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『劇場版PSYCHO-PASSサイコパス(2015)』ネタバレ感想・解説・考察!人気キャラ狡噛の再登場には要注目

【考察】映画としては凡庸だが、興行収入の好調ぶりが続編制作のきっかけに

映画『劇場版PSYCHO-PASSサイコパス(2015)』は、フジテレビで放送された近未来警察ドラマ『PSYCHO-PASS サイコパス』の続編として制作された劇場版映画です。

人間社会を完全に掌握し支配するAI「シビュラシステム」や、人間の心理を読み取り未然に犯罪を防ぐため規定された「潜在犯」の存在など、非常に複雑かつ難解な世界観が人気を博し、2019年現在では今作を含めて四作が劇場公開されています。

さらに、2019年10月からは第3期アニメシリーズも放送予定であり、今まさに勢いに乗っているアニメ作品です。

今回はそんな『劇場版PSYCHO-PASSサイコパス(2015)』の個人的な感想や考察を書いていきます!なお、ネタバレには注意してください。

目次

映画『劇場版PSYCHO-PASSサイコパス(2015)』を観て学んだこと・感じたこと

・シビュラシステムの有用性と恐ろしさを同時に実感
・初めて描かれた日本国外の様子に驚き
・基本の設定さえ押さえていればそれほど難しい映画ではない

映画『劇場版PSYCHO-PASSサイコパス(2015)』の基本情報

公開日2015年1月9日
監督塩谷直義(総監督:本広克行)
脚本虚淵玄
深見真
出演者常森朱(花澤香菜)
宜野座伸元(野島健児)
六合塚弥生(伊藤静)
霜月美佳(佐倉綾音)
ニコラス・ウォン(神谷浩史)
デスモンド・ルタガンダ(石塚運昇)

映画『劇場版PSYCHO-PASSサイコパス(2015)』のあらすじ・内容

映画『劇場版PSYCHO-PASSサイコパス(2015)』のあらすじ・内容

最先端の人民統治機構「シビュラシステム」に支配された日本。数々の問題点を抱える一方で、このシステムが日本の治安を維持していることもまた事実でした。

その日本に、海外からテロリストの集団が押し寄せてきました。しかし、朱を中心とする公安局は優れた対処を見せ、見事に犯罪集団を一網打尽にしました。

数人の生き残ったテロリストの記憶をスキャンした結果、そこにはかつての執行官・狡噛が映し出されていました。

「狡噛がテロリストとして槙島と同様の脅威となっているのでは」そう結論付けた朱は、東南アジア連合の一角をなすシビュラシステム導入国「シーアン」へと赴きます。そして、現地ゲリラの掃討作戦に協力する中で、朱は狡噛と再会を果たすのです…。

映画『劇場版PSYCHO-PASSサイコパス(2015)』のネタバレ感想

豪華キャストは健在だが、英語のシーンはイマイチかも…

豪華キャストは健在だが、英語のシーンはイマイチかも…(C)サイコパス製作委員会

サイコパスシリーズの特徴は、まず第一に超豪華なスタッフとキャストが挙げられるでしょう。総監督を務める本広はサイコパス同様にフジテレビで放送され、社会現象を巻き起こしたドラマ「踊る大捜査線」シリーズの監督であり、アニメ界を超越した実力者です。

また、脚本の虚淵はPCゲーム界で一躍名を轟かせた後、『魔法少女まどか☆マギカ』でアニメの世界でも大ブレイク。その後はアニメだけでなく実写映画やライダーシリーズにおいても実績を残しています。

さらに、主題歌を担当するアーティストの「凛として時雨」「EGOIST」も本シリーズを盛り上げた立役者です。前者はアニメ放送以前から人気を博していましたが、後者が担当しアニメシリーズでOPに採用され、本作でもEDに再起用された楽曲「名前のない怪物」は重厚なテーマを扱うシリーズの雰囲気と相性抜群であり、同アーティストの代表曲と目されることも多いです。もちろん他の楽曲や劇伴音楽も素晴らしく、筆者もサウンドトラックを購入しています。

これだけのメンバーが揃えば粗悪な作品ができるはずもなく、本作もやはり一定の水準を超えていることは間違いありません。

 

ただ、個人的に少しだけ気になってしまったのは、声の出演を務めるキャストと舞台設定の相性です。スタッフがこれだけ豪華ということは、声優陣もまた豪華であることを意味しています。実際、本シリーズで出演を果たすキャストは、ただ売れっ子なだけでなく実力派声優と目される面々が大半です。そのため、これまでの作品では演技に驚嘆こそすれど、不満を感じることは一切ありませんでした。

それでも本作で初めて声の演技に注文をつけたくなってしまった理由が「英語の台詞が多いことによる英語力不足」に目が向いてしまったためです。あらすじの項でも紹介したように、本作はシリーズで初めて海外を舞台にしています。その舞台設定の都合上、作中においては英語の台詞が非常に多くなっているという特徴があり、アニメでよくあるような「海外に行っても語学の壁がない」というご都合主義に頼ってはいません。

