『クワイエット・プレイス』は「音を立てたら、即死」というキャッチフレーズで話題になったホラー映画です。製作には『アルマゲドン』の監督であるマイケル・ベイも関わっています。
本作はキャッチフレーズの通り、音を立てては絶対にいけない話になっています。映画の中の登場人物だけでなく、映画を見ている観客までもが息を詰まらせるような緊張感は大きな反響を呼びました。
今回はそんな『クワイエット・プレイス』の個人的な感想や解説を書いていきます。ネタバレを含む内容となりますので、未視聴の方は注意してください。
目次
映画「クワイエット・プレイス」を見て学んだこと・感じたこと
・音を立てたら即死という恐怖
・子供を守るために奮闘する家族たちの愛情
・思わず見ている方も静かになるホラー映画
映画「クワイエット・プレイス」の作品情報
公開日 | 2018年9月28日 |
監督 | ジョン・クラシンスキー |
脚本 | ブライアン・ウッズ スコット・ベック |
出演者 | イヴリン・アボット(エミリー・ブラント/岡崎未恵) リー・アボット(ジョン・クラシンスキー/星野貴紀) リーガン・アボット(ミリセント・シモンズ) マーカス・アボット(ノア・ジュープ/宇山玲加) |
映画「クワイエット・プレイス」のあらすじ・内容
2020年、突如現れた怪物の存在によって、人類は恐怖のどん底に落とされていました。現れた怪物は盲目でしたが、聴覚が優れていて音を頼りに人間を襲います。そんな怪物に襲われ、人類は過去のような生活ができなくなっていました。
そんな世界でアボット一家は音を立てずに、手話を使ってひっそりと生活しています。しかしある時、物資の調達の途中に末っ子であるビューは手に持っていたおもちゃの音を出してしまい、怪物に殺されてしまいました。
アボット一家がビューを失って一年。相変わらず怪物から身を守るために音を立てない生活をしているアボット一家は、ある出来事がきっかけに再び怪物の恐怖にさらされるのでした。
映画「クワイエット・プレイス」のネタバレ感想
【解説】音を立てるな!ポップコーンも食べれなくなるほどの緊張感
『クワイエット・プレイス』の一番の魅力は、映画のキャッチコピー通りに「音を立てたら、即死」というところです。怪物の近くで音を立てたら、文字通り死に直結します。
そのため、鑑賞中は常に音を立てないように登場人物たちは心がけているのです。24時間、音を立てないようにして生き延びようとする家族の緊張感は凄まじいものでした。咳やくしゃみでさえ許されないような状態がずっと続きます。
そのような状態なので、映画を鑑賞している方々は思わず息を詰まらせるように鑑賞してしまうでしょう。まるで鑑賞している方も映画の登場人物たちと同じように、音を立てたら死んじゃいそうな雰囲気が味わえました。
『クワイエット・プレイス』は非常に緊張感のある映画に仕上がっていますが、何と言っても、作中における冒頭のつかみが良かったです。このシーンで映画全体に一気に緊張感が増しました。アボット一族の末っ子であるビューが音を立ててしまった時、あっという間に怪物にやられたシーンは今でも戦慄を覚えます。
あのシーンを見るだけで、この映画の世界では音を立てたらやばいということが、一発で伝わりますよね。あの冒頭の戦慄するシーンがあるからこそ、『クワイエット・プレイス』の緊張感が他のホラー映画では類をみないものに仕上がっているのです。
そして音がないということは、登場人物の会話もほとんどと言っていいほどありません。登場人物たちの会話はもっぱら手話で行われます。登場人物たちが生き残るのに様々な工夫を凝らしていることは、映画を見ていて嫌でも感じられます。
このようなところを見ると、本当に一歩でも間違えたら死に直結するのだということがわかります。作中では家族間の手話での会話で心が温まるようなシーンもありましたが、少しでも音を立てると一気に緊張感が高まるのを感じます。
そして、登場人物たちに「死」が迫ってくるような恐怖が襲いかかってくる感覚は、恐らく本作でしか味わえない感覚です。音のない張りつめたような緊張感は、はやりこの映画の一番の魅力であるでしょう。
『クワイエット・プレイス』は、音を極力排除している作品である故に映像や演出に力が入っています。そのため、映像にどうしても集中してしまうような作りになっているので、飽きずに緊張感を楽しむことができ、上映時間が約90分という短めなところも、飽きずに鑑賞できるポイントだと思います。
