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映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』ネタバレ感想・解説・考察!良くも悪くも「攻殻らしさ」は少なく大衆向け!

映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』のあらすじ・内容

映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』は、日本発祥で硬派な作りが売りの漫画『攻殻機動隊』を原作としたハリウッド映画です。ただ、本作に関して言えば漫画版よりも、むしろ押井守が監督を務めた同原作のアニメ映画「ゴーストインザシェル」および「イノセンス」の影響が強かったという印象です。

今回はそんな『ゴースト・イン・ザ・シェル』の個人的な感想や解説、考察を書いていきます!

また、筆者は原作漫画および強い影響が確認できるアニメ映画版も視聴済みなので、そことの比較やオマージュされている部分にも言及しながら、記事を展開していきます。ネタバレには注意してください。

映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』を観て学んだこと・感じたこと

・ハリウッドの映像技術は素晴らしい!
・原作をしっかりと読み込んでいるのが感じられる
・「大衆映画」と「芸術性」両立の難しさ

映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』の基本情報

公開日2017年4月7日
監督ルパート・サンダース
脚本ジェイミー・モス
ウィリアム・ウィーラー
アーレン・クルーガー
出演者草薙素子(スカーレット・ヨハンソン)
バトー(ピルー・アスベック)
荒巻大輔(ビートたけし)
トグサ(チン・ハン)
イシカワ(ラザルス・ラトゥーエル)

映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』のあらすじ・内容

映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』のあらすじ・内容

電脳技術が発達し、個人が直接ネットの波にダイブできるようになった近未来。人々は、自身の身体を電脳化することでさらなる人体機能の強化を図っていました。

こうして世界が発達するにつれて、犯罪の手法や暴力すらもはるかに強力なのものとなり、これに対抗するべく政府は対犯罪用特殊部隊「公安9課」を創設し、隊長の草薙素子以下各種エリート工作員を揃えて治安の維持を図ります。

そんな公安9課が犯罪の捜査を進めていると、捜査を指揮していた素子は自分自身の記憶が何者かに操作されているということに気づきます。記憶捜査に感づいた素子は、捜査を進めながら真の記憶の手がかりを追いかけていくことを選択します。

そして、素子が隠された記憶の正体を知った時、そこには驚愕の過去が潜んでいました…。

映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』のネタバレ感想

スタッフは攻殻機動隊作品では馴染みのない顔ぶれだが…

スタッフは攻殻機動隊作品では馴染みのない顔ぶれだが…© 2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

まず本作のスタッフ陣は、本作が初めてのハリウッド映画化かつ実写映画化ということもあり、攻殻機動隊に関わりのあった人物はほぼクレジットされていません。強いてあげれば、製作総指揮に攻殻シリーズのアニメを作成していた制作会社の関係者や講談社の社長がクレジットされていますが、彼らはかなり社会的地位の高い面々であり、あくまで名義上のクレジットだと考えるのが自然です。そのため、本作はこれまでの攻殻シリーズに馴染みのないスタッフ陣によって製作された映画であるといえるでしょう。

さらに、上記の要素に加えて監督や脚本家はまだ日本で名が浸透していない新進気鋭の監督であるということも事実です。例えば、監督のサンダースは2012年がハリウッド映画監督としてのデビュー年にあたり、我々がよく知るような大物監督と比べるとキャリアは幾分浅めになります。実際、当初は本作の映画化権を取得したのが超大物監督のスティーブン・スピルバーグであったため、彼が監督を務めるのではないという事実が知れ渡った時は、作品の出来を不安視する声もありました。

しかしながら、本作の中には過去の作品をオマージュするようなシーンも多数散見され、「攻殻機動隊をよく研究しているな」という印象を受けました。こうしたビッグタイトルのハリウッド映画化においては原作が半ば「無視」されてしまうことも珍しくないため、このような原作リスペクトが垣間見えるのは好感がもてます。

 

また、原作ファンの立場で厳しく評価しても映画としての出来は決して悪くなく、攻殻機動隊という複雑で歴史ある作品を、2時間少々の尺で上手にまとめ上げたという印象があります。シナリオ面も基本に忠実で大崩れすることはなく、一つのSF娯楽映画としては佳作に相当するものであったと思います。

新進気鋭のスタッフ陣でありながら極めて複雑な作品を手堅く仕上げ、世界中の人々が注目するハリウッド映画として大衆の鑑賞に耐えうる映画として完成させた点は評価されるべきです。また、スピルバーグのような大物でなかったからこそ「自分の色」というものが薄めだったために、原作をよくリスペクトしていたのかもしれません。そう考えると、かえって経験の浅いスタッフが起用されたのはプラスに働いたと考えられます。

実写キャストはやや配役ミスの感が否めないが、吹替声優はアニメと同じ!

