映画「プロメア」はアニメ「キルラキル」などで知られるアニメ制作会社TRIGGERが手がけました。仕掛け人は今石洋之と中島かずきのコンビです。
「プロメア」は「キルラキル」で見せたド派手なアクションと過剰なまでの演出、個性が際立ったキャラクターはそのままに、スクリーンの大画面で観客に直球をぶつけてきます。最初から最後まで駆け抜けるような疾走感、他にはない熱量はこの作品の一番の魅力といえるでしょう。
今回は映画「プロメア」のネタバレ感想・解説・考察などを書いていきます。
目次
映画「プロメア」を観て学んだ事・感じた事
・最初からエンジン全開で映画に引き込まれる
・キャラクターの個性、それを実現する声優陣、過剰な演出が独特
・「キルラキル」の直系作品として素晴らしい
映画「プロメア」の作品情報
公開日 | 2019年5月24日 |
監督 | 今石洋之 |
脚本 | 中島かずき |
原作 | TRIGGER 中島かずき |
出演者 | ガロ・ティモス(松山ケンイチ) リオ・フォーティア(早乙女太一) クレイ・フォーサイト(堺雅人) アイナ・アルデビット(佐倉綾音) |
映画「プロメア」のあらすじ・内容
突然変異によって生じた人体発火現象。人類に混乱を招く中で、その炎を操る「バーニッシュ」という人種が登場します。そして、バーニッシュによる炎上事件が頻発し、世界の半分が消失します。
その30年後、好戦的なバーニッシュ集団「マッドバーニッシュ」による危機が再び生じる中、対バーニッシュ用高機動救命消防隊「バーニングレスキュー」が発足。新人隊員のガロは、マッドバーニッシュのリーダー・リオと出会います。
リオを捕えクレイから功績を認められたガロでしたが、その裏ではクレイによる「ある計画」が進められていました。
映画「プロメア」のネタバレ感想
キルラキルの制作によって、一気にアニメ界での名を挙げたTRIGGER。キルラキルで監督を務めた今石洋之と、脚本を務めた中島かずきが再びタッグを組み、ファン待望の新作映画が「プロメア」です。
キルラキルで見せた強烈なインパクトをそのままに、最初から最後まで熱量を落とすことなく駆け抜けるストーリーは、ファンであればたまらない作品といえるでしょう。主要キャラクターの声優を務めた実力派俳優たちにも注目です。
ここでは、映画「プロメア」の感想を1つ1つの項目に分けて書いていきます。
【解説】冒頭からエンジン全開で走り抜ける激しさ
キルラキルでも見せた過剰なテンション、過激なアクション、そして、それらを支える独特な絵柄は、近年のアニメ作品のトレンドにはみられない特異性があり、新しい制作会社ながらTRIGGERは、瞬く間にアニメファンの心を掴みました。
そんなキルラキルでコンビを組んだ今石洋之と中島かずきが再びタッグを組み、キルラキルファン待望の新作映画を作ってくれました。
内容としては、スタートからエンジン全開、テンションMAXで始まります。突然変異によって生じた人体発火現象、そして、マッドバーニッシュというテロ集団の出現、それを食い止めようとする救急消防隊「バーニングレスキュー」との戦いまで、冒頭ではここまでの流れを過剰な熱量で描いていきます。
作品において最初と最後が肝心といわれるように、映画「プロメア」では最初のこの熱量を感じるだけでも、思わず引き込まれてしまいます。作品のテンションに引っ張られる形で、この先どのような展開になるのだろうというワクワク感を喚起させ、思わず前のめりになってしまうほど引き込まれました。
キャラクター1人1人の個性を際立たせながら、過激なアクションによって魅了されていきます。これぞ「今石洋之×中島かずき」と思わせるような感動、キルラキルを初めてみたときの新鮮さを思い出させてくれるような最高のスタートを切ります。
そして、この作品のすごい部分は、ほとんど息切れすることなく、そのテンションを維持したまま最後まで駆け抜けるということです。ストーリーの起伏はあるのですが、それでも熱量を出すところは惜しみなく出し、過剰とも思えるようなテンションでアクションを描いていきます。
クセが強いともいえますが、ファンにとってはたまらないですし、大衆作品としてもここまで娯楽性が高いのであればついていけるでしょう。
とにかく映画「プロメア」の魅力は、圧倒的なまでのハイテンションに集約されます。とにかく激しく熱く、これこそキルラキルファンが求めていた事なのでしょう。そんなファンの期待に100%で答える今石洋之・中島かずきコンビの底知れません。
【解説】独特の絵柄が作品の個性を際立たせる
「キルラキル」「プロメア」の特徴として挙げられるのが、最近のアニメではあまりみられない独特な絵柄です。
最近では映像技術の発達に伴って、リアリティのあるアニメが広まっています。ハリウッドなどでも顕著ですが、とにかくリアリティのあるアニメーションによって、技術の高さと表現力を醸し出しているといえます。
そういった最近の傾向を考えると、映画「プロメア」はそれに逆行しているともいえます。作画はかなりデフォルメ化されたシーンを多用し、アクションシーンなどではカメラアングルを激しく動かすなど、独特な作画を効果的に活かしています。
荒っぽい作画とも受け取れるのですが、これこそがキルラキルでも見せたTRIGGER作品の真骨頂でもあります。
そして、そこに激しさや熱量が伴うことによって、唯一無二の魅力を作り出しているのだと思います。
こういった作風は古典的なロボットアニメに近いような気がしますが、それを古い手段としてではなく、表現手法の引き出しの1つとして活かしており、過度に誇張されたアクションシーンなどは、作品のテンションとマッチして見る側を魅了していきます。
このリアリティとは一線を隠す作風こそ今石洋之の表現手法でもあり、映画「プロメア」の個性を引き立てている作風になります。
全体的にパンチの強い表現が連続する中で、味の濃いラーメンを食べているような感じなのですが、不思議と飽きがこない手腕は見事です。
【解説】プロメアの声優陣は豪華さと実力を兼ね備える!
