映画『コードギアス 復活のルルーシュ』は、10年前に放送されて大ヒットとなった『コードギアス 反逆のルルーシュ』を元にした劇場版3部作の実質的な続編にして、完全新作という位置づけの作品です。
ルルーシュの特殊能力「ギアス」を用いた頭脳戦と、ナイトメアによって織りなされる迫力の戦闘シーンが見所で、続編を待ち望むファンも多かった一作です。
今回はそんな『コードギアス 復活のルルーシュ』の個人的な感想や考察を書いていきます!
また、『コードギアス』シリーズの特性上、かなりの数の専門用語がでてきます。基本的に、読者がシリーズのファンであることを前提にした映画なので、この記事もそうしたスタンスで書いています。用語等分かりづらい場合は、検索しながらご覧ください。
ネタバレも数多く含みますので、ご了承ください。
目次
映画「コードギアス 復活のルルーシュ」を観て学んだこと・感じたこと
・ルルーシュは生きていた!衝撃の最終回からの橋渡しも見事
・相変わらずの頭脳戦や戦闘シーンも健在で、ファンとしても満足のいく仕上がり!
・ルルーシュの物語が完結したことに、寂しさも感じる…
映画「コードギアス 復活のルルーシュ」の基本情報
公開日 | 2019年2月9日 |
監督 | 谷口悟朗 |
脚本 | 大河内一楼 |
出演者 | ルルーシュ(CV 福山潤) C.C(CV ゆかな) スザク(CV 櫻井孝宏) ナナリー(CV 名塚佳織) カレン(CV 小清水亜美) ロイド(CV 白鳥哲) |
映画「コードギアス 復活のルルーシュ」のあらすじ・内容
世界中を恐怖のどん底に陥れた戦争は終結し、世は太平の時を迎えていました。
しかし、その平和はつかの間のものであり、仮面の男・ゼロとして振舞うスザクがナナリーの難民キャンプへの慰問に同行した際、謎のナイトメアフレームが出現します。
戦闘では無類の強さを誇っていたスザクでしたが、この戦いに敗れたことで二人は連れ去られてしまいます。
戦士の国・ジルクスタン王国にスザクの救出へとむかった面々は、そこで正体不明の襲撃者と遭遇します。そして、その場にはC.Cの姿もありました。
ギアスの正体を知るジルクスタン王国の人々と、突如として現れたC.C。彼らの運命はどのようになるのか。そして、「あの男」の生死は明かされるのかが見所です。
映画『コードギアス 復活のルルーシュ』の感想
基本に忠実な作りで見事!
今作は、劇場版コードギアスシリーズの続編という位置づけながら、直接的にはアニメ『コードギアス 反逆のルルーシュR2』で一応の完結をみた物語を、どう展開させていくのかということが最大の注目点でした。そして、その点に関しては大きな驚きこそはなかったものの、ファンが求める堅実な橋渡しがなされていたという印象です。
これは、やはり『コードギアス』シリーズのスタッフが、期間こそ開いていましたがスピンオフや総集編を作り続けていたことにより、続編へのビジョンを共有していたせいかともいえるでしょう。
この「堅実な橋渡し」という作業は、決して簡単なものではありません。作品によっては、続編へのつなぎ方を失敗したあまり、傑作とされていた前作の評判をも落とすものが少なくないからです。ましてや、超人気シリーズにしてTV放送から10年近い歳月が経過している今作が、ファン目線でも「堅実」と感じられる作品に仕上がっているという点は大いに評価するべきでしょう。
完全新作ということで、シリーズのファンはそのほとんどが映画を鑑賞したいと感じるはずですが、そういった古くからのファンの期待をも裏切らない出来になっています。
【考察】ルルーシュは生きてる!復活への過程も楽しめました
作品序盤でC.Cと再会する点については触れましたが、そのC.Cはルルーシュの世話をしていました。R2の最終回で死んだと思われていたルルーシュでしたが、ここで生存が確定します。
しかし、ルルーシュの心はそこにはなく、ただルルーシュの形をした赤子がそこにいるといった有様でした。C.Cは彼の全ての世話をしなければならなかったのです。では、彼の心は失われてしまったのでしょうか。その答えはイエスでありノーでもありました。
結論からいえば、ルルーシュの心は「Cの世界」という場所に迷い込んでしまっていたのです。Cの世界とは、ギアスに関わってきた人間たちの記憶によって構成された世界であり、C.Cを含めた数少ない人物しかその世界に干渉することはできません。そこで、迷い込んでしまったルルーシュの心を探すべく、C.CはCの世界に干渉するためにアラムの門とよばれる場所へと向かったのです。
しかし、そこでルルーシュとはぐれてしまったC.Cは、もう一つの世界、つまり現実の世界での自分自身が危機的状況を迎えることになります。そこで諦めかけたC.Cを救ったのは、他でもない復活したルルーシュでした。復活したルルーシュは両目にギアスを備えており、ギアスの紋章も体に刻まれていました。これは、ルルーシュがコード継承者になったことを証明しています(コード継承やギアスを失わなかった理由は後ほど考察します)。
この復活劇も見事で、過去作品との論理的に大きな矛盾もなく、しかも映像としても大変に見所があるものでした。
【考察】なぜルルーシュは復活することができ、ギアスを保有したままなのか
