映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は、大人気スペースオペラ「スターウォーズ」シリーズの外伝作品として2018年に公開された映画です。
表題にもあるように、「スターウォーズ」シリーズでは脇役的な存在でありながら、高い人気を誇ったキャラクター「ハン・ソロ」に焦点を当て、ソロがシリーズに登場する以前の青年時代を描いています。
今回はそんな『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の個人的な感想や考察を書いていきます!
ただし、今作および「スターウォーズ」シリーズのネタバレを数多く含みますので、その点はご了承ください。
目次
映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』を観て学んだこと・感じたこと
・ハン・ソロというキャラクターの魅力を再認識させられる!
・西部劇のクラシックな雰囲気も合っていた
・良くも悪くも「リアル」な物語で、スターウォーズらしくはないかも
映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の基本情報
公開日 | 2018年6月29日(日本) |
監督 | ロン・ハワード フィル・ロード&クリス・ミラー |
脚本 | ジョナサン・カスダン ローレンス・カスダン |
出演者 | ハン・ソロ(オールデン・エアエンライン) チューバッカ(ヨーナス・スオタモ) ベケット(ウディ・ハレルソン) キーラ(エミリア・クラーク) ランド・カルリジアン(ドナルド・グローヴァー) ヴァル(タンディ・ニュートン) |
映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』のあらすじ・内容
スターウォーズ・エピソード4の約10年前が舞台です。アウトローの運び屋として違法行為に手を染めていたハン・ソロは、偶然にも高価な燃料コクアシウムを入手します。
そこで今の貧しい生活から抜け出すため、所属していた組織に隠れて恋人のキーラとの逃避行を計画しますが、あえなく捕まってしまいます。大慌てて言い訳を並べるソロでしたが、隙をついて逃亡に成功します。
その後出国ゲートに向かった二人。しかし、ゲートでキーラが囚われてしまい、ソロは独りゲートを通過することを余儀なくされます。
ゲートを通過できたのはいいものの、港から出る方法がなく右往左往していたソロは、帝国軍の求人募集CMを耳にし、そのまま求人係のもとへと足を運びます。
名前も家族もなかった彼は、係員から「ソロ」という姓を与えられ、帝国軍のパイロットとしての訓練をうけることになったソロ。しかし、順風満帆なパイロット生活とはいかず、その後に出会った師や生涯のパートナーの存在によって、波乱に満ちた生涯が幕を開けます。
映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』のネタバレ感想
「過去外伝」という立ち位置ながら、大きな矛盾がなかったことは評価したい
まず、今作の製作陣をみて感じたことは「従来のスターウォーズとは毛色が違うだろう」ということでした。今までの作品と比べると、全体的に新進気鋭の製作陣がそろったなと感じさせられます。
ただ、そこで少し気がかりだったのは、今作が「過去」を描いた外伝であるという点です。世の中には様々な外伝作品がありますが、既存の作品の過去を描いた外伝や「エピソード0」と呼ばれる作品群は特に製作上の制約が多く、撮影が難しいという事実があります。
最も重要な点としては、過去の作品(作中時系列的には最新)との矛盾が出ないように、考証を重ねなければならないということが挙げられます。例えば、ハン・ソロは本編で様々な行動をとり、またその中でわずかではありますが自身の過去についても言及しています。そのため、こうした行動・言動や価値観との大きな矛盾を出さないようにしなければなりません。
結論から言えば、この点に関しては映画のクオリティを損なうことなく、忠実に再現がされていたのではないかと思います。筆者もシリーズにはそれなりに精通している方だと自負していますが、少なくとも作品の根幹を揺るがしてしまうようなタイムパラドックスは確認できませんでした。
過去作を作ってきたスタッフたちの監修もあったのだとは思いますが、シリーズと深いかかわりがあったわけではない製作陣が、この問題を上手にまとめあげたという点は大いに評価すべきでしょう。
数々の「出会い」を描きながらソロの「若さ」が見れる新鮮さも
今作は、本編ではお馴染みの相棒・チューバッカやミレニアム・ファルコン号との出会いもしっかりと描かれています。これらはソロの過去を描くには必須ともいうべきエピソードでもあり、ある意味では公開前から予測されていた範疇でした。しかし、こうした予想通りの出会いとは裏腹に、ソロのキャラクターに関しては本編との違いも散見されます。
