映画「ハンターキラー 潜航せよ」は、映画ファンに人気のある「潜水艦」をテーマにした作品です。
数多くある潜水艦映画の中でも新しい「ハンターキラー 潜航せよ」は、アメリカとロシアの対立というスケールの大きな設定の中で、潜水艦を中心に任務を遂行していく軍人たちの模様を描きながら、緊張感とスリルを味あわせてくれる映画になっています。
今回は映画「ハンターキラー 潜航せよ」のネタバレ感想や解説・考察を書いていきます。
目次
映画「ハンターキラー 潜航せよ」を観て学んだ事・感じた事
・映画全体を通じたハラハラドキドキとした緊張感がいい
・潜水艦のシーンがリアルで臨場感に溢れる
・軍人特有の人間関係や信頼関係が魅力
映画「ハンターキラー 潜航せよ」の作品情報
公開日 | 2019年4月12日 |
監督 | ドノヴァン・マーシュ |
脚本 | アーン・シュミット |
出演者 | ジョー・グラス(ジェラルド・バトラー) チャールズ・ドネガン(ゲイリー・オールドマン) セルゲイ・アンドロポフ(ミカエル・ニクヴィスト) ザカリン(アレクサンドル・ディアチェンコ) |
映画「ハンターキラー 潜航せよ」のあらすじ・内容
ロシア近海で米海軍の原子力潜水艦が消息を絶ったことをきっかけに、ジョー・グラスを艦長に据えた攻撃型原艦「ハンターキラー」は調査を始め、調査の中で沈んでいたロシア原艦の生存者を発見して捕虜とします。
一方地上では、ロシア国防相ドゥロフがロシア大統領ザカリンを人質に取り、クーデターを企てていました。
ロシアの暴走と戦争勃発を防ぐためにアメリカは地上から特殊部隊を派遣し、ロシア海域に侵入したハンターキラーと協力しながら、ロシアのクーデターを食い止めるため戦いを繰り広げます。
映画「ハンターキラー 潜航せよ」のネタバレ感想
映画「ハンターキラー 潜航せよ」を観た率直な感想としては、「ザ・娯楽映画」という感じでした。細かいことを気にしなければ、大いにハラハラドキドキできる満足度の高いエンターテイメントだと思います。
潜水艦の中で繰り広げられる海軍たちの攻防や緊張感、連帯感は非常に見応えがありますし、「アメリカVSロシア」という使い古された題材ではありますが、それでもスケールの大きさには魅了されてしまいます。
潜水艦という基本的には静的な場面が多く、指示を出したり潜水艦を操作するシーンが多くなるものの、それでも観ている側を飽きさせず、強度の高い緊張感を与えながらストーリーを進めていくのはさすがだと思いました。
ここでは、映画「ハンターキラー 潜航せよ」の個人的な感想や悪の教典 考察 解説を1つ1つの項目に分けながら書いていきます。
【解説】潜水艦アクションを支えるクオリティの高いシーンの数々
まず、観ている私たちを惹きつけるのは、類まれな映像技術やリアルなセットによって作り出される潜水艦のシーンです。外側からも内側からもリアルなシーンを作っており、潜水艦が海底を潜航するシーンは、それだけでもワクワクしてしまうほどでした。
潜水艦の内部のシーンは、基本的にセットを作って撮影が行われていると思うのですが、そんな中、セット感を全く与えないようなクオリティの高さがありました。
私自身潜水艦に詳しいわけではないですが、かといって興ざめするようなシーンがあるわけでもなく、ワイヤーやパイプの1本1本に到るまで、リアリティを追求したシーン作りが観られました。
そして、それらは映画としてのクオリティをもたらすだけではなく、観ている側にリアルな軍事行動の緊張感を与えることにも貢献しています。
潜水艦という海底の中にある密室状態、その中で長期間任務を続ける人々の精神状態、生死を分かつような瞬間の緊張感など、普段の生活で見ることができないシーンの数々には目を奪われてしまいます。
映画「ハンターキラー 潜航せよ」の原作小説を書いたウォーレス氏はコメントの中で「まるで本当にヴァージニアに乗っているような気分にさせてくれた(公式サイトより)」と賞賛しており、そこからもこの映画の完成度の高さが伺えます。
物語自体は割とシンプルで、そこまで評価が高いわけではない映画ではありますが、こういったリアリティの伴った映像体験は、非常に満足度の高いものとなっています。
【解説】ハラハラドキドキが絶えない2時間
映画「ハンターキラー 潜航せよ」の魅力の1つとして、映画が上映されている2時間の中、ずっとハラハラドキドキ感が続くことが挙げられます。
最初のシーンでは、ロシア近海でアメリカ海軍の原子力潜水艦が謎の魚雷によって消息を絶ってしまいます。魚雷が潜水艦に到達するまでの緊張感の描き方も「潜水艦ならでは」といえるもので、潜水艦である以上、内部にいる人は基本的に外の様子を確認することはできず、モニターなどに映し出される信号やレーダーなどの情報から、外部の様子を把握しています。