さて、こうしてめでたく復活を果たしたルルーシュ。しかし、ファンの立場としては、コードを継承したにもかかわらずギアスの能力を失っていないことを疑問視する方もいるかもしれません。
これまでの『コードギアス』シリーズでなされてきた説明は、コード継承者は不老不死になり、他者にギアス能力を付与することができますが、その代償により継承者自身はギアス能力を失うとされていました。
また、ルルーシュの父シャルルが保有していたコードを、ルルーシュが継承できたかどうかもあいまいなままに物語が幕を閉じていたために、そもそもルルーシュがコード継承者なのかがあいまいな状態でした。
結論から言うとシャルルのコードを継承していたことによって、ルルーシュは不死身になっていました。それゆえに、復活することができたとみるべきでしょう。より正確に言えば、後にも説明しますが一時的に不死身の能力が発動しなくなっていたために、ある意味死んでいたともいえます。
しかし、これではギアスを失っていない理由が明らかになりません。その理由を解明するためには、ルルーシュの行動を抑える必要があります。ルルーシュはCの世界でそこに存在する「神」にギアスをかけ、Cの世界を崩壊させると同時にCの世界との連絡をストップします。
Cの世界と接続できなかったことで不死身の能力が発動することなく、しかし継承後もギアスの能力が使えるという結末に至った理由でしょう。これで、ルルーシュははじめて「コード」と「ギアス」を両方継承した人間となりました。
これは10年越しのタイトル回収というわけです。長年応援してきたファンにはたまらない展開でしたね。
【考察】シャムナのギアス能力の正体とは?
シャムナは、作中で何度も時間を巻き戻すような能力を発動します。この能力の正体は、「彼女が死んださいに6時間前の自分に意識が戻る」というものです。分かりやすく言うならば、「死に戻り」というやつです。この能力が発動することによって、戦闘では無類の強さを発揮します。
その理由は単純で、シャムナは6時間後に起こる出来事を「知っている」からです。何が起こるのかを知っていれば、その対策は容易です。例えば、不幸にも交通事故で命を落とした瞬間から6時間前に戻れれば、その日は自宅にこもっていればよいのです。作品によっては、こうするとタイムパラドックスを起こしてしまうものもありますが、今作ではそうした要素はありませんので、かなり強力な能力といえます。
さらに、ルルーシュが得意とする戦法は「先読み」によるものです。これはギアスの能力ではなく、ルルーシュの天才的な頭脳によってはじき出される「未来予測」をもとにしています。「既知」のシャムナと「予測」のルルーシュでは、明らかに分が悪く、ルルーシュはあれほど追い詰められ、多種多様な戦略を順番にぶつけながら相手のギアス能力を探るという気の遠くなる作業を強いられたのです。
もっとも、これだけの頭脳戦を展開しながら、最後は渾身のハッタリで相手を撃破するルルーシュにはらしさを感じます。ただ、作戦がハマっても喜びを表に出さなかったルルーシュが、その感情を素直に表現していたところに、一度地獄を見たことに由来する成長を感じられました。
【考察】シャムナの動機にみる『コードギアス』シリーズのテーゼ
今作では、囚われのヒロインとして救出の対象となったナナリー。そもそも、なぜシャムナはナナリーを利用したのでしょうか。
シャムナの国・ジルクスタンは戦士の国として知られていました。主要な産業としては傭兵ビジネスがあり、戦争の中で生きることを生業にしている国家でした。しかし、ルルーシュが表舞台から姿を消し、戦争が終結したことによって傭兵の需要が大幅に減少し、国家は衰退していきました。
この現状を憂いたシャムナは、戦争で足を不自由にした弟シャリオのためにも祖国を守るべく、ギアスを完成させることで夜を再構成し、祖国と弟を守ろうとしました。そのギアス完成の手段として、コード継承者のシャルルの血を最も受け継ぐナナリーを利用することにより、機械的にCの世界へとアクセスすることでギアスの完成を目論みました。それゆえに、ナナリーは連れ去られ、半ば強制的にギアスの世界へと幽閉されたのです。
こうして考えると、敵役にもいくらか同情の余地があるように感じられます。そして、おそらく『コードギアス』の主題でもある「正義と悪」という根本的な部分にも関連しているのでしょう。
そもそも、ほかならぬルルーシュ本人が「アンチヒーロー」として描かれるのが『コードギアス』シリーズです。「正義と悪」というものが、非常にあいまいな境界線で成り立っていることをテーゼとして示しています。「正義の反対は別の正義」という言葉もありますが、そうした性質を引き継いだ展開であったといえるでしょう。
また、ルルーシュ同様、シャムナらジルクスタンの人々も「罰」をうけることになったというのも、『コードギアス』シリーズのもう一つの主題である「贖罪」というものを象徴しているように感じました。
ルルーシュは、結果的に世界に平和をもたらしましたが、その一方で自分自身は巨悪の象徴として存在を葬り去られています。つまり、シャムナとの違いは事を成せたかどうかの差であり、その代償を払っているという点では共通点がみられるのです。
【考察】ラストシーンの意味!ルルーシュとC.Cが結ばれる?