今までのホラー映画の中でも、無音のシーンなどは多くありましたが、ほとんどは一時的な演出のための無音である場合が多かったと思います。むしろ、不快になるような音で、場面と合わせて観客に恐怖を感じさせる場合のほうが多いです。
しかし『クワイエット・プレイス』では、終始音を立ててはいけないので他のホラー映画とは違ったテイストで楽しめることができます。そういった意味では、これまでのホラー映画とは少し違った趣向なので、新鮮な気持ちで鑑賞できると思います。
「クワイエット・プレイス」は音を出してはいけない五感系ホラーですが、同じような映画で”見てはいけない”視覚系ホラーの「バード・ボックス」もおすすめです。
【解説】ただ怖いだけでない、家族愛の物語
『クワイエット・プレイス』はただの怖いホラー映画に留まりません。主演である登場人物たちである、アボット一家の温かい家族愛の物語でもあります。
映画を鑑賞していると、父であるリーは家族を守るために必死であることがよく伝わってきますよね。リーのラストシーンである子供を守るために、自分の命を捨てたあの叫びは感動的でした。そしてリーが自分の子供たちに愛情を注いでいることが感じられるシーンは、リーのラストシーンだけではありません。
例えば序盤のシーンですが、子供のマーカスを滝に連れて行ったところです。聴覚が鋭い怪物によって会話すらままならない世界ですが、滝のような自然と大きな音が発生するところでは、滝の音にかき消されて普通の会話をすることができます。リーはマーカスと滝で会話をするのですが、これも子供ときちんと声を聞いて話したいという気持ちが表れていました。
実際に滝のシーンにおけるリーの表情は、どこかほっとしていてる印象を受けました。恐らくリーは、どこかで子供と落ち着いて話がしたかったのではないでしょうか。お互いの声を聞きながら会話ができるというのは、この映画の世界ではとても難しいことです。子供を愛していて、何かを伝えたくても言葉を発することはできません。それは間違いなく辛いことですよね。危険な道中も含めても、滝のリーとマーカスの会話シーンは父親の愛情が感じられる温かいシーンなのだと思います。
そしてなによりも、家族の愛を感じられるところがイヴリンの出産シーンです。音を立てれば聴覚の鋭い怪物に襲われるという世界で、子供を出産するというのはとんでもないことですよね。下手したら、赤ん坊の泣き声で家族全員が怪物にやられてしまう可能性も十分にあります。
しかしそんな状態であるにもかかわらず、必死に子供を守ろうとする母のイヴリンの姿は、母親としての強さをとても強く感じられますし、家族を守ろうとする愛情を感じました。イヴリンだけでなく、家族全員で新たに生まれてくる赤ん坊を守ろうとする姿はとても感動的です。
子供であるマーカスやリーガンも、赤ん坊をお腹に宿しているイヴリンを怪物から守ろうと奮闘していました。末っ子であるビューを目の前で失って、怪物と戦う勇気は中々湧くものではありません。そのような状態の中、怪物の恐怖を乗り越えて一家全員で自分たちの新しい家族である赤ん坊を守ろうとする姿は、アボット家の家族愛を強く感じました。
観客としてはあのような状態で子供を生むなんて無謀すぎると考えてしまいますが、アボット一家の人々は誰一人として迷いも疑問もなく、新たな命を守ろうと必死に戦っていました。そのようなアボット一家を見ていると、家族愛を感じられずにはいられません。
アボット一家のように、絶望的な状態でも家族を信じて赤ん坊や子供を守ろうとする姿は、ホラー映画の中では非常に感動的なシーンだったと思います。
役者に関しても、本作が家族愛を意識しているキャスティングであることは、すぐにわかります。なぜならイヴリン役のエミリー・ブラントとリー役のジョン・クラシンスキーは実際の夫婦だからです。インタビューでも「実の夫婦でないとうまく撮れないシーンがあった」と発言しているところから、『クワイエット・プレイス』が家族愛の話も意識していたことは明らかでしょう。
そういった意味で『クワイエット・プレイス』は、ただ怖いホラー映画なだけではありませんでした。絶望的な状態から助け合って新しい家族を守ろうとする、感動的な家族愛の物語でもあったのです。
【考察】『クワイエット・プレイス』の怪物の正体は?