その中で、どこからともなく現れる魚雷、肉眼で姿は確認できないものの、近づいていることだけではレーダーではっきりと認識できる。そして最善を尽くすものの為す術もなくなり、魚雷が衝突するのを待つしかなくなった瞬間など、一瞬も気をぬくことができません。
そこから調査のために攻撃型原艦に乗り込んだジョー・グラス艦長たちはロシア近海に進むのですが、そこでも絶対不可視の言われるロシア領海の中で、重大な任務を繰り広げていきます。
隠密な調査活動を敵国の領海でやっていたことがバレた瞬間に、すぐさま第三次世界大戦が勃発する様相を呈している状況の中で、ロシアの監視網を潜り抜けながら時には魚雷で狙われるなど、トラブルも切り抜けていきます。
観ている側も音を立ててはいけないといった感じのスリルと、緊張感が継続的に生じているような感覚になりました。ステルス系のゲームをやっているときも同じような感覚になると思います。見つかったら即死亡みたいな緊張感は、やはりエンターテイメントとして優秀であることを改めて思わされました。
そして、地上は地上でさまざまなことが繰り広げられています。ロシアでは、国防相のドゥロフがクーデターを企てて、大統領を人質にとっています。作中で説明されていたこととしては、戦時中にロシア大統領が病気になった場合、全権がロシア国防相に委譲されるといった具合で、権力欲にかられたドゥロフが暴走して国を乗っ取ろうとしていました。
さらに、アメリカからの攻撃をけしかけて、全面戦争に持って行こうとしてもいました。その動きを調査するため、アメリカからはゴーストと呼ばれる特殊部隊が派遣され、ギリギリのところで監視の目を潜り抜け、ロシア大統領ザカリンを救出していきます。
この映画の全体的な緊張感とハラハラドキドキさせる部分を形成しているのは、全編通じて「見つかったら終わり」というコードが敷かれていることにあると思います。ハンターキラーも特殊部隊も見つかった瞬間に全てが終わるという緊張感の中で、任務を繰り広げていくのが、観ている側にも伝わってきます。
そして、見つかったら見つかったで、激しい戦闘が繰り広げられ、目を奪われてしまいます。娯楽作品としては必要な要素を兼ね備えているといってもよく、潜水艦を舞台にした映画としての独自性を出しながらも、完成度の高さに満足しています。
最初から最後まで緊張感を絶えさせない迫力のあるシーンの連続は、スクリーンに惹きつけられること間違いありません。
【解説】芯の通った軍人たちが魅力的!アメリカ海軍の艦長ジョー・グラス
映画「ハンターキラー 潜航せよ」は、登場するキャラクターにも目が離せません。
この映画では、主に海軍や特殊部隊といった軍人たちが登場するのですが、それらを統率する3人のリーダーの人物像、その人物に従い忠実に任務をこなしていく部下たちの関係性は非常に魅力的でした。
まず1人目は、アメリカ海軍の攻撃型原艦の艦長を務めたジョー・グラスです。彼は海軍兵学校の出身者ではなく、一兵卒からの叩き上げの人物、いわゆるキャリア組とは違う異色の存在でもありました。
そんな中でも、潜水艦に乗り込んでから、乗組員にその事実をまず最初に打ち明け、部下たちの疑念を晴らし、リーダーとして責任を持つことを伝えます。
そして、潜水艦がピンチに陥ったときでも冷静に対処し、事態を切り抜けていきます。部下を信用する中でも、意見が対立したときには、自分の哲学を貫くような姿勢は魅力的でした。
決定的なのが、ロシアの潜水艦コーニックの中から生存者を見つけ出したシーンです。そこには艦長のアンドロポフが乗り組んでおり、ロシアのクーデターを解決するために一役かえる人物でもありました。
だからといって敵国の艦長を捕虜としてではなく、協力者の1人として迎えることに誰もが抵抗を持ちます。潜水艦の中には海軍の機密情報もあり、それらが敵国に知られる可能性さえあったわけです。
そんな中、ジョー・グラス艦長はアンドロポフを同じ海の男としてリスペクトし、今は国が違うなどということは関係なく、協力関係を結ぼうとします。常識的に考えれば絶対にできないような選択を、問題を解決するために決断できる人物でもあります。
そして、その決断には完全な打算というわけではなく、同じ環境で生きてきた男同士だからこそ信頼できるといった熱い部分も併せ持っていました。結果的にはこれが功を奏し、ロシアの監視網を突破するのに役立ったりもします。
ジョー・ダラスというキャラクターには、部下との信頼関係はもちろん、立場に囚われず人と協力する熱血漢な部分もありながら、冷静な対処ができる、そして全てにおいて責任をおう中で思い切った決断ができるリーダーとして魅力的に映りました。
ロシア潜水艦コーニックの艦長セルゲイ・アンドロポフ