本編におけるソロのキャラクターは、人をあまり信じずタフで泥臭い凄腕ガンマンといったところでしょう。こうしたダーティーなキャラクターと、一方で表面的には女好きで借金もちのキザな姿のギャップに魅了されるファンが世界中に存在していました。
しかし、今作におけるソロは、そうした「未来」におけるキャラクターとはやや異なっています。わりと簡単に人を信じ、人情を感じさせるようなシーンも目立ちました。全体的な印象としては、稼業こそアウトローなものの好青年という面が強かったように感じます。この点は、まさしくソロの若さから生じる青臭さともいうべきで、後のキャラクターを考えると映画では描かれない期間にさまざまな苦労があったことが想像できます。
こうしたソロのキャラクターは、周囲のファンの間でも議論になっていた記憶があります。あくまで印象ですが、ソロの熱心なファンほどこうした性格の変化に否定的だったように感じます。やはり、ファンほど自身の中で憧れる「ハン・ソロ」像との相違が気になってしまうのでしょう。
ただ、個人的にはむしろ人間らしさを感じる「リアル」な変化だと感じました。後ほど触れますが、今作はスターウォーズシリーズの中では異色の作品であり、「リアリティ」を追求した映画という特徴があります。人間の性格は日々変化していくものであり、ましてや宇宙の裏稼業に手を染めている立場のソロは、人間の悪意と近い距離で接していたと考えられます。こうした環境を考えれば非常にリアルな性格の変化ともいえ、少なくとも全面的に否定される要素ではないと感じています。
【解説】公開前の予想通り展開された「宇宙西部劇」
先ほども今作への懸念点について少し触れましたが、その点同様に公開前から予想されていたのが「宇宙西部劇」のようなシナリオになるのではないかという点です。そもそも、ソロはスカイウォーカー一味として活動こそしますが、エピソード4〜6の世界観ではジェダイが「絶滅」したとされていたように、ソロも当然ジェダイではありません。
こうなってくると、必然的にシナリオはスターウォーズのルーツである「西部劇」に回帰していくのではないかと推測されていました。今でこそ「スペースオペラ」として大作SF映画の頂点に君臨するスターウォーズですが、発想の根本にはジョージ・ルーカスが愛した西部劇と日本映画がありました。ダースベイダー役のオファーが、黒澤明の映画で大きな存在感を放っていた三船敏郎のもとに届いたというのは有名なエピソードです。
こうした「武士」の要素が、ライトセイバーを用いた剣劇へと発展していきました。しかし、ハン・ソロはジェダイではなくガンマンであり、基本的には愛すべき「悪党」です。こうした前提を考慮に入れると、これらの設定を生かす最適な舞台が「西部劇」なのです。
西部劇の劇中では、主人公が根っからの善人であるということはほぼありません。イーストウッド主演の映画などで馴染みがあるかもしれませんが、たいていの場合はキザな悪党です。そして、もちろん西部劇で欠かせない武器として真っ先に挙げられるのが「銃」なのです。
これだけの要素がそろえば、西部劇としてのシナリオが展開されると考えるのが妥当でしょう。そして、その考えは製作陣にも共通していたようで、西部劇の要素をアメリカ西部から宇宙へと引き継いだ「宇宙西部劇」ともいうべき世界観が構築されました。
これは、製作スタイルとしては「手堅いな」というのが正直な印象です。大多数のファンが予想していた通りの内容になっているので、良くも悪くも予想通りといえるでしょう。もちろん、外伝といえども大作シリーズを構成する一作品であり、無理に個性を発揮しようとしなかった点は冷静な判断だったと考えられます。
【解説】コメディ調の作品であり「ローグワン」とは明確な違いが
近年公開された外伝作品としては、今作のほかに『ローグワン/スター・ウォーズ・ストーリー』があります。この作品はエピソード4の直前を舞台にしており、反乱軍が奮闘するもののベイダー卿の絶対的力の前に蹂躙されるという、絶望感が漂うシリアスな作りが特徴の作品です。
一方の今作は、もちろんシリアスな場面もありますが全体的にはややコメディタッチで描かれていた印象が強く、あくまで「西部劇」的ないち子悪党の物語という側面が強かったように感じます。
こうした点からも、帝国の絶望感をこれでもかと叩きつけてくるような「ローグワン」とは明確な違いがあります。そのため、今作は比較的ライトな気分で観られる映画である一方、強烈なインパクトを植え付けられるという印象はあまり感じませんでした。
これはどちらが映画として優れているかという問題ではなく、単純にコンセプトの違いがあるのだと思います。そのため、一口に外伝シリーズといっても、さまざまな作品ごとのカラーがあるというのが現状です。今後もいくつか外伝シリーズの製作が仄めかされていますが、良くも悪くも製作陣次第なところがあり、封切まで作品カラーの予想が難しいといえそうです。