事態を解決したルルーシュですが、社会的には巨悪の象徴として葬り去られている身です。そのため、そのまま生者として生前同様の生活を送ることはできません。そこで、ルルーシュとC.Cは二人で旅に出ることを選択します。こうしてL.Lと名乗ったルルーシュは、かつてのC.C同様にコード継承者として各地を旅することになったため、必然的にC.Cと結ばれたことがほぼ確定しました。
これは、『コードギアス』シリーズの論争の対象であった「ルルーシュは誰と結ばれるのか」という議論に決着をつけたことを意味します。アニメ一期での描写から、おそらくルルーシュの初恋はユフィではないかと思います。しかし、ユフィにはルルーシュがギアスを暴発させてしまったことで殺人鬼と化してしまい、その想いが果たされることはありませんでした。
その後、ルルーシュに想いを寄せていると思われる女性は、主に三人に絞られました。一人は上記のC.C、もう一人はナイトメア「紅蓮」のパイロットであるカレン、最後はルルーシュの同級生シャーリーでした。R2のラストまでに、ルルーシュが特定の人物と結ばれることはなかったために、これらの人物でルルーシュと結ばれるのは誰なのか、というヒロイン論争が巻き起こされたのです。
そして、上記の通り選ばれたのはC.Cであったのですが、他の二人とも別れのシーンが描かれています。カレンは、ルルーシュとキスを交わしたのちに別れのあいさつをしました。その様子からルルーシュに恋心を抱いていたことが推測され、切なさを感じさせられました。シャーリーは、ルルーシュから最後に電話を受け取り、涙を流したのが別れのシーンでした。
つまり、最終的な関係を整理すると、C.Cは伴侶、カレンは戦友、シャーリーは親友となるのでしょうか。個人的には、どのキャラにも魅力を感じていた一方でC.Cがルルーシュにふさわしいと考えていたので、納得のいく結果ではありました。ただ、どのキャラも好きなキャラだったうえに、論争の決着が「ルルーシュの物語」の終わりを意味しているという事実に、思わず胸がつまりそうになります。
【解説】良い作品だったからこそ、アニメでガッツリ放送してほしかった
今作は、総合的に判断して非常に良い作品だったと思います。物語単体としても十二分に楽しめる出来で、ルルーシュに関する伏線もしっかりと整理され、「ルルーシュの物語」にも妥当な形でピリオドが打たれたからです。
しかし、これだけ上質な作品を作れるのであれば、やはりガッツリと枠を抑えて24話くらいの長さでアニメを制作してほしかったという想いは否めません。映画の尺には制限があるという事実は理解しているのですが、やはり多少駆け足気味になってしまった箇所もありましたし、なおのことそう思います。
監督の谷口悟朗も本音としてはテレビアニメを制作したかったと発言しています。しかし、それが叶わなかった理由として挙げられていたのは、「満足のいくクオリティでアニメの放送回数分の作品を仕上げることは難しい」「新規ファンの獲得があまり見込めない」というものでした。
実際、『コードギアス』シリーズは超人気作品でもあり、続編に対して求められるクオリティも非常に高いものがあります。それゆえに、それに答えるには制作の体力的な部分がもたないという経営的な判断もあったのでしょう。
もちろん、監督のこうした意見はやむを得ないところがあるのは理解していますし、こうした配慮が生かされた結果、満足のいく作品に仕上がったという事情もあるのでしょう。それでも、これだけのものが作れるならば、やはりもっと長く観ていたかったというのが正直な一ファンの感想です。
おそらく、ルルーシュの物語はもう完結したので続編はそれほど期待出来ませんが、また違った形の『コードギアス』シリーズが、アニメとして還ってくることを期待したいところです!