。事件に馴染みのない私たちが本作を見た場合、ほんの少し前には韓国が軍事政権下にあり、軍と市民が衝突して多数の死傷者を出していたという事実に衝撃を受けるかもしれません。

 

作中における時期は明確であり、1980年5月20日とその前後数日のことが描かれています。それもそのはず、光州事件が起こっていた実際の期間は、1980年5月18日から27日にかけてです。デモの参加者は最終的に数十万人にも膨れ上がり、市民軍が道庁を占拠するなどしましたが、27日には韓国政府によって鎮圧され、事件は収束しました。当時は国による情報統制が敷かれ、光州事件についての詳細は不明なままだったといわれています。

しかし、光州の市民の口から徐々にその実態が知られることとなり、光州事件は軍事政権の暴虐を象徴するものとして、反独裁民主化運動の精神的な基盤となっていくのです。実際、その後の1987年には韓国の民主化を決定的に後押しした6月抗争が勃発しており、光州事件からの有機的なつながりを感じさせます。

国の行方を左右する契機となった光州事件の裏で、いちタクシー運転手がジャーナリストに協力して世界に事件の惨状を伝えたという事実は、韓国国民からすれば興味を引かれるに決まっています。もちろん、魅力的なキャラクター配置に加えて、笑いと緊張感の両方をバランス良く保っている本作は誰が見ても楽しめることでしょう。しかし、映画を見る前後で事件のことを少し調べてみると、より作品への理解が深まるはずです。

【解説・考察】ジャーナリズムの重要性を伝えてくる意欲作

【解説・考察】ジャーナリズムの重要性を伝えてくる意欲作(C)2017 SHOWBOX AND THE LAMP. ALL RIGHTS RESERVED.

本作における光州事件についての情報統制を印象づけるものとして特徴的なのが、メディアの偏向的な報道です。韓国内の新聞やラジオといったメディアは、学生や市民が暴徒と化しているという論調でもって報道を行っています。そのため、同じ国内の都市であるソウルにすら、光州の現状が正確に伝わってくることはありません。

これに対して、目の前で起こっている光州の惨状を世界に訴えようと奔走するマンソプとピーターの姿から、本作はジャーナリズムの重要性を強く示そうとする物語となっています。特に、目の前の惨状に憔悴しきったピーターをマンソプが叱咤し、カメラを向けろと強く後押しするシーンは、ジャーナリズムの使命を表現しているといえるでしょう。

 

ジャーナリストは、どんな状況においても凄惨な現実を伝えることを優先しなければならない時があります。目の前で亡くなっていく市民を撮り続けるピーターの姿を考えるうえで理解しておきたいのは、かつてピューリツァー賞を受賞した報道写真家、ケビン・カーターの存在であるといえるかもしれません。

1994年、飢えで倒れそうになっている少女と、それを狙ったハゲワシの様子をとらえた『ハゲワシと少女』という写真で、ケビンは優れた報道に送られるピューリツァー賞を受賞しました。しかし、飢餓によって人間がハゲワシに襲われるというショッキングな状況をとらえたこの作品によって、後にケビンは非難されることになります。つまり、なぜ目の前で襲われそうになっている少女を助けなかったのか、と。この出来事は「報道か人命か」というジャーナリズムの問題として、たびたび議論になりました。

 

もちろん、人命よりも報道を優先するという主張には賛否両論があるでしょう。しかし、報道の内容に優劣をつけて、見たくないものに蓋をするというのであれば、それはジャーナリストとは呼べないのではないでしょうか。

目の前に起こっている凄惨な現実から目をそらさずに記録すること。そして、実際に起こっている問題として世界の人々へ報道すること。それがジャーナリストのただひとつの責務です。それは、報道か人命かという二者択一の問題にすり替えて、人命を優先せよと非難されるべき問題ではないはずです。

病院や広場で増え続ける死傷者のへカメラを向けるピーターの姿は、痛ましい現実を見据え、世界に必死で訴えかけようとするジャーナリストの精神を体現しているといえます。そして、これからも増え続ける暴力を少しでも防ぐために、ピーターの代わりにマンソプが、そして光州のタクシー運転手たちが、「タクシー運転手」として市民を守ろうとする姿。彼らたちの活躍が、ジャーナリズムにおける二者択一の問題そのものを壊し、ジャーナリズムの本質を突きつけるものとなっていくのが、本作のもうひとつの魅力だといえるのです。

本作の最後には、ジャーナリストとして光州事件を報道したことを評価されるピーターと、タクシー運転手を続けるマンソプの姿が映し出されます。視聴後はぜひ、その後のふたりがどのようになったのかを調べてみてください。

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