このこと自体は、リアル志向の作風を考えれば妥当な措置であり、特に問題になるようなものではありません。しかし、肝心の声優陣はあまり英語に堪能ではないと思われ、発音やアクセントの面がどうしても日本語英語になってしまっているのが気になってしまいました。これも英語を話すシーンがほんの少しであればいいのですが、それなりに台詞量もあったため無視するわけにもいかず…。

筆者は別に英語が話せるわけでもなければ、リスニングに自信があるわけでもありません。ただ、大した英語力がない人間ですら気になってしまう欠点であることは事実で、ネイティブレベルの方はより違和感を覚えるかもしれません。

ファン待望の人気キャラ狡噛が満を持して再登場

ファン待望の人気キャラ狡噛が満を持して再登場(C)サイコパス製作委員会

一期では主役と呼んで差支えがなかった人気の執行官・狡噛。カリスマ性のある男性キャラクターであり、容姿も二枚目で女性を中心に好評を博していました。

しかし、槙島事件をめぐって公安局上層部との対立が深刻化し、槙島を射殺したのち東南アジアに逃亡してしまっていました。これはアニメ一期における出来事であり、二期においては朱の精神世界を除いて未登場でした。

ちなみに、ここでも述べているようにサイコパスシリーズは本劇場版の前にアニメシリーズが2作品ほど存在し、時系列ないしは世界観も継続しています。そのため、劇場版とはいえあくまでそれらの作品を押さえていることが前提であり、鑑賞に際してはシリーズの予習をおススメします。作品としても高い完成度を誇るので、考察しがいのあるアニメが好きな方は魅力を味わえるでしょう。

話を戻して、その狡噛が久しぶりに登場するということもあり、筆者を含めファンにとっての大きな見どころとなっていました。そして実際に「テロリストの親玉かもしれない」という状態で朱および我々の前に姿を見せる狡噛は、立場こそ変われど内面的には変わらぬ姿を見せてくれていたように感じます。彼はシビュラシステムに翻弄された人物の一人であり、監視官からテロリストに立場を変えてしまっています。

 

それでも、我々から見ればあくまで狡噛は狡噛で、それは朱にとっても同じだったのではないでしょうか。このあたりに、シビュラシステムの是非を問わせる政策人の意図が見え隠れしています。

注目するべき点としては、狡噛は変わっていないにも関わらず、周囲の人物たちからの視線が変わっているという箇所でしょう。彼が公安局にいたころは、同僚はともかく上層部や社会からすれば危険人物でしかなく、あくまでそれに準ずる扱いを受けていました。

しかし、テロ組織における彼は周囲からの熱狂的な支持を集めており、それは彼自身にとっても嫌気がさすほどでした。これは彼のカリスマ性を象徴しているとともに、将来における危機を我々に予感させるものでした。

つまり、狡噛の意図とは関係なく信者が現れ、彼もそうした人物たちの意向を無視できなくなるという恐れです。個人的には、明治維新の立役者ながら旧薩摩藩士の支持を無視できず、彼らの意向を汲んで反乱を起こしてしまった西郷隆盛を連想させます。恐らくこうした一面は今後の重要なトピックとして描かれることでしょう。

【解説】シビュラシステムが不完全な海外の惨状は考えさせられる

【解説】シビュラシステムが不完全な海外の惨状は考えさせられる(C)サイコパス製作委員会

特にアニメ二期で顕著な傾向でしたが、サイコパスシリーズでは人民統治システム「シビュラシステム」の是非について考えさせるような内容が非常に多くなっています。先ほども少し述べましたが、このシステムはとにかく功罪両面に傑出しているというのが最大の特徴です。

実際、本作でもシステムの功罪についてはこれでもかというほど描かれています。まず、映画序盤で朱の友人が結婚をしたと知り、朱が大喜びするというシーン。ここで友人の結婚が成功した理由はシビュラシステムであることがわかり、結婚相手すらもシステムの管理下にあることを我々は再認識します。

ここで「結婚相手を選ばれるのは恐ろしい」と感じるか、「最適な結婚相手を示してくれるのだから楽だ」と感じるかは個々人の価値観次第です。実際、この時点ではシビュラシステムが上手に機能していた結果として新たな夫婦が誕生したわけですが、彼らが社会の脅威と認定されれば否が応でもシステムの介入を受けることになるでしょう。

 

さらに、本作において展開された一連の事件は、すべてシビュラシステムの認識下にあり、公安を含めた全貌が予定されていたシナリオであったことが明かされます。この計画遂行にあたっては多大な犠牲が発生しており、その点はシステムによる人命軽視と呼んで差し支えありません。

しかし、実際にシステムを導入していない海外の荒廃ぶりや不完全なシステムしか導入されていないシーアンの治安を考えると、上記で示してきたような悪質さをもつシステムがこと日本においては有効に機能していることを象徴しているのです。

このように本作は今までの作品と同様に、システムという存在について考えることを我々に求めている内容になっていると考えられます。ただし、この論点についてはすでにアニメ一期から提唱されていた問題であり、これまでの作品で常に新たな問題意識を取り上げていた本シリーズの新鮮な感覚というのはなかったことも事実です。