映画「プロメア」では実力派俳優たちのキャスティングも話題を集めました。
主人公のガロ・ティモスには松山ケンイチ、マッドバーニッシュのリーダーであるリオ・フォーリアには早乙女太一、クレイ・フォーサイトに堺雅人とかなり豪華な面々が名を連ねています。
よく芸能人や俳優がアニメの声優に抜擢されると批判を受けることも多いですが、ここはさすが実力派俳優の人たちです。見事にキャラクターと同化し、作品のテンションを引っ張る演技を見せています。
映画「プロメア」のメインキャストを務めた3人ですが、違和感が一つもありませんでしたし、作品の完成度を落とすことなく、キャラクターの個性を引き出す熱演は見事でした。やはりちゃんとした役者が声優をやれば、作品はより際立つのだと改めて感じさせられました。
堺雅人演じるクレイ・フォーサイトは若干半沢直樹感が出ていましたが、悪役として素晴らしい演技でした。
クレイというキャラクターは最初善人なのですが、物語後半から悪役になります。その流れの中で序盤は真面目で優しい雰囲気を出しながらも、どこか本音が見えない気味の悪さみたいなものを出しており、自身の計画が露わになったときには激しく感情を出し、ガロたちと対峙していきます。
映画「プロメア」において、キーになるキャラクターに俳優を起用したというのは、それ相応のリスクも考えられるのですが、この作品においては、キャラクターと作品を際立たせる好演技を見せています。
他にも、芸人のケンドー・コバヤシさんがビニー役で出演しているのですが、ビニーはルチアの相棒的なネズミでもあり、セリフは全くありません。この映画で唯一ネタ的なキャスティングではありますが、その辺にも注目してみてください。
【解説】二転三転するストーリーも魅力
映画「プロメア」の魅力は圧倒的な熱量とそれを引き立てる作画、キャラクターたちが挙げられますが、映画全体としても最後まで目が離せないストーリーになっています。
映画序盤は「マッドバーニッシュ」VS「バーニッシュレスキュー」「フォーサイト財団」といった構図で物語が始まります。マッドバーニッシュはいわゆる悪役として、正義側のバーニングレスキューと戦うわけですが、徐々に暗雲が立ちこめます。
マッドバーニッシュが捕らえられ、フォーサイト財団の牢獄に閉じ込められていた際、フォーサイト財団がバーニッシュに対して非人道的な人体実験を行なっていたことが明らかになります。
それを知ったガロはクレイと対立するのですが、一蹴され牢屋に閉じ込められてしまいます。バーニッシュの置かれた状況やリオとのやり取りの中で、クレイのやり方に疑問を持るガロ、次第に構図としてはガロ+リオVSクレイに移行していきます。
クレイの計画としては、バーニッシュの誕生によって地球の地核が不安定化したことで、近いうちに大噴火を起こすことが予想されたため、大規模な宇宙船を開発し、選別された国民を乗せて違う惑星に旅立つというものでした。
そして、宇宙船がワープするために、バーニッシュがもつエネルギーが必要となり、人体実験によって、エネルギーを引き出されていました。
圧倒的なクレイの力の前に為す術がなくなっていたリオとガロでしたが、ガロが頭を冷やすためによく行っていた氷の湖の下に巨大な研究施設があることを発見します。
そこには、クレイの科学者としての師匠でもあったデウス・プロメスのアンドロイド的なものがあり、クレイが自分を殺して研究の成果を横取りしたことや、未完成のバーニッシュによるエンジンを稼働させることによって、地球の地殻がより不安定化することを指摘。
デウス・プロメス博士の力を借りて、ガロとリオは力を合わせてクレイに立ち向かい、その中で、クレイが実はバーニッシュだったことも明らかになります。
このように二転三転とストーリーが展開していき、次は何が待っているのかという気分にさせてくれます。
物語のプロットとしてはシンプルですが、作風を活かすためには、そこまでゴチャゴチャしていない方がいいと思いますし、逆にストーリー自体も多少荒っぽい方が魅力的かもしれません。