2人目の人物は、ロシア潜水艦コーニックの艦長「セルゲイ・アンドロポフ」です。彼はロシア国防相の陰謀によって、潜水艦の内部爆発によって沈没してしまった潜水艦の艦長で、ジョー・グラス艦長の潜水艦アーカンソーによって救出されます。
その後の展開は上記のようになっていくのですが、この人物も軍人の上司としていい味わいを出しています。最初はアメリカ海軍に捕まってしまい、意地でも口を割ろうとはしなかったのですが、ジョー・グラス艦長の信頼に応えるために協力関係を結びます。
全体的に寡黙な男で、聞かれなかれば返事をしないような人物だったので、どこかミステリアスな彼は敵なのか味方なのか、わからない雰囲気を出していましたが、自分が知っているロシア領海の情報をジョー・グラスに教えることでピンチを脱したことをきっかけに信頼を掴んでいきます。
この人物を象徴するシーンとしては、映画終盤にあります。ロシアの母艦からの攻撃を受けている最中、アーカンソー号から通信機を通じて、アンドロポフが母艦の乗組員の名前を一人一人呼んでいくシーンです。
物語でも触れられていましたが、このロシアの母艦に乗り組んでいる乗組員はアンドロポフが1から鍛え上げた精鋭たちでもあります。自らが育て上げ、鍛え上げた部下たちをアンドロポフは高く評価しており、「ミスはしない」とも評しています。
そんな中、かつての上司がアメリカの潜水艦に乗っていることを知った乗組員たちは動揺します。そして、現在の上司でもある艦長の命令を無視する形で攻撃を止めてしまいます。さらには、潜水艦に接近するミサイルを撃ち落とすという離れ業もやってのけます。
このシーンでは背景自体は語られませんが、この部分だけでも、アンドロポフと部下たちの関係性が伺えます。
自分たちを一人前の海兵に鍛え上げてくれた恩人を攻撃することはできないと、命令に反してまで自らの恩人を守る決断をした部下たち、そして、忠実な部下を持ったアンドロポフに魅力を感じてしまいます。
特殊部隊ゴーストのリーダー「ビル・ビーマン」
最後の1人は、特殊部隊のリーダー「ビル・ビーマン」です。彼は特殊部隊ゴーストとして4人のチームを率いています。最初に登場した訓練のシーンでは、新入りの隊員がもたついたことによって、成功させることができなかったことをイジったりしていました。
ロシアの動向が怪しくなってきた際に、特殊部隊として派遣された彼らは見つかった瞬間に殺されてしまうような監視網の中で調査を行なっていきます。
次第にロシアのクーデターが判明し、大統領が人質に取られていることがわかると、任務の内容がロシア大統領の救出に変更されます。監視網が厳しい中で、新入りの隊員が足を打たれて重傷を負ってしまいます。リーダーは彼を前線から遠ざけ、任務がスムーズに進めば助けにいくと伝えます。
そして、大統領救出任務がスタートします。敵の攻撃をかわしながら、何とか大統領を脱出させることに成功するものの、追っ手が迫ってきます。そんな中、新入りの隊員がスナイパーライフルでピンチを救います。
何とか大統領を救出したビル・ビーマンは、大統領をアーカンソーに引き渡すと自身は潜水艦に乗り込まずライフル片手に新入りの隊員を助けに向かいます。
足を負傷し、敵にも追い込まれた新入り隊員は死を覚悟しますが、そこに登場したのがビル・ビーマン隊長。何とか窮地を脱し、自分の部下を助けることに成功します。ここにもリーダーとしての責任感や、部下との関係性が伺えるシーンが盛り込まれています。
全体的に軍人たち独特の熱い信頼関係が随所に盛り込まれており、胸が熱くなるようなキャラクターたちが、映画「ハンターキラー 潜航せよ」の魅力を形成しているのです。
【解説】映画「ハンターキラー 潜航せよ」のお気に入りシーン
映画「ハンターキラー 潜航せよ」の中で個人的にお気に入りだったシーンが、ロシア大統領救出の際、大統領のSPを務めていた人物が大統領を脱出させるために、自らを犠牲に自爆をするシーンでした。
敵がドアを開けて迫ってくる中、手榴弾のピンを抜いてピンを中指にはめ、中指を突き立てながら「食らいやがれ」と行ったSPの彼の死に際のかっこよさが際立っており、とても印象に残っています。
この映画で、最もかっこよく死んでいったキャラクターだと思います。
映画「ハンターキラー 潜航せよ」は新時代の潜水艦映画!
よく「潜水艦ものにハズレなし」という言葉が使われます。潜水艦をテーマにした映画はこれまでにいくつも作られており、使い古された題材である分、平均点以上を取るのはわりと容易ですが、それゆえに新しい要素を加えるのが難しいジャンルでもあります。
映画「ハンターキラー 潜航せよ」はリアリティという部分では圧倒的な独自性を持っており、娯楽映画としての魅力、熱いキャラクターたちの人間関係など、このジャンルが好きな人でも納得できる映画だと思います。