【解説】敵役の傭兵部隊にやや魅力が足りないかも

【解説】敵役の傭兵部隊にやや魅力が足りないかも(C)サイコパス製作委員会

ここまでも示してきたように、本作は狡噛を追いかけてたどり着いた東南アジアで現地の傭兵部隊と対決し、その黒幕がシビュラシステムであるというのが一連の流れでした。そのため、公安および狡噛と対決した傭兵組織とのアクションシーンが終盤の山場となったわけです。

対決の過程そのものは、やはり演出や作画の雰囲気から潤沢な予算で作成されていることがわかり、アニメ的な演出は及第点を超えていたように思います。

しかし、個人的には対決することになった肝心の悪役であるニコラスやデスモンドはいまいち魅力的ではなく、ラストの展開を考えてもかませ犬に終始してしまっていた点が気になりました。

彼らは終盤でシビュラシステムと内通していることを明かし、犯罪係数による執行を受けないで悪事を繰り返していました。しかし、実際はシビュラシステムがシステムの輸出を成し遂げるための措置の一環であり、彼らの犯罪係数については黙認されているにすぎませんでした。

 

そして、システムにとって彼らが用済みになると執行が解禁されるという筋書きなのですが、こうして要素を書き出しても彼らが単なるかませ犬でしかなかったことがよくわかると思います。そのため、作品を見終えたのちも実際に対決していた傭兵部隊についてはいまいち印象が薄く、今後の作品にも特に影響を与えなさそうな気がしてしまいました。

このあたりの点から、恐らく本作はサイコパスシリーズの中で根幹をなすような欠かせない作品ではなく、これまで出番が限られていた狡噛を登場させるためのファン向け作品なのではないかと思ってしまいました。こうした方針が災いして、敵への印象が非常に薄くなってしまったのかもしれません。

しかし、本作のような「警察もの」が魅力的な作品となるためには、カリスマ性があり完全に否定することができない悪役の存在は欠かせないものだと考えています。実際、サイコパスシリーズの象徴的な悪役である槙島はかなりその条件に合致しており、彼の存在がシリーズそのものにとって大きな影響を与えていることは間違いないでしょう。

個人的には、槙島がいないことで二期でさえも物足りなく感じたことから、彼のような存在の必要性を痛感させられました。そして、本作の敵役も残念ながら彼のような人物には遠く及ばないと言わざるを得ず、そのあたりは映画としての欠点といえるでしょう。

【考察】映画としては凡庸だが、興行収入の好調ぶりが続編制作のきっかけに

【考察】映画としては凡庸だが、興行収入の好調ぶりが続編制作のきっかけに(C)サイコパス製作委員会

本作の出来については、致命的な点もなく映画としてよくまとまっていたと思いました。そのため、普通のアニメ映画であれば佳作と呼んで差し支えないでしょう。

個人的にはTVアニメであれだけのものを見せてくれたサイコパスシリーズの記念すべき初劇場版であれば、傑作を生みだしてほしかったという気持ちは否めません。また、後の劇場作品を知っている今だからこその感想かもしれませんが、後の作品につながるような大きな謎や伏線が少なかったのも気になった点です。単体の作品としては悪くないのですが、内容面に少し不満がないとはいえません。

 

とはいえ、内容的なつながりこそ多くはなかった本作ではありますが、劇場における興行成績は非常に好調であったといえるでしょう。公開70日間での推定興行収入は8億5000万円を突破しており、アニメ映画の劇場版作品では十分ヒット作の部類に入ります。

こうした興行成績の好調さが、2019年に三作連続で公開された新劇場版シリーズ「Sinners of the System」およびTVアニメ三期の制作につながったことは間違いないでしょう。サイコパスシリーズはかねてより一定の売り上げを見込めるタイトルであった一方、豪華キャストやスタッフをはじめとした完成度の高い作品をまとめるには製作費がかさむことは容易に想像でき、収支を考えると優れた成績を残す必要があったはずです。

そうした観点から考えていくと、本作の残した数字は製作陣のさらに上層部、本作でいえば「サイコパス制作委員会」の構成団体にGOサインを出させるだけのものであったということです。

つまり、本作は今後のシリーズ展開を左右するための「試金石」という位置づけであったことが今ならば理解できます。本作の成功があったからこそ今のシリーズがあることを思えば、内容面に多少の不満こそあれどファンとしては本作の存在に感謝しない理由がないのです。

 

そして、最後に念願かなって製作された続編についても解説しておきましょう。新劇場版については、3作それぞれで各主要キャラクターの過去や未来を描く物語となっています。この説明からも分かるように、劇場版はスピンオフ的な立ち位置でありながら今後の作品に繋がるという、三期視聴にあたっては視聴を求められる内容になっています。

この先はあくまで想像になってしまうのですが、10月から放送される三期はこれらの伏線を回収していく正当な続編となることが予想され、シリーズとしても大きな動きがあるハズです。特に、今回少し触れた「狡噛の蜂起」のようなものが起こり得るのかどうか、そのあたりも要注目です。

(Written by とーじん)

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