実写キャストはやや配役ミスの感が否めないが、吹替声優はアニメと同じ!© 2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

実写化映画では必ずと言っていいほど槍玉にあがる「ビジュアル面」。本作のキャストを見ていきましょう。

まず、草薙素子役に起用されたのはスカーレット・ヨハンソンです。彼女がハリウッドで売れっ子女優なのは言うまでもなく、経験豊富で日本での知名度も高い女優が起用されたといえます。ただ、個人的に「アジア系」として描かれている素子に、北欧系の女優がキャスティングされているのはややミスマッチの感が拭えません。

また、詳しくは後述しますが、この「アジアン役に白人を起用した」という点は世界中で物議をかもすことになったので、映画の外で場外乱闘を引き起こすことにもつながってしまいました。

 

他にも気になった点は荒巻大輔役に起用されたビートたけしの存在です。映画監督としても一人の俳優としても世界中で高く評価されている「北野武」というブランドを取り入れたかったという起用の意図があったのでしょうが、「荒巻大輔」という訳を演じる俳優としてはややミスマッチの感が拭えませんでした。俳優としての北野武は、『アウトレイジ』や『ソナチネ』などの映画で演じているような「悪党」の役が似合う人物であり、『菊次郎の夏』のように不器用な人物を演じるのも得意としています。

しかし、荒巻大輔という人物は基本的に物静かで知的な人物で、心の底には熱いものをもっているという描かれ方がされているので、激情を表に出しがちな武とは役の相性が悪いといえます。そのため、本作では「北野武像」に合うように荒巻の性格や行動スタイルが改変されてしまっていたような印象がぬぐえず、配役としては不適当だったように感じました。

 

このように、全体を通じてキャスティングはやや配役ミスの感が否めませんが、ファンを喜ばせる要素もありました。それは、吹替で起用されている声優陣がアニメ版でお馴染みの声優陣であることです。

攻殻シリーズはアニメ作品が何度も制作されており、ファンも「この人物はこの声優」という認識が確立しています。例えば草薙素子といえば声は田中敦子であり、バトーといえば大塚明夫というように、声優とキャラのイメージがリンクしているところがあります。そのため、はじめから日本語を話せるビートたけしを除いて、原作と同じ声優がキャスティングされているというのはファンとして好感がもてるポイントでした。

アクションやCGは素晴らしく攻殻ワールドが再現されている

アクションやCGは素晴らしく攻殻ワールドが再現されている© 2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

本作の映画としての最大の見どころは、近年の大作ハリウッド映画らしく潤沢な予算に裏打ちされた質の高い演出やCGが盛り込まれていることでしょう。当然のように繰り広げられるワイヤーアクションを始め、技法を用いたアクションシーンは圧巻の一言です。また、もともと近未来のSFが設定であるとはいえCGも全く違和感なく、作品に対して完全に馴染んでいます。

こうしたアクションやCGなどの「予算や技術が問われる」部分に関しては、映画界の最高峰であるハリウッド制作らしい良さが最大限発揮されています。この点に関して日本映画は足元にも及ばないという印象があるので、原作の再現度という点では下回ったとしてもハリウッドで映画化されたことは有意義なことだったと感じられます。

むしろ、オマージュ元の日本でこのレベルの実写化は予算的にも技術的にも不可能であり、日本映画とハリウッド映画のレベル差を痛感させられるという意味では、日本映画のファンとしてある意味残念にも感じられました。

 

さらに、先ほどから言及しているように「過去作へのオマージュ」が頻繁に登場しています。例えば、攻殻に欠かせない光学迷彩の存在です。攻殻の世界観では光学迷彩が実用化されており、作戦行動には欠かせない存在としてたびたび物語に登場します。しかしながら、当然現実では光学迷彩が実用化されているわけではないので、ファンとしてはこれをどこまで実写で再現できるのかが気がかりでした。

結論から言えば、光学迷彩だけでなくサイボーグやロボットといった攻殻に登場する近未来アイテムの再現度は、我々が脳内で描いたものをほぼそのまま再現してくれたという印象を受けました。そのため、原作ファンでもこうした要素が実写でバッチリ再現されているという点は間違いなく見どころであると断言できます。

これらの原作要素の再現は、先ほども触れたような「スタッフの原作へのリスペクト」と「思い描いたものを再現できる技術力」が両立していなければ、これほどのクオリティで再現されることはなかったでしょう。

確かに、キャスティングや攻殻らしい物語の深みという点に関しては、やや期待外れの感は否めませんが、優れた技術力・原作へのリスペクト・手堅いシナリオが揃っているという事を考えれば、攻殻シリーズに親しみのない視聴者も十二分に楽しめる映画に仕上がっていると評することができます。

【解説】海外の反応は?草薙素子役にスカーレット・ヨハンソンの起用が物議をかもす

【解説】海外の反応は?草薙素子役にスカーレット・ヨハンソンの起用が物議をかもす© 2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