【考察】良くも悪くも「リアリティ」を追求した作風は、賛否が分かれる
先ほどソロの性格について触れた際、良くも悪くもリアリティを追求した作品であることは言及しました。この点に関しては、ソロの性格だけではなく作品全体的に影響がみられます。最も顕著にそれを反映しているのが、今作の戦闘シーンではないでしょうか。
スターウォーズシリーズの戦闘シーンといえば、大規模で大迫力の戦闘が見所でした。宇宙での決戦では豪勢なCGと魅力的なSF兵器によってさながら大戦争が繰り広げられています。また、ジェダイの戦闘シーンでもライトセイバーやフォースといったジェダイ特有の戦闘技術をふんだんに盛り込み、激しくも美しく見栄えする闘いが長所の一つでした。
しかし、今作はジェダイが登場しないこともあって、そうした従来のスターウォーズらしい戦闘シーンはみられません。もちろん、全くSF兵器が登場しないわけではありませんが、そうした装備を大迫力の映像で展開するというよりは、あくまで現実の戦闘を忠実に再現しようとする意図のほうが強かったように思えます。
従来のスターウォーズらしい戦闘の特徴であった「見栄え重視」の傾向が、「リアリティ重視」の傾向に変化しているのがわかります。これまでよりも戦闘に関わる人数や見栄えする演出は抑えめでしたが、一方より丁寧で現実感のある演出が増加しているといえます。
ただ、今作の戦闘シーンはそもそも異なるコンセプトでつくられているという点を差し引いても、ややスケール感が不足しているという印象は否めません。これまでの作品で我々を魅了していた「見栄え」という要素を削ったわりには、やや地味でドライな戦闘シーンに終始してしまっているという印象があります。
この作品に「スターウォーズ」という冠がついていなければ、もっと変わった評価になったのかもしれません。しかしながら、やはりその冠のもとで製作された作品である以上は、このスケール感不足は大きな欠点といわざるを得ません。
そのため、従来のシリーズとはそもそもコンセプトが異なるという事実を踏まえてから鑑賞する必要があると感じています。もちろん、ソロを主役にした以上こうした映画に仕上がることはある程度やむを得ないのでしょうが、それが分かっているのであれば、そもそも映画として制作しないという選択肢もあったのではないかと思います。
【考察】興行収入が、映画の出来以上に低迷した理由
今作についてはややスケール感に欠けるところがあるとはいえ、映画としての出来そのものは決して悪くはありません。この記事でも、好みが分かれる点が多いために賛否両論が存在することは言及しています。
ただ、結論から言えば今作は興行として失敗したと評価されるのが一般的です。総製作費は本編である『フォースの覚醒』を超える2億5000万ドル以上であることが報じられており、興行的には相当な期待感とともに送り出された作品といえるでしょう。
しかし、全米の興行収入はディズニーが予測した数値を下回るものであることが報道され、スターウォーズシリーズとしては低調な売り上げに終始しました。この理由については、映画の出来そのものが悪かったというよりは、『最後のジェダイ』への失望感と、関係作品の公開ペースが関係していると推測できます。(興行収入は3.9億ドル)
まず、本編として一昨年の末に公開された『最後のジェダイ』は正当な続編ということで大いに注目されたものの、内容はかなり賛否が分かれるものであり、日本でも町山智浩などの著名な映画評論家からは酷評される結果となりました。これは決して日本に限ったことではなく、世界中でも大きな論争となっていたことは記憶に新しいかと思います。そのため、かつては「スターウォーズ」の名前だけで確保できていた客層が、劇場へ足を運ぶことに慎重になった可能性があります。
また、『最後のジェダイ』の出来そのものは置いておいても、『最後のジェダイ』が公開されてから今作が公開されるまでの間はわずか半年程度しかなく、大作シリーズものの公開ペースとしては異例の早さです。もちろん、公開ペースが速いのは決して悪いことではありませんが、この結果はファンがシリーズに「飽きた」という可能性を示唆するものだと思います。
これまでシリーズの公開ペースは決して早いほうではなく、それゆえに続編や外伝を待ち望むファンは焦らされ続けました。その状況で公開された新作映画には、映画の出来以上の「プレミア感」があったとしても不思議ではありません。
しかし、これだけ矢継ぎ早に新作が公開されてしまうと、そうしたプレミア感を覚えるファンが減ることは容易に推測できます。「新三部作」が発表されて以降、順調にブランドを展開してきた「新」スターウォーズシリーズは、今まさに試練の時を迎えているのかもしれません。
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