『クワイエット・プレイス』の気になるところとして挙げられるのは、やはりあの聴覚の鋭い怪物の正体ですよね。公式によると、怪物は宇宙から突如飛来したということです。確かに、劇中でも隕石が飛来したという新聞の記事が少しだけ映っていました。おそらく怪物は、隕石と共に地球に飛来したのではないでしょうか。
また、怪物は複数体いるようでしたが、どのような規模でどのようなレベルで地球を侵略しているのかは謎のままです。宇宙から隕石がそう何度も地球に飛来するとは思えないので、もしかしたら怪物は地球で繁殖して、個体数を増やした可能性もあるのではないでしょうか。あるいは、蜂のように女王のような存在がいるのかもしれませんね。
【考察】『クワイエット・プレイス』の世界情勢について
怪物だけでなく、人類側の世界情勢に関しても謎が多いです。怪物に襲われた人類側がどれだけ生き残りがいるのかも不明で、人口や軍隊、国連などはどうなっているのかも謎のままでした。
アボット一家が外へ通信を試みていたところをみると、外の情報を得る手段もほとんどなくなっている感じなので、かなり人類は窮地に追いやられているのではないかと思います。あくまでもこれは予想なので、怪物や世界情勢に関する設定は不明であることは変わりません。とは言ってもアボット一家の他に人間が全然登場せず、気配も感じられないというのはやはり疑問です。
生き残った人類の多くは、地下に避難していることも考えられます。地上が怪物に支配されていて、音を立ててはいけない世界となってしまっているので、地上では生活することができません。そうすると、地下で防音を施して生きていく方が懸命な気がします。
【考察】ラストシーンで判明したこと続編について
怪物に関して本作で分かったことは、ラストシーンで判明した怪物の倒し方です。怪物は優れた聴覚故に高音に弱いという点と、銃で十分に倒せるというところですね。
しかし、怪物の弱点に関しては少し疑問が残りました。例えば、高音で怪物を弱らせるということは、軍隊などがいればすぐに判明していたのではないでしょうか。
他にも銃で撃退できるレベルの怪物だったら、戦車などを使えばあそこまで人類は追い込まれないと思います。怪物は、軍隊で十分に撃退できるような気がしてなりません。
ラストシーンではアボット一家による反撃を予感させるような締めくくりでした。このシーンからアボット一家を始めとする人類達の反撃が始まるのかもしれません。怪物の弱点が生き残った人々に知れ渡れば、怪物たちに反撃にでるのは当然です。
『クワイエット・プレイス』ではすでに続編の発表がされています。あのようなラストシーンから、続編では人類の反撃を描いていくのではないでしょうか。もしかしたら、その過程で怪物の正体や、人類側の世界情勢も明らかになるのかもしれません。
とは言っても、本作は「音を立てたら、即死」というホラーテイストに焦点を置いており、怪物などの設定はさほど重要ではなかった可能性もあります。
次回作ではどのような展開になるのかはわかりませんが、怪物の正体や世界の様子がわかる描写があれば、より『クワイエット・プレイス』の世界を楽しめるので、期待したいですね。
【考察】『クワイエット・プレイス』における出産や妊娠・子供の意味は?
『クワイエット・プレイス』はホラー映画でしたが、恐怖以外に印象に残ったシーンと言えば子供の出産シーンでした。
イヴリンがあの世界の中で妊娠していて、出産するという展開は誰もが驚いたことでしょう。イヴリンが妊娠したのが、怪物が地上に現れる前だったのか後だったのかはわかりません。ですが、音を立てたら怪物襲いかかってくるような世界で、よく泣き出す子供の面倒をみるのは間違いなく自殺行為ですよね。
イヴリンが子供を出産することに対して、無計画であり得ない行為だと批判する方も少なくありません。しかし、このイヴリンの子供の出産こそ『クワイエット・プレイス』の重要なメッセージがあるのではないかと思います。
『クワイエット・プレイス』のような世界で赤ん坊を出産することは確かに危険極まりない行為でありますが、同時に赤ん坊の誕生は人類の希望でもあったのではないでしょうか。
短いですが、作中でアボット一家の他に一人の男性が登場します。その男性の素性は全く分かりませんが、たった1人で地上を彷徨っていました。恐らく男性が1人だったのは、男性の親しい人が怪物にやられてしまったからです。その男性は突然声を荒げて怪物にやられてしまいましたが、怪物がいるのにもかかわらず急に声を荒げたは理由は、孤独による自殺だったと思います。
アボット一家はその怪物にやられた男性と違って、家族でまとまって生活していますよね。しかしアボット家の人間は、末っ子であるビューを怪物によって失っています。そのことから、アボット家の人間は大切な家族を失うという悲しみを痛いほど理解しているのです。そんな中で新しい家族となる赤ん坊は、アボット家にとってビューの生まれ変わりのような存在に感じていたと思います。
大切な家族を失ったアボット家にとって、赤ん坊は希望そのものであったのかもしれません。自分たちが生き残るためだけに、地下に潜ってずっと息を潜めて生きていくなんて悲しすぎます。どうしてもアボット家には赤ん坊という希望が必要だったのです。
赤ん坊という希望があったからこそ、父であるリーも命を張り、子供たちも危険な目にあいながらも赤ん坊を守るために奮闘しました。赤ん坊という存在のおかげで、子供たちも恐怖を打ち払い、行動することができたのだと思います。
そして、最後に怪物の弱点を見つけたのも、結果的にはアボット一家が赤ん坊のために奮闘したからとも言えますよね。自分たちの未来に繋がる赤ん坊が、怪物たちへの反逆のきっかけにもなりました。
そのようなことを考えると、アボット夫婦の赤ん坊はアボット一家に留まらず、人類全体の希望の象徴としても考えることができます。
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