さて、ここからは先ほどキャストの項で触れた「スカーレット・ヨハンソンの起用が物議をかもした理由」について解説を加えていきたいと思います。この問題は、日本人にはなじみのない「差別」や「文化的侵略」の要素をはらんでいるので、ニュースを見てもピンとこなかった方も多いかもしれません。

まず、問題の起こった表面的な状況だけ整理しておきます。ことの発端は、アメリカ人で北欧系にルーツをもつ女優のスカーレット・ヨハンソンが、本作の草薙素子役にキャスティングされたことです。ここで草薙素子というキャラクターはアジア系の人物であり、スカーレット・ヨハンソンの出自とは明らかにずれていることが分かるのではないかと思います。

こういった状況を整理すると、日本人の我々としては「スカーレット・ヨハンソンの容貌や雰囲気が素子らしくないため、役のミスマッチを叩かれたのではないか」と考えたくなります。実際に、日本でも人気漫画の実写化で不可解なキャスティングが行なわれた際には、ファンによって「キャラクターのイメージと違う」という理由で炎上することも珍しくありません。

しかし、本作で生じた問題はそれよりもずっと根深いものであるという指摘ができます。そもそも、ハリウッドの世界は非常に「ポリティカル・コレクトネス」に厳しいです。この用語は日本語に訳すのが難しいのですが、簡単に言うと「差別や偏見に敏感である」というように表現できます。そのため、「配役が合っていない」という点ではなく「アジア系の人物として描かれていた人物に異なる人種を配役した」という点が火種となりました。

 

ここまでで大体事の発端は整理できたかと思いますが、それでも我々からすると「炎上するようなことではないのでは」という感想が浮かぶことでしょう。実際、「ハリウッド映画で日本人のキャラクターを白人が演じることに抵抗はない」という方も少なくないのではないでしょうか。それでも炎上した理由は、こういった細かな問題も「文化的侵略」に繋がるという考えがあるためです。

文化的侵略とは、特定の国家や宗教に根付く習慣や言語を破壊してしまうことです。かつて「帝国主義」がうたわれたころには欧米の列強がしばしば行なっていたことで、その反省から彼らは文化的侵略に敏感になっているという事実があります。こうした破壊行動は、やがて「我々は『正しい』が、お前たちは『間違っている』」という思想に繋がりやすく、文化保護の側面だけでなく差別を防ぐという意味もあります。

本作の場合で言うと「わざわざアジア人役に白人を起用した」ということが「白人がアジア人に対して優位にある」という図式を連想させかねない、ということが批判の大きな理由になっています。我々には馴染みのない感覚ですが、これがグローバルスタンダードなのです。

【考察】本作の欠点は「万人受け」を狙いすぎな点とクゼのような悪役がいないためか

【考察】本作の欠点は「万人受け」を狙いすぎな点とクゼのような悪役がいないためか© 2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

本作が「娯楽作品としては佳作」という表現をしているように、「攻殻機動隊」の作品として考えると、少し足りない部分があるかなというのが正直なところです。ここでは、その理由を考えていきたいと思います。

まず、約2時間という尺で手堅い作りを意識しているために、会話や演出が良くも悪くも分かりやすくなっているということが理由でしょう。これまでの攻殻作品は、会話や演出が良くも悪くも複雑でわかりづらいという特徴がありました。

例えば、作中にはかつての名作SF作品からの引用やオマージュがいくつも採用され、他にも映画の『タクシードライバー』や小説の『ライ麦畑で捕まえて』などの作品を知らないと作品が100%楽しめないという側面があったのです。

しかし、本作は「万人に80%の満足度を与える」という目標で製作されているように感じるために、良くも悪くも誰が見ても分かりやすく楽しめる作品へと変質しています。確かに、娯楽作品としてのレベルは本作になって上がったような気もしますが、一方で芸術性や深みの部分では明らかに一段落ちる側面があることは否めません。

 

また、もう一つ気になったのは「敵役に魅力が欠ける」という点です。これまでの作品では、純粋な悪役という存在は描かれてきませんでした。例えば笑い男やクゼのように、攻殻シリーズに登場するほとんどの悪役は何かしらの事情を抱えており、その事情を知ると「公安9課は本当に正義なのか」ということを疑うことができる構図になっていることも少なくありません。

本作の悪役は「いかにもな悪役」であり、同時に公安9課は「真っ当な正義」という構図がわかりやすく描かれています。これにより、勧善懲悪のシンプルな構図が完成したことでストーリーは極めて分かりやすいものとなりました。

しかしながら、これまでの作品であったような「正義や悪とは?」という深い考察をできる余地は全て排除されてしまっており、大衆向けに分かりやすく描かれていることの弊害は少なくないという印象を受けた作品でした。

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