様々なキャラクターが登場する中で、それぞれが輝かしい個性を発し、観客を飽きさせることのない怒涛の展開を繰り広げながら最後まで楽しませてくれます。
欲を言えば、バーニングレスキューの隊員1人1人の掘り下げがもっと欲しかったような印象はありますが、1クールアニメぐらいの尺がないとそれも難しいかもしれません。
キャラが立ってて、それぞれが魅力的だったがために、もう少し主要キャラクター以外にもスポットが当たればと思いましたが、それ自体は映画全体において些細なことです。この映画が魅力的であることには何ら変わりありません。
【解説】人間とバーニッシュという差別・反差別というテーマにも切り込む
派手な演出に目が向きがちではありますが、ストーリーの中では人間とバーニッシュという2つの人種が登場します。
バーニッシュも人間ではあるのですが、突然変異によって発火してしまうことがあり、その中で差別的な境遇に陥っていたことが冒頭で触れられていきます。さらに、クレイによるバーニッシュの人体実験からもわかるように、バーニッシュは差別的な扱いを受けていました。
そんな中、マッドバーニッシュのリーダー、リオはバーニッシュも同じ人間にもかかわらず、なぜこのような扱いを受けなければならないのかと嘆きそれにガロも共感します。
象徴的なのは、ピザ屋で働いていたバーニッシュがフリーズフォースに捕まった際、これまでピザを焼く腕前を高く評価されていたにもかかわらず、バーニッシュであることが判明した途端、ピザを投げ捨てる人々が描かれていました。
テーマの扱い方としては、非常にシンプルで分かりやすいものではあるのですが、こういったトピックが1つでも絡んでくると、物語に厚みが出てくるのだと思いました。
全体的な設定自体は結構荒い部分もあるのですが、「人間」と「バーニッシュ」という関係性の中で、差別・反差別という普遍的なテーマを織り込んできたのは評価できます。
また、クレイが行なっていた惑星移住計画の中では、限りある選択肢の中で最良なものだが、犠牲が伴うものへの描かれ方も興味深いものがありました。
確かに、限られた国民を宇宙船に乗せて惑星に移住することで、助かるというのが最善策かもしれなかったのですが、それにはバーニッシュの犠牲が必要となり、その上他の国民は見捨てられることになります。
クレイのクールなキャラクターと政治家としてのドライな判断、そういった部分も興味深い題材としてみられました。
【解説】脇を固める制作陣も豪華
ここまで監督・脚本・声優陣などを挙げて書いていきましたが、それ以外のプロメア制作陣も非常に豪華なラインナップです。
キャラクターデザインには「エヴァンゲリオン新劇場版」シリーズや「ベイマックス」を手がけた世界的なクリエイター・コヤマシゲトが起用されています。
物語を彩る音楽には「機動戦士ガンダムUC」「進撃の巨人」など、数多くのドラマやアニメ、映画などの映像音楽を手がけてきた澤野弘之、映画のアイコンにもなっている特徴的なタイトルロゴは、「エヴァンゲリオン新劇場版」シリーズでパッケージデザインを務めた市古斉史が手がけるなど、蒼々たるクリエイター陣が脇を固めています。
そして、主題歌はSuperflyが担当しています。彼女のパワフルな歌声と激しい演出が見事に映画にマッチしていました。
各分野で一流のクリエイター陣が関わることによって、映画「プロメア」の魅力を最大限にまで引き出しています。
映画「プロメア」は2019年おすすめのアニメ映画!
2019年になりアニメ映画は何作も公開されていますが、もしかすると映画「プロメア」は今年最も印象的な映画といえるかもしれません。他にはない強烈な個性、一度でもハマってしまえば抜け出せなくなるほどのクセがあります。
半端ない熱量、圧倒的なテンション、観客を魅了するアクションシーンなど、見所が盛りだくさんです。
最近のぬるぬる動くアニメに見飽きてきたら、ぜひ映画「プロメア」を見て、アニメのワクワク感を体験してみてください。